メタバースとは
メタバースとは、インターネット上につくられた3次元仮想空間のことです。ギリシャ語で「超次元・超越」を意味する「メタ(meta)」と、英語で「宇宙・世界」を意味する「ユニバース(universe)」があわさって生まれた用語です。
メタバースでは、一例として以下3つのことが可能です。
- ●仮想空間のアバターを通したコミュニケーション
- ●仮想空間上でのアイテム・サービスの販売
- ●現実世界ではあり得ない仮想体験
まずはメタバースの定義や注目される理由、よく混同される「VR」との違いを見ていきましょう。
メタバースの定義
メタバースの先駆者として知られるアメリカの投資家マシュー・ボール氏によれば、メタバースの定義は以下の7つです。
- ●現実世界と同じ永続的な時間が流れていること
- ●世界が同期していてイベントがリアルタイムに開催されること
- ●無制限のユーザーが同時に参加できること
- ●物やサービスの制作・売買・投資ができる経済が存在すること
- ●デジタルとリアルの両方にまたがった体験ができること
- ●データやアイテムに別の仮想空間との互換性があること
- ●多くの企業や個人によってコンテンツや体験が作成・運営されること
すなわち、メタバースとは「現実世界のような体験をバーチャルに体験できる仮想空間」といえます。
メタバースが注目される理由
昨今メタバースが注目されている理由としては、主に以下3つが考えられます。
- ●NFT技術によるメタバース空間の経済化
- ●新型コロナによるオンライン需要の増加
- ●VR普及による認知度の向上
偽造不可能なデジタルデータであるNFT(非代替性トークン)技術の発達により、仮想空間上の安全な経済活動が実現できるようになりました。そのため、ゲームやエンターテイメント領域を中心に普及してきたメタバースは、ビジネスをはじめ、より幅広い領域でも活用されはじめています。
メタバースとVRの違い
メタバースとVRは、以下のとおり似て非なるものです。
- ●メタバース:現実世界とリンクした「仮想空間」そのもの
- ●VR:実際には起こっていないことを仮想的に体験できる「技術」
ここでは、メタバースの一つである「VRChat」を例に解説します。
「VRChat」は、3次元仮想空間上で、アバターを通じて他者とのコミュニケーションや経済活動を行うアプリです。名前に「VR」とあるとおり、VRゴーグルを装着してプレーします。
しかし、VRゴーグルがなくても、2次元(画面上)で仮想空間を楽しむことも可能です。つまり、メタバースでは必ずしもVRによる体験を必要としません。VRは、メタバースをよりリアルな感覚で楽しむための手段の一つです。
メタバースの活用事例:ビジネス・ゲーム分野
メタバースは、実際にどのような分野で活用されているのでしょうか。活用事例が多いビジネス・ゲームの分野から紹介します。
ビジネスでのメタバース活用事例
ビジネスでのメタバース活用事例は以下のとおりです。
- ●バーチャルショップ:仮想店舗でのショッピング
- ●ショールーム・展示場:足を運ばなくても現地にいるような体験
- ●バーチャルオフィス・リモート会議:仮想空間でよりリアルな会議
- ●バーチャルライブ:実在アーティストによるメタバース空間でのライブ
- ●採用活動:Web会議よりもリアルで参加しやすい会社説明会
メタバースにより、従来のオンラインサービスだけでは難しかった「リアルな体験」が可能になりました。うまく活用すれば他社との差別化になり、より多くの顧客創出が期待できるでしょう。
ゲームでのメタバース活用事例
ゲームでのメタバース活用事例は以下のとおりです。
- ●アバターを通じた不特定多数とのコミュニケーション
- ●複数人での自由な空間のクリエイティブ
- ●仮想空間上でのリアルタイムな多人数対戦
従来のゲームは、一人または少人数で楽しむものがほとんどでした。メタバースの登場により、同一の仮想空間上で多人数が楽しめるゲームが増えてきています。
また、ゲーム上で取引した通貨を換金して、生計を立てる人もいるようです。ゲームにおけるメタバースは、もはや「ゲームにとどまらない」領域に及んでいます。
「メタバースは意味ない」といわれる3つの理由
ビジネス・ゲームでの活用事例が増えている一方で、メタバースは「意味ない・役に立たない」ともいわれています。その理由を詳しく見ていきましょう。
費用的な敷居が高い
メタバースの課題点の一つが、機材や仮想空間構築における費用的な敷居の高さです。
VR技術を活用したメタバースを楽しむには、VRゴーグルが必要です。本格的なVR体験をするには、数万円~数十万円クラスの製品を購入しなければなりません。個人ユーザーにとって高額な出費であり、手を出せずにいる人が多くいます。
また、企業がバーチャルショップなどの仮想空間を一から構築する際にも、数千万円~1億円規模の費用がかかります。今後、技術の進歩でコストが下がることも期待されるでしょう。しかし、現段階では費用対効果の観点から様子見としている企業も多いようです。
活用事例が少ない
特にビジネスの分野において、メタバースの活用事例が少ないことも理由として挙げられます。大企業の活用事例も実験的な段階であることが多く、特に中小企業では導入に踏み切るだけの成果や材料がありません。
大企業を中心に活用事例が蓄積され、費用面の課題も解決できれば、中小企業もメタバースを導入しやすくなります。そうなれば、メタバースは爆発的に広がるでしょう。
技術的な制約がある
メタバースにおける仮想空間へアクセスするには、ある程度スペックの高いパソコンや通信機器が必要です。
広く普及しているビジネス用PCの多くは、仮想空間を快適に楽しめるほどのスペックを備えていません。例えば、BtoBビジネスでメタバースを活用した企画提案を行っても、「提案先が仮想空間にアクセスできず話が進まない」といったことが起こり得ます。
インフラの面から整備しないと、本格的な普及は難しいかもしれません。
今後のメタバース市場の動向・展望
メタバースの認知度は徐々に高まっています。一方で、ビジネス分野においては費用面の敷居の高さや活用事例の少なさ、技術的な制約など課題も多く挙げられます。
しかし昨今では大企業を中心として、実験的にメタバースを導入する事例が増えてきました。中長期的に収益を獲得できるビジネスモデルを確立した企業が増えてくれば、導入の費用対効果が明確になります。現状では活用の余地がないと判断する企業も、メタバース市場に参入してくる可能性は十分に考えられるでしょう。
以上のことから、数年もしくは数十年単位での長い目で見れば、メタバースの市場は大きく成長すると予想できます。今後の動向に注目してみてください。
まとめ
3次元仮想空間「メタバース」が注目を集めています。NFT技術の発達で経済的なやり取りが容易になったことや、新型コロナによりオンライン需要が増加したことが理由です。
現時点ではビジネスにおける活用事例が少なく、多くの企業がメタバースを用いた事業を展開できていません。しかしビジネスモデルが確立され、コストや技術の問題も解消できれば、市場は大きく拡大していくでしょう。