※最新動向について
労働基準法の見直しについては、2025年12月に厚生労働大臣が2026年の通常国会への法案提出を見送る考えを示しました。その後、2026年7月に閣議決定された「骨太の方針2026」で、夏以降に労働政策審議会で議論することが示されました。2026年9月16日には、労働政策審議会の労働条件分科会で議論が再開されています。法案の内容や提出時期はまだ決まっていません。この記事では、厚生労働省の研究会報告書や審議会の資料などをもとに、現時点で示されている検討内容を解説します。
参考:「労働基準関係法制研究会」の報告書を公表します|厚生労働省
2026年労働基準法改正とは
2026年の労働基準法改正は、長時間労働の是正強化と多様な働き方への制度対応を進める動きです。
時間外労働の上限規制の運用厳格化や割増賃金ルールの整理、テレワークや副業に対応した労働時間管理の明確化などが論点とされています。人手不足や働き方の多様化を背景に、企業には実態に即した労務管理体制の強化が求められています。
改正が検討されている背景
現行の労働基準法は、企業でフルタイム勤務する従来型の働き方を前提に設計されており、多様化する働き方に十分対応できていない点が課題となっていました。特に次のような問題が指摘されています。
- ●長時間労働の是正が不十分
- ●休日や休息時間の規定が曖昧
- ●副業・兼業者の労働時間管理の複雑さ
- ●デジタル時代の「つながらない権利」の未整備
法案提出見送りの背景と今後のスケジュール
当初は2026年の通常国会への法案提出も視野に議論が進められてきました。しかし、2025年12月26日の記者会見で、厚生労働大臣は「2026年の通常国会での法案提出は現在のところ考えていない」と述べました。報道によると、見送りの理由は、首相から労働時間規制の緩和を検討するよう指示があり、政府の成長戦略の会議でも働き方を議論することになったためです。提出時期は、その議論を踏まえて判断する方針です。
その後、2026年7月21日に「骨太の方針2026」が閣議決定されました。柔軟で多様な働き方を実現するため、労働時間法制などについて夏以降の労働政策審議会で議論することが盛り込まれています。これを受けて、2026年9月16日に労働政策審議会の労働条件分科会が開かれました。今後の議論の進め方や、年次有給休暇・過半数代表者などの論点が示されています。
連続勤務の規制や勤務間インターバル制度の法的な位置づけ、「つながらない権利」なども、引き続き検討の対象です。企業としては、今後の審議の行方を確認しながら、将来の制度改正を見据えた準備を進めておくことが重要です。
参考:第211回労働政策審議会労働条件分科会(資料)|厚生労働省
施行時期
現時点で、法案の内容や国会への提出時期、施行時期は決まっていません。今後の労働政策審議会の議論や国会審議の状況によって、内容やスケジュールが変わる可能性があります。審議会の資料などで、最新の情報を継続して確認しましょう。
2026年労働基準法改正の主な検討内容
今回の見直し議論では、労働者の健康確保と働き方の多様化への対応を軸に、複数の項目が検討されています。これらの見直しが実現した場合、企業の労務管理に大きな影響を与える可能性があります。
参考:労働時間法制の具体的課題について
(法定休日・連続勤務規制、勤務間インターバル、つながらない権利)|厚生労働省
参考:労働時間法制の具体的課題について
(テレワーク等の柔軟な働き方、副業・兼業、管理監督者、労働時間の情報開示)|厚生労働省
1. 連続勤務の上限規制
現行法では「4週間を通じて4日の休日」があれば、理論上24日間の連続勤務が可能でした。研究会報告書では、労働者の健康確保を目的として、連続勤務を13日までに制限することが検討されています。
改正のポイント
- ●4週4休の特例を2週2休へ見直し
- ●連続勤務の上限を13日までに制限
- ●シフト制を採用する業界への影響が特に大きい
2. 法定休日の特定義務化
これまで曖昧だった法定休日の特定について、義務化される方向で検討が進んでいます。多くの企業が週休2日制を採用する中で、法定休日と法定外休日の区別をより明確にし、休日労働の割増賃金計算におけるトラブルを防ぐ狙いがあるとみられます。
| 項目 | 現行 | 改正後(予定) |
|---|---|---|
| 法定休日の特定 | 特定義務なし | 就業規則で明確に特定される方向 |
| 休日労働の割増賃金 | 基準が曖昧になりやすい | 明確な基準に基づき計算しやすくなる見込み |
3. 勤務間インターバル制度の義務化
現在は努力義務とされている勤務間インターバル制度について、義務化を視野に入れた検討が進められています。研究会報告書では、終業から次の始業まで原則11時間のインターバルを確保することを基本とする方向性が示されています。制度を導入している企業の割合が6.9%(2025年1月1日時点)にとどまる現状を踏まえ、労働者の休息時間を確実に確保する狙いがあります。
参考:令和7(2025)年就労条件総合調査 結果の概況|厚生労働省
勤務間インターバル制度とは
終業時刻から次の始業時刻までに一定時間以上の休息時間を確保する制度です。例えば23時に終業した場合、翌日の始業を10時以降とする形が想定されています。
4. 有給休暇の賃金算定方法の統一
年次有給休暇取得時の賃金算定方法については、現行の3方式(平均賃金方式・通常賃金方式・標準報酬日額方式)を整理し、原則として通常賃金方式を基本とする方向で議論が行われています。制度の簡素化と労働者間の不公平是正が目的とされています。
5. つながらない権利のガイドライン策定
勤務時間外の業務連絡への対応に関するルール整備についても検討が進められています。いわゆる「つながらない権利」の在り方について、ガイドライン等による整理が論点となっています。
6. 副業・兼業の労働時間通算ルールの見直し
副業・兼業における労働時間通算の在り方についても見直しが議論されています。特に、割増賃金の計算方法や健康確保のための労働時間管理の整理が論点となっており、通算ルールの合理化が検討されています。
7. 週44時間特例の廃止
特定業種の小規模事業場に認められてきた「週44時間」の法定労働時間特例についても、撤廃を含めた見直しが論点となっています。すべての事業場で週40時間へ統一される方向性が示されていますが、具体的な制度設計は今後の議論に委ねられています。
8. 時間単位の年次有給休暇の拡大
時間単位の年次有給休暇の扱いについても検討対象となっています。特に、年5日の時季指定義務との関係整理など、制度運用の明確化が論点とされています。
9. 裁量労働制・変形労働時間制の見直し
骨太の方針2026では、規制を強める論点だけでなく、裁量労働制の対象の在り方の見直しや、変形労働時間制の検討も盛り込まれました。健康の確保や長時間労働の防止を前提に、働き方の選択肢を広げる方向の議論もあわせて進められます。裁量労働制や変形労働時間制を使っている企業は、今後の議論にも注目しておきましょう。
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2026年労働基準法改正が企業に与える3つの影響
労働基準法の改正は、企業経営に多面的な影響を与えます。特に人件費や労務管理実務、業務プロセスの3つの領域で大きな変化が予想されます。
人件費への影響
法改正が行われた場合、労働時間の上限や休息時間の基準が厳格化され、企業には追加コストが発生する可能性があります。特にシフト制や小規模事業場では、割増賃金の増加や人員補充など、人件費への直接的な影響が避けられません。
- ●割増賃金の増加:週44時間特例廃止により、中小企業では週40時間超がすべて時間外労働に
- ●人員追加の必要性:連続勤務上限や勤務間インターバルにより、既存人員では業務が回らない可能性
- ●管理職を含めた労働時間把握の徹底:管理監督者も含めた労働時間の状況の把握は義務化されており、規制が強まれば、より厳密な管理とそのためのコストが必要になる可能性
労務管理実務への影響
今回の改正が行われた場合、労働時間管理の考え方が大きく変わるため、人事労務担当者の業務負担も増加します。特に日々の勤怠データの確認やアラート設定など、従来以上に細やかな管理体制が求められます。
- ●勤務間インターバルの遵守確認:前日の終業から規定の休息時間が確保されているか日次でチェック
- ●連続勤務日数の管理:上限を超えないよう、アラート機能などを活用して早期に把握
- ●法定休日を前提とした休日出勤管理:特定した法定休日に出勤した場合の割増計算を正確に処理
- ●副業を行う社員の労働時間把握:健康管理の観点から、他社での労働状況も含めて適切に確認
業務プロセスへの影響
労働時間に関するルールが厳しくなることで、従来の業務の進め方では対応が難しくなる可能性があります。業務フロー全体を見直し、生産性向上や業務削減につながる取り組みがこれまで以上に求められます。
- ●業務の自動化・効率化:RPAやデジタルツールを活用し、手作業を減らして時間を創出
- ●会議・業務の合理化:目的が曖昧な会議や付帯作業を見直し、削減する
- ●多能工化による柔軟な配置:複数業務を担える人材を育成し、シフト調整をしやすくする
- ●不採算業務の見直し:労働時間の制約とコスト増を踏まえ、事業・業務の優先順位を整理
2026年労働基準法改正において企業が取るべき対応策
法改正が実施された場合の適切な対応は、コンプライアンス確保だけでなく、企業の競争力向上にもつながります。早期の準備により、スムーズな移行と組織の強化を実現しましょう。
就業規則の全面見直し
今回議論されている法改正案は、勤務時間・休日・副業ルールなど複数領域に影響するため、就業規則の整合性を総点検することが必須です。実務運用に直結する項目ほど、早めの見直しが求められます。
- ● 法定休日の特定:例「法定休日は日曜日とする」など、就業規則上で明確に定める
- ● 勤務間インターバル制度の規定整備:休息時間の確保方法や例外基準を明文化
- ● 副業・兼業ルールの明確化:許可基準や申請手続き、管理方法を定める
- ● つながらない権利への対応:勤務時間外の連絡ルールを服務規律に反映
雇用契約書・業務委託契約書の整備
「労働者」の定義見直しが議論されているため、契約内容が適切かどうかを再確認する必要があります。誤った契約形態は労務トラブルにつながるため、早期の整備が重要です。
- ●雇用契約書の更新:勤務時間・休日・副業ルールなど、改正内容を反映
- ●業務委託契約の指揮命令関係の明確化:労働者性を誤認されないよう役割を整理
- ●偽装請負の防止:契約条件が実態と一致しているか再点検
人件費影響のシミュレーション
労働時間に関する規制が強化される可能性があるため、人件費がどの程度増えるのかを事前に把握しておくことが重要です。シミュレーションにより、採用計画や予算策定の精度を高められます。
- ●割増賃金増加の試算:週44時間特例廃止に伴う追加コストを計算
- ●必要人員数の再試算:連続勤務上限・インターバル導入による人員不足への対応
- ●業務プロセス改善によるコスト削減効果の分析:自動化・効率化の投資判断に活用
勤怠管理システムの導入・更新
法改正が行われた場合、勤務時間の厳格な管理が必要となる可能性があるため、従来の手作業やExcel管理では対応が難しくなります。システム化することで日次管理や自動アラートなど、運用負荷を大きく軽減できます。
- ■手作業管理のリスク
- ●勤務間インターバルの未確認・チェック漏れ
- ●連続勤務日数の管理ミスや見落とし
- ●複雑化した割増賃金計算による誤計算
- ●管理職を含む全社員の労働時間把握に伴う負荷増大
- ■システム導入によるメリット
- ●法改正内容を自動反映できる
- ●違反リスクをアラートで事前に回避
- ●人事・労務担当者の業務負荷を大幅に削減
- ●労働時間や給与計算の精度が向上
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法改正対応に向けた勤怠管理システムの比較ポイント
労働基準法改正への対応を見据えて勤怠管理システムを選ぶ際は、単に出退勤を記録できるだけでなく、勤務間インターバルや連続勤務日数、法定休日、残業時間などを正確に管理できるかが重要です。製品によって対応できる機能やアラート設定、給与計算システムとの連携範囲は異なるため、自社の勤務形態や管理体制にあわせて比較しましょう。
- ●勤務間インターバル不足を自動で検知できるか
- ●連続勤務日数や残業時間に応じたアラートを設定できるか
- ●法定休日・法定外休日を区別して管理できるか
- ●シフト制や変形労働時間制に対応しているか
- ●給与計算システムと連携できるか
- ●法改正時のアップデートに対応しているか
2025〜2026年に施行された労働関連の改正
大きな見直しの議論とは別に、2025〜2026年にも勤怠管理に関わる改正が施行されています。2025年4月と10月には改正育児・介護休業法が施行され、残業免除の対象拡大や柔軟な働き方を実現するための措置が始まりました。2026年には、4月から子ども・子育て支援金の徴収が始まり、10月からはパートタイム・有期雇用労働者を雇い入れるときの明示事項が追加されています。
これらの改正の内容や、勤怠管理で見直すべき点は、以下の記事で詳しく解説しています。
2026労働基準法改正への対応で企業競争力を高めよう
労働基準法の改正は、企業に新たな対応を求める一方で、組織をより強くするチャンスでもあります。法改正をきっかけに業務改善や働きやすい環境づくりを進めることで、生産性向上や人材定着にもつながり、結果的に企業競争力を高められます。
デジタル化による業務効率向上
法改正を機に勤怠管理のデジタル化を進めることで、日々の管理業務の質を大きく高められます。以下のような効果により、担当者の負担軽減と運用の安定化が期待できます。
- ●手作業に伴う入力ミス・確認漏れの防止
- ●労働時間をリアルタイムに正確把握
- ●ルール逸脱時の自動アラートによる法違反リスク削減
- ●勤怠データを一元管理し、分析や改善施策に活用できる
働きやすい職場環境の構築
適切な休息時間の確保や「つながらない権利」への配慮は、従業員のストレス軽減や業務への集中力向上につながります。職場の満足度と生産性が高まり、採用面でも魅力的な企業として評価されやすくなります。人材獲得競争において大きなアドバンテージとなるでしょう。
コンプライアンス体制の強化
法改正に沿った運用を行うことで、労使トラブルの防止や企業リスクの低減につながります。また、透明性の高い労務管理体制は、取引先や投資家など外部ステークホルダーからの信頼向上にも寄与します。
2026年改正への対応を確実に進めるためには、自社の運用に合った勤怠管理システムを選ぶことが欠かせません。とはいえ、各サービスの特徴や違いを把握するのは簡単ではありません。 そこで、ITトレンドでは、主要な勤怠管理システムを比較しながら検討できる記事も用意しています。導入を具体的に進める前に、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
労働基準法制の見直しは、2026年の通常国会への提出こそ見送られたものの、2026年9月から労働政策審議会で議論が再開されています。連続勤務規制や勤務間インターバル制度、休日制度の整理に加えて、裁量労働制の見直しなど働き方の選択肢を広げる論点も議論の対象です。
現時点では制度内容や施行時期は確定していませんが、将来の改正に備えて、勤怠データの把握や就業規則の点検など、早めに準備を進めておくことが重要です。


