登壇者プロフィール:
株式会社クロスリバー代表取締役 / マイクロソフト 元役員 PowerPoint等の事業責任者
越川 慎司氏
働きすぎて体調を壊したことをきっかけに、起業して全メンバーが週休3日・リモートワーク・複業を実践。「リモートワークを当たり前にする」がミッションの株式会社キャスターの執行役員も兼務。直近5年で著書18冊65万部。
Nota株式会社 代表取締役CEO
洛西 一周氏
経産省IPA未踏ソフトウェア創造事業天才プログラマー認定。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科修士課程修了後、米・シリコンバレーでNotaを設立。スクショ共有ツール「Gyazo」、知識共有サービス「Scrapbox」といったプロダクトの開発を主導。累計調達額は7億円を突破し、現在は2019年にリリースした検索型FA「Helpfeel」による自己解決型顧客体験を業界標準にすることをミッションとしている。
1.カスタマーサポートとはどのようなものなのか
Nota株式会社 洛西 一周氏(以下、洛西):
「守りのカスタマーサポート」と「攻めのカスタマーサポート」という2つがあります。1つ目の「守り」というのはお客様からの問い合わせにちゃんと答えるなど、マイナス部分を無くすという役割。これができるとコスト削減できます。もう1つは顧客満足度を上げる、プラスにしていくという「攻め」の考え方です。
お客様のライフタイムバリュー(LTV)、つまり生涯で得られるお客様からの売上が、満足度と直結していることがオンライン接点で見える化されました。特に、第1回目の接点で良い顧客は、その後も継続的にお客様になっていただけて、売上も増えるということが分かっているので、ここを数値化している弊社のユーザー企業様もいます。企業側の視点と顧客視点の両方から、+(プラス)1にしていく活動の重要性が高まっていると感じています。
株式会社クロスリバー 越川 慎司氏(以下、越川):
昔カスタマーサポートは、不平・不満・不快を取り除くことを求められていましたよね。今はそこでは満足せずに、嬉しさを増すとか、新たな経験をさせてほしいという方にニーズが変わったので、ー(マイナス)1を0だと駄目で、ー1を+1に持って行かなければいけない。そこが難しいところだと思うんです。ただ一方でこの活動によって、顧客の満足度やエンゲージメントはすごく高められます。
新規のお客様と既存顧客から追加発注してもらうというビジネスだと、後者は営業コストが6分の1で済むんです。LTV全体を考えてアップセルやクロスセルを狙うために、今の顧客満足度や顧客ジャーニーを昇華させて、未来のビジネスに活かすというのが、今のあるべきビジネスの姿かなと思いますね。
洛西 :
例えば従来のメーカーの問題で考えると、営業とカスタマーサポートは販売の前と後とで完全に分断されていました。今はつながってきているのでしょうか?
越川:
従業員数が1,000名以上あるような大企業だと部門が分かれてしまうので壁ができてしまい、お客様がたらい回しにされてしまうということですね。今はカスタマーサクセスやインサイドセールスが営業部門の中に入るようになってきているので、上手くいっている企業はコールセンター、インサイドセールス、新規顧客営業、カスタマーサクセスが全て線でつながっています。逆につながっていないと顧客満足度が落ちるし、LTVも落ちる。二極化しているかなと思います。
2.一瞬で自己解決するカスタマーサポート
洛西 :
カスタマーサポートの目的は、お客様の問題や疑問を解決することですが、解決方法には2種類あります。まず1つは、オンライン上で解決してしまうこと。セルフサーブ、自己解決とも言います。もう1つは、電話やメール、チャットを通して人が対応するということ。「一瞬で自己解決」というのは、1つ目のオンラインの解決を指しています。
これまではFAQをオンラインに置いておくことは皆さんがやっていたのですが、効果がよく分からなかったんです。そのため、多くの企業では人の方で改善しようと注力してきました。そうではなく自己解決にちょっと光を当ててみよう、というのが、弊社が取り組んでいることです。
例えばコールセンターにスタッフが100人いるような企業でも、FAQのチューニングを専門にやっているのは一人もいない、という現場が実は多いんです。パートタイムの方が一人で直しているとか、コールセンター全体を見ている部長が片手間で月に2、3回直しているとか、そういった現場が多いと思っています。ここは最適化の余地があるので改善できるぞと思い、弊社のサービスを開発したという背景もあります。
越川:
カスタマーサポートというと、電話とかメールでコンタクトしたときから始まると思っている方が多いですが、洛西さんがおっしゃったとおり実は電話をかける前から始まっています。その段階で自分で調べられるかというセルフサーブ型が重要なのに、整備されていないというのが現状です。
僕は、カスタマーサクセスとカスタマーサポートは一つにするべきだと思っています。お客様が電話をかける前に、どんな情報が必要か、電話のときはどういう対応が必要かというのを面で捉えなければいけないということですね。表面的な解決ではなく発生原因が何かを掘り下げて、ボタンを一発押したら根本解決になるというのがクリティカルシンキングの基本です。そういったことが考えられたFAQを用意している企業は、ほぼ無いのではないでしょうか。
洛西 :
FAQの整備をちゃんとやってみると、いろいろなことが分かります。お客様のどんな声が多いのか、それはなぜ、なぜと掘り下げてフィードバックできるので、FAQが良くなるだけではなくて製品にも活かせます。
越川:
僕がマイクロソフトにいたとき、カスタマーサポートはサポートというコストセンター的なものではなくてセールスの一部だと考えていました。そのため、お客様の発生原因が根本的にどういうものなのか、どうすれば成功に導けるのかというのをすごく深く聞き入れるようにしていました。コールセンターでは「責任者を連れて来い」とよく言われますが、僕は責任者だったので行く立場にあったんですね。566件の謝罪訪問に行ってきたんですが、いろんな物が飛んでくるんですね(笑)。でも真摯に対応していました。
残念ながらキャンセルが1件出ましたが、逆に残りの565件はキャンセル無しで、28%のお客様が契約を増やしてくれたんですよ。お客様は、本当はサービスを継続したいんです。継続したいからこそ、責任者や組織としてどういう対応をするのか、根本解決ができるのかということを求めているのだと分かりました。それに基づいて営業、カスタマーサポート、カスタマーサクセスと連携したらLTVが上がったんです。
つまり、カスタマージャーニー自体を見直したという感じです。売り切り型からいわゆるサブスク型や月額課金型に変わっていく中で、カスタマージャーニーの見直しとその中でのカスタマーサポートの在り方を考え直していくべきだと思います。
3.究極のカスタマーサポートの作り方
洛西 :
人が対応すべきカスタマーサポートと、自己解決すべきオンライン側のUX・CXを良くしていくことを両立させて、いかにフィードバックループを上手く回すかというのが、これからの時代の究極のカスタマーサポートなのかなと思っています。
越川:
今後は「共感・共創」が加速していくと思います。経済格差や政治的な面だけなく、リモートワークする人と出勤する人とか、残念ながら分断が進んでしまうという現実がありますが、複雑な課題はやっぱり一人では解決できません。意図的に自分から巻き込んでいくような仕事の仕方が必要になってきています。
お客様がカスタマーサポートに求めている回答は、「これをやってください」とか「仕様だからしょうがないです」という矢印が一方向のものではなくて、一緒に解決していくことです。お客様の痛みに同情するのではなくしっかりと共感して、一緒に肩を並べて解決していく方法が求められています。そこで接点を持てれば、その後は次の製品を販売するときや対面で営業したりするときにも影響が出てきますね。
このような「共感・共創」を生み出すカスタマーサポートへのニーズがすごく高まってきているので、そこに注力すればアップセル、クロスセル、LTVを高めていくビジネスモデルへの転換が間違いなく加速していくと思います。
洛西 :
今のお話を受けて、もう1つキーワードとして「カスタマイズ」ということが挙げられると思っています。オンライン接客が増えると、オンライン接点と最終的に人が解決するものの組み合わせのパターンをカスタマイズできるようになっていきますよね。それぞれの人に合わせたサービス展開が容易になるので、より豊かな製品を提供できると思っています。これこそが、カスタマーサクセス/サポートのDXの最終形の世界かなと。
越川:
コールセンターだけを単体で見ると、なるべくコストを下げるために対応時間を短くするとか、アウトソースをするということを取り入れている企業が多いと思いますが、そうするとどうしても全体最適にせざるを得ません。上級者と初心者それぞれに合わせてカスタマーサポートをしているとコストがペイしないので、どちらかと言うと最大公約数的なサポートになってしまう。本来、一番サポートを必要としている方を救えなくなってしまうんですよね。
例えば自分の使っていた製品で困りごとがあったときに、上手く言語化しなくても使い方を教えてくれるとか、間違った調べ方をしたのに偶然正解に近づけるとか、そういうことがあるとカスタマイズに近いですよね。AI的に示唆してくれるようなパーソナライズとカスタマイズというのは、確実に顧客の満足度を高めますし、すごく理想的なところだと思いますね。
おわりに
洛西 :
本日は、これからのビジネスはこうなっていくんだ、顧客の求めるものが共感・共創に変わっていくんだということを、プロフェッショナルの越川さんの実体験を通して教えていただきました。大変勉強になりました。ありがとうございます。
越川:
このイベント自体も実は「共感・共創」と、まさにコ・クリエーション(Co-Creation)だと思っていまして、視聴者から質問も多くいただいたということは一緒に共感・共創ができたんじゃないかなと思います。カスタマーサポートはすごく重要ですので、点で捉えずに面で捉えてください。そういうカスタマーサクセスサポートになるために、是非いろいろなITサービスをご検討いただければと思います。
登壇企業の提供製品をご紹介!
本セッションにご登壇いただいたNota株式会社様が提供するFAQシステムをご紹介します。
《Helpfeel》のPOINT
- 様々な言い回しやスペルミスにも対応する新感覚な検索システム
- 問い合わせ6割減!特許技術×AIで、質問の入力中から回答を提案
- 継続率99%!充実のレポート&サポート体制で効果的な運用が続く
ITトレンドEXPO次回もお楽しみに!
当日のセッションでは、登壇者が視聴者の皆さんからの質問にリアルタイムで答えてくれます。ぜひ次回のITトレンドEXPOへのご参加お待ちしております!(参加無料)
▽ITトレンドEXPOの開催情報はこちら