工期短縮とは?
工期短縮とは、工事にかかる期間を短くすることです。建設業界でよく使われる言葉で、工期は工事の期間を表します。
昨今の働き方改革や生産性向上の考えにもとづいて、工期短縮を求められる事例も増加しています。
工期短縮を行うメリット
工期短縮を行うメリットは、以下の3つが挙げられます。
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
コスト削減
工期が短いほど人材や重機にかかる費用が安く済みます。発注側にとっては発注費が安くなり、受注側にとっては同業他社との競争力を高められます。
また、工期短縮を目指すことで設計者と施行者の間に協力体制が生まれるのもメリットです。綿密な協力体制があれば、工事途中での設計変更リスクを避けられます。また、早い段階で施行体制が整うため無駄なく工事に着手可能です。
競争力の向上
工期短縮でコストを削減できた実績は自社にとって重要なアピールポイントとなります。他社と比較した際に受注の決め手となることもあります。
生産性の向上
工期短縮を目指すことは、設計と施行の間に潜む無駄を排除し、合理的な業務を実現するための有効な方法と言えるでしょう。
さらに、上記のメリットに伴って人材を確保しやすくなります。業務合理化の結果として生産性が向上し、良好な労働環境が実現する余地が生まれるからです。
そのほか、完成した建築物の利用が早くなることや、工事による周辺住民への迷惑が少なくなるのもメリットといえます。
こちらの記事では、工期短縮に役立つ「施工管理アプリ」について詳しく解説しています。ITトレンドで人気の製品と口コミも紹介しているので、あわせてご覧ください。
工期短縮を実現させる方法
工期短縮を実現させる方法は以下の4つが挙げられます。
- ・制約条件の緩和
- ・構法・工法の工夫
- ・工程の管理
- ・IT化の推進
それぞれの方法について詳しく解説します。
制約条件の緩和
工事に限らず、制約条件(ルールや仕様)が厳しいと物事は進まなくなります。もちろん、工事現場においては安全性や品質を確保するために制約条件を定めることは大切です。しかし、それがあまりに融通の利かないものであると、作業に深刻な停滞をもたらします。
したがって、不必要に業務の妨げとなっている制約条件があれば、それは緩和していかなければなりません。管理のための安全管理などとならないように注意しましょう。
特に、発注者から課される仕様には要注意です。発注者は工事のプロではないため、不必要な仕様を課してくることがあります。それを黙って受け入れるのではなく、その真意を確認しましょう。問題のある仕様の撤廃あるいは緩和がコストダウンにつながると分かれば、同意を得られるかもしれません。
構法・工法の工夫
構法とは「どのように資材を使うか」「どのように組み立てるか」といった設計のことです。これらを工夫することで工期短縮を実現した事例があります。いくつか例を見てみましょう。
- 制作時間を短縮する
- 入手しやすい資材を使う、部品数を減らすなど
- 現場工数を減らす
- 工業化する、ユニット化するなど
- 天候による影響を減らす
- プレファブ化する、圧接・溶接を避けるなど
- 床を早く作る
- 構造を工夫する、乾式化するなど
一方、工法とは施工の技術的な方法のことです。こちらも工夫することで工期短縮が実現した事例もあります。
- 機械で効率化する
- ロボットなどの活用
- 省力化工法を採用する
- プレカット、プレファブ化、ユニット化など
- 労務・機材を有効活用する
- 工期配分の工夫、工区区分の合理化など
工程の管理
工事現場で行われる作業の中には、多少遅れても問題ない工程と、少しでも遅れると全体の工期を遅らせる工程があります。したがって、作業には適切な優先順位を付けなければなりません。さらに、並行して進められる工程はできるだけ並行したほうが良いでしょう。
こうした工夫を行うには、全工程を俯瞰的に把握しなければなりません。ネットワーク工程表などを作成して工程を図示しましょう。
ネットワーク工程表とは、全工程と工程間の依存関係を図示したものです。工程同士を線で繋いで図示することからネットワーク工程表と呼ばれます。この図を作成すれば全工程を俯瞰的に把握でき、依存関係に留意しながら工程の優先順位を最適化できます。
ただし、人力でネットワーク工程表を作成したり最適化したりするのは大きな労力を要します。そこで有効なのが工事管理システムです。工程を組む段階で役に立つのはもちろん、その後の進捗状況もリアルタイムに把握でき工期短縮に繋がった事例があります。
IT化の推進
工程の管理でも述べたネットワーク工程表以外にも、IT化を推進することで工期短縮に有効な業務は多くあります。
例えば、工事写真や図面の共有や受発注管理、案件関係者と簡単にやり取りできるチャット機能などで現場の一元管理が実現できます。工事に関わるデータはさまざまな種類があるため煩雑化しやすく、案件の関係者に共有するのも時間と手間がかかることが問題です。これらの業務をIT化してリアルタイムで簡単に共有・管理できるようにすることで工期短縮に成功した事例は多くあります。
こちらの記事では、工事のIT化の推進に役立つ「工事管理システム」について詳しく解説しています。ITトレンドで人気の製品と口コミも紹介しているので、あわせてご覧ください。
工期短縮を行う上での注意点
ここまでは工期短縮を良いものとして解説してきました。しかし、間違った工期短縮を行った場合には必ずしも工期短縮が企業にメリットをもたらすとは限りません。
たとえば、無理に工期短縮を目指した結果、労働環境が悪化する事例があります。工法・構法の工夫や作業の機械化による効率化なら良いでしょうが、作業員の負担を増やす形で工期短縮を図るとどこかに無理が生じます。労働環境が悪化すると作業員の離職率が高まり、人手不足によってかえって工期が長くなるかもしれません。
また、工期短縮によって余裕が生まれても、それは受注者側の認識に過ぎない点にも注意が必要です。発注者からは、短縮後の工期を当たり前だと認識されることがあります。その場合、さらなる工期短縮を求められることもあるため、どこかで「これ以上は難しい」という線引きをしなければなりません。
2020年に施行された「改正建設業法」では、働き方改革に伴い「著しく短い工期の禁止」が定められました。違反した場合には発注者に国土交通大臣等から勧告を行うことができるため、改正建築業法やガイドラインに沿って契約を締結するのが望ましいでしょう。
工期短縮により生産性が向上した場合は、休日の拡大を考えましょう。無理のない範囲での工期短縮が大切です。
参考:建設業法|電子政府の総合窓口(e-Gov)
工期短縮を行い、コスト削減や労働環境の改善を実現!
工期短縮を行うと経済面や人事面で多くのメリットが得られます。以下の方法で工期短縮と生産性向上を実現しましょう。
- ■制約条件の緩和
- ■構法・工法の工夫
- ■工程管理(工事管理システムの利用)
ただし、工期短縮によって労働環境の悪化を招く例もあるため要注意です。
以上を踏まえて工期短縮と生産性向上を行い、コスト削減や労働環境改善を目指しましょう。