名刺は個人情報?個人情報保護法上の扱い
氏名や勤務先、連絡先などが記載された一般的な名刺は、原則として個人情報に該当します。個人情報保護法では、生存する個人に関する情報のうち、氏名などによって特定の個人を識別できる情報を「個人情報」としています。
そのため、名刺を単に紙で保管しているだけでも、そこに記載された氏名などの情報自体は個人情報です。一方、名刺を一定の規則で整理したり、デジタル化して検索できるようにしたりすると、「個人情報データベース等」を構成する「個人データ」として扱われる場合があります。
| 名刺の状態 | 個人情報 | 個人データ |
|---|---|---|
| 受け取った紙の名刺 | 原則該当する | 管理方法による |
| 整理せず名刺入れなどで保管 | 原則該当する | 通常は該当しない |
| 五十音順など一定の規則で整理 | 該当する | 該当する場合がある |
| Excelやスプレッドシートで一覧化 | 該当する | 該当する場合がある |
| 名刺管理システムでデータベース化 | 該当する | 原則として該当する |
「個人情報」と「個人データ」は同じ意味ではありません。個人情報のうち、検索できるよう体系的に整理された個人情報データベース等を構成する情報が「個人データ」に該当します。
例えば、紙の名刺でも五十音順など一定の規則で整理され、特定の人物の情報を容易に検索できる状態であれば、個人情報データベース等に該当する可能性があります。また、従業員本人しか利用できない名刺情報であっても、企業の業務に利用していれば企業の個人情報データベース等に該当する場合があります。
なお、2026年7月には令和8年改正個人情報保護法が公布されています。ただし、主要な改正内容は2026年9月時点では未施行であり、施行に向けて政令・規則・ガイドラインなどの整備が進められています。最新の情報は個人情報保護委員会の公表内容を確認しましょう。
参考:「個人情報」「個人データ」「保有個人データ」とは、どのようなものですか。|個人情報保護委員会
参考:「個人情報データベース等」とは何か。|個人情報保護委員会
名刺管理に関係する個人情報保護法の主な変更点
個人情報保護法はこれまで複数回改正されており、名刺を管理する企業にも影響する変更が行われています。特に押さえておきたいのは、個人情報を取り扱う事業者の適用範囲と、第三者提供に関するルールです。
5,000人以下の事業者も個人情報保護法の対象
以前は、取り扱う個人データが5,000人分以下の事業者について、個人情報取扱事業者から除外する規定がありました。しかし、2017年施行の改正個人情報保護法によってこの規定は廃止されています。
現在は、取り扱う個人情報の件数が少ない企業であっても、個人情報データベース等を事業に利用していれば、原則として個人情報保護法の対象となります。中小企業や個人事業主も、名刺情報をデータベース化して管理する場合は適切な取扱いが必要です。
参考:個人情報を取り扱う件数が少ない事業者も個人情報取扱事業者に該当しますか。|個人情報保護委員会
第三者提供やオプトアウトのルールも見直されている
個人データを第三者へ提供する場合は、原則として本人の同意が必要です。本人の同意を得ずに提供できるオプトアウト制度もありますが、個人情報保護委員会への届出など一定の要件があります。
名刺情報を他社へ提供する場合は、オプトアウト制度が利用できるかを含め、現在のルールを確認したうえで対応しましょう。
参考:オプトアウト規定による第三者提供の届出|個人情報保護委員会
改正個人情報保護法における名刺管理のポイント
個人情報保護法の改正点を踏まえたうえで、適切に名刺管理するための3つのポイントを紹介します。
名刺情報の安全管理措置を徹底する
安全管理措置とは、個人データの漏えい、滅失または毀損などを防止するために講じる措置のことです。具体的には、以下の措置があります。個人情報の取扱いに関する規定を策定したうえで、それぞれの措置を徹底しましょう。
- ■組織的安全管理措置
- 個人情報を扱う組織体制の整備
- ■人的安全管理措置
- 従業員の教育
- ■物理的安全管理措置
- 持ち出しなどの物理的な情報漏えいを防ぐ
- ■技術的安全管理措置
- システム面でのセキュリティ対策
名刺の利用目的の遵守を徹底する
名刺情報は、特定した利用目的の範囲内で利用する必要があります。なお、企業の従業員であることを明らかにして名刺交換した場合、自社の商品・サービスに関する案内などは、取得時の状況から利用目的が明らかと認められる場合があります。
基本的に、名刺は自己紹介や仕事上で必要な連絡をとることを目的に交換します。特定した利用目的の達成に必要な範囲を超えて名刺情報を取り扱う場合は、原則としてあらかじめ本人の同意を得る必要があります。
名刺情報の第三者提供は同意を得る
名刺情報を個人データとして管理し、第三者へ提供する場合は、提供先の氏名・名称や本人を特定する事項、提供した個人データの項目、本人の同意を得ている旨などについて、法令に基づき記録を作成・保存する必要があります。
ただし、ここでいう第三者提供は第三者が自由に扱える形でデータを渡す場合に限ります。利用目的の達成に必要な範囲で業務を委託する場合や、一定の要件を満たして共同利用する場合などは、個人情報保護法上、第三者に該当しないケースがあります。
名刺管理の不備がもたらす個人情報漏えいリスク
名刺の管理が適切に行われていないと、思わぬ形で個人情報漏えいのリスクが高まります。代表的なリスクと対策は以下のとおりです。
| リスク | 具体例 | 主な対策 |
|---|---|---|
| 紛失・盗難 | 名刺や端末を社外で紛失する | 持ち出しルールの策定、保管場所の限定 |
| 不適切な廃棄 | 不要になった名刺をそのままゴミ箱へ捨てる | シュレッダーや溶解処理を行う |
| 不正アクセス | 権限のない従業員が名刺データを閲覧する | アクセス権限や認証を設定する |
| 内部不正 | 従業員が顧客情報を不正に持ち出す | 権限管理や操作ログの記録を行う |
特に、複数の従業員が名刺情報を共有する企業では、「誰が・どの情報に・いつアクセスしたか」を管理できる環境を整えることが重要です。
名刺を処分する際のポイント
名刺を処分する際のポイントは、以下の2つが挙げられます。
- ●必ずシュレッダーや溶解処理をする
- ●名刺の保管期限を決めて定期的に処分する
もらった名刺には個人情報が含まれているため、処分する際は必ずシュレッダーや溶解処理をするようにしましょう。原本だけではなくコピーが残っていないかも確認し処分してください。
また、名刺は保管期限が特に定められていないため、処分しなければそのまま増え続けてしまい管理も煩雑になります。そのため、「一定期間、取引がない場合は処分する」など、名刺の処分の基準を定めることがおすすめです。
法令を守りながら名刺管理を効率化する方法
法令遵守しながら名刺管理を効率的に行う方法として、次の4つが挙げられます。
物理的なファイリングシステムの導入
従来型の方法として、名刺をファイリングケースやバインダーで整理する方法があります。アルファベット順や部署別に整理することで、ある程度の効率化は図れます。
しかし、大量の名刺を扱う場合は検索に時間がかかり、物理的なスペースも必要です。また、紛失や不適切な廃棄のリスクが残るため、セキュリティ面での課題が残ります。
エクセルやスプレッドシートによるデータ管理
エクセルやGoogleスプレッドシートなどを使用して、名刺情報をデジタル化する方法もあります。検索や並べ替えが容易になり、物理的なスペースも節約できます。
ただし、手動での入力に時間がかかり、入力ミスのリスクもあるでしょう。また、誰でも簡単に情報を編集したり、コピーしたりできてしまうため、アクセス権限の管理といったセキュリティ対策は別途行う必要があります。
エクセルによる名刺管理の方法が知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
社内サーバでのデータベース構築
社内にデータベースサーバを構築し、名刺情報を一元管理する方法もあります。セキュリティ面では自社での管理も可能ですが、初期投資や運用コストが高く、専門的な知識も必要です。
また、リモートアクセスや災害時のバックアップなど、追加の対策が必要になる場合があります。
名刺管理アプリの活用
改正個人情報保護法を守りながら適切に名刺管理するには、名刺管理アプリの活用が最も効果的です。アプリで名刺を一括管理すれば、紛失や不正な持ち出しによる情報漏えいのリスクを大幅に軽減できるだけでなく、次のようなメリットもあります。
- ●OCR技術による自動データ化で入力の手間を削減
- ●クラウド上での管理によるアクセスの柔軟性と災害対策
- ●高度な検索機能による業務効率の向上
- ●アクセス権限の細かな設定によるセキュリティ強化
- ●自動バックアップによるデータ損失リスクの低減
- ●法令遵守のための機能(利用目的の記録、第三者提供の管理など)
特におすすめしたいのはクラウド型の名刺管理アプリです。クラウド上で名刺情報を管理することで、端末内へのデータ保存を抑え、端末紛失時の情報漏えいリスクを軽減できます。ただし、アクセス制御や多要素認証などのセキュリティ対策は必要です。以下の点を重視して、信頼できるものを選びましょう。
- ●プライバシーマークを取得しているか
- ●通信を暗号化できるか
- ●データセンターのセキュリティレベルは高いか
以下の記事では、ITトレンドがおすすめする名刺管理アプリを比較し紹介しています。詳しい製品情報が知りたい方は、ぜひご覧ください。
「自社に合う名刺管理ソフトを診断してみたい」、「どんな観点で選べばいいかわからない」という方向けの診断ページもあります。
【FAQ】名刺と個人情報に関するよくある質問
ここでは、名刺と個人情報保護法についてよくある疑問をまとめます。
- ■名刺は個人情報に該当しますか?
- 氏名や勤務先などによって特定の個人を識別できる一般的な名刺は、個人情報に該当します。紙で保管しているか、デジタル化しているかによって個人情報かどうかが決まるわけではありません。
- ■名刺をファイリングすると個人データになりますか?
- 五十音順など一定の規則で整理し、特定の人物の名刺を容易に検索できる状態にしている場合は、個人情報データベース等に該当し、名刺情報が個人データとして扱われる可能性があります。
- ■名刺交換した相手に営業メールを送ってもよいですか?
- 企業の従業員として名刺交換した場合、自社の商品・サービスに関する案内は、取得状況から利用目的が明らかと認められる場合があります。ただし、広告メールについては特定電子メール法など個人情報保護法以外の法令にも注意が必要です。
- ■名刺情報をグループ会社と共有してもよいですか?
- グループ会社であっても別法人であれば、個人情報保護法上の第三者に該当する場合があります。本人の同意を得る方法のほか、一定の要件を満たして共同利用する方法などがあるため、共有方法を事前に確認しましょう。
- ■不要な名刺はそのまま捨ててもよいですか?
- 名刺には個人情報が記載されているため、そのまま廃棄するのは避けましょう。シュレッダーや溶解処理などを利用し、第三者が情報を読み取れない状態にして処分することが適切です。
改正個人情報保護法に対応し、適切な名刺管理をしよう
個人情報保護法の改正により、名刺の取扱い方法は以下の点が変更になりました。
- ●対象事業者の範囲拡大
- ●オプトアウト手続きの厳格化
改正個人情報保護法を遵守して名刺管理するには、以下の点に注意しましょう。
- ●安全管理措置を徹底する
- ●名刺の利用目的を守る
- ●名刺情報の第三者提供時には本人の同意を得る
上記の点を守って名刺を管理するには、名刺管理システムの利用がおすすめです。まずは資料請求をして実際にどのような製品があるかを知ることからはじめてみましょう。



