受託開発とは
受託開発とは、システムやアプリの開発を外部の専門会社に依頼し、その会社が成果物として納品する開発形態を指します。企業の課題や要件に応じて、仕様設計からプログラミング、テスト、導入、運用サポートまでを一括で請け負う点が特徴です。社内のリソースを有効活用しながら、高品質なシステムを効果的に導入したい企業に適した手法です。
内製開発(自社チームによる開発)と比べて、受託開発はスピーディーかつ専門的な技術力を活用できる一方、要件定義やコミュニケーションの明確化が成功の鍵となります。また、SES(システムエンジニアリングサービス)やSIer(システムインテグレーター)などほかの外部委託形態と異なり、成果物の責任を受託側が負う点が大きな特徴です。
- ●柔軟性:要件や業務フローに応じたカスタマイズが可能で、自社専用のシステム構築ができる。
- ●専門性:最新技術や業界のベストプラクティスを熟知したエンジニアが開発を担当し、高品質な成果物を提供。
- ●スケーラビリティ:小規模なツール開発から大規模な基幹システム構築まで、幅広いプロジェクト規模に対応可能。
受託開発が向いている・向いていないケース
受託開発は、プロジェクトの目的や進め方によって適性が異なります。明確な要件があり、品質やセキュリティ要件が高い案件に特に向いています。一方で、要件が流動的なPoC(Proof of Concept/概念実証)や試験開発では、柔軟な契約形態を検討した方がよい場合もあります。
- ●向いているケース: 要件が明確・品質重視・専門技術が必要・社内開発リソースが不足している
- ●向いていないケース: 要件変更が頻繁・短期間での試作開発(PoC)・仕様が流動的なアジャイル中心の案件
契約形態とSIer・SESとの違い
システム開発を外部に委託する際は、「契約形態」によって責任範囲や費用構造が異なります。受託開発会社を選ぶ前に、請負契約・準委任契約・ラボ型契約の特徴を理解しておくことで、後々のトラブルを防ぎやすくなります。また、SIerやSESとの違いを把握することで、目的に合った発注が可能になります。
請負と準委任の違い
請負契約では、受託側が「完成責任」を負い、納品物が契約の成果となります。これに対し、準委任契約は「作業の遂行」が目的で、成果物の完成責任は負いません。要件が明確な案件は請負契約、要件が変わりやすい開発や技術支援型の案件では準委任契約が向いています。
ラボ型・アジャイル受託の特徴
近年は、開発チームを一定期間専属で確保し、柔軟に開発を進める「ラボ型開発」も注目されています。これは、アジャイル手法と親和性が高く、長期的なプロジェクトや改善型開発に最適です。仕様変更に即応できるため、スタートアップや新規サービス開発にも多く採用されています。
SIer・SES・受託開発会社の役割の違いと選び分け
SIerはシステム全体の設計・構築・運用を統括する企業で、複数のベンダーを取りまとめる立場です。SESはエンジニアを派遣し、時間単位で作業を支援するサービス。一方で受託開発会社は、仕様に基づいてシステムを一括開発し、成果物として納品するのが特徴です。
自社の課題が「システム全体の最適化」ならSIer、「社内チームの補強」ならSES、「特定システムの構築」なら受託開発会社を選ぶのが適切です。
以下の記事では、受託開発のメリットやデメリット、受託開発が適している企業などについて詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
受託開発会社の費用相場
受託開発の費用は、プロジェクトの規模や内容によって大きく異なります。一般的な費用の目安は以下のとおりです。
- ●小規模開発(簡易なWebシステムやアプリ):数百万円程度
- ●中規模開発(複数の機能をもつシステムや企業向けアプリ):1,000万円〜
- ●大規模開発(複雑なシステム連携や高度なカスタマイズをともなう開発):数千万円〜
料金を確認する際には、見積もりの内訳に注意が必要です。特に、人件費や開発工数、設計・テスト費用が適正かを見極め、無駄なコストが含まれていないか確認しましょう。
さらに、プロジェクトの進行中に仕様変更や追加要件が発生すると、費用が膨らむ可能性があります。そのため、契約前に「追加費用が発生する条件」について明確にしておくことが大切です。デザイン修正や外部サービスの導入、納期短縮などは、予想以上にコストがかかることがあります。
適正なコスト管理を行うためにも、内訳が透明でわかりやすい開発会社を選び、予算超過を防ぐ工夫をしましょう。
受託開発会社の選び方
システム開発を外部に委託する際、信頼できる受託開発会社の選定がプロジェクトの成功を左右します。数多くの開発会社から自社に最適なパートナーを見つけるために、以下のポイントを参考にしましょう。
業界特化の経験
自社と同じ業界での開発経験がある会社は、業務フローや用語を理解しているため、要件定義の段階から話がスムーズに進みます。例えば、医療業界なら個人情報保護法や医療機器認証、製造業なら在庫・生産管理など、業界固有の要件に対応できるノウハウが重要です。業界特化実績のある受託開発会社は、リスクの少ない開発を実現できます。
技術スタックとクラウド対応
開発会社の得意な技術スタック(プログラミング言語やフレームワーク、クラウド環境)は、システムの品質や将来的な拡張性に大きく関係します。AWS・Azure・GCPなど主要クラウドの実績があるか、セキュリティ要件を満たす設計が可能かを確認しましょう。クラウドネイティブやマイクロサービス構成を採用する場合、最新技術への対応力が欠かせません。
体制と品質保証
品質の高いシステムを構築するには、プロジェクトマネージャー(PM)・品質保証(QA)・セキュリティ担当・SREなどの専門体制が整っていることが不可欠です。
担当者の経験や社内レビュー体制、テスト自動化の有無も確認ポイント。品質管理プロセスが明確な会社ほど、納期遅延やバグ発生リスクを抑えられます。担当者のスキルや進行体制を事前にヒアリングしておきましょう。
コストと契約条件
見積もり金額だけでなく、契約条件や支払いタイミング、SLA(サービス品質保証)の内容を細かく確認しましょう。納品後の保守契約や仕様変更時の対応ルールが不明確だと、トラブルや追加費用の原因になります。契約書には「変更管理フロー」「検収基準」「知的財産の帰属先」などを明記し、透明な契約関係を築くことが大切です。
アフターサポート体制
開発後も安定稼働を維持するためには、運用保守や技術サポート体制の有無が重要です。トラブル時の対応速度や、システム更新・セキュリティパッチ対応の範囲を事前に確認しておきましょう。
月額保守契約や障害対応時間(平日・24時間対応など)の条件も比較ポイントです。長期的に信頼できる受託開発会社を選ぶことが、運用コスト削減につながります。
失敗しないためのポイント
受託開発プロジェクトが失敗する原因の多くは、コミュニケーション不足やスコープ管理の甘さにあります。特に要件変更や進捗遅延が起こると、費用・納期・品質のバランスが崩れやすくなります。ここでは、失敗を防ぐために押さえておきたい実践的なポイントを紹介します。
- ■スコープ・変更管理と可観測性(進捗の見える化)
- 要件変更や追加対応はコスト増の原因です。変更点と影響範囲を可視化し、進捗を共有する仕組みを整えることで、予算超過や納期遅延を防ぎます。
- ■コミュニケーション設計(定例・成果物レビュー・ツール)
- 報告・連絡・相談のルールを明確にし、定例会やレビューの場を設定。SlackやBacklogなどのツール活用で情報共有を効率化します。
- ■セキュリティ・個人情報対応(ISMS/脆弱性診断)
- ISMS認証取得や脆弱性診断の実績がある会社を選ぶと安心です。暗号化通信やアクセス制御など、開発段階からのセキュリティ対策が重要です。
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受託開発の発注先は、開発領域(Web/アプリ/業務システム/AIなど)や体制、実績、費用感によって最適解が大きく変わります。 1社ずつ問い合わせて比較するのは時間も手間もかかるため、候補先を効率よく絞り込みながら、 自社要件に合うパートナーを見つけることが重要です。
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おすすめの受託開発会社一覧
ここでは、多種多様な受託開発会社を紹介します。自社のニーズに最適な開発パートナー選びにお役立てください。
株式会社LIG
株式会社LIGは、Webサイト制作やコンテンツマーケティングの豊富な実績を活かし、受託開発においても幅広い業界での実績があります。フロントエンド技術に精通したエンジニアが多数在籍し、最先端の技術を活用した開発が可能です。デザイン性と使いやすさにこだわったWebシステムの開発に定評があります。
アイレット株式会社
アイレット株式会社は、クラウド技術に強みを持ち、AWSを活用した受託開発に特化しています。「LINE DX Program with AWS」を活用したソリューションにより、LINEを基盤としたシステム構築や、AWSの高度なセキュリティ機能を組み合わせた安全性の高いシステム開発を提供。高いセキュリティ基準を求める企業や、LINEを活用したシステム開発を検討している企業に最適です。
株式会社NTTデータ
株式会社NTTデータは、公共・金融・医療などの大規模システム開発を得意とする国内最大手のIT企業です。コンサルティングからシステム開発、運用保守までトータルサポートを提供。アジャイル開発やクラウドネイティブ開発、ローコード開発など最新の開発手法にも対応可能です。大規模なシステム開発を計画している企業や、長期間のプロジェクトを検討している企業におすすめです。
株式会社オロ
株式会社オロは、BtoB向けクラウドサービスを基盤とした受託開発を提供しています。「オロERP」「オロ購買」などの自社クラウドサービスを活用し、顧客の業務フローにあわせた柔軟なシステム構築を行います。販売管理、経費精算、購買管理などの業務効率化を目指す企業におすすめです。
株式会社モンスター・ラボ
株式会社モンスター・ラボは、グローバルな開発拠点を活かし、Webアプリやスマホアプリ、ゲームアプリなど多様な受託開発に対応しています。AIやIoTを活用した先進的なシステム開発に強みをもち、最新技術を活用したデジタル変革を検討している企業に適しています。
株式会社エスキュービズム
株式会社エスキュービズムは、ECサイト構築やデジタルマーケティングに強みをもつ受託開発会社です。オムニチャネル対応のシステムや、POSシステム、ECサイトとの連携に優れており、小売・流通業界の課題解決を支援します。AIやIoTを活用した業務効率化を目指す企業におすすめです。
株式会社ブレインパッド
株式会社ブレインパッドは、データ分析とAI技術を活用した受託開発に特化しています。ビッグデータ解析、AI活用のコンサルティングから、業務システム構築まで一貫して支援可能。顧客行動分析や需要予測、マーケティングオートメーションの導入を検討している企業におすすめです。
株式会社サイバーエージェント
株式会社サイバーエージェントは、インターネット広告やエンターテイメント分野に特化した受託開発を提供しています。動画配信プラットフォーム、広告配信システム、ゲームアプリ開発に強みをもち、AIを活用したマーケティング施策を強化したい企業におすすめです。
株式会社ディー・エヌ・エー
株式会社ディー・エヌ・エーは、モバイルゲームやエンターテイメント分野での豊富な実績を活かし、スマホ向けアプリの開発に強みをもちます。AIやデータ分析を活用したモバイルアプリの最適化により、ユーザーエクスペリエンスを最大限に高める開発が可能です。ヘルスケアやフィットネス分野のアプリ開発も行っています。
株式会社MIXI
株式会社MIXIは、SNSやソーシャルゲームの開発を得意とする受託開発会社です。コミュニティ形成を目的としたアプリ開発の経験が豊富で、ユーザー同士の交流を促進するプラットフォーム設計に強みがあります。スポーツやエンターテイメント分野に特化したシステム開発にも注力し、リアルタイムでのデータ連携やユーザー分析機能を活用したサービスの構築が可能です。
受託開発会社に関するよくある質問(FAQ)
受託開発の発注前によく寄せられる質問をまとめました。納期・費用・補助金活用など、検討時の参考にしてください。
- Q1.納期の目安はどのくらいですか?
- 小規模開発で1〜3か月、中規模で3〜6か月、大規模では1年以上が一般的です。要件定義の精度や仕様変更の有無によって期間が変動します。
- Q2.海外オフショアやニアショア開発はどのような場合に適していますか?
- コストを抑えたい場合は海外オフショア、品質やスピードを重視する場合は国内やニアショアが適しています。最近では両者を組み合わせたハイブリッド体制も増えています。オフショア開発については以下の記事も参考にしてください。
- Q3.国の補助金制度は活用できますか?
- 業務効率化を目的としたシステム開発であれば、IT導入補助金の対象となる場合があります。申請要件を満たす受託開発会社に相談すると安心です。補助金の詳細は以下の記事もご覧ください。
- Q4.保守費用はどのくらいかかりますか?また、解約条件はどうなっていますか?
- 保守費用はシステム規模により月5〜20万円が目安です。契約期間や解約条件(更新・通知期限など)は契約前に書面で明確にしておくことが重要です。
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まとめ
受託開発会社の選び方や料金相場、おすすめの開発会社について解説しました。自社のシステム開発を検討している企業や、開発リソースの確保に課題を感じている経営者やプロジェクト担当者は、この記事を参考に最適なパートナーを見つけてください。
受託開発は、専門的な技術やリソース不足を補うための有効な手段です。業界特化の経験や技術力、コスト、サポート体制を慎重に確認し、信頼できる受託開発会社を選びましょう。


