ロードバランサの機能の全体像
ロードバランサの機能は、振り分ける、守る、止めないの3つの目的に整理できます。まず全体像と、種類による機能の違いを押さえておくと、個別の機能を理解しやすくなります。機能名が似ていても内容が異なる場合があるため、目的から整理します。
| 目的 | 主な機能 | 確認したい点 |
|---|---|---|
| 振り分ける | 負荷分散、セッション維持 | 対応する方式の種類 |
| 守る | SSL/TLSの終端処理、WAF | 対応する範囲と追加条件 |
| 止めない | ヘルスチェック、冗長化 | 切り離しと切り替えの条件 |
ロードバランサが担う基本の役割
ロードバランサは、利用者からの通信を受け取り、複数のサーバーに振り分けて処理を分担させる装置やサービスです。1台のサーバーに処理が集中するのを抑え、応答の遅れや停止の影響を小さくする役割があります。
利用者から見ると、複数のサーバーがあっても、1つの窓口にアクセスしているように見えます。サーバーを増やしても窓口が変わらないため、利用者に影響を与えずに処理能力を拡張できる点も、基本的な役割の一つです。
L4とL7で変わる機能の範囲
L4は、IPアドレスとポート番号といった通信の情報をもとに処理する方式です。レイヤーとは、通信を役割ごとに分けた階層のことで、L4は処理が軽く、多くの通信に使える点が特徴です。
L7は、URLやHTTPヘッダー、Cookieといったアプリケーションの内容を見て処理します。ページごとの振り分けやセッション維持、WAFなどの機能は、L7で提供される場合があります。どちらの機能が必要かで、製品の候補が変わります。
提供形態ごとの機能の違い
ハードウェア型、ソフトウェア型、クラウド型で、備わる機能や設定の自由度に違いがあります。専用機器は性能の見通しを立てやすく、ソフトウェア型は設定の自由度が高い製品があります。
クラウド型は、利用する事業者の基盤とあわせて機能が提供されるため、他のサービスと組み合わせやすい場合があります。同じ機能名でも、設定できる範囲は異なるため、提供形態ごとに資料で確認しましょう。確認の際は、自社の運用で使う設定項目に絞ると効率的です。
負荷分散の機能と振り分け方式の選び方
負荷分散は、ロードバランサの中心となる機能です。サーバーへの振り分け方式には複数の種類があり、サーバーの性能やアクセスの特徴にあわせて選ぶ必要があります。どの方式を選ぶかで、サーバーの使われ方や応答の速さが変わる場合があります。
順番や重みで振り分ける静的な方式
ラウンドロビンは、順番にサーバーへ処理を割り当てる基本的な方式です。サーバーの性能が同じで、1回あたりの処理の重さが近い場合に向いています。
性能に差があるときは、重み付けラウンドロビンが選択肢です。性能が高いサーバーに、多くの処理を割り当てられます。
ただし、サーバーの現在の混み具合は考慮しないため、処理の重さに差が大きい場合は偏りが出る場合があります。アクセスの特徴が分かっている場合は、試しやすい方式です。
状況を見て振り分ける動的な方式
最少接続は、その時点でつながっている接続が最も少ないサーバーに割り当てる方式です。処理に時間がかかる通信が混ざる場合でも、偏りを抑えられる可能性があります。
応答時間の短いサーバーを選ぶ方式や、送信元のIPアドレスから振り分け先を決める方式もあります。製品によって対応する方式は異なります。
自社のアクセスの特徴に近い方式を、試験で比べて選ぶと安心です。動的な方式は、計測のための処理が加わる点にも留意しましょう。
方式を選ぶときの確認点
方式を選ぶ際は、サーバーの性能がそろっているか、処理の重さにばらつきがあるか、同じ利用者を同じサーバーに保つ必要があるかを確認します。この3つで、候補の方式が絞られます。
あわせて、方式を後から変更できるか、サーバーごとに個別の重みを設定できるかも比較しましょう。運用を始めてから、アクセスの傾向が変わる場合もあるため、変更の柔軟さは大切な判断材料です。試験運用で、実際の偏りを確かめることも有効です。
ロードバランサのヘルスチェックとセッション維持の機能
ヘルスチェックは障害のあるサーバーを外し、セッション維持は利用者の通信を同じサーバーに保つ機能です。サービスの安定した提供に欠かせない2つの機能を整理します。いずれも設定の内容が運用に影響するため、確認点をあわせて見ていきます。
ヘルスチェックの種類と確認の深さ
ヘルスチェックとは、サーバーの応答を定期的に確かめ、異常なサーバーを振り分けの対象から外す機能です。確認の方法には、機器の生存を確かめるもの、通信ポートの接続を確かめるもの、Webの応答の内容を確かめるものがあります。
確認が深いほど、アプリケーションの不具合も検知できる場合があります。ただし、確認用のページの準備が必要な場合もあります。確認の間隔や、異常と判断する回数も、製品によって設定できる範囲が異なります。
障害サーバーの切り離しと復帰
異常を検知すると、そのサーバーを振り分けの対象から外し、正常なサーバーだけで処理を続けます。復旧後は、自動または手動で振り分けの対象に戻します。
自動で戻す場合は、復旧直後に不安定な状態のサーバーへ処理が集中しないよう、段階的に戻せるかを確認しましょう。異常を検知したときに管理者へ通知できるかも、運用の観点で重要です。
切り離しの履歴が残る製品もあります。復帰の判断に使う条件は、切り離しの条件と別に設定できる製品もあります。
セッション維持の方式
セッション維持(パーシステンス)とは、同じ利用者の通信を同じサーバーに振り分け続ける機能です。ログイン状態や買い物かごの中身をサーバーが保持している場合に必要になります。
方式には、送信元のIPアドレスで判断するものと、Cookieを利用するものがあります。同じ会社の拠点から大量にアクセスがあると、IPアドレスでの判断では偏りが出る場合があります。
システムの作りにあわせて方式を選びましょう。サーバーが停止した際に、セッションが失われる点も留意が必要です。
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SSL/TLS終端処理とWAFなどの保護機能
通信の暗号化の処理や、Webアプリケーションに対する攻撃の対策も、ロードバランサが担える場合があります。それぞれの機能の役割と、導入時の注意点を整理します。いずれも、ロードバランサの機種や契約によって対応が異なります。
SSL/TLS終端処理の仕組み
SSL/TLSは、通信を暗号化する仕組みです。終端処理とは、ロードバランサが暗号化された通信を受け取って復号する処理で、SSLオフロードとも呼ばれます。
サーバー側の暗号処理の負担を減らせる場合があります。証明書の管理は、運用の手間にも関わります。
ロードバランサとサーバーの間は、暗号化されない通信になる場合があります。社内のセキュリティ方針によっては、再度暗号化して送る構成が必要です。その場合は、対応する機能があるかを確認しましょう。
証明書に関する機能の確認
終端処理を行う場合は、ロードバランサに証明書を登録して管理します。複数のドメインを扱う場合に、1台で複数の証明書を使い分けられるかが確認点です。
証明書の有効期限の通知や、更新の支援機能があるかも、運用の負担に関わります。対応する暗号方式の範囲や、古い方式を無効にできるかも比較しましょう。
設定を誤ると接続できなくなるため、変更前の確認手順も決めておきます。ほかの機能とあわせて、管理画面で一覧できると運用しやすくなります。
WAFの機能と位置づけ
WAFとは、Webアプリケーションへの攻撃を検知し、遮断する仕組みです。SQLインジェクションなどの攻撃を、通信の内容から見つけて防ぐ用途で使われます。ロードバランサに搭載される製品もあります。
ただし、WAFは設定や運用によって、検知の漏れや、正常な通信を遮断する誤検知が起こる場合があります。アプリケーション自体の対策とあわせて使い、ログを確認する体制も整えましょう。追加ライセンスが必要かも確認が必要です。
冗長化の機能と比較時の確認項目
ロードバランサが止まると、その先のサービスに通信が届かなくなる場合があります。ロードバランサ自体を冗長化する機能と、機能を比較する際の確認項目を整理します。構成ごとの特徴と、設計時の考え方を順に見ていきましょう。
アクティブ・スタンバイ構成
アクティブ・スタンバイ構成は、通常は1台が処理を担い、もう1台が待機する構成です。稼働中の機器が故障すると、待機中の機器に切り替わって処理を引き継ぎます。
切り替えの際に、接続中の通信が維持されるかは、製品によって異なります。設定情報を2台のあいだで同期する機能があるかも確認しましょう。
待機側は通常時に処理をしないため、費用の面での検討も必要です。切り替えにかかる時間の目安を、資料や試験で確かめましょう。
アクティブ・アクティブ構成
アクティブ・アクティブ構成は、2台が同時に処理を担う構成です。通常時の処理能力を高められる一方、1台が故障した場合は、残る1台で全体の処理をまかなう必要があります。
そのため、1台で処理できる容量に余裕があるかが、設計のポイントです。構成が複雑になるぶん、設定や検証の手間も増えます。故障時の動作は、事前に検証しておくと安心です。
自社の運用体制で扱えるかも、あわせて検討しましょう。片系の故障を想定した試験が可能かも、確認したい項目です。
機能を比較するときの確認項目
ここまでの機能を比較する際は、同じ観点で製品に質問すると、違いが見えやすくなります。機能名が同じでも、できる範囲が異なる場合があります。
質問は、自社が使う機能に絞ると、回答を比べやすくなります。回答はそろえて記録し、後で見比べられるようにします。
- ■負荷分散
- 対応する方式と、後から変更できるか
- ■ヘルスチェック
- 確認の種類と、異常時の通知や復帰の条件
- ■セッション維持
- 対応する方式と、偏りへの対処
- ■SSL/TLSとWAF
- 終端処理の範囲と、追加費用や追加ライセンスの有無
- ■冗長化
- 対応する構成と、切り替え時の通信の扱い
上の項目を表にまとめ、回答を記録しておくと比較しやすくなります。不明な点は、デモや無料トライアルで実際の動作を確かめましょう。
複数人で確認すると、見落としを減らせます。社内で検討する際の根拠資料としても役立ちます。
主な負荷分散機能を備えた製品
負荷分散や暗号化通信の処理など、この記事で解説した機能に関わる製品を紹介します。
ビジネスセキュリティ(VSR)nシリーズ
- 業界最多クラスのセキュリティ機能の中から独自のカスタムが可能
- 管理者負担軽減!導入から運用、保守まですべて一括対応。
- 24時間365日の障害検知・切り分けから復旧対応までサポート!
株式会社 USEN ICT Solutionsが提供する「ビジネスセキュリティ(VSR)nシリーズ」は、UTMにロードバランサの機能を持たせた製品です。対応するロードバランサの機能は、サーバーへ通信を振り分けるバランシングと、暗号化された通信をロードバランサで処理するSSLオフロードです。そのほかの機能が必要な場合は、対応の可否を個別に確認しましょう。提供形態はオンプレミスのハードウェアで、運用監視や保守の依頼範囲もあわせて確認できます。
Cloud Load Balancing (グーグル合同会社)
- 自動スケーリングで最適な負荷分散を実現
- SSLオフロードで高速かつ安全なサービス提供を支援
- 無料トライアルあり
Thunderシリーズ (A10ネットワークス株式会社)
- SSL/TLSオフロード、DDoS防御、WAF機能を標準サポート。
- Harmony Controller連携でオンプレ・クラウド環境を一元管理
- FlexPoolライセンスで複数のインスタンス間で帯域を共有可能
BIG-IP Local Traffic Manager(LTM) (エフファイブ・ネットワークス・ジャパン合同会社)
- トラフィックをリアルタイムに監視
- TCPとコンテンツオフロードでページ読み込み時間を大幅短縮
- クラウドやハードウェアなど複数の導入形態に対応
ロードバランサに関するよくある質問
ロードバランサの機能についてよくある質問と回答をまとめました。
- ■Q1:L4とL7は、どのように使い分けますか?
- A:通信の内容までは見ず、軽い処理で振り分けたい場合はL4、URLやCookieなどを見て振り分けたい場合はL7が候補です。必要な機能がどちらで提供されるかを確認しましょう。
- ■Q2:セッション維持は、必ず必要な機能ですか?
- A:必須とは限りません。ログイン状態や買い物かごなどをサーバーが保持している場合に必要になります。システムの作りを確認し、必要な場合は方式を選びましょう。
- ■Q3:SSL/TLSの終端処理をロードバランサで行うと、安全性は下がりますか?
- A:ロードバランサとサーバーの間の通信が暗号化されなくなる場合があります。社内の方針によっては、再度暗号化する構成が必要です。対応する機能を確認しましょう。
- ■Q4:WAFがあれば、アプリケーションの対策は不要ですか?
- A:不要にはなりません。WAFには検知の漏れや誤検知が起こる場合があるため、アプリケーション自体の対策とあわせて使いましょう。ログを確認する体制も必要です。
まとめ
ロードバランサの機能は、振り分ける、守る、止めないの3つの目的で整理できます。負荷分散の方式、ヘルスチェック、セッション維持、SSL/TLSの終端処理、WAF、冗長化は、製品によって対応する範囲が異なります。自社に必要な機能を絞ったうえで、確認項目をそろえて、複数の製品の資料請求で比較してみてください。

