2023年から施行される法改正の内容
まずは、勤怠管理に関連する法改正の最新情報を紹介します。2022年現在、これから適用される法改正は労働基準法の「月60時間超割増率引き上げ」です。
従来の労働基準法では、月60時間以下の時間外労働の場合だと割増賃金率が25%以上、月60時間超だと50%以上と定められていました。これは大企業に適用されており、中小企業では猶予措置がとられ、月60時間以下でも月60時間超でも25%以上となっていたのです。
しかし、2023年4月にはこの猶予措置が終了し、月60時間超の時間外労働においては割増率が50%以上に引き上げとなります。月60時間超の時間外労働を行った場合、割増賃金(25%以上を上回る部分)の代わりに代替休暇(有休)を与えることも可能です。
参考:労働基準法
2019~2021年に施行された法改正の内容
ここからは2021年以前の法改正をおさらいします。
パートタイム・有期雇用労働法「同一労働同一賃金」
パートタイム・有期雇用労働法では同一企業内において、正社員とパートタイマー・有期雇用労働者の間で不合理な待遇差を設けるのは禁止されています。正社員との待遇差があった場合には、パートタイマーや有期雇用労働者が事業主に説明を求めることが可能で、事業主は説明責任があります。
雇用形態にかかわらず、職務内容や配置変更の範囲で処遇する取り組みが、同一労働同一賃金です。大企業では2020年4月から施行され、中小企業は2021年4月からの施行となります。
参考:パートタイム・有期雇用労働法について|厚生労働省
育児・介護休業法「子の看護・介護休暇の時間単位の取得」
育児・介護休業法の改正により2021年1月1日から、育児や介護を行う労働者は、子の看護休暇や介護休暇を時間単位で取得できます。これはすべての企業、育児や介護を⾏うすべての労働者が対象です。
法改正前は半日単位での子の看護休暇・介護休暇の取得は可能でしたが、1⽇の所定労働時間が4時間以下の場合だと取得できませんでした。しかし、法改正後は時間単位ですべての労働者が取得できるので、柔軟な働き方が可能になるでしょう。
なお、休暇の取得単位が半日から時間に変わるので就業規則の変更が必要です。また、年次有給休暇と同じく「1日の所定労働時間数に相当する時間数×5日(あるいは10日)」の計算式を使えば、時間単位で取得可能な休暇の時間数が求められます。
参考:育児・介護休業法について|厚生労働省
2019年4月施行の働き方改革関連法に伴う法改正の内容
2019年4月に施行された働き方改革関連法は、労働基準法や労働安全衛生法など労働規制にかかわる一連の法律を改正させるほどのインパクトがありました。
主な法改正の内容は以下のとおりです。
- ■時間外労働の上限規制
- ■有給休暇の取得義務化
- ■高度プロフェッショナル制度創設
- ■フレックスタイム制の清算期間変更
- ■勤怠管理の対象拡大(管理監督者・みなし労働時間制の労働者)
- ■勤務間インターバル制度
- ■産業医の機能強化
今回はこの中でも重要な「時間外労働の上限規制」と「有給休暇の取得義務化」についておさらいしていきましょう。
労働基準法「時間外労働の上限規制」
1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超える時間外労働は、36協定を締結していれば可能となりますが、原則月45時間・年360時間までと上限が設けられています。これは、2019年4月から大企業で、2020年4月から中小企業で施行となっています。
また、臨時的な特別な事情がある場合に限り、36協定の特別条項によって月100時間未満、年720時間以内、2〜6か月の平均80時間を超えなければ時間外労働が可能です。ただし、月45時間を超えられるのは、年間6か月までとなります。上限規制に違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるので注意してください。
参考:時間外労働の上限制限|厚生労働省
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労働基準法「有給休暇の取得義務化」
労働基準法の改正により2019年4月から、年10日以上の年次有給休暇が付与されている労働者に対し、年次有給休暇を5日は取得させることが義務化されました。これに違反すると、30万円以下の罰金が科されます。
ちなみに、雇入れの日から6か月継続して雇われており、全労働日の8割以上出勤している労働者には原則10日の年次有給休暇を与えなければなりません。これは管理監督者や有期雇用労働者も対象です。パートタイム労働者など、所定労働日数が少ない場合には、所定労働日数に応じた年次有給休暇日数が比例付与されます。
参考:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説|厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署
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法改正に対応していくには勤怠管理システムの導入が有効
法改正によって、勤怠管理の重要性はますます高まっています。タイムカードやエクセルでの勤怠管理では、リアルタイムで労働時間を把握できず、休暇管理を別途行う必要があります。さらに、知らぬ間に時間外労働の上限を超えてしまっていたなど、法改正への対応漏れのおそれもあるでしょう。このように勤怠管理が正しく行えないと、労働基準法違反による罰則や社会的信用を損なう危険が伴うことを忘れてはなりません。
そこで、おすすめしたいのが勤怠管理システムです。勤怠管理システムの多くはクラウド型で提供されており、法改正に順次対応し自動でアップデートされます。さらに、残業時間や有給の取得、打刻状況をリアルタイムで可視化し、違反する前にアラートが表示される製品もあるのですぐに対処できます。
ほかにも、GPS打刻やシフトの自動作成など便利機能を搭載した製品など種類はさまざまです。以下の記事では、定番の勤怠管理システムの機能や価格を比較して紹介していますのでぜひご覧ください。
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勤怠管理システムを導入して適切な管理を!
法改正は毎年のようにあるので、勤怠管理の担当者は常に最新情報を追っていく必要があります。法改正に対応していくには勤怠管理システムの導入がおすすめです。システムが改正内容にあわせて自動アップデートされるので、対応漏れがなくなるでしょう。この機会にぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。