シンクライアント導入のメリットは?
まずは、シンクライアントの導入メリットを4つご紹介します。
1.各端末からの情報漏えい防止
サーバーで処理したデータを端末に表示するため、デバイスにデータが残らず、情報漏洩を防止することができます。顧客情報などの個人情報や機密情報なども、サーバーとの接続を断てば閲覧できなくなるため、セキュリティ面でも安心です。
2.スマートデバイスとの連携でアクセス性向上
端末とは画面情報と入力情報だけをネットワーク経由でやり取りするため、対象となる端末はシンクライアントマシンに限らず、タブレットやスマートフォンでも利用可能です。BYODと呼ばれている私物端末の業務利用でも安全に実施することができるため、在宅勤務やフリーアドレス、ノマドワークなどの多様なワークスタイルにも、柔軟に対応できます。
3.サーバー管理者の負担軽減
ユーザー端末には日々の業務データや個々で管理すべきソフトウェアなどがなく、サーバー管理者はメインサーバーをメンテナンスするだけでよい点がメリットです。ソフトウェアのインストールやアップデートなどを一元管理できるので、大幅な負担減となります。
4.一元管理で運用管理コストが削減
シンクライアントにはいろいろな種類がありますが、全てに共通している点は、ベースとなる環境を一括管理できることです。従来のPCのように、必要な端末が増えた場合、個別にOSやアプリケーションをインストールすることなく、基本的にはあらかじめ用意されたイメージを使い接続するだけで利用できます。
また、個々で勝手にアプリケーションをインストールできないため、セキュリティ対策にもなります。アプリケーションやOSのアップデートも同様で、運用管理コスト削減が可能な上、事前にチェックし、マスターとなるイメージに反映可能ですので無用なトラブルも事前に防げます。運用管理コストは、数百台、数千台と規模が大きくなると人件費も含めて大きな負担となってきます。管理台数が多い場合はシンクライアントを導入するメリットが非常に大きいと言えます。
デメリットは?
メリットの多いシンクライアントですが、デメリットとしてはどのような点があるのでしょうか。ここでは、一般的に挙げられるデメリットを3つご紹介します。
1.リソースが制限される
ユーザー側はメインメモリやディスクなどの使用量を減らせるため、端末のパフォーマンスを上げることができます。しかし、減らした分はメインサーバーが負担するため、複数のユーザーが同時に共有をするとサーバーで必要とするリソースは多大なものになります。
2.サーバーに集約するほど障害が発生しやすい
メインサーバーで一括処理や管理をおこなっているため、サーバーに障害が発生した場合、すべての端末で業務が停止してしまう可能性があります。経営存続にも影響を与えかねないため、導入前にはこのようなリスクも発生するということを理解しておきましょう。
3.ネットワーク接続がないと使えない
サーバーからの通信はネットワークを経由しておこなわれます。そのため、ネット環境がなければ利用ができません。ネットワーク環境が整っている社内などでは問題ありませんが、出先で使う場合は、何らかの通信手段を確保する必要があります。
画面データを転送する関係上、比較的データ転送量が多いこともあり、長時間使用する場合、携帯電話などのモバイル通信網では、データ転送量の上限も気にする必要があるでしょう。そして何らかの事情でサーバが止まってしまうと、何もできなくなるというデメリットもあります。通信回線を多重化すれば可能性は低くなりますが、0にはなりません。
各方式のメリット・デメリットを比較してみよう
シンクライアントには、「ネットブート型」と「画面転送型」2つの実装方式があります。ここでは、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。
ネットブート型
サーバー上のイメージファイルを使い、ネットワーク経由でOSやアプリケーションなどを端末でブート(起動)するタイプです。
- メリット
- ・ネットワークを介するため、ローカルからブートする場合と比較すると多少時間がかかりますが、一度ブートすれば操作性は通常のPCと変わりません。
- デメリット
- ・ユーザーごとに複数の環境を利用する場合は、環境ごとにイメージファイルが必要となるため、管理工数がかかってしまいます。
画面転送型
サーバーで処理した結果を、クライアント端末に表示させるタイプです。現在ではこの型が主流となっています。
画面転送型は、さらに以下3つの方式に分類されます。
ブレードPC型
ブレードPCとは、PCを構成するために必要なメモリ・CPU・ハードディスクなどを1枚の基盤(ブレード)にした小型のPC端末のことです。ブレードPC型は、ユーザー分用意したブレードPCと各クライアント端末を1対1で接続し、サーバーで一元管理するタイプです。従来と同様のPC操作性や画面表示を確保しつつ、情報をまとめて管理することができます。
- メリット
- ・ユーザーごとにマシンを保有できるため、共有タイプよりも高いパフォーマンスが期待できます。CADなどの高いスペックで求められるグラフィック処理などにお勧めです。
- デメリット
- ・ユーザー分のブレードPCを必要とするため、コストが高くなり、管理も煩雑になってしまいます。
サーバーベース型
サーバーで実行したアプリケーションを、全ユーザーで同時に共有するタイプです。
- メリット
- ・1つのアプリケーションを共有するため、一般的なサーバーで十分対応でき、高性能なサーバーを用意する必要がないため、コストパフォーマンスに優れています。
- デメリット
- ・アクセスが集中してしまうと、動作不良を起こしてしまい、パフォーマンスが低下してしまいます。
デスクトップ仮想化(VDI)型
サーバー上で複数の仮想PCを構築するタイプです。ブレードPCの仮想版をイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。
- メリット
- ・仮想PCを増減する際、仮想マシンを複製するだけなので管理しやすく、仮想マシンを用意するだけなのでコストを抑えることもできます。また、独立した環境なので、アクセス集中した場合でもユーザーに影響が及びにくいといったメリットがあります。
- デメリット
- ・サーバーとは別にアプリケーションのライセンス費用が必要であったり、仮想環境の管理工数がかかってしまいます。
まとめ
いかがでしたか。シンクライアントの概要から、各実装方式のメリット・デメリットまで解説してきました。多くのタイプがある中で、自社にはどのタイプが最適なのかを慎重に検討することが大切です。
自社のデスクトップ環境を見直し、シンクライアントを導入しようとしている企業は、ぜひ参考にしてみてください。