無料でシンクライアントを利用する方法
シンクライアントを利用することで、ハードウェアのコストを削減したり、社外でPCを利用するときのセキュリティ対策を行ったりできます。社外にPCを持ち出す場合、端末の紛失や盗難で情報漏えいしてしまうリスクがあります。シンクライアント環境を構築することで、このような情報漏えいのリスクを軽減できるでしょう。
しかし、シンクライアントの環境構築には費用がかかります。ただ方法によっては無料でシンクライアントを利用することも可能です。ここからは無料でシンクライアントを利用する方法について説明していきます。
「OSS」で既存PCをシンクライアント化させる
まず1つめの方法はOSS(オープンソースソフトウェア)を使用することで既存PCをシンクライアント化させることです。有名なシンクライアントのオープンソースに「openThinClient」があります。自分で開発する必要がありますが、全ての機能を無料で利用できます。ほかにも無料でシンクライアント環境を構築するオープンソースはありますが、利用できるOSが限られるなど制限があります。このようにオープンソースの場合は無料で利用できる代わりに、システムを開発する知識や技術が必要です。
「シンクライアントシステムの無料版」を利用する
オープンソースは自由度が高いものの自分で開発する必要があります。では、システム開発を行う知識・技術がない人はどうすれば良いでしょうか。実はシンクライアントソリューションの中には無料で利用できるものもあります。無料版であれば対応しているOSも多く使いやすいメリットがあります。ここからはシンクライアントシステムの無料版をいくつか紹介していきます。
「monoPack」は日本ナレッジ株式会社が提供しているシンクライアントシステムです。手軽にシンクライアント環境を構築したい企業におすすめです。
- ・無償評価版あり
- ・USBブート型でUSBを挿すだけで利用可能
- ・専用クライアントは不要、導入コストの削減
- ・セキュリティ向上、既存端末には各種情報が保存されない
「ROM化クライアントT4」は株式会社ロムウィンが提供しているシンクライアントシステムです。低コストで情報セキュリティ対策を行いたい企業におすすめです。
- ・無料デモ機あり
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- ・USBメモリ起動型のため低コストでシンクライアント環境を構築
- ・タブレットPCなどさまざまな端末に対応
- ・電源を落とすだけで端末のデータを消去可能、情報漏えいを防ぐ
「FKEY SConnect」は株式会社応用電子が提供しているシンクライアントシステムです。サーバ不要で簡単に環境を構築したい企業におすすめです。
- ・無料モニターあり
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- ・サーバ不要の技術を応用、働き方の幅が広がる
- ・ソフトをインストールするだけで簡単にシンクライアントを使える
- ・仮想化技術を使い、同一PC上に分離環境を構築
以上3製品ともに、全ての規模の企業に対応しています。
無料でシンクライアントを利用するデメリット
ここまで説明してきたように、無料で利用できるシンクライアントシステムがあります。しかし、そこにはデメリットもいくつかあるため注意が必要です。ここからは無料で利用できるシンクライアントシステムのデメリットについて具体的に説明していきます。
OSSは「サポートが不十分」
まずOSSを使う場合は、全てを自社で開発・管理する必要があるためサポート体制は不十分です。基本的にオープンソースは無料で利用できますが、充実したサポートは期待できません。そのため、オープンソースを使って開発するときは、不具合が発生したときの対策を行える体制を整えなければなりません。
システムの無料版は「利用期間が不十分」
シンクライアントシステムの無料版のほとんどに利用期間が設けられており、30日前後が相場です。基本的に無料で使えるツールは利用期間や使える機能に制限があります。このようなシステムは本導入前のトライアルとして提供されているため、実用性に欠ける部分が多く使い勝手は悪いでしょう。
シンクライアント導入の注意点
シンクライアント環境を構築することで、社外でもクライアント端末を安全に利用することが可能です。しかし、シンクライアントの導入にはいくつか注意点があることを、導入前に知っておく必要があります。では、シンクライアント導入の注意点には具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
ここからはシンクライアント導入の注意点について説明していきます。
導入コストまたは運用コストがかかる
新しくシンクライアント端末を導入するときは、環境を構築するためのシステム構築費用が発生します。また、端末を買い替えるとなると、最低限の機能しか搭載していないシンクライアントの端末でも台数に応じて導入コストがかかります。
シンクライアント環境を構築した場合は、サーバにアクセスが集中しやすいため安定して稼働できるように担当者を配置する必要があります。このようにシンクライアントを導入すると導入コストと運用コストが大きくかかってしまいます。
パフォーマンスが低下しやすい
シンクライアントでは複数の端末の業務を1つのサーバで管理するため、負担が大きく、パフォーマンスが低下しやすくなります。ソフトやデータをサーバで一元管理できるため、担当者の負担が減りますが、その分サーバ自体の負担は増加することに注意が必要です。
サーバにアクセスが一点集中すると、サーバの処理が遅くなったり、ダウンしてしまうこともあります。重要な業務を複数のシンクライアント端末で行う場合は、ハイスペックなサーバを用意することが求められます。
ネットワーク環境に左右されやすい
シンクライアント端末の最も大きなデメリットはインターネットの通信がないと使えないことです。シンクライアント端末はインターネット通信を利用し、サーバなど社内環境にアクセスします。つまり、シンクライアント端末単体ではデータを持たないため、ネットワーク環境がなければ使いものになりません。
実行方式によっては使いにくい
シンクライアントの実行方式には大きく分けて「ネットブート型」と「画像転送型」の2種類あります。前者では、サーバ上のイメージファイルを用いてネットワーク経由でOSやアプリケーションを起動。後者では、ほとんどの処理をサーバ上で行い、その結果をクライアント端末に画像表示します。また、画像転送型には「ブレードPC型」「サーバーベース型」「VDI型」の3種類があります。それぞれその方法によって特徴と費用が変わります。
このように実行方式が複数あるため、自社に合った方式を選ぶことが大切です。相性が悪い実行方式だと使い勝手が悪いと感じてしまいます。
まとめ
いかがでしたか。今回は無料で利用できるシンクライアントについて紹介してきました。シンクライアント環境を構築する場合、発生する費用が大きくなりやすいため、無料のものを利用することも1つの手段です。しかし、無料のシンクライアントは不便と感じることも多く、実用性に欠ける部分も否めません。
職場の労働環境改善や業務の効率化を図りたい場合は、有料のツールの方がおすすめでしょう。自社に合った方法でシンクライアントを実行することが大切です。
シンクライアントの導入を慎重に行って、自社の環境を改善しましょう。