シンクライアントとは
シンクライアントとは、エンドユーザが使う端末(PCなど)に最低限の機能しか持たせず、一方のサーバ側では、アプリケーションや業務データを管理・処理するシステムのことです。クライアントPCにデータがないため、データ漏えいのリスクや運用負荷軽減などの効果があります。
「シン」とは「痩せた」という意味からシンクライアントと呼ばれています。これに対し、従来のようにデータもアプリケーションも保有する端末を「ファット(太った)クライアント」と呼びます。
シンクライアントの実装方式は、「ネットワークブート型」と「画面転送型」に大別され、画面転送型には、「ブレードPC型」「ネットワークブート型」「仮想デスクトップ(VDI)」に分類されます。各実行方式によってメリット・デメリットがあり、自社に合う最適な方式を選択することが重要です。
シンクライアント導入で解決する課題
ここから本題に入りますが、シンクライアントを導入することでどのような課題が解決するのでしょうか。ここでは、導入するメリットとして4つを紹介していきます。
1.情報漏えいの防止
日本年金機構からの個人情報の漏えい、大手学習塾からの会員情報の漏えいなど、大規模な情報漏えいが、常に話題となっています。2000年代前半以降、国内のトップ企業からの情報漏えい事件が頻発し、現在ではあらゆる団体や企業で情報漏えい防止は最も重要な課題の1つとなっています。
さらに、2015年10月からはマイナンバー制度が施行され、すべての企業が従業員の個人番号を安全に保管する義務が課せられています。これを機に、情報漏えい防止の体制を見直す企業も増加しています。
こうした企業が対策のひとつとして導入しているのが、シンクライアントです。
シンクライアントはハードディスク機能がありませんから、情報をパソコンにダウンロードできません。これだけでも情報漏えいの危険性を大幅に低減できるのです。
2.運用負荷の軽減(TCO削減)
運用部門の悩みの種が「パソコンが壊れた」「ソフトウェアに障害が発生した」「アプリケーションのバージョンアップをしたい」などのクライアント端末の保守運用でした。対象となるパソコンが自社ビル内にあればいいのですが、全国に拠点を持っている企業になると、保守作業のために出張をすることもしばしばあります。
とりわけ、2014年のWindows XPのサポート打ち切り、2015年のWindows 10のリリースなどにより、クライアントの保守運用は企業の大きな課題となってきました。これらクライアントの保守運用から運用部門を解放してくれるのが、シンクライアントシステムです。
シンクライアントは端末側にOSやアプリケーションがなく、すべてサーバ側にインストールされています。OSやアプリケーションのバージョンアップもサーバへアクセスするだけで対応できます。たとえ故障しても、別の端末を接続して再起動することで自分のパソコン環境を取り戻すことができます。企業には故障に備えて、安価な予備のパソコンを用意しているところもあります。
運用負荷の軽減はTCO削減につながります。また、省電力化によりTCOを削減できたと喜ばれることも多くあります。シンクライアントはハードディスクなどの動力部がなく、電力を多く消費しませんので、地球環境保護にも貢献できます
3.柔軟なワークスタイルへの対応
外出の多い営業担当者やサービス担当者のために、モバイル端末を携帯させる動きが活発化しています。報告書作成のために会社に戻ることなく、直行直帰によりお客様への対応時間を増やすことができるようになります。
ここで課題となるのが、モバイル端末の盗難や紛失による情報漏えいであり、そのために導入が進められているのがシンクライアントです。端末に一切の情報が残っていないため、たとえ紛失しても情報漏えいの危険性がありません。
なお、シンクライアントはネットワークに接続していなければ機能しないため、特定の時間だけ、必要となる情報をハードディスクにダウンロードする機能を搭載しているものがあります。たとえば、ダウンロードしてから2時間経つと自動的にハードディスクから情報が削除される、または報告書をアップロードした段階で情報が消える、といった機能です。
在宅勤務でもシンクライアントが利用されています。夜間や休日に仕事する、あるいは育児をする社員にシンクライアントを提供して、在宅勤務を奨励している企業もあります。家庭と仕事を両立しやすい仕組みとして、社員に歓迎されています。
4.BCP(事業継続計画)の実現
日本は災害大国であり、万一に備えた勤務態勢が必要になっており、BCPは中小企業でも取り組みが進んでいます。そこで、シンクライアントでシステムに自宅からアクセスできる環境を用意する企業が、増えているのです。
ネットワーク環境さえ利用できれば、企業システムにアクセスして業務やサービスを継続可能、会社まで足を運ぶことなく、自宅から直接お客様を訪問することもできます。インフルエンザの流行やパンデミック対策としても注目されています。
セキュリティやワークスタイル変革、BCPなど、さまざまな点から改めて注目されているシンクライアント。ぜひ、導入を検討されてはいかがでしょうか。
シンクライアント導入のデメリットは?
シンクライアントを導入して解決できる課題についてはご紹介しましたが、一方で、導入すると生まれるデメリットもあります。導入検討段階の方はぜひ知っておきましょう。
- 1.端末で行う処理をサーバーに集中して行わせるためパフォーマンスが下がるおそれ
- 2.サーバーとの通信はネットワークを利用するためネットがないと全く使えない
このようにシンクライアントはセキュリティの課題解決や柔軟な働き方を支援する一方で、サーバーにかかるリスクが生じてしまいます。そのため、リスク分散させるためにクラウド型のVDIをつかってシンクライアントを実現する方も多くなっています。
まとめ
シンクライアントの導入で解決できる課題とシンクライアントのデメリットをご紹介しました。シンクライアントは導入すると大きなメリットをもたらす一方で、リスクも同時に生じさせます。すべてのシステムに言えることですが、自社の環境と導入の目的をしっかりと明確にしてシステムを取り入れるようにしましょう。シンクライアントの導入にあたっては、資料請求してみるのもオススメです。