新型コロナウイルスの感染拡大で検討すべきこと
未曽有の危機が襲い掛かる中、手をこまねいているだけでは、事業の存続が危ぶまれます。この状況下で、まずはどんなことを検討するべきなのでしょうか。
資金繰り
事業を存続するうえで、まず考えなくてはならないのが資金繰りです。場合によっては、売上の急減に直面し、ほとんど収入がない中で支払いを強いられるケースもあるかもしれません。
資金繰りは、企業にとって血液に例えられることがあります。血流が止まると人間は死に至るように、資金繰りが滞ると企業は存続が難しくなります。まずは、事業活動を継続するために、資金繰りに目処をつけることを最優先してください。
従業員の雇用の維持
収入のない中では、固定費として負担が大きいのが人件費です。このため、アルバイトやパートなどの非正規雇用社員を中心に、解雇や雇い止めを検討する企業もあります。
しかし、企業は深刻な人手不足に直面していたことを忘れてはいけません。アフターコロナを見据えて、持続的な成長戦略を描くために、安易な解雇は避けたほうがよいでしょう。
変化する需要への対応
外出自粛やソーシャルディスタンスなどで、需要が減少したと嘆いているばかりでは、この危機的状況を回避するすることはできません。減少する需要がある一方で、巣ごもり消費の拡大などで、増加する市場や新たな市場は存在します。
唯一生き残る者は、最も強いものでも最も賢い者でもなく、変化できる者であることを忘れてはいけません。変化を恐れず、新たな取り組みにも挑戦することが求められているのです。
活用したい資金繰り対策
事業を存続するために、真っ先に検討したい資金繰り対策。国も中小企業の資金繰りを支えるために、さまざまな支援策に乗り出しました。
給付金制度
資金繰り制度の中でも、返済の必要がないのが給付金制度です。条件を満たせば、給付を受けることができるため、まず最初に給付金を受給できるかどうか、確認するようにしてください。
持続化給付金
国が制度化している給付金で、売上が前年度と比較して50%以上減少している中小企業に対し、法人であれば200万円、個人事業主であれば100万円が給付されます。
申し込み手続きも、すべてWebサイト上で完結し難しくありません。インターネット経由での申し込みが困難な事業者に対しては、申請サポート会場が全国各地に設置されました。真っ先に検討するべき給付金であるといえるでしょう。
参考:持続化給付金|中小企業庁
自治体の給付金
全国各地の都道府県や市町村でも、独自の給付金の支給に動く自治体もあります。例えば、東京都の場合、休業などに協力する事業者に対し、50万円が支給される「感染拡大防止協力金」が制度化されています。各地方自治体の支援策にも注目しましょう。
参考:感染拡大防止協力金|東京都
融資制度
給付金で十分な資金を賄うことができないのであれば、金融機関からの融資を検討する必要があります。今までに借入をしたことがない事業者も、すでに条件変更などをしています。追加融資が難しい事業者も、まずは最寄りの金融機関やメインバンクに相談するとよいでしょう。
新型コロナウイルス感染症特別貸付
日本政策金融公庫や商工中金で対応している融資制度です。売上が5%以上低下している事業者に対し、無担保の低利融資を受けることができる上に、5年以内の据え置き期間が設けられています。
売上が20%以上低下していれば、利子補給制度で実質無利子化できるため、当面の利払いや返済の必要がありません。融資を受けることができれば資金繰りに一定の目処をつけることができるといえそうです。
条件変更している事業者も対象になりますが、審査が必要になることや、将来の返済が求められることには注意してください。
参考:新型コロナウイルス感染症特別貸付|日本政策金融公庫
セーフティーネット保証4号、5号
セーフティネット保証とは、事業環境が厳しくなった場合に、信用保証協会という公的な機関が、金融機関に対する保証をおこなう制度です。事業者の返済が難しくなった場合でも、保証協会が返済を肩代わりしてくれる(代位弁済といいます)ので、金融機関は、安心して事業者に融資を実行に移すことができるのです。
セーフティーネット保証4号、5号は、売上が減少したり、新型コロナウイルスで事業環境が悪化したりしている業種の事業者に対し、信用保証協会の保証付きの融資が受けられる制度です。
新型コロナウイルス感染症特別貸付と同様に、据え置き期間が設けられ、利子補給制度も利用できるため、実質無利子化にも対応できます。最寄りの金融機関でも相談に応じてくれるため、積極的に活用を検討するとよいでしょう。
参考:セーフティネット保証制度|中小企業庁
各自治体の制度融資
金融機関だけではなく、地方自治体も独自の制度融資を立ち上げています。例えば、東京都の場合、「新型コロナウイルス感染症対応緊急融資」に加え、「新型コロナウイルス 感染症対応緊急借換」をラインナップに加えました。
このような借換を利用すれば、既存の借入についても、返済緩和したり利息負担を軽減したりできるようになります。金融機関からの借入だけではなく、地方自治体の融資制度にも気を配るようにしてください。
参考:東京都中小企業制度融資|東京都産業労働局
その他
資金繰りに有効な支援策は、給付金や融資で手元資金を増やすだけではなく、支払いを減らすことでも実現できます。その代表的な例をご紹介します。
家賃補助
人件費と同様に、固定費として家賃の負担が大きい事業者も少なくないはずです。家賃補助は、多くの自治体で制度化されています。どんなに手元資金を増やしても、家賃の支払いに現金を回してしまえば、資金繰りは枯渇します。各自治体の支援策を確認しておくようにしましょう。
社会保険料や税期の猶予
消費税や法人税、社会保険料は、利息負担をすることなく支払いを猶予することができます。少しでも手元資金を残すために、資金繰りに厳しい場合は検討するようにしてください。
参考:社会保険料の猶予等について|厚生労働省
参考:新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な方へ|国税庁
補助金も活用しよう
資金繰りに目処がつけられれば、アフターコロナを見据えた、成長戦略を描くことが求められます。変化する事業環境にあわせて、新規事業への挑戦や設備投資が必要なケースもあるかもしれません。ここでは、投資を実行に移す際に、ぜひとも参考にしたい補助金について紹介します。
ものづくり補助金の活用
ものづくり補助金は、生産性を向上させるための設備投資や、新たな事業に必要な設備投資を支援するための補助金です。補助上限額は1,000万円で、条件を満たせば2/3が補助されます。
工場における生産機械の導入はもちろんのこと、生産性を高めるためのITツール導入も補助されます。規模の大きな設備投資を実行に移す場合は、ぜひとも検討したい補助金です。
参考:ものづくり補助金総合サイト|全国中小企業団体中央会
IT導入補助金の活用
IT導入補助金は、ITツールの導入に特化した補助金です。補助上限額は450万円で、補助率は1/2ですが、新型コロナウイルスに対応する事業に対し補助率が3/4に拡充される特別枠が設けられました。
テレワークの導入や、非対面型ビジネスへの対応など、デジタル投資が必要なケースでは、この補助金の利用を検討してください。
参考:IT導入補助金2020|一般社団法人サービスデザイン推進協議会
小規模事業者持続化補助金の活用
小規模事業者持続化補助金は、従業員5名以下(製造業などは20名以下)の小規模事業者に対し、販路拡大や生産性向上のための取り組みを支援するための補助金です。チラシや看板、ホームページ作成のため、使われることの多い補助金です。
通常は、補助上限額が50万円で補助率は2/3ですが、補助上限額や補助率が引き上げられるコロナ対策特別枠が設けられています。
参考:小規模事業者持続化補助金|日本商工会議所
参考:小規模事業者持続化補助金<一般型>|全国商工会連合会
資金繰りに目処をつけて成長への道筋を
新型コロナウイルスの感染が拡大するこの危機的な状況においては、資金繰りを維持して生活を守ることは最優先であるのはいうまでもありません。しかし、すでにアフターコロナを見据えて、次の一手をうつ事業も少なくないのも事実です。企業が長期的な成長戦略を描くために、変化する経営環境に対応することも求められています。