施工管理とは?
施工管理とは、建設工事の現場技術者を指揮監督し、工事全体を管理することです。工事スケジュールの延期や予算オーバー、事故などの発生を防ぐのが施工管理の主な目的です。
また現場管理だけでなく、書類作成などのデスクワークや役所への書類手続き、設計者や業者との打ち合わせなども担います。さらに、請負工事の現場代理人として工事依頼主への対応も業務の範囲内です。
施工管理は、建設工事プロジェクトにおいて不可欠であり、効率的な進行を実現するための重要な役割を担っているといえるでしょう。
施工管理の仕事内容は?
施工管理の仕事内容は多岐にわたりますが、ここでは施工管理の業務のうち特に重要な4つを紹介します。
原価管理
原価管理とは、人件費や材料費といった工事にかかる原価を計算し、予算内に収める管理活動です。原価管理は、建設工事プロジェクトの開始前に詳細な予算を立てるところからのスタートです。予算設定では、各工事項目にかかる費用を見積もり、資材費や労務費、機材費などを含む総合的な予算を策定します。
プロジェクトの進行中には実際の支出を継続的に監視し、予算と比較して過不足を確認します。コストオーバーが発生した場合には、代替材料の使用や工法の変更、作業効率の改善などが必要です。
原価管理は、予算内で建設工事を完了させ、経済的に成功させるための重要な業務です。施工管理者は常にコスト意識をもち、効率的な資源配分を行うことで、収益性を高めます。
工程管理
工程管理とは、建設工事の進行を計画どおりに進めるための管理活動です。工程管理では、詳細な工程表を作成します。工程表とは、各作業の開始日と終了日、所要時間、依存関係などを含むスケジュールのことです。そして、工程表にもとづいて、資材や労働力の手配、機材の準備などを計画します。
プロジェクトの進行中には、実際の進捗状況を常に監視し、工程表と比較して遅れや問題がないか確認します。遅延が発生した場合には、作業の順序を変更する、追加のリソースを投入するなど、迅速な対策が必要です。
建設工事の規模が大きいほど作業員や資材の数は増え、スケジュール自体が複雑になるため、高度な知識や実務経験が求められるでしょう。
品質管理
建設工事における品質管理とは、完成品が設計図や仕様書に記載された品質基準を満たすように管理することです。具体的には、使用する材料の寸法や強度、仕上げの程度などが設計図や仕様書で規定された基準に合致しているかを確認します。
この際、設計図を補う詳細な図面作成が求められる場合もあります。また、完成後に検査を実施し、建物の強度や仕上がりが設計どおりであることを証明するのも品質管理業務の1つです。
安全管理
安全管理とは、建設現場での作業が安全に行われるように管理することです。工事現場において、作業員は常に身体的な危険に晒されています。そのため、建築物の品質を確保するだけでなく、作業員の安全確保も施工管理の重要な業務です。
具体的には以下のようなことを行います。
- ●設備の整備(消火器や手すりの設置、使用機材の点検など)
- ●作業員への安全教育(ヒヤリハット周知など)
- ●作業員の健康管理
- ●安全パトロール
また、万が一事故が発生した場合には迅速に対応し、原因を分析して再発防止策を講じます。施工管理者は、安全に働ける環境を提供するために、安全管理の記録を作成し、継続的な改善を図る必要があります。
以下の記事では施工管理の手法について詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
施工管理と現場監督の違い
施工管理と混同されがちな現場監督ですが、資格の有無と業務範囲によって区別できます。
- 【施工管理】
- 資格の有無:無資格でも施工管理職に就くことは可能だが、各工事現場には、国家資格である「施工管理技士」資格を有する従業員が必ずひとり必要。
- 業務範囲:工事全体を管理。現場以外にオフィスでのデスクワークも少なくない。
- 【現場監督】
- 資格の有無:特に資格は必要なし。
- 業務範囲:現場において作業員への指示や工事の進捗管理が中心。現場に常駐し現場の司令塔的な仕事。
ただし、企業によっては施工管理者を現場監督と呼ぶケースもあるため、明確な線引きはないともいえます。
参考:建設業法|e-Gov法令検索
以下の記事では、同じく工事に関わる「工事監理」についても詳しく解説しています。それぞれの違いを理解することで現場の役割の全体像が見えるので、あわせてご覧ください。
「施工管理技士」の種類と業務内容
施工管理の国家資格である「施工管理技士」は、扱う内容によって7つの種類に分けられます。それぞれの概要について簡単に説明します。なお、受験には所定の実務経験年数を満たす必要があり、建設工事の経験は必須です。
- ■建築施工管理技士
- 建築工事の施工計画や施工図の作成・スケジュール調整や工程管理・品質管理などを適切に行うための資格
- ■建設機械施工技士
- ブルドーザーや油圧シャベル、クレーン車など、建設機械を利用した建設現場での施工管理を適切に行うための資格
- ■電気工事施工管理技士
- 変電や送電設備・証明や配電などの電気設備工事の施工管理を適切に行うための資格
- ■電気通信工事施工管理技士
- インターネットやWi-Fi、電話や防犯カメラなど、通信機器利用のための施工管理を適切に行うための資格
- ■土木施工管理技士
- 橋や道路、トンネル、河川などの土木工事現場での施工管理を適切に行うための資格
- ■管工事施工管理技士
- 空調設備やガス配管、ダクト工事や上下水道設備など、管工事の施工管理を適切に行うための資格
- ■造園施工管理技士
- 公園、庭園など造園の施工管理を適切に行うための資格
参考:建設産業・不動産業:技術検定制度/技術者制度|国土交通省
施工管理の仕事の待遇・環境
厚生労働省による職業情報提供サイト「jobtag」の資料によると、建築施工管理技術者の全国平均年収は632.8万円、月の労働時間は170時間と記載されています。しかし勤務先や就業年齢などもバラつきがあるため、実際の年収は300〜600万円と幅があるようです。
また同サイトによると「入職前の経験については特に必要ない」と回答した人が25.6%と一番多いことから、未経験でも挑戦しやすい職種といえるでしょう。
参考:建築施工管理技術者 - 職業詳細 | 職業情報提供サイト(日本版O-NET)
施工管理のやりがい・魅力とは
施工管理の仕事のやりがいとして、以下のような点があげられます。
- ●達成感や充実感がある
- ●職人さんと信頼関係が築ける
- ●仕事の需要があり安定している
- ●給与・成功報酬がよい
施工管理の仕事は、現場の司令塔として工事を管理することです。予算やスケジュール、安全管理など長期間にわたって多くの業務に携わり、責任も重い仕事ですが、完了時の達成感や充実感は大きいでしょう。
また施工管理技士資格取得には所定の実務経験年数を満たす必要があるため、働きながらのスキルアップにも最適です。取得資格が増えると、現場で任される仕事の幅も広がり、昇給・昇進にもつながります。
施工管理の課題
建設工事は単に建物の建設だけを指すのではありません。書類作成から契約の締結・完成検査や代金支払いなど、仕事内容は多岐にわたります。そのため、中小建設業の施工管理業務では以下のような問題が発生します。
- ●利益最大化を目指して最小限の人数で現場の業務を担う結果、品質管理が疎かになる
- ●業務の専門化が進み、コミュニケーションに支障をきたす
- ●工事現場と本社に距離があるため独立採算的な組織になりやすく、経営と現場が乖離し、企業として非効率な状態に陥りがち
- ●書類関連業務に多くの時間を奪われる結果、他業務が疎かになる
- ●中小企業では電子入札や電子納品への対応が遅れている
こうした施工管理の課題解決に有効なのが工事管理システムです。施工管理システムとも呼ばれ、工事の契約締結から代金の回収まで施工管理業務を全面的に支援し、業務の効率化を実現するITツールです。
人手で管理していると各業務のデータは散在しやすいですが、施工管理システムの活用によりシステム上で一元管理できます。必要なコミュニケーションを満たし、効率化で浮いた時間を品質管理などに充てられるでしょう。
以下の記事では、おすすめの施工管理システムを比較紹介しています。機能や導入メリットも詳しく解説しているので、ぜひご覧ください。
まとめ
施工管理とは、建設工事の現場技術者を指揮監督し、工事全体を管理する仕事です。主にスケジュール・予算・安全・原価・品質・工程など、携わる業務は多岐にわたります。また現場監督よりも業務の幅は広いのが特徴です。
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