メールセキュリティが検討される背景
導入場面を見る前に、どのような困りごとが起点になるのかを押さえておきましょう。課題が自社と重なるかどうかが、事例を参考にする際の目安になります。
メールをめぐって生じやすい課題
メールは社外との連絡に欠かせない手段である一方、外部からの働きかけを受け取る入り口にもなります。業務に関係があるように見せかけた文面で添付ファイルを開かせようとする手口や、取引先を装って振込先の変更を求める手口が知られています。
送信する側でも課題が生じます。宛先の候補から誤った相手を選んでしまう、添付ファイルを取り違えるといった事態は、注意だけで完全に防ぐことが難しい領域です。自社のドメインを装ったメールが第三者から送られ、取引先に混乱が生じる場合もあります。
対策で変わる運用
メールセキュリティの仕組みを入れると、受信の段階で不審なメールを判定して隔離する、送信の前に宛先や添付を確認する工程を挟むといった運用が可能になります。判定の結果や送受信の記録が残るため、確認が必要になった際の調査もしやすくなります。
ただし、対策を加えるとメールが届くまでの時間や送信の手順に影響が出ます。どこまでを仕組みで止め、どこからを人の確認に委ねるかの設計が求められます。この設計が業務との折り合いを左右します。
課題から見た導入場面
事例で語られる導入の目的は、大きく三つに分かれます。それぞれで求められる機能が異なります。
標的型攻撃メールへの対策
特定の企業を狙い、業務に関係があるように装って送られるメールへの備えです。添付ファイルやリンクを検査する仕組み、送信元の情報を確認する仕組みが使われます。
あわせて、従業員が不審なメールを受け取った際に報告する経路を整えることも対策の一部です。訓練用のメールを送って対応を確認する取り組みを行う企業もあります。技術的な検査と運用面の備えを組み合わせる考え方が現実的で、どちらか一方だけでは対応しきれない領域といえます。
誤送信への対策
宛先の取り違えや添付ファイルの誤りを防ぐための備えです。送信の前に確認の画面を挟む、一定時間送信を保留して取り消せるようにする、社外宛の送信に上長の承認を求めるといった仕組みが使われます。
対策を強めると送信までの手順が増えるため、業務の速さとの兼ね合いが生じます。すべてのメールを対象にするのか、社外宛や添付付きに限るのかといった線引きが検討点になります。部署によって設定を変えられるかも、確認しておきたい項目です。
なりすましと到達性への対策
自社のドメインを装ったメールへの備えと、自社から送るメールが相手に届くようにする取り組みです。SPFやDKIM、DMARCといった送信ドメイン認証の設定が中心になります。
これらはDNS上の登録によって行うもので、設定の状況によっては正規のメールでも受け取り側の扱いが変わる場合があります。届かないという相談を受けた際は、送信の記録を確認して相手のサーバまで渡ったかを調べ、そのうえで認証の設定を見直すという順で切り分けると原因に近づけます。
導入の形態から見た違い
どのような形で対策を組み込むかによって、必要な作業も費用も変わります。二つの形を確認します。
既存のメール環境に追加する形
現在使っているメール環境はそのままに、対策の仕組みを前後に加える形です。受信の経路に検査の工程を挟む構成や、送信の前に確認を行う仕組みを追加する構成が該当します。
メールアドレスや利用者の運用を変えずに済むため、切り替えに伴う影響を抑えやすくなります。一方で、既存の環境と組み合わせられるかは事前の確認が必要です。現在の構成を伝えたうえで、対応の可否と必要な設定変更を確かめておきましょう。
メール環境ごと切り替える形
対策の機能を含んだメールサービスへ移行する形です。受信と送信の対策が一つの環境にまとまるため、管理する対象を減らせます。
一方で、過去のメールの移行や利用者への案内といった作業が発生します。移行できる範囲と所要期間、切り替えに伴う停止時間を事前に確認しておく必要があります。件数が多い組織では、この作業量が計画を左右します。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でメールセキュリティの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
導入事例を読み解く際の着眼点
公開されている事例をそのまま自社に当てはめると、想定と異なる結果になることがあります。読む際に確認したい点を二つ挙げます。
対策の範囲と前提条件の確認
不審なメールが減ったという記述があっても、どの対策によるものかは事例によって異なります。検査の仕組みだけでなく、従業員への周知や報告経路の整備を同時に進めている場合もあります。
何を変えた結果なのかを分けて読むと、自社で再現できる部分が見えてきます。導入前の状態、対象とした利用者数、扱っていたメールの件数も照らし合わせましょう。前提が大きく異なる事例は、参考にする範囲を限定して読むことが求められます。
業務への影響と運用体制
対策を加えると、メールが届くまでの時間や送信の手順に影響が出ます。事例では効果が中心に語られますが、現場でどのような調整を行ったかまで書かれているとは限りません。
隔離されたメールを誰が確認して解放するのか、判定が誤っていた場合にどう対処するのかといった運用は、導入後の負担に直結します。担当者一人に確認が集中する体制では対応が滞るため、複数人で扱える仕組みを前提に検討しましょう。
自社に当てはめる進め方
事例を踏まえて検討を進める際の手順を整理します。守りたい対象を決めるところから始めましょう。
守りたい経路と対象の整理
最初に、どの課題を優先するのかを決めます。受信側の脅威なのか、送信時の誤りなのか、なりすましへの備えなのかによって、必要な機能が変わります。すべてを一度に整えようとすると費用も工数も膨らみます。
あわせて、対象となる利用者の範囲も整理しましょう。全社を対象にするのか、社外とのやり取りが多い部署から始めるのかによって、規模の想定が変わります。過去に起きた出来事や、取引先から求められている水準があれば、それも判断の材料になります。
既存環境との適合性の確認
現在利用しているメール環境と組み合わせられるかを確認します。クラウドのメールサービスを使っている場合、対応の可否や必要な設定変更は製品によって異なります。
可能であれば、一部の利用者を対象に試用し、実際の業務で影響を確かめる進め方が確実です。判定が厳しすぎて必要なメールが届かない、送信の手順が煩雑で業務が滞るといった点は、試用の段階で見えてきます。専門的な判断が必要な部分は情報システム部門やベンダーに相談しましょう。
費用とサポート範囲の確認
料金は、利用者数に応じた月額制、機能ごとの追加契約、初期費用と月額の組み合わせなど、製品によって考え方が異なります。複数の機能を組み合わせる場合は、総額で比べることが必要です。
サポートについては、どこまで対応してもらえるのかを具体的に確かめます。操作方法の案内にとどまるのか、初期設定や送信ドメイン認証の設定を支援してもらえるのかは製品ごとに差があります。メールが届かない状況は業務に直結するため、障害時の連絡手段と対応時間帯も確認しておきましょう。
メールセキュリティ対策に対応した製品
課題別の対策にあわせて検討できる、メールセキュリティ製品を紹介します。
IIJセキュアMXサービス
- 多層フィルタによってあらゆる脅威を強力ブロック
- 脅威対策と誤送信対策をワンストップに実現
- Microsoft 365 と連携し、セキュリティ機能を強化
株式会社インターネットイニシアティブが提供する「IIJセキュアMXサービス」は、迷惑メール対策とウイルスチェックを扱うクラウド型のサービスです。既存のメール環境に組み合わせて導入でき、受信側の対策を強化したい場合に選ばれています。
企業ロゴ付きメール(BIMI)
- なりすましの防止:メールの信頼性を "見える化"
- 開封率の向上:正規送信元を表す 信頼性を向上
- ブランド想起の強化:ロゴ表示で ブランド想起強化
GMOブランドセキュリティ株式会社が提供する「企業ロゴ付きメール(BIMI)」は、送信ドメイン認証の設定を整えたうえで、自社のロゴをメールに表示する仕組みです。なりすましメールとの見分けをつけやすくする効果が期待され、送信側のなりすまし対策として活用されます。
DMARC/25Analyze (株式会社TwoFive)
- SPF/DKIM/DMARCの自動設定と解析機能
- 偽装メール検知:送信元IPアドレスレピュテーションチェック
- ドメインなりすまし・偽装をリアルタイムで検知
メールセキュリティに関するよくある質問
導入を検討する担当者から寄せられることの多い質問と回答をまとめました。
- Q1: どの対策から着手すべきですか?
- 過去に起きた出来事や、業務で扱う情報の性質によって優先順位が変わります。受信側の脅威が心配なら検査の仕組み、送信時の誤りが課題なら確認の工程が候補になります。現在の課題を整理してから判断するとよいでしょう。
- Q2: 対策を入れれば不審なメールは届かなくなりますか?
- 届く件数を減らす効果は期待できますが、すべてを止められるわけではありません。手口は変化するため、従業員が不審なメールに気づいた際の報告経路もあわせて整えることが望まれます。
- Q3: 誤送信対策は業務の速さに影響しませんか?
- 確認の工程が加わるため、手順は増えます。対象を社外宛や添付付きに限る、部署によって設定を変えるといった方法で影響を抑えられる場合があります。実際の業務の流れを伝えたうえで相談しましょう。
- Q4: 導入までにどのくらいの期間がかかりますか?
- 対策の範囲と既存環境との関係によって幅があります。既存環境に機能を追加する場合は短期間で始められる一方、メール環境ごと切り替える場合は移行の作業を含めて時間を要します。試用期間を設けた計画を立てましょう。
まとめ
メールセキュリティの導入事例では、標的型攻撃メールへの対策、誤送信への対策、なりすましと到達性への対策という三つの課題ごとに使われ方が分かれます。導入の形も、既存環境に追加する形と環境ごと切り替える形で必要な作業が変わります。事例を読む際は、効果の前提となる対策の範囲と、業務への影響や運用体制まで確認しましょう。守りたい経路を整理したうえで、既存環境との適合性や費用、サポートを比べることをおすすめします。

