メンタルヘルス対策の課題
職場の現状なども踏まえ、メンタルヘルス対策の課題を解説します。
ストレスの程度や要因の正確な把握が難しい
人間は仕事・職場やプライベート、さまざまな場面でストレスを感じています。多くの人が仕事・職場で感じる代表的なストレスは、次のとおりです。
- ・仕事の量や内容
- ・職場環境
- ・ポジション
- ・情報の流れ
- ・ハラスメント
- ・在宅ワーク
プライベートでは、次のようなストレスが挙げられます。
- ・恋愛
- ・夫婦間の関係
- ・子育て
- ・介護
- ・近所付き合い
- ・サークル
うまくストレスを解消できずにメンタル不調が続くと、心の健康維持が難しくなることもあります。心の健康問題は誰にでも起こりうることですが、そのレベルは個人差が大きいです。また要因となるストレスも個人により異なるため、正確に把握することは困難です。
プライバシーの保護が重要となる
プライバシーの保護も課題として挙げられます。心の健康状態はプライバシー情報のため、企業は従業員の健康状態を安全かつ適切に保管しなければなりません。プライバシー保護に不安があると、企業は従業員の信頼を失い、職場でのメンタルヘルス対策が機能しなくなる恐れもあります。
健康状態を開示する場合は、従業員の意思を確認し了解を取り、適切な人にのみ伝えましょう。
このように、従業員の意思を尊重し、メンタルヘルスケアを受けられる環境づくりが大事です。
人手不足や連携の失敗で適切にケアできない
厚労省の調査によれば、100人以上5,000人未満の事業所では、メンタルヘルス対策を実施していない理由として「専門スタッフがいない」の割合がもっとも高くなっています。企業に取り組む意欲があっても、人手が不足していれば実現は困難でしょう。
また、メンタルヘルス対策のために、職場環境・組織の変更や人事異動などが必要となることがあります。これは、職場の環境が従業員のメンタルを大きく左右するためです。したがって、人事労務管理部門と連携して対応しないと失敗する可能性があります。
参考:結 果 の 概 要 |厚生労働省
メンタルヘルス対策で活用できるサービス
何からはじめたらいいのかわからない、基本的な情報や知識を得たいという人には、サービスの利用がおすすめです。企業が活用できるサービスを紹介します。
こころの耳
「こころの耳」は厚労省が管轄するメンタルヘルス・ポータルサイトです。ポータルサイトとは、さまざまな情報やコンテンツの入り口となるWebサイトのことです。
メンタルヘルスに関するあらゆる情報や、電話・メール・SNSでの相談窓口が用意されています。事業者だけに限らず、従業員向けのコンテンツやリーフレットも充実しています。メンタルヘルスに興味のない従業員に対する啓発、自身のセルフケアに役立つでしょう。
このポータルサイトの対象者は以下のとおりです。
- ・働く方
- ・ご家族
- ・事業者
- ・部下をもつ方
- ・支援する方
提供するコンテンツは以下のようなものです。
- ・動画
- ・企業の取り組み方事例
- ・こころの病克服体験記
- ・Q&A
- ・各種冊子パンフレット
- ・研修の紹介
さらに、職場で必要となる以下のような最新情報も提供しています。
- ・ストレスチェック制度の導入や実施に役立つポイント
- ・職場環境改善に役立つツール
参考:こころの耳|厚生労働省
産業保健総合支援センター
「産業保健総合支援センター」は通称「さんぽセンター」と呼ばれています。全国47都道府県に設置され、独立行政法人労働者健康安全機構による運営です。経験豊富な専門スタッフが、事業場内にいる産業医・衛生管理者・産業看護職・人事労務担当者などの産業保健関係者を支援します。料金は原則無料です。
メンタルヘルス対策をはじめとする産業保健に関する、相談・研修・情報提供などを行っています。次のようなセミナーも開催しています。
- ・事業主を対象とした経営観点からの産業保健の課題と対策
- ・労働者を対象とした啓発
事業場内に専門スタッフがいない場合や、専門スタッフを育成するためにも有効活用できます。
参考:産業保健総合支援センター(さんぽセンター)|独立行政法人労働者健康安全機構
地域産業保健センター
「地域産業保健センター」は通称「地さんぽ」と呼ばれています。独立行政法人労働者健康安全機構が運営し、おおむね監督管轄区域に設置されています。労働者数50人未満の企業やそこで働く労働者へ、以下の産業保健サービスを原則無料で提供している場所です。
- 1.長時間労働者への医師による面接指導の相談
- 労働安全衛生法で定められた、長時間労働者への医師による面接指導の相談にのります。
- 2.健康相談窓口の開設
- 健康診断結果に基づいた健康管理、メンタルヘルスなどについて医師や保健師が相談に応じます。
- 3.個別訪問による産業保健指導の実施
- 医師が希望する事業場を訪問し、指導、助言を行います。
- 4.産業保健情報の提供
- 地域の産業保健機関の情報提供を行います。
このほか、労働者の健康管理や産業保健に関する相談を受け付けています。
参考:地域窓口(地域産業保健センター)|独立行政法人労働者健康安全機構
厚労省が提示する基本対策「4つのケア」とは
厚労省はメンタルヘルスの基本対策として「4つのケア」を推奨しています。「4つのケア」について解説します。
セルフケア
従業員自身が行うケアです。自分でメンタルヘルス対策を行うためには、正しい知識が必要です。企業はメンタルヘルスの情報提供や研修を行う必要があります。従業員が自分のストレスに気づくために、ストレスチェックの受講も有効です。
ラインによるケア
職場の管理監督者が行うケアです。管理監督者は、日頃から職場環境に目を配り、部下のちょっとした変化にいち早く気づくことが大事です。遅刻・早退・欠勤などは明確な変化ですが、目つき・顔色・言動など不明確な変化もあります。
部下に何か変化があれば、相談の上で職場環境の改善に努めましょう。産業医・保健師など産業保健スタッフと一緒に対応すると良いです。
事業場内の産業保健スタッフなどによるケア
事業場内にいる産業医・保健師など産業保健スタッフによるケアです。50人以上の事業場には産業医の選任義務があります。産業保健スタッフの役割は、セルフケアとラインによるケアのサポートです。
専門的知識をもつ産業保健スタッフと人事総務部門のスタッフが連携し、メンタルヘルス対策の企画立案や推進を行います。
事業場外資源によるケア
事業場外の専門的な機関やサービスを活用したケアです。メンタルヘルス対策は専門的な知識が必要であるため、これらの機関のアドバイスやサポートは安全で効果的です。事業場内のスタッフと連携することで、より効果的なメンタルヘルス対策ができます。
事業場外資源については、前述の「メンタルヘルス対策で活用できるサービス」を参照してください。
メンタルヘルスの課題を解消して適切に取り組もう
メンタルヘルス対策には以下の課題があります。
- ・ストレスの程度や要因のわかりづらさ
- ・個人情報の取り扱い
- ・人手不足や連携の失敗
課題解消のため、以下を活用しましょう。
- ・こころの耳
- ・産業保健総合支援センター
- ・地域産業保健センター
また、厚生省は以下の実施を推奨しています。
- ・セルフケア
- ・ラインによるケア
- ・事業場内の産業保健スタッフなどによるケア
- ・事業場外資源によるケア
メンタルヘルス対策に活かしてください。