施工管理(工事管理)とは?
施工管理とは、建設工事の現場技術者を指揮監督し、工事全体を管理することです。工事スケジュールの延期や予算オーバー、事故などが発生しないように工事全体をまとめて進捗させる業務を担います。
また、書類作成などのデスクワークや役所への書類手続き、設計者や業者との打ち合わせも業務範囲内です。さらに、請負工事の現場代理人として工事依頼主への対応も行います。
施工管理(工事管理)と現場監督の違い
施工管理(工事管理)と混同されがちな現場監督ですが、資格の有無と業務範囲によって区別できます。
- 【施工管理】
- 資格の有無:無資格でも施工管理職に就くことは可能だが、各工事現場には、国家資格である「施工管理技士」資格を有する従業員が必ずひとり必要。
- 業務範囲:工事全体を管理。現場以外にオフィスでのデスクワークも少なくない。
- 【現場監督】
- 資格の有無:特に資格は必要なし。
- 業務範囲:現場において作業員への指示や工事の進捗管理が中心。現場に常駐し現場の司令塔的な仕事。
ただし、企業によっては施工管理者を現場監督と呼ぶケースもあるため、明確な線引きはないともいえます。
参考:建設業法
こちらの記事では、同じく工事に関わる「工事監理」についても詳しく解説しています。それぞれの違いを理解することで現場の役割の全体像が見えるので、あわせてご覧ください。
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「施工管理技士」の種類と業務内容
施工管理(工事管理)の国家資格である「施工管理技士」は、扱う内容によって7つの種類に分けられます。それぞれの概要について簡単に説明します。なお、受験には所定の実務経験年数を満たす必要があり、建設工事の経験は必須です。
- ■建築施工管理技士
- 建築工事の施工計画や施工図の作成・スケジュール調整や工程管理・品質管理などを適切に行うための資格
- ■建設機械施工技士
- ブルドーザーや油圧シャベル、クレーン車など、建設機械を利用した建設現場での施工管理を適切に行うための資格
- ■電気工事施工管理技士
- 変電や送電設備・証明や配電などの電気設備工事の施工管理を適切に行うための資格
- ■電気通信工事施工管理技士
- インターネットやWi-fi、電話や防犯カメラなど、通信機器利用のための施工管理を適切に行うための資格
- ■土木施工管理技士
- 橋や道路、トンネル、河川などの土木工事現場での施工管理を適切に行うための資格
- ■管工事施工管理技士
- 空調設備やガス配管、ダクト工事や上下水道設備など、管工事の施工管理を適切に行うための資格
- ■造園施工管理技士
- 公園、庭園など造園の施工管理を適切に行うための資格
参考:建設産業・不動産業:技術検定制度 |国土交通省
施工管理(工事管理)の仕事内容は?
続いて、施工管理(工事管理)の業務のうち特に重要な4つを紹介します。
1.原価管理
原価管理は、人件費や材料費といった工事にかかる原価を計算し、予算内に収める管理活動のことです。進捗状況を把握し、予算を超過しないように管理します。
問題が生じた場合は、原因を分析したうえで計画や工程を見直して軌道修正します。予算を超えると企業収益の減少につながるため、重要な業務です。
2.工程管理
工期までに建物を完成させるためのスケジュール管理も、施工管理の重要な業務です。設計図どおりの建設が予算内で安全に施工できるように、工法を計画し、作業員の配置や重機手配の予定を立てます。施工開始後はスケジュールに沿って円滑に工事が進むように管理します。
工事の規模が大きいほど作業員や資材の数は増え、スケジュール自体が複雑になるため、高度な知識や実務経験が必要です。
3.品質管理
建設工事における品質管理とは、成果物が設計図・仕様書どおりの品質を達成できるよう管理することです。
材料の寸法や強度などの指標が、設計図・仕様書で規定された品質を満たすように材料や仕上げの程度などを決め、施行します。この際、設計図を補う詳細な図面作成が求められる場合もあります。また、完成した建物の強度や仕上げが規定を満たしているかの確認も重要な業務です。
4.安全管理
工事現場において、作業員は常に身体的な危険に晒されています。そのため、建築物の品質を確保するだけでなく、作業員の安全確保も施工管理の重要な業務です。
具体的には以下のようなことを行います。
- ■設備の整備(消火器や手すりの設置、使用機材の点検など)
- ■作業員への安全教育(ヒヤリハット周知など)
- ■作業員の健康管理(書類提出)
- ■安全パトロール
こちらの記事では施工管理(工事管理)の手法について詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
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施工管理(工事管理)の仕事の待遇・環境
厚生労働省による職業情報提供サイト「jobtag」の資料によると、建築施工管理技術者の全国平均年収は586.2万円、月の労働時間は170時間と記載されています。しかし勤務先や就業年齢などもバラつきがあるため、実際の年収は300〜600万円と幅があるようです。
また同サイトによると「入職前の経験については特に必要ない」と回答した人が29.5%と一番多いことから、未経験でも挑戦しやすい職種といえるでしょう。
なお、建設業界全体では平成23年より女性就業者数は増加傾向にあります。しかし、就業者数のうち女性の割合は10%弱ほどで、ほかの業界と比較すると低い水準といえます。
参考:
建築施工管理技術者 - 職業詳細 | 職業情報提供サイト(日本版O-NET)
建設業における女性就業者数等の推移|国土交通省
建設業における女性の活躍推進に関する
取組実態調査|国土交通省
施工管理(工事管理)の仕事のやりがいとは
施工管理の仕事のやりがいは、以下のようなことが挙げられます。
- ・仕事の需要があり安定している
- ・給与・成功報酬がよい
- ・達成感や充実感がある
- ・職人さんと信頼関係が築ける
施工管理(工事管理)の仕事は、現場の司令塔として工事を管理することです。予算やスケジュール、安全管理など長期間にわたって多くの業務に携わり、責任も重い仕事ですが、完了時の達成感や充実感はひとしおでしょう。
また施工管理技士資格取得には所定の実務経験年数を満たす必要があるため、働きながらのスキルアップにも最適です。取得資格が増えると、現場で任される仕事の幅も広がり、昇給・昇進にもつながります。
施工管理(工事管理)の仕事を行う際の課題
建設工事は単に建物の建設だけを指すのではありません。書類作成から契約の締結・完成検査や代金支払いなど、仕事内容は多岐に渡ります。そのため、中小建設業の施工管理業務では以下のような問題が発生します。
- ■利益最大化を目指して最小限の人数で現場の業務を担う結果、品質管理が疎かになる
- ■業務の専門化が進み、コミュニケーションに支障をきたす
- ■工事現場と本社に距離があるため独立採算的な組織になりやすく、経営と現場が乖離し、企業として非効率な状態に陥りがち
- ■書類関連業務に多くの時間を奪われる結果、他業務が疎かになる
- ■中小企業では電子入札や電子納品への対応が遅れている
こちらの記事では、施工管理(工事管理)の課題解決に活用できる施工管理(工事管理)アプリについて詳しく解説しています。気になる方はあわせてご覧ください。
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施工管理(工事管理)の仕事を効率化する方法
施工管理(工事管理)の課題解決に有効なのが工事管理システムです。施工管理(工事管理)システムとも呼ばれ、工事の契約締結から代金の回収まで施工管理業務を全面的に支援するITツールです。業務の効率化に力を発揮します。
人手で管理していると各業務のデータは散在しやすいですが、施工管理(工事管理)システムの活用によりシステム上で一元管理できます。必要なコミュニケーションを満たし、効率化で浮いた時間を品質管理などに充てられるでしょう。
具体的には以下のような機能が備わっています。
- 受注工事管理
- 案件一覧・金額・工期・契約年月日など
- 実行予算管理
- 予算作成・損益の可視化など
- 入金管理
- 顧客からの入金情報の可視化など
- 業者支払管理
- 仕訳自動作成・支払依頼書作成など
- 請求管理
- 原価情報管理・請求書発行など
- 発注管理
- 発注先管理・発注金額管理など
- 日報管理
- 日報・作業内容・原価など
- 工程管理
- 進捗管理機能
- 工事原価管理
- 仕入などの原価管理・原価率管理など
こちらの記事では、施工管理(工事管理)の仕事効率化に活用できる施工管理(工事管理)システムについて詳しく解説しています。ITトレンドで人気の製品や実際に導入した人の口コミも紹介しているので、あわせてご覧ください。
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施工管理(工事管理)の仕事を効率化しよう!
施工管理(工事管理)とは、建設工事の現場技術者を指揮監督し、工事全体を管理する仕事です。主にスケジュール・予算・安全・原価・品質・工程など、携わる業務は多岐にわたります。また現場監督よりも業務の幅は広いのが特徴です。
実際に就業中の方で業務の効率が悪く、管理に課題を感じる場合は、施工管理(工事管理)システムの活用がおすすめです。システム導入も視野に入れて、生産性の向上に努めましょう。