ロードバランサの導入で失敗と感じる原因の整理
ロードバランサの導入で失敗と感じる状況は、製品の不具合だけでなく、要件や構成、設計など複数の要因が重なって起こる場合があります。原因を区分ごとに分けて考えると、確認する順序を決めやすくなります。まず代表的な区分を整理します。
| 原因の区分 | 起こりうる状況 | 確認する点 |
|---|---|---|
| 要件 | 目的が曖昧で、必要な機能が不足する | 解消したい課題と優先順位 |
| 方式 | 通信の種類や提供形態が環境にあわない | L4かL7か、設置の形態 |
| 容量 | 想定したアクセス量に処理が追いつかない | 同時接続数と通信量の見積もり |
| 体制 | 設定の内容が共有されていない | 設計書と担当者の分担 |
目的と要件の曖昧さ
導入の目的が曖昧なままだと、必要な機能の判断がぶれます。例えば、サーバーダウンの防止が目的なのか、処理の分散が目的なのかで、重視する機能は変わります。目的が定まらないと、導入後に効果を測る基準も決められません。
まず、解消したい課題を書き出し、優先順位をつけましょう。あわせて、現在のアクセス数や将来の見込み、止められない時間帯も整理します。要件を文書にしておくと、製品の選定や社内の合意形成にも役立ちます。
方式の選定と構成の不一致
ロードバランサには、通信の階層で分けるL4とL7があります。L4はIPアドレスやポート番号をもとに振り分ける方式で、L7はURLやヘッダーなど、アプリケーション層の情報も使う方式です。
提供形態にも、専用機器のハードウェア型、サーバーに導入するソフトウェア型、クラウド上のクラウド型があります。自社の環境や運用体制にあわない形態を選ぶと、追加の設定や作業が生じる場合があります。方式と形態は、目的とあわせて検討しましょう。
性能見積もりの不足
処理できる同時接続数や通信量には、製品ごとに上限があります。現在のアクセス量だけで選ぶと、サービスの拡大やキャンペーンの際に、処理の余裕が足りなくなる可能性があります。
過去のアクセス記録から、ピーク時の接続数や通信量を確認しましょう。そのうえで、将来の増加分にどこまで備えるかを決めます。拡張の方法や、台数を増やすときに必要な作業、追加の費用の考え方もベンダーへ質問しておくと安心です。
1台運用からロードバランサへ移行して失敗しないために
サーバー1台の運用から移行するときは、既存の仕組みがそのまま動くとは限りません。移行の流れを決め、段階ごとに確認を進めると、切り替え後のトラブルを減らす助けになります。ここでは、移行前に確認したい基本の流れを整理します。
- ■現状の把握
- サーバーの構成、通信の流れ、証明書の置き場所を洗い出す
- ■構成の設計
- 振り分け先の台数と、ロードバランサの設置場所を決める
- ■動作の検証
- 検証環境で、ログインや入力フォームなど主要な操作を確かめる
- ■切り替えと切り戻し
- 切り替えの日時と、元に戻す手順を事前に決める
現在のサーバー構成と通信を洗い出す
1台運用では、ログイン状態などの情報をサーバー内に保存している場合があります。台数を増やすと、次のアクセスが別のサーバーへ届き、ログインが切れる可能性があります。
あわせて、構成によっては、アクセス記録に残る送信元のIPアドレスが、ロードバランサのアドレスに変わる点も確認が必要です。アプリケーション側の設定変更が要るか、証明書をどこに置くかを、移行の前に洗い出しておきましょう。担当者ごとに把握している範囲が異なる場合もあるため、関係者で一覧を共有しておきましょう。
検証環境で動作を確かめる
切り替えの前に、本番に近い検証環境で動作を確かめましょう。ログイン、入力フォーム、ファイルの送受信など、利用者がよく使う操作を中心に試します。正常に動くことだけでなく、画面の表示や処理の順序まで見ておくと、見落としを減らせます。
確認の際は、サーバーを1台停止した場合の動きも見ておくと安心です。想定どおりに別のサーバーへ振り分けられるかを確かめられます。結果は記録に残し、関係者と共有しましょう。
切り替え手順と切り戻しを決める
切り替えは、アクセスの少ない時間帯に行う方法があります。DNSの設定を変更する場合は、変更が利用者側に反映されるまで時間がかかる点にも注意しましょう。DNSとは、サイトの名前とIPアドレスを結びつける仕組みです。
万一に備え、元の構成へ戻す切り戻しの手順と判断基準を、事前に決めておきます。誰がいつ判断するかを明確にすると、慌てずに対応できます。切り替え後は、しばらくアクセス状況を監視しましょう。
ロードバランサを導入してもサーバーダウンが減らない理由
ロードバランサを導入しても、サーバーダウンが減らないと感じる場合があります。ダウンの原因は複数の層にまたがるため、どの部分に負荷が集まっているかを切り分けることが、改善の第一歩です。確認する箇所を表にまとめます。
| 確認する箇所 | 負荷が集まる例 | 見直しの方向 |
|---|---|---|
| Webサーバー | 振り分けの偏りで特定の台に処理が集中する | 負荷分散方式の見直し |
| アプリケーション | 重い処理に時間がかかり、接続が滞留する | 処理内容の改善、キャッシュの活用 |
| データベース | 同時に集まる問い合わせを処理しきれない | 構成の見直し、負荷の軽減 |
| ロードバランサ | 1台構成のため、停止すると全体に影響する | 冗長構成の検討 |
ボトルネックがロードバランサ以外にある場合
ロードバランサは、Webサーバーへの振り分けを担う仕組みです。データベースやアプリケーションの処理が重い場合は、Webサーバーを増やしても、全体の遅れが解消しない可能性があります。
ボトルネックとは、システム全体の処理速度を制限している箇所のことです。監視ツールで、CPUの使用率や応答時間を各層ごとに確認しましょう。
負荷が集中する層を特定すれば、見直す対象を絞れます。インフラ担当とアプリケーション担当が、同じ数値を見て話し合うことも大切です。
負荷分散方式とヘルスチェックの設定
負荷分散方式には、順番に振り分ける方式や、接続数が少ないサーバーへ振り分ける方式などがあります。サーバーの性能差や処理時間のばらつきに方式があっていないと、偏りが生じる場合があります。
ヘルスチェックとは、サーバーの稼働状況を定期的に確認し、異常なサーバーを振り分け対象から外す機能です。確認の間隔や判定の条件が適切でないと、障害の検知が遅れる場合があります。設定値は、実際の処理時間にあわせて見直しましょう。
ロードバランサ自体の冗長構成
ロードバランサを1台だけで運用すると、その機器が停止したときに、全体に影響が出る場合があります。冗長構成とは、予備の機器を用意し、障害時に切り替えられるようにする構成です。
冗長構成には、2台を常に稼働させる方法や、予備を待機させる方法があります。クラウド型の場合は、提供側で冗長化されている範囲を確認しましょう。
どこまでが自社の責任範囲かを把握しておくと、障害時の判断が早まります。ベンダーの切り替え時間の目安も、あわせて聞いておきましょう。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料請求して、さまざまな製品の機能や特徴を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でロードバランサの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
繁忙期にロードバランサの処理が遅くなる場合の確認点
繁忙期にロードバランサの処理が遅くなることは、条件によっては起こりえます。上限に近づいている指標や、処理を重くしている設定を順に確認すると、導入後の見直しで失敗を避ける手がかりを得やすくなります。確認の順序は、次の3つです。
処理の上限に近づいていないか確認する
ロードバランサには、同時に処理できる接続数、1秒あたりの新規接続数、通信量の上限があります。繁忙期にいずれかが上限に近づくと、応答が遅れる場合があります。どの指標が先に上限へ近づくかは、通信の内容によっても異なります。
管理画面やログで、各指標の推移を確認しましょう。ピーク時に上限へ近づいているなら、機器の増強や構成の見直しを検討します。上限値は製品の仕様によって異なるため、ベンダーへの確認も有効です。
暗号化処理やルールの数を見直す
通信の暗号化と復号の処理は、機器にとって負荷の高い作業です。SSLオフロードとは、この暗号化処理をロードバランサ側で担い、Webサーバーの負担を軽くする機能を指します。
一方で、振り分けのルールや記録するログの量が増えると、ロードバランサ自体の処理が重くなる場合があります。暗号化の方式、ルールの数、ログの設定を見直し、必要なものに絞りましょう。変更の前後で応答時間を比べると、効果を確かめられます。
事前の負荷試験で余裕を確かめる
繁忙期の前に負荷試験を行うと、処理の余裕を事前に確かめられます。負荷試験とは、疑似的に大量のアクセスを発生させ、システムの挙動を調べる試験のことです。
本番環境で行うと、実際の利用者に影響が出る場合があります。検証環境で実施するか、ベンダーや社内の担当部門と日時や方法を調整してから行いましょう。
試験の結果は、台数や機器の増強を判断する材料となり、次回の見積もりにも活用できます。実施前に、止める操作や中断の基準も決めておくと安心です。
ロードバランサの導入で失敗しない運用体制と属人化の防ぎ方
導入後に設計や設定が特定の担当者へ偏ると、対応が滞る場合があります。記録の整備や役割の分担、ベンダーへの相談範囲を決めておくことで、属人化を避けやすくなり、導入の失敗を防ぐ助けになります。ここでは、導入後に整えたい体制を整理します。
設定内容と変更履歴の文書化
振り分けの設定やヘルスチェックの条件は、時間が経つと、設定の理由が分からなくなる場合があります。設定の内容に加えて、なぜその値にしたのかも書き残しましょう。背景が分かれば、後任者も判断しやすくなります。
設定を変更したときは、日付、変更者、変更の目的を履歴として残します。機器やサービスの管理画面に変更履歴の機能があるかも、選定時に確認しましょう。
引き継ぎ時の確認の手間を減らせます。年に1回など、定期的に記録を見直す機会を設けると、実際の設定との食い違いにも気づけます。
複数人で対応できる役割分担
担当者を1人に決めるだけでは、不在時の対応が難しくなります。平常時の監視担当、障害時の判断者、ベンダーへの連絡担当など、役割を分けて複数人で共有しましょう。
障害時の連絡先や対応の流れは、手順書にまとめます。定期的に見直し、訓練を行うと、実際の場面でも動きやすくなります。
担当者が代わったときにも、同じ水準で対応を続けられます。対応した内容は記録に残し、チーム全体の知識として蓄積していきましょう。
ベンダーへの相談範囲の整理
サポートの内容は、問い合わせ窓口、設定方法の案内、設計の支援、作業の代行など、提供会社によって異なります。どこまで相談できるかを、契約前に確認しましょう。
対応時間や連絡手段、障害時の連絡の流れも確認しておきます。自社で対応する範囲とベンダーに任せる範囲を分けておくと、問題が起きた際に迷わず動けます。
必要に応じて、専門事業者への依頼も検討しましょう。契約内容に含まれない作業は、別途の費用や依頼が必要な場合もあります。
導入前に比較したいロードバランサ製品
導入の失敗を避けるため、提供形態や機能の違いを比較しておきたい製品を紹介します。構成や運用体制にあうかを、資料で確認しましょう。
ビジネスセキュリティ(VSR)nシリーズ
- 業界最多クラスのセキュリティ機能の中から独自のカスタムが可能
- 管理者負担軽減!導入から運用、保守まですべて一括対応。
- 24時間365日の障害検知・切り分けから復旧対応までサポート!
株式会社 USEN ICT Solutionsが提供する「ビジネスセキュリティ(VSR)nシリーズ」は、UTMと呼ばれるセキュリティ機器に、ロードバランサ機能を持たせた製品です。ロードバランサ機能として、サーバーへの通信を振り分けるバランシングと、暗号化通信の処理を担うSSLオフロードに対応しています。導入から運用、保守まで一括して依頼できる案内があり、設計や運用の属人化に不安がある場合の選択肢の一つです。提供形態はオンプレミスのハードウェアで、企業規模を問わず対応するとされています。
Thunder® ADC (A10ネットワークス株式会社)
- 仮想アプライアンスやベアメタルなど多様な構成に適応
- SSL/TLS暗号処理を高速化し円滑にコンテンツを配信
- Harmony Controllerで全体を俯瞰的に管理
Elastic Load Balancing (アマゾンウェブサービスジャパン合同会社)
- 自動的なスケーリングと高い可用性で安定稼働を実現
- 単独のロードバランサでAWSからオンプレミスまでカバー
- 750 時間/月の無料枠が提供
Azure Load Balancer (日本マイクロソフト株式会社)
- 自動スケーリングによる高い可用性
- リージョンを冗長化しアップタイムを延長
- 750時間分を無料で利用可能
ロードバランサに関するよくある質問
ロードバランサの導入の失敗についてよくある質問と回答をまとめました。
- ■Q1:導入前に最低限そろえておく資料は何ですか?
- A:現在のサーバー構成図、通信の流れ、ピーク時のアクセス記録、止められない時間帯の一覧があると検討が進みます。これらを共有すると、ベンダーも構成や容量の提案をしやすくなります。
- ■Q2:切り替え後にトラブルが出たら、まず何をしますか?
- A:事前に決めた切り戻しの手順と判断基準にしたがい、影響範囲を確認しましょう。原因の調査は、元の構成に戻して利用者への影響を抑えてから進める方法があります。
- ■Q3:導入後の効果は、どのような項目で確かめられますか?
- A:サーバーごとの接続数や応答時間、障害時の切り離しの動作などを、導入前の記録と比べる方法があります。目的に応じて、確認する項目を事前に決めておきましょう。
- ■Q4:構成の見直しは、どのくらいの間隔で行えばよいですか?
- A:決まった周期があるわけではなく、アクセス量の変化やサービスの追加などの節目で見直す方法が基本です。定期的な点検の機会を設け、設定の記録とあわせて確認しましょう。
まとめ
ロードバランサの導入で失敗しないためには、目的と要件の整理、方式や容量の見積もり、移行手順の検証が欠かせません。サーバーダウンや処理の遅れが続く場合は、ボトルネックの位置や設定、冗長構成を順に確認しましょう。導入後は、設定の文書化と複数人での分担により、属人化を避ける体制を整えられます。自社の環境にあう製品を探すため、複数の製品の資料請求から比較を始めてみてください。

