勤怠管理システム導入の背景
システムを導入する前には必ず課題があり、課題解決策としてITツールがあります。それでは、今回のモデル企業はどんな企業で、どのような課題があったのでしょうか。
企業概要
今回のモデル企業は、イベントにおけるブースの設計・デザイン・施工をおこなっているB社です。顧客ニーズに的確に応える空間デザイン力に加え、特殊な顧客ニーズを形にする匠の技に強みがあります。
従業員数は100人程度。若き感性も重要視しているため、20代から30代の若手社員も数多く在籍しており、活気にあふれ風通しの良い会社です。会社の業績も拡大を続けており、従業員の数が年々増加するなど成長過程にあるといえます。
勤怠管理システム導入に至るまでの課題
B社では、イベントにおけるブースの設置をしている都合上、施工を担当する従業員はイベントの時間に勤務時間が左右されます。早朝や夜間の作業が必要になることもあります。遠方でのイベントの場合も多く、移動時間も長くなる傾向にあるため、勤務時間をどのように把握するのかが課題となっていました。
同時に、残業についてはなんの管理もしていないと、だらだらと長時間化する傾向にありました。管理の目が引き届かない従業員の残業を抑制しなければならないという難しい課題に直面していたのです。事前に残業申請をしようにも、紙ベースでの申請手続きでは、外出先からでは運用が回らないことが分かってきました。
働き方の自由度を高めるための、独自の勤務形態も管理上の弊害となっていました。B社では、イベントがある期間に業務量が集中する傾向にあることから、積み上げた残業を有給休暇に振り替えることができるという独自のルールを設けていたのです。
ところが、従業員の数が多くなるにつれ、従業員ごとの残業時間の管理や有給休暇の管理に行き詰まるようになりました。残業時間を正確に把握し、有給休暇への振替を正しく承認できる仕組みが必要になってきたのです。
ベンダー選定にあたり重視したこと
課題が顕在化することで、勤怠管理システムの導入に動き出したB社ですが、ベンダー選定にあたっては、どのような点を重要視したのでしょうか。
遠距離からのWeb打刻機能
現地で施工する従業員の勤怠を管理するためには、直行・直帰を許可しながら正しく勤怠時間を把握しなければなりません。そこで、B社が重要視したのがWeb打刻機能です。会社に出社することなく、貸与しているスマートフォンでWeb打刻ができる製品を選定することにしました。
このときに、重要視したのが打刻した時間だけではなく、打刻した場所をGPSを使って記録する機能です。従業員への目が行き届かない中でも、正確に勤務時間を把握できる機能を搭載した製品を選びました。
自社独自の就業規則に対応できる
B社には、積み上げた残業時間を有給休暇に振り替えることや、勤務時間の自由度を高めるための期間限定のフレックス制度など、独自の就業規則がありました。
こうした独自のニーズに対応するためには、一般的にはソフトウェアのカスタマイズが必要になります。しかし、カスタマイズはコストがかかるうえに、バージョンアップなどの保守性にも問題があります。このため自社独自の就業規則は、できるかぎりパッケージの標準機能で実現できることを重要視しました。
勤怠に関連するワークフローの実現
B社の課題を解決するためには、残業申請、有給休暇の取得に加え、期間限定のさまざまな勤務方法などに関して、承認ワークフローの実現が必須となっていました。しかも、外出先からでもスマートフォンなどを使って申請ができるようにしなければなりません。
オンラインによるワークフローを実現するためには、ワークフローツールの導入も解決策になります。しかし、コストや管理の側面から、勤怠管理システムの中にワークフロー機能が内包されている製品を選定することにしました。
インターフェース
勤怠管理システムの導入により、従業員の働きやすい環境整備につながる一方で、打刻やワークフローなどを通じて、従業員が直接、勤怠管理システムにアクセスすることが多くなります。
せっかくシステムを導入しても、使い勝手が悪く、誤った操作や問い合わせが多発するようでは、システム運用に行き詰まり、最悪の場合はシステム導入前の状態に後戻りすることにもなりかねません。
たとえ、情報機器に慣れていない従業員でも、直観的に操作ができるインターフェースを兼ね備えていることを、条件に設定しました。
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勤怠管理システム導入後の効果
従業員が働きやすい環境整備と、残業代の抑制などの管理面の整備を両立させるために導入した勤怠管理システムですが、導入後B社にどのような恩恵を与えたのでしょうか。
従業員の働く意欲の向上
勤怠管理システムを導入する前は直行・直帰を許されたものの管理上の問題から、できる限り会社に戻るという雰囲気が醸成されていました。
勤怠管理システムの導入後は、気兼ねなく直行・直帰ができるうえ、Web打刻で勤務時間を記録することも可能であるため、働きやすい環境整備につながったのです。また、残業時間もリアルタイムでどこでも確認できることから、有給休暇への振り替え可否の判断がしやすくなりました。有給申請も手軽にスマートフォンででき、有給休暇の取得率が向上したのです。
勤怠管理システムを導入する前と比較すると働きやすい環境整備につながり、従業員の働く意欲は向上しました。B社の競争力の源泉は、人材にあります。今後は、競争力のさらなる向上が期待できるといえそうです。
残業の抑制
B社では、従業員の残業時間が月50時間を超えることは頻繁に起こっていました。勤怠管理システムの導入をきっかけに、「原則的に残業は禁止、残業する場合は事前申請が必要」というルールを設けました。たとえ、事前申請制度にしたとしても、スマートフォンからでも簡単に申請できるため、現場に混乱は起こらないと判断したのです。
その結果、残業は50%以上抑制でき、従業員の働く環境の改善にもつながりました。さらに、残業の抑制を通じて人件費を抑制し、収益力を強化できました。
案件ごとの人件費の把握
B社では、勤怠管理システムの導入前から、原価管理システムを導入しており、案件ごとの原材料費や外注費を管理していました。ここに、勤務時間を紐付けることで、従業員の人件費を計算でき、より正確な原価の把握につながったのです。
このような取り組みにより、B社は案件の採算性を意識した見積提示ができ、確実に利益を得られるようになりました。
勤怠管理システムで人材の力を最大化できる
勤怠管理システムは、従業員の勤務時間を正確に把握するなど、管理だけが目的のシステムではありません。従業員が働く環境を整備し、モチベーションを向上させて、社員の定着率を高めることを目的にするべきです。残業の抑制も実現しやすいため、勤怠管理システムを起点にして、企業の収益力を高めることができるという効果もあります。
中小企業でも、管理と環境整備を両立させて、企業の競争力を向上を実現するケースは少なくなりません。コロナ時代を生き抜くためにも、勤怠管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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