登壇者プロフィール
ソフトブレーン株式会社 上席執行役員
長田 順三 氏
様々な企業の経営課題、営業部門の悩みをヒアリングし、各企業の具体的な課題に合わせたコンサルティング、アドバイスを行っており、500社以上の企業の課題解決に直接貢献。売上向上や成約率アップ、受注数増、残業削減といった成果を生み出している。
アドビ株式会社
デジタルエクスペリエンス事業統括本部 コマーシャル カスタマーサクセス本部 部長
白井 義孝 氏
2015年、株式会社マルケトに営業として参画。その後、アライアンス担当としてマーケティングエコシステム構築を経て、現在はカスタマーサクセス責任者としてチームマネジメント、プロセス構築、プログラム開発に従事。
コロナ禍で変わった、既存顧客との付き合い方
ソフトブレーン株式会社 長田 順三 氏(以下、長田):
マーケティングオートメーションツールというと新規顧客の獲得に焦点を当てがちです。しかし、日本では新規顧客の獲得よりも既存のお客様に対するビジネスが多いんですね。そこで、今日は日本のカルチャーに合わせ、既存顧客に対する営業力強化の観点からどのようにMA(マーケティングオートメーション)やSFAを活用すべきか、お話していきたいと思います。
アドビ株式会社 白井 義孝 氏(以下、白井):
弊社がコロナ禍において行なった調査におきまして、「既存顧客がこれまでと異なる動きを見せている」という声が多く聞かれました。また、異常な顧客離れを経験された企業も多くございました。
長田さんからお話がありましたとおり、MAは顧客の獲得フェーズに焦点がおかれがちです。しかし、コロナ禍の影響で変化が生じている既存顧客との関係維持という面でも役に立ちますし、我々自身もそのような観点で活用しています。
既存顧客への営業手法は個人→組織にシフト!
長田:
マーケティング部と営業部って、これまでうまく連携ができていなかったんですね。
マーケティング部のミッションはイベントやホームページからお客様を集めることです。しかし、そこから先は自分たちの仕事ではないので「営業よろしく」ってなっているんですよ。ところが、マーケティング活動で得られたリストのお客様のうち、購買意欲が高いのはごく一部です。すると、営業はその一部だけをフォローして後は放置してしまう。
このせいで、マーケティング部は「一生懸命集めたのに営業は全然フォローしないじゃないか」と思うし、営業部は「俺らが稼いだ金でマーケティングするんだからいいお客様集めろよ」と、机の下で足を蹴り合うような風潮がありました。
そこで無駄なく今までのお客様リストを育て、しかるべきタイミングで営業にパスして営業は受注活動に勤しむ。こういった取り組みを仕組みに置き換え、マーケティングと営業での分断を改善することが大きなメリットになると思います。これは新規顧客獲得でも、既存顧客への営業でも同じことです。
一気貫通した顧客接点管理を行うには、とにもかくにも顧客起点で考えるというのが軸足になります。そして、これはITによる仕組み化によって実現できますし、実際基幹システムでお客様の基本情報や売上の管理あたりはできていると思います。ですが、それだけでは営業戦略上使えないんですね。
たとえば、「窓口の方はうちのファンだけど、その上司は他社寄りだよね」「この商品は売れているけどこっちの商品はまだアプローチできそうだよね」といったことがシステムで可視化できれば次の戦略が立てやすくなります。昔流の言い方をすると「顧客戦略台帳」なんて言いますし、最近ではアカウントベースドマーケティング、ABMなんていう横文字を使う会社さんもいらっしゃいますね。こういったお客様を軸にした過去・現在・未来の情報を誰もが見れる仕組みが非常に重要になっています。この部分に関しては、各営業パーソンの頭の中にしかない…という会社さんが実はまだまだ多いんですね。
この可視化で実現できることのひとつが人脈戦略ですね。BtoBではどうしても決裁者、つまり一番権限のある人を意識する必要があると思います。それをシステムで明確にしていき、かつ最後に会ったのはいつなんだ、うちの会社のファンなのか、が可視化できれば上司がそれをパッと見た瞬間にフォロー・アドバイスができ、営業を組織戦にすることも可能です。先程あった「窓口の方はうちのファンだけど、その上司は他社寄りだよね」という場合、「次のアポイントでは上司の方に同席してもらえるよう、窓口の方にお願いしてみよう。そうすれば、窓口の方が後押ししてくれるんじゃないか」とか。ここが可視化されていないがゆえに、攻め方が営業パーソン任せになってしまうんです。優秀な営業パーソンは頭の中ですべてやってしまうわけですが、そうでない人でもできるように、デジタル化しながらみんなで作戦が立てられるような仕組みが非常に重要になっています。
もう1つ補足すれば、営業やマーケティング以外の人や部門も営業に関わっているわけですよね。たとえば、保守をしているエンジニアとか。こういう人がお客様から得た情報も共有できれば、部門間で分断なく一気貫通した顧客接点管理ができるようになります。
白井:
一口に既存のお客様といってもすごく幅が広いといいますか。メイン商材をご契約いただいているお客様も、サプライ品だけ買ってくださっているお客様も「既存のお客様」になるので、どこにどれだけアクセルを踏むかというのは難しいところですよね。
営業パーソンの人手に限りがある中で、どのお客様との関係も絶やさず営業をしていかなければならない。そこで、MAから出される社内アラートを参考にすることで、どのお客様にアクセルを踏むべきか、うまくコントロールできるのかなと思っています。
解約防止(チャーン抑制)でのMA×SFA活用
白井:
解約と一言で言ってもいろいろなパターンがあると思います。契約の更新が近づいているお客様に「そろそろ更新ですよね」と話をしたとき、すでに競合他社と同じ土俵の比較が始まっているケース。ほかには、あるお客様のトラブルに一生懸命対応していて、数ヶ月経過して対応が落ち着いた後で別のお客様に訪問すると、全然知らない他社の機械が入っていたり。長いリース契約だからと少しフォローを抑えめにしていたところ、機械が自社に返されてしまった…こういうケースは無きにしもあらずかと思います。私自身も経験ありますので。
こういった解約のリスクは、商談中に「うちもそろそろちょっと他の比較しなきゃいけないんだよね」という声を直接聞くことができた、などの予兆があれば営業パーソンもリカバリーができると思いますが、なかなか察知するのは難しいわけです。営業パーソンが複数社、10社、20社以上と担当しているなかで、全てに注力するのは難しい。その一方、お客様は常に自社のビジネスにとって良い状態を作ろうと考えていらっしゃいますから、競合他社の営業を聞いたり、自分で今使っている製品について調べたりするのは自然なことです。
でも、デジタル上でならMAで検知できます。たとえば、先日商品を導入したばかりなのに改めて商品の詳細をサイト上で確認しているとか、いつもメルマガを見てくれていた人が見なくなったとかですね。こういったアラートをいかにキャッチして営業さんに渡せるかが凄く重要だと思っています。
その「ちょっと危なそうですよ」のアラートをより具体的にしてくれるのが、MA×SFAの活用だと思います。SFA上に正しい情報が入っていれば「何年に契約いただいたどの製品を契約いただいたお客様が、実は今こんな動きしてますよ」といったアラートをあげることも可能です。
長田:
既存のお客様に対してのフォローには、適切なタイミングというのが必ずあります。たとえば、保守契約が切れる3ヶ月くらい前にはフォローを始めないと競合他社に先回りされてしまうとか、機械を導入してから10年くらいのタイミングが「そろそろ古くなったし取り替えようか」の時期であるとか。これを人間に任せるとどうしても漏れてしまったり忘れたりするケースがあります。
トップセールスパーソンはアナログでこういうことを管理しているんですよね。そこをデジタル化・共有して、全員が実践できるように標準化するのが1つの解約防止策かなと思っています。
白井:
そうですね。契約や更新の情報といった静的情報に加えて、Webサイトへのアクセス情報やメール開封率、ウェビナーへの参加状況といった動的情報を活かしてタイミングを掴むことが大事かなと思っています。
既存顧客のさらなるシェア拡大を目指すには?
長田:
我々が提供している仕組みは、基本的にお客様にまつわる情報をすべて一元化するものです。購買履歴や人脈の情報、商談履歴などを、まず1箇所にまとめる仕組みです。
そこからさらにシェア拡大を狙うなら、MAがキャッチした「今このお客様この商品情報を見に来たよ」といった動的情報を営業にパスし、適切な案内をすることが大事であると考えます。営業パーソンもずっとお客様に付きっきりでいるわけにはいきませんから、しかるべきタイミングでの情報提供でチャンスを逃さない、これが収益につながる一番のポイントかなと思います。
白井:
そうですね。既存顧客に対してのマーケティング活動、カスタマーマーケティングと呼ばれる言葉があるように、既存のお客様向けにどういう情報提供をして、その反応をどうやって見ていくのかとか。そういったところがすごく大事になってくるかなと思っています。
おわりに
長田:
今年の9月、デジタル庁というのが官公庁にできると。そして我々民間企業でも、この4月の新しい期からDX推進室といった推進チームみたいな部署がすごい増えてるんですね。つまり、コロナ禍の影響で外部環境が一気に変わってきているということです。たとえば「在宅で営業しなきゃいけない」「お客様と会えるは会えるんだけども、直行直帰で会社には行くな」といった話も増えてきています。
このような変化にどうすれば耐えられるモデルや、競合優位性を担保しながら強い組織を作っていくんだ、というモデル。このロードマップのようなものを、皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。
白井:
SFAもMAも、どういう目的でどういう風に使っていくかを考え抜くことで、本当に便利に使えるものだと思います。「こういうところで課題持ってるんだけど」とか「こんなふうにやっていきたいんだけど」と思われた方は、ぜひお気軽にご相談ください。今日はありがとうございました。
登壇企業による提供製品をご紹介!
本セッションにご登壇いただいたソフトブレーン株式会社様が提供するSFAをご紹介します。
製品・サービスのPOINT
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当日のセッションでは、登壇者が視聴者の皆さんからの質問にリアルタイムで答えてくれます。ぜひ次回のITトレンドEXPOへのご参加お待ちしております!(参加無料)
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