二つの言葉の使われ方
違いを見る前に、それぞれがどのような意味で使われているかを押さえておきましょう。用語の幅を理解すると、比較の際に迷いにくくなります。
会計システムが指す範囲
会計システムは、仕訳の入力から総勘定元帳の作成、決算書の出力までを扱う仕組みを指すことが一般的です。会計基準や税務の要請に沿った帳簿を作ることが中心の役割になります。
財務会計と呼ばれる、外部への報告を目的とした処理を担う部分と、管理会計と呼ばれる、社内の判断に使う集計を担う部分に分けて語られることもあります。製品によっては後者を別の機能として提供する場合もあるため、必要な範囲を確認しておきましょう。
経理システムが指す範囲
経理システムは、経理部門が日々行う業務全般を支える仕組みという意味で使われることが多い言葉です。会計の処理に加えて、請求、入金の消し込み、支払、経費の精算といった業務を含めて指す場合があります。
つまり、会計システムを含むより広い範囲を表す使われ方と、会計システムとほぼ同じ意味で使われる場合の両方があります。事業者の資料でどちらの意味で使われているかは、機能の一覧を見て判断する必要があります。名称だけで範囲を推測しないことが、比較を進めるうえでの前提になります。
扱う業務から見た違い
名称ではなく業務で捉えると、必要な範囲が整理しやすくなります。三つの領域に分けて確認します。
仕訳と決算に関わる業務
取引を勘定科目に振り分けて記録し、帳簿として集計する領域です。月次の締め、決算書の作成、税務申告に必要な資料の出力もここに含まれます。
会計システムと呼ばれる製品は、この領域を必ず備えています。どの製品を選んでも対応する部分であるため、比較の焦点は入力の効率や集計の柔軟さ、対応する会計基準の範囲に移ります。連結決算や複数の通貨を扱う必要がある場合は、その対応も確認しておきましょう。
債権債務と入出金に関わる業務
売掛金や買掛金の管理、請求書の発行、入金の消し込み、支払の処理を扱う領域です。取引先ごとの残高を把握し、回収や支払の状況を管理します。
この領域を会計システムに含める製品と、販売管理システムや専用の製品で担う構成があります。どちらで扱うかによって、必要な連携も変わります。銀行との入出金データのやり取りに対応するかも、業務の効率に関わる確認点です。
経費精算や請求に関わる業務
従業員が立て替えた費用の申請と承認、交通費の精算、請求書の受け取りと支払の処理を扱う領域です。経理部門だけでなく、全社の従業員が関わる点が特徴になります。
ここまで紹介した三つの業務領域と、主に対応する製品・確認点を整理すると、以下のとおりです。
| 業務の領域 | 担う製品の例と確認点 |
|---|---|
| 仕訳と決算 | 会計システムが担う。入力の効率と対応する会計基準の範囲が確認点 |
| 債権債務と入出金 | 会計システムに含む場合と販売管理側で担う場合がある。連携の方式が確認点 |
| 経費精算や請求 | 専用の製品で担うことも多い。従業員が使う画面の分かりやすさが確認点 |
これらを一つの製品で扱うか、分けて連携させるかによって、構成の考え方が変わります。
構成の考え方
どの範囲を一つのシステムで扱うかによって、運用の性格が変わります。二つの考え方を確認します。
一つのシステムでまとめる構成
会計から債権債務、経費精算までを一つの製品で扱う構成です。データの受け渡しを設計する必要がなく、入力した内容がそのまま帳簿へつながります。
一方で、それぞれの領域の機能が自社の運用にどこまで合うかは確認が必要です。特定の領域に細かい要件がある場合、まとめた構成では対応しきれないこともあります。導入の範囲が広いため、稼働までの期間も長くなる傾向があります。
業務ごとに分けて連携する構成
会計は会計、経費精算は専用の製品というように、領域ごとに選んで組み合わせる構成です。それぞれの領域で自社の要件に近い製品を選べる点が特徴です。
課題になるのは、製品間でのデータの受け渡しです。仕訳の形で連携できるか、勘定科目や部門の情報をどちらが持つかを整理しておく必要があります。連携の方式に加えて、取り込みに失敗した際に気づける仕組みがあるかも確認しておきましょう。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)で会計ソフトの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
選ぶ前に確認したい点
製品の比較に入る前に、社内で整理しておきたい事項を二つ挙げます。
自社に必要な範囲の見極め
現在どの業務をどのように処理しているかを洗い出し、負担が大きい部分を把握します。仕訳の入力に時間がかかっているのか、入金の消し込みが煩雑なのか、経費精算の確認に追われているのかによって、優先すべき範囲が変わります。
すべてを一度に入れ替えようとすると、費用も期間も膨らみます。負担の大きい領域から着手し、連携を前提に広げる進め方も選べます。関係する部署を検討の段階から交え、実務の流れを確認しながら決めましょう。
制度改正への対応
会計や税務に関わる制度は改正されることがあります。改正への対応がどのような形で提供されるのか、追加費用が発生するのかを事前に確認しておきましょう。
クラウド型では更新が自動で反映される構成が多く、自社設置型では更新の作業が必要になる場合があります。対応の時期がいつごろになるかも確認点です。具体的な要件の判断は、顧問の税理士や社内の経理担当に相談しながら進めることをおすすめします。
会計ソフトの選び方
ここまでの内容を踏まえ、製品を選ぶ際の確認事項を整理します。
企業規模と取引件数の整理
最初に、月あたりの仕訳の件数と、経理を担当する人数を整理します。件数が多い場合は入力の効率が、担当者が少ない場合は操作の分かりやすさが重要になります。
拠点や部門ごとに集計したい、複数の法人をまとめて扱いたいといった要件がある場合は、その対応も確認しておきましょう。今後の事業の広がりも含めて伝えておくと、あう製品の提案を受けやすくなります。
既存システムとの連携範囲
販売管理システムや経費精算の仕組み、銀行の入出金データとの連携は、入力の負担を左右する要素です。手作業で移し替える運用では、件数が増えるほど手間と誤りの可能性が積み上がります。
連携の方式に加えて、どの項目をどちらの方向へ同期するかも確認しておきましょう。読み取ったデータから仕訳を作る機能を備えた製品もあります。判断が難しい部分は情報システム部門や顧問の税理士に相談しながら進めましょう。
費用とサポート範囲の確認
料金は、利用人数に応じた月額制、仕訳の件数によるプラン分け、初期費用と保守費の組み合わせなど、製品によって考え方が異なります。制度改正への対応が保守契約に含まれるかも、総額に関わる部分です。
サポートについては、どこまで対応してもらえるのかを具体的に確かめます。操作方法の案内にとどまるのか、初期設定や既存データの移行を支援してもらえるのかは製品ごとに差があります。決算期は問い合わせが集中しやすいため、その時期の対応体制も確認しておきましょう。
業務範囲にあわせて選べる会計ソフト
経理業務全般を扱う構成にあわせて検討できる、会計ソフトを紹介します。
弥生会計
- かんたん取引入力と質問形式設定で初心者も迷わない
- 銀行・カード明細やレシートを自動取込しAIで自動仕訳
- インボイス制度と電子帳簿保存法の要件に即応
弥生株式会社が提供する「弥生会計」は、中小企業や個人事業主向けの会計ソフトです。仕訳の入力から決算書の作成までを扱う機能を備えており、経理業務の中核となる会計処理をまとめて行える構成になっています。長年の実績があり、税理士との連携もしやすい製品です。
マネーフォワード クラウド会計
- 自動入力・自動仕訳で会計業務がどんどんラクに
- 法人運営に必要な12のサービスを基本料金内で利用可能
- 無料のメールサポートや有人チャットサポートで初心者も安心
株式会社マネーフォワードが提供する「マネーフォワード クラウド会計」は、クラウド型の会計ソフトです。銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込む機能を備えており、入力作業にかかる時間を抑えやすくなっています。経費精算などの周辺システムと連携させる構成にも対応しています。
freee 会計
- 経営レポートを自動作成、リアルタイムな意思決定が可能に
- 経費精算やワークフローにも対応。転記や人的ミスを減らす
- 上場準備企業様にも最適な内部統制機能
フリー株式会社が提供する「freee 会計」は、簿記の知識がなくても操作しやすい画面を備えたクラウド型の会計ソフトです。日々の取引入力から決算書の作成までを一連の流れで扱える構成になっており、経理担当者の負担を抑えたい中小企業での導入が想定されています。
会計王 (ソリマチ株式会社)
- AI仕訳とMoneyLink連携で入力省力化。
- 帳簿付けから申告書作成まで対応。
- クラウド自動バックアップで安全保管。
ジョブカン青色申告 (株式会社ジョブカン会計)
- 個人事業主向け青色申告ソフト、e-Tax・65万円控除対応
- インボイス制度と電子帳簿保存法に対応。
- 法改正対応プログラムをネット提供
経理システムと会計システムに関するよくある質問
検討する担当者から寄せられることの多い質問と回答をまとめました。
- Q1: 二つの言葉に明確な定義の違いはありますか?
- 法令などで定められた区別はなく、事業者や文脈によって指す範囲が変わります。名称ではなく、機能の一覧で扱える業務を確認することが確実です。資料を比べる際も、同じ業務が含まれているかを基準にそろえましょう。
- Q2: まとめた構成と分けた構成はどちらがよいですか?
- 幅広い業務を一度に整えたい場合はまとめた構成、特定の領域に細かい要件がある場合は分けた構成が候補になります。段階的に導入したい場合は、負担の大きい領域から着手し、連携を前提に広げる進め方も選べます。
- Q3: 小規模な企業でも導入する意味はありますか?
- 取引件数が少なくても、仕訳の入力や決算資料の作成に時間がかかっている場合は効果が見込めます。小規模向けのプランを用意する製品もあります。まず現在の作業時間を整理し、費用の見合いを検討するとよいでしょう。
- Q4: 導入までにどのくらいの期間がかかりますか?
- 対象範囲や既存データの移行量、連携の有無によって幅があります。会計の処理だけを標準機能で始める場合は短期間で立ち上げられる一方、複数の領域をまとめて入れ替える場合は数か月を要することもあります。決算期を避けた計画を立てましょう。
まとめ
経理システムと会計システムは、明確に区別された用語ではなく、指す範囲は事業者や文脈によって変わります。比較する際は名称ではなく、仕訳と決算、債権債務と入出金、経費精算や請求といった業務の範囲で見ることが実務的です。一つにまとめる構成と分けて連携する構成では、それぞれ利点と課題が異なります。自社に必要な範囲を整理したうえで、連携や費用、制度改正への対応を比べて選びましょう。


