業種別に見る目標管理システムの懸念点の考え方
目標管理システムの機能が同じでも、業種によって目標の立て方や評価の仕組みは異なります。まず、業種ごとに懸念が生じやすい理由を整理しておきましょう。ここで紹介する内容は、製品の選定にも、運用の設計にも役立ちます。
| 業種 | 想定される懸念 |
|---|---|
| IT企業 | 独自の評価制度を設定項目に落とし込めない |
| 製造業 | 現場の目標と部門の目標がつながらない |
| 人材サービス業 | 契約形態や数値目標の扱いが複雑になる |
| 小売チェーン | 店舗ごとの目標設定や権限の管理が煩雑になる |
業種によって目標の性質が異なる
目標の中身は、業種によって大きく異なります。売上や契約件数のように数値で測りやすい目標もあれば、品質の向上や人材育成のように、数値だけでは表しにくい目標もあります。
目標管理システムの入力欄が数値の入力を前提としている場合、数値化しにくい目標を扱いにくくなるケースがあります。自社の目標の種類を洗い出し、文章の記入や段階評価に対応できるかを確かめておきましょう。評価の根拠となる成果の記録を残せるかも、確認したい点です。
評価制度の細かさが設定の幅を左右する
評価制度は、等級の名称、評価項目、配点の考え方まで、企業ごとに違いがあります。標準で用意された項目だけでは、自社の制度を再現しきれない場合があります。
設定の自由度が高い製品でも、項目が増えると入力する側の負担が増します。制度に必要な項目を絞ったうえで、管理者が自分で調整できる範囲と、提供会社への依頼が必要な範囲を確認しておきましょう。制度の改定に備え、設定を後から変更できるかも見ておくと安心です。
現場の入力負担が定着を左右する
目標管理システムは、現場の社員が入力して初めて役立ちます。パソコンを使う時間が限られる職場や、日中は現場を離れられない職場では、入力の時間を確保しにくい場合があります。
スマートフォンから入力できるか、入力の項目を減らせるかなど、現場の働き方にあわせた確認が必要です。入力が負担になると、期限間際にまとめて記入する運用になり、目標の進捗管理が形だけになる場合もあります。現場の意見を聞きながら、入力の設計を調整しましょう。
IT企業と製造業で想定される懸念点
IT企業は評価制度の独自性、製造業は現場と組織の目標のつながりが、それぞれ懸念になりやすい傾向があります。具体的な場面を想定しながら確認していきましょう。製品の機能だけでなく、自社の業務との相性を見ることが大切です。
独自の評価制度を設定項目に落とし込む
IT企業では、職種や職位ごとに評価の基準を細かく設けている場合があります。例えば、技術力、チームへの貢献、学習の姿勢など、複数の観点を組み合わせた独自の制度です。
こうした制度を標準の設定項目に落とし込めないと、システムの外でExcelの管理が残り、二重の運用になる場合があります。導入前に、自社の評価シートを提供会社に見せて、再現できる範囲を確認しておきましょう。他の管理表と内容が重複しないかも、あわせて見ておくと運用が安定します。
プロジェクトの目標と個人の目標を整合させる
IT企業の業務は、プロジェクト単位で進み、メンバーが複数のプロジェクトを兼務する場合があります。プロジェクトの目標と個人の目標をどう結びつけるかが、運用上の課題です。
プロジェクトが終わるたびに目標を立て直す運用では、更新の手間が増えます。期の途中で目標を変更できるか、変更の履歴を残せるかを確認し、柔軟な運用に耐えられる製品を選びましょう。兼務するメンバーの目標を複数の組織にまたがって設定できるかも、確認したい点です。
現場の目標と部門の目標をつなげる
製造業では、生産量や不良率、納期の遵守など、現場の指標が評価に直結します。工場や部門の目標を、個人の目標にどのように分解するかが検討点です。
目標の連鎖を画面上で確認できる機能があれば、現場の担当者も自分の役割を把握しやすくなります。交替制の勤務や、パソコンを使いにくい作業環境がある場合は、入力方法の工夫も必要です。共有の端末や、休憩時間に入力できる環境があるかなど、現場の実情にあわせて整えましょう。
人材サービス業や小売チェーンで想定される懸念点
人材サービス業と小売チェーンは、働く人の雇用形態や拠点の数が多様なため、目標設定と権限管理に独特の課題が生じる場合があります。ここでは、それぞれで想定される場面を取り上げます。拠点や雇用形態の多様さは、設定の複雑さにつながりやすい点です。
契約形態や数値目標の扱いを整理する
人材サービス業では、営業担当者の数値目標のほか、登録スタッフの稼働や定着など、追うべき指標が複数あります。部署によって目標の種類が違うため、1つの様式で運用できるかが課題です。
社内の正社員と、派遣などの就業形態の違うスタッフが混在する場合は、評価の対象や権限の分け方も検討が必要です。利用者の区分ごとに、入力できる項目を変えられるかを確認しましょう。個人情報を含む評価の閲覧範囲も、区分ごとに決めておくと安心です。
店舗ごとの目標設定を管理する
小売チェーンでは、店舗の売上や客単価など、店舗の特性に応じた目標が求められます。全店舗に共通の目標と、店舗独自の目標を、分けて設定できるかが確認点です。
店舗数が多いと、目標の一括設定や、店舗ごとの状況の集計に手間がかかる場合があります。本部が一括で設定できるか、店舗の責任者が独自に追加できるかなど、運用の権限もあわせて確認しましょう。店舗間で結果を比較する場合は、条件の違いに配慮した見せ方も検討が必要です。
雇用形態や権限の違いに対応する
小売チェーンでは、正社員のほか、パートやアルバイトなど多様な雇用形態の従業員が働いています。評価の対象とする範囲や、入力する項目が雇用形態で異なる場合があります。
店長が複数の店舗を兼務する場合や、異動が頻繁にある場合は、評価者の設定を変更する手間が増えます。組織変更を管理者が簡単に反映できるか、過去の評価が残るかを事前に確かめておきましょう。担当する店舗が変わった場合の権限の引き継ぎも、確認しておくと安心です。
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業種を問わず起こりうる運用面の懸念点
業種に関係なく、目標管理システムの運用では共通する課題があります。入力の形骸化、評価のばらつき、管理職の負担の3つを確認しましょう。どれも、導入後に時間がたってから表れやすい課題です。早めに把握しておくと、対策を立てやすくなります。
入力が形骸化するのを防ぐ
目標管理システムの導入後に、入力が期限間際の作業になり、内容が形式的になる場合があります。目標の進捗を日常的に更新する習慣がないと、システムが評価のための記録だけになってしまいます。
入力の定着には、1on1面談などの場でシステムの画面を見ながら話す運用が有効です。面談の場で進捗を確認する仕組みがあれば、入力が評価のためだけの作業になる事態を避けられます。進捗の更新を月に一度などの周期で決めておくのも、定着につながる工夫です。
評価者によるばらつきに備える
同じ目標でも、評価者によって判断の基準が異なる場合があります。システムを導入しても、評価の基準があいまいなままでは、公平性への不安は解消されません。
評価の基準を記入欄の近くに表示できるか、評価者間で結果を調整する機能があるかを確認しましょう。評価者向けの研修や、基準の説明資料を用意しておくことも、運用の安定に役立ちます。
評価結果を本人にどう伝えるかの手順も、あらかじめ決めておきましょう。評価の結果に対する本人の疑問を受け付ける窓口も、あわせて考えておくと安心です。
管理職に集中する負担を見極める
管理職は、部下の目標の承認、進捗の確認、評価の入力など、システム上の作業が増えます。担当する人数が多いと、作業が滞り、評価の期限を過ぎてしまう場合があります。
承認の流れを簡素にできるか、未対応の作業を一覧で確認できるかなど、管理職の負担を軽くする機能も比較しましょう。システムの導入にあわせて、承認の段階や評価の運用を見直す観点も重要です。管理職向けの操作説明会を開くと、入力の滞りを減らせる場合があります。
業種別の懸念点を導入前に減らす進め方
懸念点は、導入前に自社の状況と照らして確認すれば、多くを予防できる可能性があります。洗い出し、試行、見直しの順に進める方法を示します。段階を踏むと、導入後の手戻りを抑えやすくなります。この3つの進め方は、どの業種でも共通して使えるものです。
- ■洗い出し
- 業種特有の目標や雇用形態、評価制度の項目を整理する
- ■試行
- 一部の部門や店舗で試し、入力や承認の負担を確かめる
- ■見直し
- 運用開始後も、設定や評価の基準を定期的に点検する
自社の業種特有の要件を洗い出す
最初に、業種ならではの目標の種類、雇用形態、組織の構造を書き出しましょう。例えば、店舗ごとの目標や、現場の交替勤務など、標準的な機能では扱いにくい要素が見つかります。
洗い出した要件は、必須とあれば便利に分けて整理します。提供会社に伝える際は、評価シートの実物や組織図を示すと、対応の可否を具体的に回答してもらいやすくなります。
曖昧な回答は、デモの場で画面を見ながら確かめましょう。要件を洗い出す段階から、現場の管理職にも参加してもらうと精度が上がります。
一部の部門や店舗で試行する
全社で一斉に導入すると、問題が見つかったときの影響が大きくなります。まず一部の部門や店舗で試し、入力の手間や承認の流れに無理がないかを確かめましょう。
試行では、現場の担当者から、使いにくかった点や入力に迷った点を集めます。トライアルの期間や範囲は製品ごとに異なるため、自社の評価サイクルを一巡して確かめられるかも、事前に確認しておくとよいでしょう。試行の結果は、数値だけでなく現場の声も記録しておきます。
運用開始後の見直しの仕組みを用意する
導入時に懸念点をなくしきることは難しいため、運用開始後に見直す前提で準備します。評価制度の改定や組織変更があっても、設定を調整できる製品が望ましいといえます。
見直しの担当者と時期を決め、利用者からの意見を集める窓口も設けましょう。設定変更の履歴を文書に残すと、担当者が代わっても、運用を引き継ぎやすくなります。
見直しの結果は、次の評価期間の前に反映できるよう計画しましょう。見直しの内容は利用者にも共有し、変更点を周知する仕組みもつくりましょう。
評価制度や現場の違いを考える製品の例
独自の評価制度や、現場での入力のしやすさに関する記載がある製品を、製品ページの情報から取り上げました。自社の業種で必要な条件にあうかは、個別に確認しましょう。
あしたのクラウドHR
- 導入4,000社でシェアNo.1※評価制度がなくてもゼロから構築可能
- Excel管理からの脱却。質の高い目標・評価を実現する機能多数
- 評価から給与・賞与のシミュレーションまで一貫して対応可能
株式会社あしたのチームが提供する「あしたのクラウドHR」は、クラウド型の人事評価システムで、目標設定から面談、評価、査定までの流れを一元管理できます。評価段階や評価項目のウエイトを管理でき、項目ごとに閲覧権限を設定できます。評価制度がない企業でもゼロから構築できるとされ、制度構築や運用の支援サポートも用意されています。進捗の確認や期日のアラートメールもシステム上で完結でき、Excelでの管理から移行したい場合の確認先です。
Talent Palette
- 最新シェアNo.1の「タレントマネジメントシステム」
- 目標管理と連動してスキルマップを可視化
- 専任担当者の伴走で、最適な目標管理フロー構築とスムーズな定着
株式会社プラスアルファ・コンサルティングが提供する「タレントパレット」は、人事評価と人材情報の管理を一体で行えるクラウドサービスです。面談で使う目標管理シートを自由に設計でき、MBOなど現状の評価制度をそのまま再現できるとされています。評価の記入状況は一覧で確認でき、評価後の調整や1on1面談の記録の蓄積も行えます。専任担当者が定着まで伴走するとされ、目標設定の状況を一元管理して過去の目標も確認できます。
SmartHR
- 目標管理やOKRなど、制度に合わせたフローを柔軟に作成可能
- 進捗管理と自動リマインドで、設定〜回収までをスピードアップ
- パソコンを持たない従業員でもスキマ時間に目標入力・確認が可能
株式会社SmartHRが提供する「SmartHR」は、人事・労務の情報とあわせて人事評価を管理できるクラウド型のサービスです。評価制度にあわせた入力シートをテンプレートとして保存し、職種や等級ごとに使い分けられます。パソコンを持たない従業員もスマートフォンなどから目標を入力・確認できるため、現場の入力方法に条件がある場合に検討できます。評価者や承認者は、部署や役職のデータから自動で設定され、異動時の変更漏れを防ぐとされています。
Weekdone (Weekdone)
- OKRだけでなく、日次・週次の進捗を自動レポートで可視化。
- 目標ツリー表示とダッシュボードで組織全体の動きを俯瞰。
- 14日間の無料トライアルと3ユーザーまで無料プランあり。
Wistant (株式会社フルート)
- AIで1on1運用を自動化し、継続的な管理をサポート。
- マネジメントの可視化で組織課題を発見し改善を促進。
- 従業員の意欲を高め、生産性と顧客満足度の向上を図る。
目標管理システムに関するよくある質問
目標管理システムの業種別の懸念点についてよくある質問と回答をまとめました。
- ■Q1:業種ごとの懸念点は、導入前にどう洗い出せばよいですか?
- A:業種特有の目標の種類、雇用形態、組織の構造を書き出し、必須の要件と、あれば便利な要件に分けましょう。評価シートの実物や組織図を提供会社に見せると、対応の可否を具体的に確認できます。
- ■Q2:店舗数が多い場合、目標設定で何を確認すべきですか?
- A:全店舗に共通する目標と店舗独自の目標を分けて設定できるか、本部が一括で設定できるかを確認しましょう。店舗責任者に与える権限の範囲や、異動時の引き継ぎも確かめておくと安心です。
- ■Q3:独自の評価制度は、システムの項目に反映できますか?
- A:製品によって設定できる項目や帳票の自由度が異なります。管理者が調整できる範囲と、提供会社への依頼が必要な範囲を確認し、再現できない部分が出る場合の運用も検討しましょう。
- ■Q4:試行導入は、どの範囲で行うとよいですか?
- A:一部の部門や店舗など、影響を抑えられる範囲から始める方法があります。自社の評価サイクルを一巡して確かめられるかを確認し、現場の使いにくかった点を記録しておきましょう。
まとめ
目標管理システムの業種別の懸念点は、IT企業の独自の評価制度、製造業の現場と組織の目標、人材サービス業の契約形態、小売チェーンの店舗ごとの目標などに分けて考えられます。入力の形骸化や評価のばらつきなど、業種を問わない課題もあります。自社の要件を整理し、複数の製品の資料を請求して比較してみてください。

