自治体における勤怠管理の課題
自治体における勤怠管理業務は、民間企業と比べても複雑で多様な要素を抱えています。従来の紙ベースの管理方法では、業務負担が増大し法令遵守の徹底が難しいうえ、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の遅れが業務効率化の妨げとなっています。それぞれの課題について、以下で詳しく解説します。
- ■紙ベースの管理による業務負担
- 多くの自治体が紙の出勤簿や手書きの勤務記録を使った勤怠管理を行っている。アナログな管理体制では集計ミスが発生しやすく、業務の非効率化を招いている。
- ■複雑な勤務形態への対応
- 自治体職員の勤務形態は、常勤職員・非常勤職員・パートタイム職員・臨時職員・会計年度任用職員(非正規職員)など多様。部署ごとにシフト制やフレックスタイム制、変形労働時間制などの勤務形態が混在しているため、勤怠管理が非常に煩雑。
- ■法令遵守の難しさ
- 自治体では、労働基準法や地方公務員法、マイナンバー法など、複数の法規制を遵守する必要がある。しかし、法令は定期的に改正されるため、手作業での勤怠管理では対応が追いつかない。特に、時間外労働の上限規制や有給休暇の取得義務管理など、新たな法改正に適切に対応できるかが課題となっている。
- ■セキュリティ管理の難しさ
- 自治体の勤怠データには、職員の個人情報や勤務履歴など機密性の高い情報が含まれる。特に自治体では、法令にもとづく厳格な管理が求められ、アクセス管理の不備や脆弱なシステム環境があると、不正アクセスやデータ漏えいのリスクが高まる。
- ■DX推進の遅れ
- 国による自治体DXの推進が求められるなか、勤怠管理業務におけるDX化が進んでいない自治体も少なくない。特に、予算の確保や既存のシステムとの連携、職員のITリテラシーの向上が課題となっている。DXの遅れは、業務効率やサービス品質に影響を及ぼす可能性がある。
参考:自治体DXの推進|総務省
これらを解消するためには、自治体向けの勤怠管理システムを活用し、業務効率化・法令遵守・データ活用を同時に進めることが重要です。
自治体が勤怠管理システムを導入するメリット
自治体における勤怠管理業務は、職員数の多さや勤務形態の複雑さから、従来の手作業管理では効率的な運用が難しい現状があります。ここでは、自治体が勤怠管理システムを導入することで得られる主なメリットについて、詳しく解説します。
勤務時間の自動集計により職員の業務負担を軽減できる
出退勤データや残業時間、有給休暇の取得状況などが自動で集計されるため、総務・人事部門の職員の作業負担が大幅に軽減されます。特に、毎月の給与計算や勤怠データの照合作業、時間外労働の管理がシステム化されることで、大幅な時間短縮が可能です。
従来、出勤簿の記入や集計に費やしていた時間を住民サービスの向上などほかの業務に充てられます。
労働基準法・地方公務員法への対応を徹底できる
自治体職員の労働時間管理には、民間企業と同様に労働基準法の遵守のほか、地方公務員に特有の地方公務員法にもとづいた管理が求められます。自治体向けの勤怠管理システムには、これらの法令に対応する機能が組み込まれており、法令遵守の徹底が可能です。
特に、年次有給休暇取得義務の管理機能や時間外労働の上限規制を自動監視する機能により、管理担当者の負担を軽減できます。
公的機関に必要なセキュリティ強化が実現する
自治体の勤怠管理業務では、個人情報の適切な保護と法令遵守が求められます。勤怠管理システムを導入することで、アクセス制御・暗号化・ログ管理などのセキュリティ対策が強化され、職員の安心感と管理業務の効率化を同時に実現可能です。
さらに、不正アクセスの防止機能により、セキュリティリスクを最小限に抑制できます。例えば、ICカードや生体認証を活用した打刻システムを導入することで、なりすまし打刻を防止し、正確な勤怠データの記録が可能になります。
自治体DXに関連する記事をまとめて以下からご覧いただけます。自治体に適した各種システム比較記事など、ぜひご確認ください。
自治体向け勤怠管理システムの選び方
自治体における勤怠管理は、民間企業と比べても勤務形態や法令の適用が複雑であり、適切なシステムを選ぶことが重要です。選定時には、自治体の業務フローや法令遵守の要件を満たしているかを確認し、職員の負担を軽減できる機能が備わっているかを見極めましょう。
公共機関での導入実績があるか
実際の運用に適応できるかを見極めるため、自治体での導入事例や運用ノウハウをもつシステムを選ぶことが重要です。特に、同規模の自治体での導入事例があるシステムは、業務フローや運用面での参考になり、スムーズな導入につながります。
また、導入実績が豊富なベンダーであれば、自治体特有のニーズに対応する機能やカスタマイズ性も期待できます。例えば、地方自治体向けに特化した「会計年度任用職員の勤怠管理機能」や「地方公務員法に準拠した時間管理機能」など、必要な要件を満たしているかを確認しましょう。
法改正への柔軟な対応力があるか
自治体職員の勤怠管理は、労働基準法や地方公務員法などの法規制に影響を受けます。特に、法令改正のたびにシステムの設定を変更するのは大きな負担となるため、自動で最新の法改正に対応する機能が備わっていると便利です。
また、労働時間管理や年次有給休暇の取得義務、時間外労働の上限規制など、法改正後の制度を正確に反映できるサポート体制があるかも確認しましょう。
多様な勤務体系に対応できるか
自治体では、常勤・非常勤・パートタイム職員など、さまざまな雇用形態の職員が在籍しています。そのため、シフト勤務やフレックス勤務、時差出勤など多様な勤務体系にも柔軟に対応可能なシステムが求められます。
また、時短勤務制度や管理監督者の労働時間の適用除外など、職員ごとに異なる勤務ルールがあるため、それぞれに応じた設定・管理できる機能が重要です。職種や雇用形態ごとの対応状況も確認しましょう。
自治体のセキュリティ要件を満たしているか
自治体の勤怠データには、職員の個人情報や給与データなど機密性の高い情報が含まれるため、適切なセキュリティ対策が不可欠です。システム選定時には、アクセス制御、データ暗号化、操作ログの記録などの機能を確認しましょう。
特に、自治体の情報セキュリティポリシーに準拠し、LGWAN環境での運用が可能なシステムを選ぶことが重要です。
より詳しい選び方は以下の記事で解説しています。勤怠管理システムの料金相場や、製品タイプなども紹介しているのでぜひ参考にしてください。
【自治体向け】おすすめの勤怠管理システム
ここでは、自治体での導入実績が豊富なシステムや、法令遵守・セキュリティ対策・多様な勤務形態への対応に優れた製品を厳選して紹介します。
ジョブカン勤怠管理
株式会社DONUTSが提供する「ジョブカン勤怠管理」は、シンプルな操作性と高機能を兼ね備えた勤怠管理システムです。ICカード・アプリ・GPSなど豊富な打刻方法を採用し、庁舎勤務や出先機関の職員にも対応しやすいのが特徴。コストパフォーマンスに優れ、予算が限られる自治体にも適しています。
参考価格:月額200円~/ユーザー ※利用機能一つの場合
KING OF TIME
株式会社ヒューマンテクノロジーズが提供する「KING OF TIME」は、フレックスタイム制やシフト管理に対応したクラウド型勤怠管理システムです。リアルタイムの勤怠集計やテレワーク管理機能を備え、自治体のDX推進を支援します。またLGWAN環境での運用により、高いセキュリティを確保できます。
参考価格:初期費用無料、月額300円/ユーザー
セコムあんしん勤怠管理サービス KING OF TIME Edition
セコムトラストシステムズ株式会社が提供する「セコムあんしん勤怠管理サービス KING OF TIME Edition」は、セコムの入退室管理システムと連携可能な勤怠管理システムです。施設管理やセキュリティの強化が求められる自治体に最適です。勤怠データの改ざん防止や不正アクセス対策が充実し、職員の安心・安全な勤務管理を実現します。
参考価格:初期費用無料、月額330円/ユーザー(税込み)、セコム入退室管理システムとの連携や打刻機器利用の場合は別途費用あり
TimePro-VG
アマノ株式会社が提供する「TimePro-VG」は、大規模自治体にも適した勤怠管理システムです。シフト管理や時間外労働の適正化に加え、給与計算システムとのスムーズな連携が可能。高いカスタマイズ性を備え、特定の運用要件にも柔軟に対応します。
参考価格:1,500,000円~ ※最低基本価格、別途操作指導料やオプション項目あり
勤革時(きんかくじ) EXPLANNER/K
日本電気株式会社(NEC)が提供する「勤革時(きんかくじ) EXPLANNER/K」は、生体認証を含め多彩な働き方に合わせた打刻方法が可能な勤怠管理システムです。休暇管理、申請承認、シフト管理、給与システムとの連携など機能も充実し、勤怠管理業務の効率化を実現します。
参考価格:初期費用無料、月額300円~/ユーザー
CYBER XEED就業
アマノビジネスソリューションズ株式会社が提供する「CYBER XEED就業」は、大規模自治体に適したクラウド型勤怠管理システムです。2,000名規模の職員の勤怠管理が可能で、変形労働時間制・フレックスタイム制・シフト管理などに対応。高度なデータ分析機能を備え、労務管理の効率化を支援します。
参考価格:初期費用500,000円~、月額10,000円(基本料金)+430円/ユーザー ※2,000名以下
e-就業OasiS
株式会社ニッポンダイナミックシステムズが提供する「e-就業OasiS」は、クラウド型の勤怠管理システムです。固定勤務、フレックス勤務、時短勤務、時差勤務など、100種類以上の勤務区分を設定可能。パートタイム職員や会計年度任用職員の勤怠管理にも活用できます。
参考価格:初期費用100,000円、月額32,000円(税込み)※100名で利用する場合
まとめ
自治体における勤怠管理は、法令遵守や多様な勤務形態への対応、業務効率化の実現など、多くの課題を抱えています。これらの課題を解決するためには、自治体での導入実績が豊富で、法改正にも柔軟に対応できる勤怠管理システムの導入が有効です。
自治体向け勤怠管理システムの詳細を比較するには、資料請求の活用が便利です。自治体に最適な製品を導入し、DXの推進とともに勤怠管理業務の効率化を進めていきましょう。