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人事中計の作り方は?盛り込む内容や策定手順、人的資本経営との関係も解説

2026年10月15日 最終更新

人事中計の作り方は?盛り込む内容や策定手順、人的資本経営との関係も解説

多くの企業が人事戦略立案の一環として、人事中期計画(人事中計)を策定しています。人事中計は人事部にとって施策実行の軸となるものです。人事中計とはどのようなものなのでしょうか。また、人事戦略を実現するために人事部はどのような計画を立てるべきなのでしょうか。

今回は人事中計の作り方について解説します。

この記事は2026年10月時点の情報に基づいて編集しています。
目次

    人事中計とは

    まず人事中計とは何か考えてみましょう。人事中計は企業にとってどのようなものなのでしょうか。

    経営における人事の羅針盤

    企業は成長を続けるために、数年先を見据えた中期計画を作成します。いわゆる中期経営計画のことです。中期経営計画とは、企業の羅針盤として、今後数年間その企業はどのような方向性で事業を展開するのかを明記したものです。なお、人事中計の「中計」は、中期経営計画の略です。

    同じように、人事中計は中期経営計画と連動して人事における施策展開の方向性を示しています。人は企業にとって最も重要な経営資源のひとつです。経営資源である人をどう獲得し、どう活用するかを記した経営における人事の羅針盤が人事中計といえます。

    人事中計の必要性

    企業にとって人は経営資源です。経営資源をどう配分してどう活用するかは企業の成長に大きく影響を与えます。もし人事中計がなければ、事業展開に合わせてどのような組織づくりをすればよいかわからなくなってしまうでしょう。

    つまり、人事中計によって経営資源の無駄遣いをなくし、事業にとって本当に必要な時に必要な方法で人材を活用することができるのです。

    近年は「人的資本経営」の考え方が広がり、人事中計の重要性が増しています。経済産業省が2022年5月に公表した「人材版伊藤レポート2.0」は、人的資本経営で最も重要な視点として「経営戦略と人材戦略の連動」を挙げています。中期経営計画と連動する人事中計は、まさにこの連動を形にするものです。

    情報開示のルールも変わっています。2026年2月には、有価証券報告書の開示ルールを定めた内閣府令の改正が公布されました。2026年3月31日以後に終わる事業年度の有価証券報告書から、企業戦略と関連付けた人材戦略の開示が求められます。あわせて、それを踏まえた従業員給与などの決定方針や、平均給与の前年比も開示の対象です。有価証券報告書を提出する企業にとって、経営戦略とつながった人事中計は、社外に説明するうえでも欠かせません。

    参考:「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」等の公布及びパブリックコメントの結果について|金融庁

    参考:人的資本経営の実現に向けた検討会報告書~人材版伊藤レポート2.0~|経済産業省

    人事中計に盛り込む主な内容

    人事中計に何を盛り込むかは企業によって異なりますが、主に次のような項目で構成されます。

    項目主な内容
    人事のビジョン・基本方針中期経営計画の実現に向けて、人と組織をどう変えるかの方向性
    人材ポートフォリオと要員計画事業ごとに必要な人材の質と量、現状とのギャップ、採用・配置・育成の計画
    総額人件費の計画要員計画や賃上げを前提にした人件費の見通しと、生産性とのバランス
    具体的な施策とKPI採用・育成・評価・処遇などの施策と、進み具合を測る指標・目標・期限

    特に人材ポートフォリオは、人材版伊藤レポート2.0でも重視されています。今いる人材を前提にせず、経営戦略の実現という将来の目標から逆算して必要な人材を定義しましょう。そのうえで、採用・配置・育成を進めることが重要です。人材ポートフォリオの詳しい作り方は、以下の記事で解説しています。

    関連記事 人材ポートフォリオとは?作り方や4象限のフレームワークをわかりやすく解説

    人事中計の策定方法

    では実際に人事中計をつくるにはどうすればよいのでしょうか。人事中計の策定方法をご紹介します。

    中期経営計画からブレイクダウンする

    大前提として、人事中計は中期経営計画を達成するための施策を人事の側面からまとめたものです。人事中計には中期経営計画を実現する採用計画や育成計画などの組織づくりに関する計画が記されています。そのため、まずは中期経営計画を確認したうえで、中期経営計画が目指すゴールから、人事において必要な取り組みをブレイクダウンしていきます。

    例えば、中期経営計画で3年後の売上高が「3000億円達成」と記されていた場合、まず現状の売上高と目標とのギャップを確認します。

    もし現状が2000億円だとすれば、あと3年で1000億円の売上をあげなければなりません。あと1000億円の売上を達成するとなると、人事領域では例えば新規事業を創造できる人材を採用する、営業部門の人員を増やすといった取り組みが必要になります。

    このように、まずは中期経営計画を確認して現状とのギャップを比較しながら人事中計を作成していきましょう。

    人と組織における問題を戦略人事の観点から分析する

    中期経営計画を確認したら、あるべき姿に向けて人と組織における問題を戦略人事の観点から分析します。戦略人事の観点とは、単に現状の延長線上に計画を描くのではなく、人事の専門的見地から中期経営計画の実現に関する提案を積極的に行うことです。

    もし中期経営計画の目標に対して、現状と目標がかけ離れているのであれば、予算を追加して適切な人材を採用するなど、大胆な取り組みが必要です。まずは中期経営計画を達成するために、人と組織観点からどのような問題があるかを冷静に分析しましょう。

    人事部門がよく抱える課題と解決の方向性は、以下の記事も参考にしてください。

    関連記事 【2026年】人事部門が抱える課題を解決するには?人事課題のトレンドも解説

    問題に対する方針を導き出す

    分析が完了したら、問題に対する方針を導き出します。方針は、中期経営計画の達成にとって最も重要な項目を3つ程度の方針にまとめるのがよいでしょう。もし10以上も方針があった場合、どの方針が優先順位が高いのかわからなくなってしまいます。

    分析した人と組織の問題のうち、特に効果的と言える問題に対する打ち手を方針として策定するのです。中期経営計画を達成するために、この数年で注力するべきことは採用なのか、育成なのか、それとも組織の一体感づくりなのか、あなたが考える方針次第で人事の取り組みが大きく変わってきます。

    いま全力を注ぐべき取り組みを方針として人事中計に盛り込みましょう。

    人事中計成功のポイント

    当然のことながら、人事中計は策定して終わりではありません。策定したら実行する必要があります。

    また、そもそも人事中計は中期経営計画を達成するためのツールです。人事中計を通じて中期経営計画を達成するにはどのようなことに気を付けたらよいのでしょうか。

    経営者のコミットメント

    人事中計のみならず、中期経営計画を達成するには経営者のコミットメントが重要です。コミットメントとは、「必ず達成する」といった意気込みと責任感のことです。

    もし経営者がせっかく策定した人事中計をないがしろにしてしまうと、そもそも人事中計を策定した意味がありません。そのため、策定段階で経営者を巻き込みながら人事中計の検討作業を進めるのがよいでしょう。

    CHROの推進力

    人事中計を達成するためには、人事中計を推進するリーダーが必要です。人事のリーダーとして、CHROを設置することは人事中計の達成だけでなく、人事を通じた企業変革に有効な手段の一つです。CHROが人と組織の観点から、経営陣に対して積極的に提言しながら会社と人事部をリードできれば、人事中計を通じて企業の成長を実現できるでしょう。

    人材版伊藤レポート2.0でも、経営戦略と人材戦略を連動させる第一歩として、CHROの設置を挙げています。CHROが人材戦略を自ら起案し、CEOやCFOなどの経営陣と定期的に議論することも求めています。実践事例集では、アステラス製薬やKDDIの取り組みが紹介されています。

    人事部員の実行力

    CHROの推進力と同じくらい重要なのが人事部員の実行力です。人事中計を具体的な施策として立案したうえで、自ら責任感を持って実行する人事部員は、人事中計の達成に必要不可欠な存在です。

    もし現時点で人事中計を実行するほどの力が人事部員にないのだとしたら、社外から人事のプロフェッショナルを採用するなど、人事部の組織強化を行いましょう。強い人事部があれば、必ず人事中計を達成できます。

    人材版伊藤レポート2.0から学ぶポイント

    人事中計を実行に移すうえでは、経済産業省の「人材版伊藤レポート2.0」も参考になります。人的資本経営を実践するための取り組みと、日本企業の実践事例集がまとめられています。ここでは、人事中計に関わる2つの取り組みを紹介します。

    中期的な人材ポートフォリオのギャップ分析

    各事業が中期的に必要とする人材の質と量を整理し、現状とのギャップを明らかにしたうえで人事施策を立てる取り組みです。足もとの組織体制を前提にせず、将来の事業構想から逆算して考えることがポイントです。

    事業環境の変化が激しい分野では、事業部門と人事部門の役割分担も参考になります。事業部門が人材ポートフォリオの策定や人材の確保を主導し、人事部門は経営人材など全社で重要な人材に責任を持つという分け方です。人事中計は人事部門だけで作らず、事業部門を巻き込んで作りましょう。

    KPIと達成までの期間の設定

    人材に関するKPIは、目標とする状態と達成までの期間を定めましょう。そのうえで、現状とのギャップを定期的に経営陣や取締役と議論することが重要です。KPIが増えすぎると重点がぼやけるため、重要なものに絞って紙1枚程度に一覧化するとよいでしょう。

    KPIを設定した背景や理由を、達成状況とあわせて社員や投資家に説明することも大切です。設定の理由が伝わることで、人事中計に対する社員の納得感が高まり、行動の変化にもつながりやすくなります。

    まとめ

    今回は人事中計の策定について解説しました。企業によっては人事中計を策定する効果のイメージが持てないかもしれません。しかし人事中計を策定している企業では、人事の取り組みが企業の成長に確実に貢献しています。ただの計画だと侮るのではなく、人事を通じて会社を動かす「想い」を具現化した人事中計を策定しましょう。

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