自社業務への適合性を確認する基本条件
ERPが自社の業務に合っているかどうかは、導入後の定着と効率化を左右します。機能の標準範囲とカスタマイズの柔軟性、そして既存システムとの連携可否が基本的な確認事項です。
業務フローへの適合とカスタマイズ性を確認する
ERPを選ぶ際にまず確認したいのは、標準機能が自社の業務フローとどの程度合っているかです。販売・購買・製造・会計・人事など基幹業務をカバーしているかはもちろん、帳票のレイアウト・承認フロー・マスターデータの項目設定など、細かい部分が自社の業務実態に合わせられるかどうかが重要です。カスタマイズが必要な場合は、その費用と工数を見積もった上で判断する必要があります。
ローコード(少ないプログラミングで開発できる仕組み)またはノーコード(プログラミング不要)でカスタマイズできる製品は、社内エンジニアがいなくても画面や帳票の変更に対応しやすくなります。標準機能で対応できる範囲が広い製品を選ぶと、初期のカスタマイズ費用を抑えられます。デモや資料で「標準機能の範囲でどこまでできるか」を具体的に確認しておきましょう。
既存システムとのAPI連携の可否を確かめる
SFA(営業支援システム)・CRM(顧客管理システム)・ECカートシステム・勤怠管理システムなど、既に社内で使っているシステムとERPをAPI(システム間でデータをやり取りする仕組み)で連携できるかどうかは、重要な導入条件です。連携できないと、受注データを手入力で二重管理する状態が残ったり、既存システムの乗り換えコストが発生したりします。
API連携の対応状況は「公式の連携パートナーリストに対象システムが含まれているか」「APIの仕様書が公開されているか」で確認できます。Salesforce・kintone・freeeなど、利用企業の多いサービスとの公式連携を提供している製品は、連携設定のハードルが低い場合が多くあります。連携には開発工数が必要なケースもあるため、対応範囲をベンダーに具体的に確認しましょう。
日本の商習慣と法規制への対応
ERPを日本国内で業務に使う場合、海外製品では対応が難しい日本固有の商習慣や、頻繁に改正される法制度への対応が欠かせません。
日本固有の商習慣(手形・相殺・得意先元帳)に対応しているか
日本には手形決済・相殺処理・得意先元帳・仕入先元帳など、海外の商習慣とは異なる独自の業務慣行があります。海外発のERPを導入した場合、これらの商習慣に標準対応していないケースがあり、大規模なカスタマイズが必要になることがあります。国産のERPパッケージは、こうした日本固有の商習慣に標準で対応している製品が多くあります。
自社の業務で手形や相殺処理を行っている場合は、標準機能での対応可否を導入前に必ず確認しましょう。また、取引先の業種・規模・支払いサイクルによって商習慣が異なるため、自社の実態に即した確認を行うことが大切です。対応が難しい場合の対処方法(カスタマイズの費用感など)も合わせてベンダーに相談しておくと安心です。
インボイス制度・電子帳簿保存法への自動対応
インボイス制度(適格請求書等保存方式)や電子帳簿保存法など、日本の税務・会計関連の法改正は頻繁に行われます。SaaS型のクラウドERPでは、法改正への対応をベンダーがシステム更新として自動的に提供するケースが多く、自社での改修作業を最小限に抑えられます。法改正対応の遅れが原因で税務リスクが生じないよう、ベンダーの対応実績と対応スピードを確認しておきましょう。
電子帳簿保存法への対応では、電子データの保存方法・タイムスタンプの付与・検索機能の要件を満たしているかを確認する必要があります。法改正の情報を定期的にメールやウェブサイトで告知しているベンダーを選ぶことで、自社の経理担当者が法改正の変更点を把握しやすくなります。
セキュリティ要件とシステム構成の確認
基幹データを扱うERPには高いセキュリティ水準が求められます。また、本社と子会社でシステム構成が異なるケースでは、ハイブリッド型の構成が選択肢になります。
クラウドERPに求めるセキュリティ基準
売上・顧客情報・財務データなど機密性の高い基幹データをクラウドに保存するERPには、厳格なセキュリティ基準が求められます。確認すべき主なポイントは、ISO 27001などの情報セキュリティ認証の取得状況、データの暗号化(保存時・転送時)、アクセスログの記録と監査機能、データセンターの物理的なセキュリティ対策などです。
金融機関や官公庁との取引がある企業、個人情報を大量に扱う企業は、SOC2(セキュリティ監査報告)やISMAPへの登録状況も確認することをおすすめします。ベンダーにセキュリティポリシーの文書を提示してもらい、自社のセキュリティ要件と照らし合わせて判断することが大切です。
本社オンプレ・子会社クラウドのハイブリッド構成
本社では自社サーバーで稼働する重厚なオンプレミス型ERPを使い、子会社や海外拠点ではクラウド型のERPを使うハイブリッド構成を取る企業があります。この構成では、本社の既存ERPとクラウド型ERPのデータ連携をどう実現するかが重要な検討事項です。
ハイブリッド構成が可能な製品では、本社と子会社のデータを定期的に同期する仕組みや、APIを通じたリアルタイム連携が提供されていることがあります。本社システムとの整合性を保ちながら子会社の運用負担を下げる方法として、同一ベンダーの複数製品ラインを使う方法や、異なるベンダーをAPIで連携させる方法があります。導入前にベンダーにハイブリッド構成の実績と対応状況を確認しましょう。
グローバル対応と拡張性の確認
海外展開を予定している企業や、急成長に備えたスケーラビリティが必要な企業は、グローバル対応と将来の拡張性を導入条件として確認することが大切です。
多言語・多通貨・複数会計基準への対応
グローバル展開を行う企業では、各国の言語・通貨・現地税制・会計基準(GAAP・IFRSなど)に対応したERPが必要です。複数拠点のデータを本社のERPに統合するためには、通貨換算・勘定科目マッピング・現地税制への対応が自動で処理できると運用工数を大幅に削減できます。対応している言語・通貨・国のリストをベンダーに確認した上で、展開予定の地域をカバーしているかを確かめましょう。
グローバルERPを提供しているベンダーの中には、日本語サポートが限定的なものもあるため、日本語の操作マニュアル・技術サポート・コンサルティングが整っているかを確認することも重要です。グローバルとローカルの要件を両立するために、地域パートナーの充実度もベンダー選定の基準になります。
将来の規模拡大に備えたスケーラビリティ
ERPは長期間にわたって利用する基幹システムです。現在の規模に合ったシステムでも、将来的に従業員数・取引量・拠点数が増えた際に、システムのスペックが追いつかなくなるケースがあります。クラウド型のERPはリソースをオンデマンドで拡張できる製品が多く、スケーラビリティの面でオンプレミス型より有利な場合があります。
将来を見越したERP選定では、「現在の利用規模」だけでなく「3~5年後の規模感」も想定してベンダーに相談することをおすすめします。ライセンス体系が利用人数ベースか機能モジュールベースかによって、成長時の費用の変化の仕方が異なります。成長フェーズに応じた費用の試算を事前に行っておくと、将来の予算計画に役立ちます。
導入条件で選ぶERPシステム
多様な導入条件に対応できる機能と実績を持つERPシステムをご紹介します。自社の条件と照らし合わせて比較検討してみてください。
OBIC7
- 会計軸のERPが、業務統合から経営意思決定支援までフルカバー
- 豊富なソリューションの全てを自社運営クラウドで提供
- 自社開発・直接販売・自社一貫体制で、将来の安心をお約束
OBIC7は、国内の中堅・大手企業向けに提供される統合業務パッケージです。日本の商習慣・税制に標準で対応しており、会計・人事・給与・販売・購買など幅広い業務領域をカバーします。
GRANDIT(グランディット)
- 中堅・大手企業の基幹刷新に特化した、純国産WEB-ERP
- 国内70社以上のSIerが共同で開発・保守。進化を続けるERP
- 日本の法改正に、迅速にアップデートで対応
GRANDIT(グランディット)は、中堅・大手企業向けの国産クラウドERPです。日本の商習慣・法制度への対応と、柔軟なカスタマイズ性を兼ね備えた設計が特徴です。
Oracle NetSuite
- 財務・販売・在庫・購買を一気通貫で管理可能なERP
- 脱Excelで業務標準化と可視化を同時に実現
- リアルタイムなデータ連携で経営判断を迅速化
Oracle NetSuiteは、中堅・成長企業向けのクラウドERPです。グローバル多拠点展開に対応した多言語・多通貨・多法人管理機能を備え、海外展開を見据えた企業に向いています。
マネーフォワード クラウドERP
- バックオフィス全体をシームレスに連携!面倒な手作業を自動化
- 事業フェーズに合わせて、機能を組み合わせることが可能
- 様々なサービスと連携!利用中のサービスと柔軟に連携可能
マネーフォワード クラウドERPは、会計・経費・給与・請求書などをクラウドで一元管理できるERPです。インボイス制度・電子帳簿保存法などの法改正にもシステム側で対応しています。
スマイルワークス (株式会社スマイルワークス)
- 給与明細を支給日にPC/スマホで確認可能。
- PDFで明細のダウンロード・印刷が可能。
- 給与明細をペーパーレス化し、発行作業を削減。
PROCES.S (株式会社内田洋行ITソリューションズ)
- 建設業経理士多数在籍、導入から保守までワンストップサポート
- JIIMA認証と電帳簿ソフト法的要件認証に対応
- 業務に合わせモジュールを段階的に導入可能
まとめ
ERPの導入条件は、自社業務への適合性・日本の商習慣や法改正への対応・セキュリティ基準・既存システムとのAPI連携・グローバル対応・スケーラビリティなど多岐にわたります。機能の充実度だけでなく、自社の業務環境・将来の成長計画・IT体制に合った製品を選ぶことが、長期的なERP活用の基盤になります。複数の製品を比較検討し、デモや無料試用を通じて実際の使用感を確認した上で判断することをおすすめします。


