ロードバランサの運用で失敗が起きる背景
ロードバランサは、導入して終わりではなく、導入後も継続的な作業が必要です。運用で必要な作業と、失敗として表れやすい状況を整理し、どこに注意が必要かをつかみましょう。最初に全体像をつかんでおくと、場面ごとの原因を理解しやすくなります。
導入後も続く運用作業の洗い出し
ロードバランサは、届いたアクセスを複数のサーバーに振り分ける装置やサービスです。導入後は、振り分け先の追加や削除、設定の変更、稼働状況の監視、SSL証明書の更新などの作業が発生します。ログの確認や、バックアップの取得も運用に含まれます。
ソフトウェアの更新や、障害が起きたときの調査と復旧も必要です。ハードウェア型、ソフトウェア型、クラウド型のどれを選ぶかによって、自社で担う作業の範囲は変わります。作業ごとに頻度と所要時間を見積もっておきましょう。
運用の失敗として表れやすい状況
運用の失敗は、サービスの停止や応答の遅れ、特定のサーバーへの偏った振り分けなどの形で表れる場合があります。証明書の期限切れによる通信エラーも、その一例です。利用者から問い合わせが来て初めて気づく例もあります。
原因は、設定の誤り、更新の遅れ、確認の漏れ、連絡の不足など複数あり、製品の問題とは限りません。運用の仕組みが整っているかが、結果に影響します。失敗を防ぐには、原因の種類ごとに備えを考える必要があります。
導入前の運用負担の見積もり
導入前に、運用で必要な作業と頻度を書き出し、誰が担当するかを決めておくと、導入後の想定外を減らせます。ベンダーが提供する支援の範囲も、あわせて確認しましょう。見積もりは、導入後に見直しながら精度を上げていけます。
マニュアルの提供、問い合わせ窓口、初期設定の支援、運用の代行は別の内容です。自社で担う作業と、任せられる作業を切り分けたうえで、運用の負担が現実的かを判断してください。不足する部分は、外部の支援の利用も検討しましょう。
担当者が1人のとき運用が回らなくなる失敗
ネットワーク担当が1人の場合、日常の運用に加えて、障害対応や変更作業が集中する場合があります。属人化が生む問題と、負担を分散するための工夫を解説します。担当者を増やせない場合でも、仕組みで負担を軽くする方法があります。
- ■手順書
- 設定変更や障害対応の流れを文書にして共有する
- ■監視と通知
- 異常を自動で検知し、複数人に通知する
- ■権限と履歴
- 操作の履歴を残し、役割ごとに権限を分ける
属人化によって生じる問題
運用を特定の担当者だけが行っていると、設定の意図や変更の経緯が、その人にしか分からない状態になりがちです。担当者が不在のときに障害が起きると、対応が遅れる恐れがあります。対応が遅れると、サービスの停止時間が延びる恐れもあります。
設定が複雑になるほど、第三者が内容を把握するのが難しくなります。担当者を専任で置くだけでは解決しにくく、情報を共有する仕組みを同時に整えることが重要です。負担が集中すると、確認の漏れが生じる可能性も高まります。
休暇や異動のときに起こる引き継ぎの不足
担当者の休暇や異動、退職の際に、手順や管理情報が引き継がれないと、運用が止まる場合があります。管理画面のパスワードや、証明書の保管場所が不明になる例もあります。担当者本人にとっては当たり前の情報ほど、記録から漏れやすい傾向です。
引き継ぎの項目として、構成図、設定の一覧、作業の手順、連絡先を整理しておきましょう。定期的に内容を見直し、担当者以外が手順を試す機会を設けると、不足に気づきやすくなります。引き継ぎの完了は、チェックリストで確認しましょう。
手順書と自動化による負担の分散
手順書を整備すると、複数人で同じ手順の作業を行えるようになります。作業の画面を図で示し、確認すべき点を明記しておくと、経験が浅い担当者でも対応しやすくなります。手順書は、作成後も実際の画面と照らして更新が必要です。
監視と通知を自動化し、異常を複数人に知らせる設定も有効です。設定変更をAPI(外部から操作する窓口)で自動化できる製品なら、手作業のミスも減らせます。自社の人数で無理なく回せるかを、選定の基準に加えましょう。
情報システム部門が不在のロードバランサ導入で起こるトラブル
情報システム部門がない企業が導入する場合は、設定や更新、障害対応を誰が担うかが課題です。起こりうるトラブルと、外部の支援を使う際の注意点を整理します。導入前の準備が、導入後の負担を左右します。特に、更新と初動の対応は後回しになりやすい作業です。
更新や設定の見直しが放置される問題
導入時の設定のまま、長期間見直されないと、環境の変化に対応できなくなる場合があります。振り分け先のサーバーを増やしたのに登録が漏れる、といった状況が考えられます。見直しの時期を、四半期や半期ごとに決めておくのも一案です。
ソフトウェアの更新が行われないと、脆弱性(攻撃に悪用されうる弱点)が残る恐れもあります。更新の通知を誰が受け取り、いつ適用するかを、導入時に決めておきましょう。更新の適用前に、動作を確認する手順も用意しておくと安心です。
障害発生時の初動対応の遅れ
専門の担当者がいないと、障害の兆候に気づくのが遅れたり、切り分けに時間がかかったりする場合があります。誰に連絡し、何を確認するかが決まっていないと、対応が滞る恐れがあります。特に夜間や休日は、気づくまでの時間が延びやすい状況です。
障害時の連絡先と、最初に確認する項目を一覧にしておきましょう。ヘルスチェックの結果や、監視の通知を確認できる状態にしておくと、状況の把握が早まります。監視の通知を、携帯端末などで受け取れる設定も検討しましょう。
外部の支援を活用するときの責任範囲
運用を外部の事業者に委託する場合、依頼できる作業と、自社で判断する事項を分けて契約する必要があります。設定の代行、監視、障害対応は別の作業であり、含まれる範囲は事業者によって異なります。
障害が起きたときに、どちらが何を対応するのかが不明確だと、対応が滞ります。契約の前に、対応時間、連絡方法、費用の条件を確認し、責任の範囲を文書で残しておきましょう。対応の結果の報告を受ける方法も、あわせて決めましょう。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料請求して、さまざまな製品の機能や特徴を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でロードバランサの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
複数拠点の運用で設定と証明書が混乱する失敗
拠点ごとにロードバランサを置くと、設定や証明書の管理が複雑になり、混乱が生じる場合があります。混乱が起きる要因と、整理するための方法を解説します。拠点が増えるほど、管理の手間は大きくなる傾向があります。担当者が拠点ごとに異なる場合は特に注意が必要です。
拠点ごとに設定がばらつく問題
拠点ごとに別の担当者が設定すると、振り分け方式やヘルスチェックの条件などが少しずつ異なる状態になる場合があります。拠点間で挙動が違うと、障害の原因を特定しにくくなります。ばらつきは、担当者の習慣や、設定の手順書がないことで生じます。
標準となる設定を決め、変更の際は全拠点に反映する手順を用意しましょう。設定をファイルとして保存して複製できる製品や、複数の機器をまとめて管理できる製品は、ばらつきを抑える助けになります。
証明書の期限と更新の管理
SSL証明書とは、通信の暗号化と、サイトの実在確認に使う電子的な証明書です。複数の拠点やサービスで使うと、期限の異なる証明書が増え、更新の漏れが起こる恐れがあります。管理表を一元化しないと、更新の担当が曖昧になりがちです。
期限が切れると、利用者のブラウザーに警告が表示されたり、通信ができなくなったりする場合があります。証明書の一覧と期限を管理し、期限が近づいたら通知する仕組みを整えましょう。自動更新に対応した仕組みも、選択肢の一つです。
一元管理の仕組みと権限の整理
複数の拠点を1つの管理画面で扱える製品もあり、設定の確認や変更を集約できます。ただし、一元管理にすると、1か所の誤設定が全拠点に影響する恐れがあるため、変更前の確認が欠かせません。反映の前に確認画面があるかも見ておきたい点です。
拠点ごとに操作できる範囲を分ける権限の設定も確認しましょう。誰がどの拠点の設定を変更できるかを決め、操作の履歴で追跡できる状態にしておくと、混乱を防げます。権限が複雑になりすぎないよう、役割は少数に整理します。
情報システム部門と開発部門の分業で起きる問題
ロードバランサの運用を、情報システム部門と開発部門で分けると、役割の境界が曖昧になる場合があります。起こりうる問題と、分業を円滑に進めるための決め事を整理します。下の表は、ここまでの場面ごとの問題と備えをまとめたものです。
| 場面 | 起こりうる問題 | 備え |
|---|---|---|
| 担当が1人 | 属人化、引き継ぎの不足 | 手順書、監視の通知、権限の分離 |
| 情シス不在 | 更新の放置、初動の遅れ | 連絡先の整理、外部支援の契約 |
| 複数拠点 | 設定のばらつき、証明書の期限切れ | 標準設定、期限の一覧管理 |
| 部門の分業 | 責任範囲の不明確さ、依頼の行き違い | 役割分担表、変更依頼の流れ |
責任範囲が不明確になる場面
ネットワークの機器は情報システム部門が管理し、アプリケーションは開発部門が管理する場合、ロードバランサの設定がどちらの担当か曖昧になる場合があります。障害が起きたときに、対応責任が不明確になる恐れがあります。
振り分けの設定、証明書、監視、ログの確認など、作業ごとに担当部門を決めましょう。役割分担表を作り、関係者が確認できる場所に置いておくと、判断に迷いにくくなります。境界にある作業は、特に担当を明示しておきます。
変更依頼の連絡が行き違う問題
開発部門が新しい機能を公開する際に、ロードバランサの設定変更が必要になる場合があります。依頼が遅れたり、内容が正しく伝わらなかったりすると、公開の予定に影響が出る恐れがあります。期限が迫ると、確認が不十分なまま設定を変更する恐れも生じます。
依頼の窓口、必要な情報、対応の期限を決めた変更依頼の流れを用意しましょう。依頼書の様式をそろえ、設定の変更内容を事前に確認し合うと、行き違いを減らせます。依頼の履歴を残すと、あとから経緯を追えます。
両部門で共有したい情報と合意の仕組み
構成図、設定の一覧、障害時の連絡先は、両部門が同じ内容を見られるようにしておくと安心です。変更があるたびに更新し、最新の状態を保つ担当も決めておきます。共有の場所は、全員がアクセスできるところに統一しましょう。
定期的に両部門で運用の状況を確認する場を設けると、問題の早期発見につながります。分業の方法は、組織や製品により適した形が異なるため、自社の体制にあわせて見直しましょう。議事録を残しておくと、決定の経緯も共有できます。
運用の支援範囲を比較したい製品
運用で失敗しないために、支援や保守の範囲を確認しておきたい場合の候補を紹介します。
ビジネスセキュリティ(VSR)nシリーズ
- 業界最多クラスのセキュリティ機能の中から独自のカスタムが可能
- 管理者負担軽減!導入から運用、保守まですべて一括対応。
- 24時間365日の障害検知・切り分けから復旧対応までサポート!
株式会社 USEN ICT Solutionsが提供する「ビジネスセキュリティ(VSR)nシリーズ」は、UTM(複数のセキュリティ機能を1台にまとめた機器)にロードバランサ機能を持たせた製品です。運用面では、運用監視、オンサイト保守、設定変更の対応を依頼できる点が特徴で、ロードバランサ機能はバランシングとSSLオフロードに対応しています。情報システム部門の不在や担当者の少なさに備え、日々の運用と障害対応をどこまで任せられるかを確認する材料です。障害の検知や切り分けから復旧対応までのサポートも用意されています。
Elastic Load Balancing (アマゾンウェブサービスジャパン合同会社)
- 自動的なスケーリングと高い可用性で安定稼働を実現
- 単独のロードバランサでAWSからオンプレミスまでカバー
- 750 時間/月の無料枠が提供
BIG-IPLocalTrafficManager (エフファイブ・ネットワークス・ジャパン合同会社)
- 負荷分散とヘルスチェックで高可用性。
- 通信保護と性能向上を実現。
- 詳細ログと分析機能でトラフィック状況を可視化。
ロードバランサに関するよくある質問
ロードバランサの運用の失敗についてよくある質問と回答をまとめました。
- ■Q1:担当者が1人でも、無理なく運用できる仕組みはありますか?
- A:手順書の整備、監視と通知の自動化、操作履歴の記録などで、負担を分散できる場合があります。担当者の不在に備え、引き継ぎの項目を決めておくことも重要です。
- ■Q2:運用を外部に委託すれば、トラブルは防げますか?
- A:委託により負担を減らせる場合はありますが、トラブルが起きなくなるとは限りません。依頼できる作業と自社で判断する事項を契約で分け、責任範囲を文書で残しておきましょう。
- ■Q3:複数拠点で、証明書の期限切れを防ぐにはどうすればよいですか?
- A:証明書の一覧と期限を一元的に管理し、期限が近づいたら複数の担当者に通知する仕組みを整えます。自動更新に対応した機能があるかも、製品選びの際に確認しましょう。
- ■Q4:情報システム部門と開発部門で分業するとき、最初に決めることは何ですか?
- A:作業ごとの担当部門を決め、役割分担表にまとめましょう。あわせて、変更依頼の窓口と流れ、障害時の連絡先を決めておくと、対応の行き違いを減らせます。
まとめ
ロードバランサの運用の失敗は、担当者が1人の場合、情報システム部門が不在の場合、複数拠点で管理する場合、部門で分業する場合に起こる可能性があります。手順書や監視、責任範囲の明確化で、備えることができます。どの場面でも、運用を人に頼りきりにせず、仕組みで支える視点が重要です。自社の体制にあう製品を選ぶため、複数の製品の資料を請求して比較してみてください。

