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サイバー攻撃対策ツールの運用でよくある失敗と、現場が取るべき改善策

サイバー攻撃対策ツールの運用でよくある失敗と、現場が取るべき改善策

サイバー攻撃対策のツールを導入した後、「運用フェーズで機能しない」という事態に陥る組織は少なくありません。問題の多くはツールの性能ではなく、アラート管理の設計ミス、障害対応手順の不備、外部委託時の権限設計の甘さ、ポリシーの定期見直し不足など、日常の運用体制にあります。本記事では、ツール導入後の運用フェーズで実際に起きやすい失敗パターンを整理し、各課題に対する具体的な改善アプローチを解説します。

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目次

    アラート管理の失敗が現場を疲弊させる構造的問題

    セキュリティツールの運用が安定しない最大の要因の一つが、アラートの量と質をコントロールできていないことです。通知が多すぎると担当者のリソースが消耗し、肝心なインシデントへの対応が遅れます。

    低優先度アラートが業務時間を侵食する「アラート疲れ」の実態

    EDRやSIEM、IDS/IPSなどのセキュリティツールは、設定によっては毎日数百件から数千件のアラートを生成します。そのほとんどが誤検知や低危険度の通知でも、担当者は一つひとつ内容を確認して判断しなければなりません。こうした状態を「アラートファティーグ(Alert Fatigue)」と呼び、慢性化すると重大インシデントの見落としが起きやすくなります。

    解決策として有効なのは、ツールの優先度フィルタリングルールを見直し、低リスクのアラートはSIEMやSOARで自動クローズ・自動チケット起票するよう設定することです。担当者が目を通すアラートを「高危険度かつ要対応」のものに絞ることで、一件あたりの対応品質が上がります。アラート全体の件数を週次でモニタリングし、閾値が現場に合っているかを定期的に調整する運用も有効です。

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    情報システム担当者が少人数の組織でアラート設計を誤るリスク

    中小企業では情報システム担当者が1~2名のケースも多く、セキュリティツールが生成するアラートを複数人で分担する体制が整っていません。その結果、担当者が不在のとき(休暇・出張・退職)に通知が放置されたり、重要なアラートが埋もれたりする状況が生じます。

    少人数体制では、自動化ルールを最大限に活用してアラートの一次トリアージを機械的に行い、人が判断する場面を最小限に絞る設計が必要です。また、マネージドセキュリティサービス(MSS)への委託と組み合わせることで、少ない社内リソースでも24時間体制の監視を維持できます。担当者の人数に見合ったアラート量になるよう、ツールの設定と運用体制を合わせて設計することが出発点です。

    UTM運用でよく見られる「障害時に動けない」状態の問題

    UTM(統合脅威管理)はネットワークの入口を守る重要な機器ですが、障害時の対応手順が整備されていない組織では、機器の故障が即座に業務停止につながるリスクがあります。導入後の日常運用で見落とされがちな盲点を確認します。

    バイパスモードを知らずに障害対応が遅れるケース

    UTMはネットワークの出入口に物理的に設置されるため、機器が停止すると社内全体のインターネット通信が遮断されます。UTM製品によっては「バイパスモード」や冗長化構成に対応しており、障害時に通信を継続できる場合があります。ただし、対応有無や切り替え方法は製品・構成によって異なるため、事前確認が必要です。

    特にリース契約で設置した場合は、初期説明が不十分なまま運用が始まることが多く、担当者が操作マニュアルを持っていないケースも珍しくありません。UTM導入後は、バイパスモードの切り替え手順・ベンダーのサポート連絡先・障害時の対応SLA(応答・復旧までの時間の取り決め)を文書化し、担当者全員がアクセスできる場所に保管することが最低限必要です。障害訓練として年に一度バイパス切り替えを実際に試しておくと、緊急時の判断が速くなります。

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    多拠点展開でWebフィルタリングのポリシーが分散するリスク

    複数の拠点にUTMを設置している場合、拠点ごとに担当者や設定者が異なることでポリシーが統一されないことがあります。ある拠点では動画サイトや特定のクラウドサービスへのアクセスが許可されているのに、別の拠点では禁止されているといったポリシーの不整合が生まれると、ガバナンスが崩れ、リスクの高い通信が一部の拠点で放置されます。

    多拠点運用では、本社のセキュリティ部門または情報システム部門がポリシーを一元管理できる体制を整えることが重要です。クラウド型管理コンソールを持つUTM製品では、全拠点の設定を一画面で確認・変更できるため、運用負荷を抑えながらポリシーの統一を維持しやすくなります。設定変更の権限を本社側に集約し、拠点担当者が個別に設定を書き換えられない運用ルールを設けることも有効です。

    SOCへの委託で「検知はできても対応できない」問題への対処

    セキュリティ監視をSOC(セキュリティオペレーションセンター)ベンダーに委託することは、24時間365日の監視体制を効率的に実現する手段です。しかし委託範囲と権限の設計が不十分な場合、インシデント発生時の初動対応が遅れ、被害が拡大する事態につながります。

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    「検知・通知」のみの権限設計がもたらす深夜インシデントのリスク

    多くのSOC委託契約では、SOCに付与されるのは「異常の検知と報告」の権限のみです。「通信の遮断」や「端末の隔離」といった実際の対応作業は、発注側の企業が自ら行う必要があります。深夜にランサムウェアの感染が検知されても、社内で対応できる担当者がいなければ、翌朝まで被害が拡大し続けます。

    この問題を防ぐには、SOCとの契約時に「インシデント発生時にSOC側がどこまで自律対応できるか」を明確に取り決めておくことが必要です。遮断・隔離の権限をSOCに付与するか、社内に24時間対応できる緊急連絡フロー(オンコール担当者の指定と連絡手順)を整備するか、どちらかの対策が求められます。

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    セキュリティポリシーの陳腐化が生む見えないリスク

    一度策定したセキュリティポリシーや運用ルールを長期間更新しないまま放置することも、運用フェーズにおける典型的な失敗です。環境や脅威の変化にポリシーが追いついていない状態では、守っているつもりで穴を放置している状態に陥ります。

    担当者の異動・退職でルールが失われる「属人化リスク」

    セキュリティの設定や運用判断が特定の担当者の頭の中にだけ存在している状態は、組織として非常に脆弱な状況です。担当者が異動・退職した場合、引き継ぎを受けた担当者は設定変更の経緯や理由を把握できず、誤った変更を加えてしまうリスクがあります。また、誰も設定の意図を理解していないため、定期的な見直しが行われなくなるという問題も生じます。

    セキュリティに関わる設定・判断基準・変更履歴はすべて文書化し、設定管理台帳として組織で共有・管理する仕組みを整えることが基本です。担当者が変わっても「なぜこのルールがあるのか」が分かる状態を維持することで、引き継ぎ後の設定品質を保てます。四半期に一度程度の定期レビューを設け、ルールが現状に合っているかを確認する運用を組み込んでください。

    アクセス権の棚卸し不足で残存する不要アカウントの問題

    従業員の入退社に伴うアカウント管理が適切に行われていない場合、退職者のアカウントが有効なまま残存するリスクが生じます。悪意ある第三者がこのアカウントを使って不正アクセスを行った場合、正規ユーザーの行動として検知されにくいため、被害の発見が遅れる可能性があります。

    退職者や異動者のアカウント削除・権限変更を人事手続きと連動して実施できる仕組みを整えることが理想です。半年~一年に一度アクセス権の棚卸しを実施し、不要なアカウントや過剰な権限がないかを確認することも求められます。「必要最低限の権限のみ付与する」原則を徹底することで、残存アカウントのリスクを低減できます。

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    インシデント発生後の対応体制が準備されていない問題

    サイバー攻撃を完全に防ぐことは現実的に困難であり、何らかのインシデントが発生することを前提に備えておくことが現代のセキュリティ運用の考え方です。準備不足のまま被害を受けると、対応が後手に回り、復旧に要する時間とコストが大幅に増大します。

    インシデントレスポンス手順書がなく現場が混乱するケース

    セキュリティインシデントが発生した際、事前に対応手順(インシデントレスポンス計画)が文書化されていないと、「誰に報告するか」「どのシステムを先に止めるか」「いつ外部機関(警察・JPCERT/CC等)に連絡するか」といった基本的な判断を、現場が混乱した状態でゼロから行わなければなりません。意思決定に時間がかかるほど被害の範囲と深刻度が増します。

    インシデントレスポンス計画には、発生から収束までのフロー、役割分担と担当者の連絡先、対外報告の要件(個人情報保護法などの法的義務を含む)、復旧後のポストモーテム(振り返り)の実施方法を盛り込んでおくことが必要です。策定後は机上演習(テーブルトップ演習)や模擬インシデント対応を通じて、担当者が実際に計画通り動けるか定期的に確認することが重要です。

    バックアップの設計ミスでランサムウェア感染後に復旧できないケース

    ランサムウェアに感染した場合、データを暗号化されて業務が完全停止するリスクがあります。バックアップが存在していても、同じネットワーク上に保管されている場合は感染の影響を受け、バックアップデータまで暗号化されてしまうことがあります。また、バックアップを取得しているつもりでも、ジョブが失敗していてデータが存在しない事例も報告されています。

    バックアップ設計では「3-2-1ルール」(3つのコピー、2種類のメディア、1つをオフサイト保管)を基本とし、ネットワークから切り離した環境(エアギャップ)でのバックアップ保管を検討してください。加えて、四半期に一度のリストアテストを実施して、バックアップから実際に復元できることを確認しておくことが重要です。「バックアップがあっても使えない」事態は、テストを習慣化することで防げます。

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    サイバー攻撃対策の運用改善についてよくある質問

    セキュリティの日常運用に取り組む担当者から寄せられることの多い疑問をまとめました。

    ■Q1:アラートが多すぎて現場の負担が大きい場合、どこから改善を始めればよいですか?
    直近1か月分のアラートログを集計し、低危険度・誤検知の割合を把握することから始めてください。件数が多い通知カテゴリほど自動処理の効果が大きいため、優先的に自動クローズや自動チケット起票のルールを設定します。SIEMやSOAR製品の自動化機能を活用すると、担当者が対応するアラート数を大幅に削減できます。改善後も週次で件数をモニタリングし、設定を継続的に最適化してください。
    ■Q2:UTMの障害時に備えてどのような手順書を用意しておくべきですか?
    手順書には「バイパスモードの切り替え手順(図入り)」「ベンダーのサポート連絡先と受付時間」「障害時の社内連絡フロー」「代替回線や仮復旧手段」の4点を最低限盛り込んでください。紙またはオフラインでも参照できる場所に保管し、年に一度は内容を確認・更新する運用ルールも設けておくと安心です。
    ■Q3:SOCに委託しているのに深夜のインシデント対応が遅れます。どう改善すればよいですか?
    まずSOCとの契約内容を見直し、インシデント発生時にSOC側がどこまで自律対応できるかを確認してください。通信の遮断や端末の隔離をSOCに委任できる「アクティブレスポンス」オプションが用意されている場合はその利用を検討します。社内での対応が前提の場合は、深夜のインシデントに対応するオンコール担当者を指定し、SOCからの通報を受け取れる連絡手段(SMS・電話等)を整備することが必要です。対応フローを文書化し、実際に模擬対応を行って担当者が迷わず動ける状態を作っておくことも重要です。

    まとめ

    サイバー攻撃対策の運用フェーズで失敗しないためには、ツールの機能頼みにせず「運用体制と手順の設計」に注力することが重要です。まずは、アラート管理の最適化やUTM障害時の対応手順整備など、日常運用で起こりやすい課題を見直しましょう。さらに、SOC委託時の権限設計、ポリシーの定期更新、アクセス権の棚卸しも継続的に行う必要があります。インシデントレスポンス計画やバックアップのリストアテストまで含めて点検することで、運用上の抜け漏れを防ぎやすくなります。現在の体制を一項目ずつ確認し、運用の穴を埋めていくことが、実効性あるセキュリティ対策につながります。

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