オープンソースERPとは
まずERPとは、企業全体の経営資源の情報をコンピュータで一元管理して、経営支援するシステムのことです。経営資源とは企業におけるヒト・モノ・カネのすべてを指します。情報を一元管理することで、財務会計や生産管理、販売管理といった基幹業務のサポートが可能です。
ERPの特徴として、一般的にパッケージシステムが多いことが上げられます。パッケージシステムは受託開発と対をなすもので、需要が多そうなシステムを汎用化したものです。
一方で、ERP構築に必要なフレームワークを無料を提供しているのがオープンソースERPです。Web上で公開されている情報を活用して誰もが使用することができます。
オープンソースERPを利用するメリット
オープンソースERPを導入するメリットは次のとおりです。
- コストを抑えられる
- 無料のソースコードを利用しているため、導入費用が抑えられます。また、ライセンス料やアップグレード料なども不要なため、運用コストも減らせます。
- 拡張性が高い
- オープンソースERPでは、アドオンが充実しているものが多くあります。アドオン自体は有志が作成したものであるため、完成度やセキュリティ面などの細かい部分はまちまちですが、必要なときに必要な機能を追加しやすい点はメリットでしょう。
オープンソースのERPを比較
オープンソースのERPにもさまざまなものがあります。実際にどんな製品があるのか、代表的な製品を紹介します。
ADempiere
「ADempiere」は、販売・仕入・顧客の管理や会計などの機能を持ったオープンソースのERP・CRMソフトウェアです。多言語や複数通貨にも対応し、レポートや財務諸表の出力機能も備えるなど、豊富な機能を有します。
ADempiereのソースコードはGPLで公開されており、無料で全機能を導入可能です。また、Application Dictionaryという独自のフレームワークで構築されており、ノウハウがあれば比較的容易に独自カスタマイズできます。
Compiere
「Compiere」は、流通業やサービス業の中小企業に向けた、オープンソースのERP ・ CRMシステムです。アメリカのComPiere社が提供しており、世界で180万件のダウンロード実績をもつ製品です。
販売・在庫・仕入・債権・債務・財務会計、顧客管理・ネットショッピング・セルフサービスなど、企業の基幹システムとしての豊富な機能を一元的にカバーします。また、無償で公開されているコミュニティエディションと、有償サービス付きで提供されるスタンダードエディションの2種類のライセンスがあります。
iDempiere
「iDempiere」は、販売・在庫・購買・会計・生産・顧客管理などの機能を備えたオープンソースのERPソフトです。グループ経営の管理にも活用でき、多言語・多通貨への対応、会計帳簿を複数作成する機能なども有します。
また、OSGiの仕様を取り込んでいるためにプラグインによる機能拡張が可能です。さらに、レスポンシブデザインにも対応し、クラウド環境での利用も問題ありません。権限やログの管理などといったセキュリティ機能も備わっています。
xTuple
「xTuple」は、オープンソースのERPシステムであるPostBooksをベースに、製造・流通・サービス業に向けた業務機能を追加した点が特徴です。製造業における部品・生産管理、流通・小売業における在庫管理などで海外で多くの実績を有します。
電子商取引でバックエンド業務と連携できるほか、Webポータルやiphoneクライアント対応、バーコードリーダ対応、帳票出力やDBデータの入出力などの機能を搭載しています。
ERP5
「ERP5」は、世界中で銀行や官公庁、企業に導入された実績をもちます。ほぼすべてがプログラミング言語であるPythonで作られているのが特徴で、CRM・製造管理・サプライチェーン管理・Eコマースなどの機能を含みます。
また、多言語化にも対応しており、ユーザーインターフェースと入力データ両方において、複数言語に切り替え可能です。
Apache OFBiz
「Apache OFBiz」は、オープンソースのエンタープライズプロセス自動化システムです。CRMや在庫管理、営業支援、会計管理などのコアモジュールが搭載されており、カスタマイズ不要ですぐに導入できます。
オンラインデモが用意されているため、使用感やUIの確認も容易です。ユーザーによる日本語版のコミュニティもあるため、参考になるでしょう。
オープンソースERP導入時の注意点
オープンソースERPを導入する場合に、いくつか押さえておきたい注意点を解説します。
サポートに制限がある
オープンソースERPは、開発コミュニティによって作られています。そのため、アドオンを使用して不具合が発生しても、責任の追及ができません。アドオンなどをインストールする際は自己責任である点に注意しましょう。
セキュリティの脆弱性
オープンソースERPは、セキュリティが脅かされやすい傾向があります。セキュリティ更新プログラムに遅れなく対応することを基本としていますが、それだけでは防げない脆弱性が見つかる可能性があります。
セキュリティを強化するためには、セキュリティシステムへの投資を行わなければならないため、結果的にコストがかかってしまいます。
社内インフラ構築や運用・人件費にコスト発生
オープンソースERPの製品自体は無料ですが、社内インフラ構築費用や運用費用などは当然かかります。社内インフラを整備しなければ導入は難しく、導入後にも運用費用や人件費がかかります。特にオープンソースERPを効果的に活用するためのランニングコストは、大きな負担となるでしょう。
運用費用や人件費のコストとセキュリティシステムへの投資で、結果有償製品よりもコストが多くかかるということも少なくありません。
運用コストを考慮すると有料版の製品が有利なことも
オープンソースERPは、無償ライセンスにより低コストで導入可能な点が最大の魅力です。しかし、インフラ環境を構築したり、運営や保守に人材を登用したりと、場合によってはかえってコストがかかってしまうおそれもあります。社内環境によっては、有料のERP製品が適しているケースもあるため、導入前によく比較してみましょう。
有料のERP製品は、導入準備や管理工数が省けるほか、アップデートの自動化やサポートの手厚さなどがメリットとしてあげられます。本格的なERPの活用を考えるのであれば、有料版の製品も視野に入れて製品を選びましょう。なお近年ではクラウド型の製品もでてきており、オンプレミス型よりもスムーズに導入も可能です。
以下の記事では、ERPを特徴別に紹介しています。導入を検討している方は、ぜひ参考にしてくみてください。
自社の要件にあわせて最適なERPを導入しよう
オープンソースERPは、製品自体は無料という大きなメリットがあります。しかし、企業の環境下によってはかえってコストがかかる場合もあるため、導入を検討する際には有料版のERPとよく比較してみるのがおすすめです。
自社にあったERPを導入し、業務の効率化や経営判断の迅速化を目指しましょう。