1.産業雇用安定助成金
令和3年2月に創設された「産業雇用安定助成金」について解説します。「産業雇用安定助成金」とは、新型コロナウイルス感染症の影響をうけ、事業を縮小をする会社が労働者の雇用を維持するために「在籍型出向」を行う場合、出向元と出向先の双方の事業主に対して、その出向のためにかかった賃金や経費の一部を助成する助成金です。
参考:産業雇用安定助成金|厚生労働省
「在籍型出向」とは
一般的な「出向」とは、労働者が出向元企業との関係を保ちながら、出向先企業と新しく雇用契約関係を結び、勤務することをいいます。この中で「在籍型出向」とは、出向元企業と出向先企業とで結んだ出向契約により、労働者が出向元企業と出向先企業の両方と雇用契約を結ぶものをいいます。
助成金の対象となる要件
この助成金は、雇用維持、継続するための助成金のため、大前提として新型コロナウイルス感染症の影響により事業を縮小した会社が、従業員の雇用を維持するために行う出向であることが条件となります。
そのため、出向期間終了後は、対象の従業員は元の会社に戻り働けること、出向元と出向先の独立性が認められる必要があります。つまり、出向元と出向先が親子会社やグループ企業の場合は、独立性が認められるとはいえません。
新しく創設をされた助成金のため、今後も支給要件が追加される可能性が大いにあります。利用をされる場合は、最新の支給要件の確認が必要です。
参考:産業雇用安定助成金ガイドブック|厚生労働省
助成額と助成率について
「産業雇用安定助成金」では、出向元の事業主と出向先の事業主が負担する従業員の「賃金」や従業員の教育や労務管理に必要な経費など、出向中に発生した経費の一部(=出向運営経費)が助成されます。(助成額の上限は、日額で12,000円。※出向元、出向先の合計額)
「産業雇用安定助成金」の出向運営経費の助成率は、以下の表のとおりです。出向元が労働者の解雇を行っているかいないかで助成率が変わります。正確な助成金額は、社会保険労務士に確認をしてください。
出向のマッチング支援
従業員の雇用を維持するため出向をさせたい、人手不足解消のため出向者を受け入れたい場合は、「産業雇用安定センター」が無料で出向のマッチング支援を行っています。
参考:雇用を守る出向支援プログラム2020~ 在籍型出向制度のご案内| 産業雇用安定センター
2.トライアル雇用助成金
つづいて、「トライアル雇用助成金(新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース)」の解説をします。新型コロナウイルス感染症の影響による離職者を雇用する事業主を支援するため、「トライアル雇用助成金」に新たなコースが新設されました。
この助成金は、新型コロナウイルス感染症の影響をうけ、離職をした人や、勤務シフトの減少により実質的に離職と同様の状態にある人が、今まで経験したことのない職業に就くことを希望する場合、一定期間試用雇用(トライアル雇用)を行う事業主に対して助成をする制度です。
試用期間後、無期雇用への移行を前提とし、新型コロナウイルス感染症により離職した人の早期就職の実現や雇用機会を生み出すことを目的としています。
参考:新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース・新型コロナウイルス感染症対応短時間トライアルコース|厚生労働省
助成金の対象となる要件
「新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース」の助成の対象となるには、事前に「トライアル雇用求人」を管轄のハローワーク、地方運輸局、職業紹介事業者に提出し、それらの紹介によって次の要件を満たす求職者を原則3か月の有期雇用で雇うことが条件となります。
求職者の要件
- 1.令和2年1月24日以降に新型コロナウイルス感染症の影響により離職した
- 2.紹介日時点で、離職している期間、またはシフト削減により実質的に離職している期間が3か月を超えている。
- 3.紹介日において、就労経験のない職業に就くことを希望している
上記の条件に加え、トライアル雇用求人で、その職業において選考中の人数が求人数の5倍を超える場合、それ以降の紹介は行わないこととなります。つまり、求人が1名の場合、選考中の求職者が5人になった時点で、6人目の求職者はトライアル雇用として紹介は行わないなどの注意点もあります。
助成額について
「新型コロナウイルス感染症対応トライアルコース」の助成金は、試用雇用するトライアル期間(3か月間)を対象に支給されます。週30時間以上の雇用に関しては月額40,000円、週20時間以上〜30時間未満の雇用に関しては月額25,000円となり、その助成額は雇用条件により異なります。
3.労働移動支援助成金
3つ目の助成金は「労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)」です。この助成金は、再就職援助計画などの対象者を、離職後3か月以内に期間の定めを決めない労働者として雇用した場合、また継続して雇用することが確実な場合にその事業者に対して支給される助成金です。(再就職援助計画対象者:倒産や事業縮小で一度に30人以上離職することになった際の離職者)
参考:労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)|厚生労働省
助成金の対象となる要件
支給対象の要件は以下のとおりです。
- 1.求職者を離職日翌日から3か月以内に期間の定めのない労働者として雇用すること
- 2.求職者を一般被保険者または高年齢被保険者として雇用すること
助成額について
この助成金は、通常助成だと1人につき30万円、優遇助成だと1人につき40万円が助成されます。
優遇助成とは、一定の成長が見られる事業の事業の事業主が、株式会社地域経済活性化支援機構、中小企業再生支援協議会等による事業再生・再構築・転廃業の支援を受けている事業所等から離職した求職者を雇い入れた場合に助成されます。