自然言語処理(NLP)とは
自然言語処理とは、人が日常的に使っている言語(自然言語)をコンピュータで処理・分析する技術のことです。NLP (Natural Language Processing)とも呼ばれ、コンピュータに言葉を教える自然言語技術の一つに分類されます。
自然言語技術分野には自然言語処理に加え、自然言語生成や自然言語理解、自然言語クエリなどがあり、これらはAIや機械学習と組み合わせて活用されている技術です。
自然言語は日常的に人が使用する言葉であり、曖昧さを含んでいます。同じ言葉でも、話す人物や文脈によって違う意味を示すことも珍しくありません。そのため、コンピュータで機械的に分析するには高度な技術が求められます。
自然言語処理が注目されている理由
近年は、SNSの普及やビジネスコミュニケーションにチャットツールを使用するケースが多く、テキストデータ量が増加しています。今後もさらにデータ量が増加すると予測され、テキストデータの活用は必須といえるでしょう。膨大なデータの有効活用が求められているため、自然言語処理技術の注目度は高まっています。
自然言語処理技術は世界で研究開発が進められ、技術革新が進んでいます。国内でも、自然言語処理技術の日本語に特化した言語モデルの開発などが活発化しています。自然言語処理技術の発展でビジネスシーンでも自動化ツールやAI技術が取り入れられ、今後さらに発展すると予想できるでしょう。
自然言語処理の仕組み
人が使用する自然言語は、曖昧でさまざまな角度から分析しなければ活用ができません。自然言語処理には、複雑な分析を実現するための仕組みがあります。分析にあたり、まずはコンピュータが自然言語のデータ処理ができるように機械可読目録とコーパスを用いて準備をします。
- 機械可読目録
- 書き言葉を機械が理解できるようにする通信規格です。人間の言葉を機械が理解できるように変換します。機械可読目録の応用技術として書籍検索システム「OPAC」が有名です。
- コーパス
- 自然言語の使用方法を集積したものです。機械が自然言語を理解するための膨大なサンプルといえます。文章などの使用方法を構造化し、収集して記録したものです。人が英会話を学習する際の、英文用例集のような存在と考えるとわかりやすいでしょう。
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自然言語処理の歴史と代表的な製品
自然言語処理の歴史は、機械翻訳の研究が中心だった1950年代からはじまります。当時は東西冷戦の最中で、英語とロシア語の機械翻訳が注目されました。
1964~1966年頃には、ジョセフ・ワイゼンバウム氏により「ELIZA(イライザ)」が開発されます。ELIZAは相手の発言に対するさまざまな回答パターンを用意し、パターンに合致する発言にあわせて返答する対話型プログラムです。
2011年にはIT企業のIBMが人工知能「ワトソン」を開発し、「ジョパディ!」というアメリカのクイズ番組に出演して歴代人間チャンピオンに勝利したことが話題になりました。また、同じ頃に日本では国立情報学研究所が中心となり、人工知能「東ロボくん」を開発しました。東大入試合格を目指す人工知能で、2015年には私立大学合格が可能なレベルに達しています。
さらに2014年にはAmazonが、対話型の音声操作に対応したAIが利用できるスマートスピーカー「Amazon Alexa」を発表しました。AIの進化により、テキストだけではなく音声データの自然言語処理が可能になっています。
2016年にはGoogleがディープラーニングを活用したGoogleニューラル機械翻訳を発表し、注目を集めました。
現在はAIやディープラーニングの技術が発展し、機械による自然言語の理解や翻訳が可能になりつつあります。自然言語処理を用いた実用例は、以下のとおりです。
- ・Siri(AIアシスタント)
- ・Amazon Alexa(AIスピーカー)
- ・検索エンジン
- ・チャットボット
- ・テキストマイニング
最近では生成AIの実用化が進み、マイクロソフトの「ChatGPT」やGoogleの「Bard」といった対話型AIサービスが発表されています。世界で最新の自然言語処理技術の活用が活発化しているといえるでしょう。
自然言語処理の流れ
機械可読目録とコーパスを用いて準備をし、自然言語処理は「形態素解析」「文章構造の解析」「文章の意味を分析」「文脈を理解したうえでの情報抽出」で進めます。
形態素解析
形態素解析とは、文章を最小の単位である単語に分割する作業です。意味をもつ最小単位である単語にわけることで、意味を解析しやすくなります。
満天の星と月が美しい
以下、形態素解析した文章です。
満天/の/星/と/月/が/美しい
文章を分割して書くことを「分かち書き」といいます。英語など多くの言語では単語同士の間にスペースがありますが、日本語にはないため、形態素解析が必要です。
構文解析
構文解析とは、単語同士の関係性を解析する作業です。構文解析の段階では、文法的に考えられる構造をすべて挙げます。形態素解析した文章の構文解析をします。
- 1.「満天/の/星/と」と「月/が」を名詞句として認識
- 2.「満天/の/星/と」と「月/が」を主語、「美しい」を述語に分類
構文解析することで、「美しい」のが「満天の星」と「月」であると理解できるでしょう。一方、別の解析方法も考えられます。「月/と/星」をまとめて名詞句と見なし、「満天/の」を「月/と/星」の形容詞と考える方法です。この場合、「満天」なのは「星」と「月」の2つが該当します。
意味解析
構文解析をした文章は、意味が定まっていません。上述の例でいえば、「満天」なのが「星」と「星と月」のどちらなのか不明のため、意味解析を実施します。意味解析では、辞書を利用して単語同士の意味や関係を調べます。結果をもとに、構文解析から最適な構文の選出が可能です。
- 辞書を参照
- 「満天」……空いっぱい
- 「星」……複数ある
- 「月」……一つだけ
- →「満天」は「星」だけにかかると特定できる
文脈解析
同じ文章でも、文脈によって異なる意味をもつ場合もあるでしょう。自然言語処理では、前後の文章にも構文解析と意味解析を実施し、文脈を明らかにします。文章同士の関係性を明らかにするには言葉の意味や文法だけではなく、さまざまな知識が必要不可欠です。照応解析や談話解析などの手法が提唱され研究が進められているため、十分な実用性を誇る文脈解析は発展していくといえるでしょう。
自然言語処理に用いられる手法
自然言語処理には、「共起語解析」「トピックモデル」「感情分析」が用いられます。ここでは、自然言語処理に用いられる手法について解説します。
共起語解析
共起語とは、ある言葉と関連性が強く同時に用いられる言葉です。例えば、「星座」の共起語には「占い」「性格」などがあります。共起語の解析はマーケティング分野で有効です。
Webマーケティングでは、検索結果の上部に自社のコンテンツを表示させるため、ユーザーのニーズに応える必要があります。ユーザーが検索エンジンで情報を調べる際、共起語を入力する可能性は高く、コンテンツ内で共起語を使用すると効果的です。
トピックモデル
文章のトピック(題目)を把握するための技術がトピックモデルです。対象の文章がどのようなトピックを扱ったものなのかを解析することで、マーケティングに役立てられます。
従来は潜在意味解析という方法が用いられていました。テキスト内の単語の数や頻度からトピックを判断する方法です。例えば、「英語」「初心者」などの単語が頻出していれば、初学者向けの語学に関するトピックだと判断できます。しかし、人間にとってわかりやすいトピックに分類できないなど、課題がありました。
トピックモデルでは、テキストは複数の潜在的なトピックから確率分布的に生成されると考えます。複数のトピックを含んでいるテキストも分類が容易になり、ニュース記事におけるタグ付けの自動化などに有効です。
感情分析
感情分析とは、個々の単語の意味から文章全体の感情を分析することです。SNSやECサイトのレビュー分析などで、感情分析が用いられます。例えば、「おもしろい」「おすすめ」などはポジティブ、「つまらない」「嫌い」などはネガティブと判断します。どちらにも該当しない単語は、ニュートラルに分類されるでしょう。
感情を示す単語ごとにポジティブなら加点・ネガティブなら減点し、総合点によって文章全体を判断します。「この映画は序盤がつまらないけど、あとはおもしろいからぜひおすすめ」の場合、総合的にポジティブだと判断できるでしょう。「ネガポジ判定」と呼ばれることもあります。
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自然言語処理でできること
自然言語処理は、膨大なテキストデータの解析や非構造化データの処理で活用されています。ここでは、自然言語処理で実現できることを解説します。
大量のテキストデータ解析
自然言語処理技術は、テキストマイニングで大きく力を発揮します。テキストマイニングとは、テキストデータの中から重要な情報を抽出する技術です。例えば、SNS上のコメントやカスタマーサポートに寄せられた顧客の声からニーズを分析できます。
ほかにも医療現場では、患者が訴えた痛みや会話のテキストデータを解析し、うつ病や認知症などとの相関性がないかなどを確認できます。自然言語処理を用いてテキストデータを解析すると、新たなチャンスやリスクの発見が可能です。
非構造化データの処理
非構造化データとは、行や列によって構造化されていないデータのことです。動画や画像のデータなどが該当します。構造化データと異なり、コンピュータでの分析は困難です。人間の言語は典型的な非構造化データです。例えば、スマートスピーカーに明日の天気を尋ねる場合、「明日の天気は?」「明日は雨降る?」「明日の降水確率は?」など、さまざまな質問が考えられます。形式が整っていないだけでなく、個人の癖や方言・スペルミスなど曖昧さを含みます。
しかし、最近ではAIのさまざまな機械学習により、非構造化データの処理精度が向上し、多くの表現において解析が可能です。文の構造や前後の文脈から質問の意図を読み取り、的確な回答をするシステムが増えています。
自然言語処理の活用事例
自然言語処理技術は向上し、いろいろなシーンで活用されています。ビジネスシーンはもちろん、日常生活でも取り入れられているため、利用している方も多いでしょう。ここでは、自然言語処理の活用シーンや活用例を紹介します。
AIチャットボット
AIチャットボットは、チャット形式のお問い合わせなどで利用した経験がある方も多いでしょう。入力した文章や文脈を理解して、ユーザーが求める回答をするのに自然言語処理が活用されています。さまざまな表現の質問に対してより的確に意味を捉え最適な回答が可能です。問い合わせ対応業務の効率化につながるため、多くの企業で取り入れられています。
音声認識AI
音声認識によって言語をテキスト化する際にも、自然言語処理が活用されています。コールセンターで顧客との会話内容をオペレーターが要約してテキスト入力をしなくても、音声データをもとに記録作成が可能です。また、会議で音声認識AIを活用することで、議事録作成も自動で対応できます。
AIスピーカー
スマートスピーカーやAIスピーカーでも活用され、自然言語処理によって自然言語を的確に解釈し、指示された内容を実行します。天気予報や家電の操作など、さまざまな指示に対して、自然言語処理技術を活用し対応できます。
手書き文字のデータ変換
タブレットなどに専用ペンで手書きした文字をテキストデータとして変換する際に、自然言語処理を活用しています。電子カルテシステムなどで用いられ、キーボード入力が苦手な医師でも紙カルテと同じように手書きで対応できるため、医療現場でも注目度が向上しているといえるでしょう。
検索エンジン
自然言語処理技術を活用することで、自然言語で入力された検索文に対して、完全に一致しないデータも対象として表示させられます。曖昧なイメージやキーワードでも、目的のデータを見つけやすくなるでしょう。大手検索エンジンでも、自然言語処理技術を取り入れユーザーが求める情報を的確に提供できる仕組みを構築しています。
翻訳機能
翻訳サービスにおいて、機械翻訳の精度が向上している背景には自然言語処理の活用があります。日本語に対して文脈解析と意味解析が実施され、適切な解釈が実現しているためです。音声認識とかけ合わせた翻訳サービスでも活用が進んでいます。
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自然言語処理における今後の課題
高度な技術を誇る自然言語処理ですが、できないことや課題もあります。自然言語処理は、形態素解析と構文解析だけで処理をしているのではありません。文章の構造や前後の文脈から質問の意図を推測し、分析する必要があります。しかし、ビジネスや日常でさらに活用するためには精度が十分ではありません。
また、英語と日本語など言語により、処理技術も異なります。英語は単語同士がスペースで区切られていますが、日本語にはありません。対象言語に処理技術が偏ってしまう点も課題の一つです。
このような課題を解決するために、自然言語技術やAIの開発が進められています。テキストマイニングやマーケティングで自然言語処理を活用する場合は、常に最新の情報・技術を取り入れるよう意識するとよいでしょう。
自然言語処理を活用してテキストマイニングを効率化しよう
自然言語処理では、大量のテキストデータ解析や非構造化データの処理が可能です。AIチャットボットやスピーカーなどビジネスや日常でも活用されています。しかし、文章における意図の推測など処理技術にはまだ課題があり、さらに研究が進められ発展していくと予測されるでしょう。自然言語処理について理解を深め、翻訳やマーケティングの分野で必要となるテキストマイニングに活かしましょう。