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「同一労働同一賃金」にむけて企業がとるべき対応【2021年3月労務ニュース】

2023年01月17日 最終更新

「同一労働同一賃金」にむけて企業がとるべき対応【2021年3月労務ニュース】

2021年4月1日より、中小企業において、正社員と非正規雇用労働者(短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消、いわゆる「同一労働同一賃金」が求められます。(大企業は2020年4月1日〜)

今回は2020年10月に出された判例をもとに、実際にどのように判断をすればよいのか、同一労働同一賃金にむけて企業がとるべき対応を解説します。

この記事は2021年3月時点の情報に基づいて編集しています。
目次

    同一労働同一賃金の背景

    2018年に国会で成立した同一労働同一賃金を含む「働き方改革関連法」。残業時間の上限規制や有給休暇取得の義務化などが決まりました。その中でも、一番国が推し進めようとしている法案が「同一労働同一賃金」といえます。

    その背景には、労働人口が減少する中で、多様な働き方を提案しながら、従来のような正規雇用・非正規雇用間の収入、福利厚生面での不平等な格差をなくし、労働人口の増加を図る目的があります。

    このような目的から同じ労働の質の場合は、同じ賃金を払うようにすることを前提として「同一労働同一賃金」が施行されました。しかし実態としてどのような場合が同一労働にあたるのか、どのような場合が同一賃金に当たらないのか、具体的な事例がなく分かりづらいのが現状です。

    参考:同一労働同一賃金特集ページ|厚生労働省

    同一労働同一賃金の基本的な考え方

    同一労働同一賃金の基本的な考え方

    同一労働同一賃金と密接な関わりがある「パートタイム・有期雇用労働法」には、「均衡待遇」「均等待遇」という考え方があります。「均等待遇」とは「同じ質、同じ量の仕事なら同じ待遇であること」、「均衡待遇」とは「職務内容が違う場合は合理的な待遇差は認められる」というものです。

    つまり、正社員と短時間労働者、有期雇用労働者、派遣労働者等などの間で、職務内容や人材活用の仕組みが同じであれば不合理な待遇差を設けてはならず、職務内容や人材活用の仕組みが違う場合はその違いに応じてバランスのとれた待遇にしなければならないという意味です。

    ※「職務内容」とは、現在の職務だけではなく今後の職務変更や人事異動も含めて職務内容として判断します。「人材活用の仕組み」とは、今後の人事異動や転勤の有無も含めて判断をします。

    参考:パートタイム労働者、有期雇用労働者の雇用管理の改善のために|厚生労働省
    参考:雇用形態に関わらない公正な待遇の確保|厚生労働省

    判例:メトロコマース事件

    同一労働同一賃金に関する実際の判例を見てみましょう。メトロコマース事件とは、東京メトロの売店で働く従業員が、同じ業務をしているのに、正社員と契約社員とでは賃金の格差がありすぎるとして、賃金格差分、慰謝料合わせ4,560万円の支払いを求めて東京地裁に提訴しました。

    この裁判は、同一労働同一賃金をめぐり正社員と非正規社員の格差について、初めて最高裁で判決が示された事件のため、注目を集めた裁判です。一審から最高裁までの判決をまとめたものが以下の表となります。

    一審から最高裁までの判決

    参考:最高裁令和2年10月13日判決|裁判所WEBサイト

    退職金においては、二審では一部、10年以上勤務(正社員の支給要件を満たす場合)した契約社員には正社員の1/4程度程度の退職金は支給すべきとの判決がだされましたが、最高裁ではその支払いは不要と判断され、会社側が適法に処理していると判断されました。

    ただ退職金は、継続的な勤務に対する功労報償という性格を考えるならば、正社員のみに支給することは適法とはいい難いとの意見もあり、今後の判例により判断基準が変化する可能性もあります。

    賞与、退職金においては不合理ではないと判断されましたが、住宅手当、永年勤続褒賞、早出残業手当においては、二審、最高裁で不合理であり違憲とされました。

    人手が限られる中小企業では、業務範囲が明確になっていない場面が多く見られます。パートタイマーに店長業務を任せているということもあるかもしれません。また、給与計算の処理の煩雑さから正社員以外は各手当を支給しないという状況もあるでしょう。

    判例からわかるように、理由なく正社員、非正規社員との間に待遇差を設けることは一層のリスクとなります。これからの労務管理においては、雇用形態を明確にし、なぜこのような待遇にしたのかをはっきりした上でそれぞれの仕事内容を管理する必要があります。

    事業主に求められること

    同一労働同一賃金の施行において、事業主に求められることをまとめます。

    • 1.同じ企業で働く正社員と短時間労働者、有期雇用労働者、派遣労働者等との間で、基本給や賞与、手当、福利厚生などあらゆる待遇について、職務内容や責任の程度、人材活用の仕組みに違いがない場合、不合理な待遇差を設けることは禁止されます。
    • 2. 事業主は、短時間労働者や有期雇用労働者から、正社員との待遇の違いやその理由などについて説明を求められた場合、待遇差の内容と理由について説明しなければなりません。
    • 3.企業は、どのような待遇差が不合理となるかを明確に規定することが求められます。

    参考:同一労働同一賃金|厚生労働省
    参考:同一労働同一賃金ガイドライン|厚生労働省

    自社の状況をチェックしてみましょう

    自社の状況が法律の内容に沿っているか、不合理な待遇差となっていないかをフローチャートでチェックしてみましょう。

    フローチャート

    参考:パートタイム・有期雇用労働法 対応のための取組手順書|厚生労働省

    まとめ

    同一労働同一賃金は、正社員と非正規労働者の不合理な待遇差をなくすことが目的です。働き方の選択肢が広がり、適正な評価をされるというメリットがあります。しかし、人件費のUPや派遣社員を受け入れる企業が減るなどデメリットも考えられます。

    また、賃金や手当、福利厚生などの変更が必要な場合、就業規則や賃金規程の見直し・変更が必要となります。自社で対応が難しい場合は、専門家などの力を借りるなど、適用開始時期にあわせて早めに対応することをおすすめします。

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