業種によってストレスチェックの懸念が変わる背景
業種が違えば、受検しやすい時間や場所も変わります。業種別の懸念点を見る前に、共通する要因と、制度上の考え方を確認しておきましょう。主な懸念点は、次の表のとおりです。
| 業種 | 主な懸念点 | 確認したい対応 |
|---|---|---|
| 製造業 | 交替勤務で受検の時間が合わない | 受検期間の長さと時間帯の設定 |
| 建設業 | 現場の移動で回答の環境が定まらない | スマートフォンでの回答の可否 |
| 運輸業 | 乗務中は受検できず拠点も分散する | 営業所ごとの進捗管理 |
| 医療法人 | 夜勤者に案内が届かない場合がある | 案内の方法と守秘の配慮 |
懸念につながる3つの共通要因
運用がうまくいかない背景には、勤務時間、働く場所、端末環境の3つの要因があります。交替勤務の人は受検期間に時間を確保しにくく、現場で働く人はパソコンを使えない場合があります。さらに、勤務先の拠点が複数あると、案内の方法も統一しにくくなります。
これらは、ツールだけでなく、社内の運用ルールや受検の案内方法にも左右されます。製品側、利用者側、社内の仕組みなど、複数の要因を切り分けて考えることが大切です。原因を一つに決めつけないことが、改善の近道です。
労働時間内の受検の考え方
厚生労働省の指針では、ストレスチェックの実施に必要な時間は、労働時間として扱うことが望ましいとされています。受検のために休憩時間や勤務時間外を使わせる運用は、避けましょう。時間の扱いは、社内でも明確にしておくと安心です。
受検は労働者の義務ではなく、受検しないことを理由に不利益な扱いをしてはなりません。業種の特性に応じて、無理なく受検できる時間と場所を用意することが、受検率の向上にもつながります。
製造業の交替勤務で懸念される受検時間の確保
製造業では、工場の稼働にあわせて交替勤務を採用している職場があります。受検の案内や受検時間の設定が勤務の状況にあわないと、受検率が下がるなど、運用に支障が出る場合があります。ここでは、時間、環境、受検勧奨の3点を見ていきます。
交替勤務による受検期間のずれ
昼勤と夜勤が交代する職場では、同じ受検期間でも、回答できる時間帯が人によって異なります。期間が短いと、休みや夜勤の日程と重なり、受検の機会を逃す人が出る可能性があります。夜勤が続く週は、特に回答の時間をとりにくくなります。
受検期間を勤務のサイクルより長く設定し、どのシフトの人も一度は出勤する期間を確保しましょう。期間の延長や、未受検者への再案内が簡単にできるかも、ツールの確認ポイントです。
共用端末と現場での回答環境
生産ラインで働く人は、個人のパソコンを持たない場合があります。休憩室などに共用の端末を置く方法や、スマートフォンで回答する方法を、事前に検討しておく必要があります。
共用端末で回答する場合は、画面を他の人にのぞかれない配置への配慮が必要です。回答後にログアウトする手順も周知しましょう。受検の時間に端末が空いているかを、シフト表と照らして確認し、紙の調査票を併用できるかも製品ごとに確かめておくと安心です。
班長や管理職を通じた受検勧奨の注意
受検率を高めるため、班長や管理職が部下に受検を促す場面があります。受検したかどうかを確認して声をかけること自体は可能ですが、受検を強制する働きかけは避けなければなりません。
管理職が、部下の結果を見られる設計になっていないかも確認が必要です。結果は本人の同意なく事業者に提供できないため、閲覧できる人の範囲をツールの権限設定で限定しましょう。班長などの現場リーダーにも、取り扱いのルールを周知します。
建設業の現場移動と雇用の線引きに関する懸念
建設業では、勤務する現場が工事ごとに移動し、複数の会社の人が同じ現場で働きます。受検環境と、誰が対象になるのかの整理が、運用上の大きな論点です。現場の状況を踏まえ、順に確認していきましょう。
現場の移動による受検環境の不安定さ
現場に直行直帰する人は、会社のパソコンを使う機会が限られます。現場事務所のネットワーク環境も、工事の進み具合によって変わる場合があります。受検の案内が届いても、回答する環境がない状態になりかねません。
個人のスマートフォンで回答できるツールなら、場所を選ばずに受検しやすくなります。個人の端末を使う場合は、利用の可否を社内で決め、通信費の扱いも整理しておきましょう。電波の届きにくい場所でも、後から回答できるかを確かめると安心です。
協力会社の作業員の実施主体
ストレスチェックは、事業者が自社で雇用する労働者に対して実施します。協力会社の作業員は、それぞれの雇用主が実施する立場にあるため、元請の対象とは限りません。派遣労働者の扱いも、派遣元との確認が必要です。
誰が対象かを整理しないまま導入すると、対象者の登録に漏れや重複が生じる可能性があります。雇用形態ごとの扱いは、社会保険労務士などの専門家に相談して確認しましょう。受検案内の宛先も、この整理にあわせて決めます。
事業場の単位と実施者の手配
建設業は、本社と複数の支店、各現場に従業員が分かれています。義務の対象かどうかは事業場ごとの人数で判断するため、自社の事業場の単位を労働基準監督署などに確認しておきましょう。
実施者となる医師や保健師の手配も、拠点が分散すると負担が増えます。外部の機関に実施者の手配を依頼できるサービスもあるため、対応範囲を各社に確認してください。事業場ごとに担当者を置く場合は、結果を扱える人が重複しないよう、役割も整理しておきましょう。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料請求して、さまざまな製品の機能や特徴を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でストレスチェックの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
運輸業の乗務と拠点分散への備え
運輸業では、乗務や配送で社外にいる時間が長く、営業所も各地に分かれます。運行の安全に影響しない受検の仕組みと、拠点ごとの管理の工夫を整理します。乗務員の勤務状況にあった設計が必要です。
乗務中は受検できない時間帯がある
運転中の受検はできません。休憩や待機の時間、運行の前後など、安全に回答できるタイミングを確保する必要があります。運転中に受検案内が届く設定は避け、運行管理者とも時間帯を相談しておくと安心です。
回答にかかる時間が短い調査票を選べるか、途中で中断して再開できるかも確認しましょう。受検に使う時間は労働時間として扱うことが望ましいため、業務の組み方も調整が必要です。例えば、運行の合間の待機時間や、点呼の前後に回答の時間を設ける方法があります。
営業所が分散し進捗を把握しにくい
営業所が各地にある会社では、本社から拠点ごとの受検状況が見えにくくなります。受検率の低い営業所を把握できないと、期間の終盤まで未受検者への案内が遅れる可能性があります。
拠点ごとの進捗をリアルタイムで確認できる機能があると、早めに声かけができます。拠点の管理者に結果の閲覧権限を与えすぎないよう、権限の設定も確認しましょう。例えば、営業所長には受検率だけを表示し、個人ごとの結果は見せない設定が考えられます。
長期の不在で案内が届かない
長距離の運行や休暇で不在の間に、受検案内のメールを見逃す人がいます。案内が届かない原因は、メールの設定、個人のアドレスの誤り、確認する習慣がないことなど、複数考えられます。
案内はメールだけでなく、点呼の際の口頭連絡も併用しましょう。未受検者に自動で再通知される機能や、休暇明けを見込んだ期間の延長ができる機能があると、取りこぼしを減らせます。受検期間の終了前に、未受検者の一覧を営業所の管理者へ共有する方法も有効です。
医療法人の夜勤者対応と共通する対策
医療法人では、夜勤を含む交替勤務に加え、職員の守秘への配慮が重要です。夜勤者への案内と、業種を問わず確認したい項目を整理します。ここまでの内容の振り返りとして活用してください。
夜勤者に受検案内が届かない場合
夜勤者に案内が届かない場合、メールの確認ができない勤務時間帯、院内での個人端末の利用制限、案内の送信タイミングなど、複数の要因が考えられます。ツールの不具合と決めつけず、要因を切り分けましょう。
夜勤明けや休みの日に受検案内が届く設定は、確認が遅れる原因です。受検期間を長めにとり、病棟の掲示や申し送りでも周知する方法があります。例えば、夜勤の開始直後の落ち着いた時間帯に、数分間の回答時間を勤務内に確保することも検討しましょう。
院内の職員が担当する場合の守秘
医療法人では、院内の医師や看護師が実施者や実施事務従事者を担う場合があります。同僚の結果を扱うことになるため、守秘の徹底と、職員が結果を閲覧できる範囲の限定が重要です。職員同士が顔見知りであるため、情報の漏えいに特に注意が必要です。
人事権をもつ立場の人は、結果を扱う役割に就けません。結果の閲覧履歴が残るか、権限を細かく設定できるかを、ツールで確認しましょう。実施事務従事者は少人数に絞り、守秘に関する誓約を交わしておくと、職員の不安を和らげられます。
業種を問わず確認したい項目
業種が違っても、確認したい項目には共通点があります。次の項目を各社に質問し、回答を同じ書式で記録しておくと、比較しやすくなります。現場の従業員の意見も、質問の参考にしてください。
自社の業種で特に重要な項目から確認すると、効率的です。複数の拠点がある場合は、拠点ごとの勤務の実情を聞き取り、質問に反映しましょう。例えば、交替勤務が中心なら受検期間の設定、現場が移動するなら端末の対応を優先しましょう。
- ■受検期間
- シフトにあわせて期間の設定や延長ができるか
- ■回答の端末
- スマートフォンや共用端末での回答に対応しているか
- ■案内と再通知
- 未受検者へ自動で再通知でき、送信の履歴が残るか
- ■進捗の管理
- 拠点や部署ごとに受検状況を確認できるか
- ■権限
- 結果を閲覧できる人を限定できるか
現場の働き方にあわせて選ぶ製品
交替勤務や現場勤務など、働き方の違いに配慮した受検や相談の仕組みを持つ製品を掲載します。
ファースト・ストレスチェック
- 厚労省準拠の57項目版と80項目版をWebと紙で受検可能
- 20言語での回答に対応
- 集団分析や高ストレス者への面談など、アフターケアも対応
株式会社マイシェルパが提供する「ファースト・ストレスチェック」は、Web受検と紙の受検の両方に対応するストレスチェックサービスです。パソコンを使いにくい現場でも、就業環境にあわせて受検方法を選べます。多言語での回答にも対応し、未受検者にはシステムから督促メールを送れるため、期間中の進捗管理にも役立ちます。PCとスマートフォンの両方で利用でき、実施後は集団分析や個別相談窓口も利用できる点も、現場での運用を検討する際の材料です。
Smart相談室
- どんな悩みも歓迎!相談されやすい外部相談窓口(EAP)
- 0次予防から3次予防までSmart相談室だけで完結
- 初めての人でも安心、利用しやすいサービス設計
株式会社Smart相談室が提供する「Smart相談室」は、オンラインカウンセリングや医師への相談など、対人支援をワンストップで提供する従業員支援サービスです。スマートフォンとPCのどちらからでも利用でき、希望の条件からカウンセラーを選べます。ストレスチェックにも対応しており、勤務地や勤務時間が分かれる職場で、相談しやすい社外窓口を整える際の選択肢です。医師面談や個別相談窓口にも対応しているため、相談の入口を複数用意したい場合に役立ちます。
ティーペックの健康・医療サポート (ティーペック株式会社)
- 専門家が24時間365日対応。
- 全国4拠点コンタクトセンター、BCP対策済
- 英語・中国語対応、Web/チャットボット相談を追加可能
ピースマインドのEAP(従業員支援プログラム) (ピースマインド株式会社)
- 心理学や行動科学を用いて課題を解決する
- 専門家による相談サービス
- メンタルヘルスと業務効率の向上を支援。
ストレスチェックに関するよくある質問
ストレスチェックの業種別の懸念点についてよくある質問と回答をまとめました。
- ■Q1:交替勤務の従業員が受検できなかった場合は、どう対応しますか?
- A:受検は義務ではないため、強制せず、受検期間の延長や勤務内の時間確保を検討しましょう。未受検者へ再度案内を送る方法もあります。受検しないことを理由とした不利益な扱いはできません。
- ■Q2:パートや派遣など、雇用形態が異なる人も対象ですか?
- A:対象は、事業者が雇用する労働者のうち条件を満たす人です。派遣労働者は派遣元が実施する立場にあるなど、扱いが異なる場合があります。詳細は専門家や労働基準監督署に確認しましょう。
- ■Q3:個人のスマートフォンで回答してもらっても問題ありませんか?
- A:利用の可否や通信費の扱いは、社内のルールで決めましょう。端末に結果が残らないか、ログアウトの手順を周知しているかも確認が必要です。
- ■Q4:小規模な拠点では、どのように守秘を保てばよいですか?
- A:結果を見られる人を実施者や実施事務従事者に限り、権限を設定しましょう。少人数の拠点は結果から個人が推測されやすいため、集計や共有の方法にも配慮が必要です。
まとめ
ストレスチェックの懸念点は、業種ごとの勤務時間、働く場所、端末環境の違いから生じます。製造業と医療法人では交替勤務への対応、建設業では現場の移動と雇用関係の整理、運輸業では乗務中の配慮と拠点の管理が重要です。自社の業種にあう製品を選ぶため、複数の製品の資料を請求して比較してみてください。

