2層ERPとは
2層ERPとは、コアとなるERPに加えて、サブのERPを組み合わせて使う形態を言います。アメリカのガートナー社などによって提唱されてきた概念です。具体的には、グループ企業などにおける本社でコアERPを使い、支社や支店といったほかの拠点ではサブERPを使います。
コアERPとサブERPのインターネット経由で連携を行う事で、全体の経営データをすぐに収集する事が可能になるため、管理の効率化に繋がります。
クラウドERPの進化に伴って導入が加速
2層ERPではコアERPとサブERPを用意する必要があります。しかし、ERPの導入にはインフラ環境の整備やコスト面で大きな負担が伴うため、複数用意するのは大変なことです。従来はこのことが2層ERP導入の障壁となっていました。
一方近年では、その障壁が取り除かれてきています。インターネット経由で手軽に導入可能なクラウドERPが普及してきたためです。
従来の自社でシステムを保有するオンプレミスERPを導入する場合、サーバなどの設備を自社で整え、運用する必要があります。しかし、クラウドERPならば設備は必要なく、管理をベンダーに一任できます。必要なリソースの変更も簡単なため、海外拠点だけではなく経営が安定しない国内の新拠点での運用にも適しているでしょう。
こうしたクラウド型の手軽さから、サブERPを導入するのが容易になり、2層ERPが現実的な運用形態として注目されるようになりました。
2層ERPが登場する前の課題
2層ERPが登場する前には、ERPについて主に2つの大きな課題がありました。それぞれ詳しく見ていきましょう。
海外と日本におけるERPの要件が異なっていた
日本と海外では商習慣が異なるため、ERPに求められる要件も異なっていました。結果として、日本の本社で使っているERPを海外拠点では使えないという問題が多く生じていました。
だからといって、日本と海外で完全に独立したERPを使うわけにもいきません。
なぜなら、グローバルにビジネスを展開するには、各拠点における経営状況をリアルタイムに把握・管理できなければ、有効な経営戦略を練ることができないからです。ERPが独立しているとデータを一元管理するのが難しく、全拠点の状況を俯瞰的に把握できません。手動で一元化することも理論的には可能ですが、経営データの収集など時間を要するためリアルタイム性が損なわれます。
このように「拠点ごとに異なるERPを使いたい」「データを一元化したい」という相反する要望が生じていました。そして、この2つを同時に満たせる方法として登場したのが2層ERPです。
投資対効果が見合わないことが多かった
拠点ごとに最適化されたERPが必要だからと言って、すべての拠点に本格的なERPを導入するのは大きなリスクを伴います。導入しても、その元を取る前に拠点を閉鎖しなければならない可能性があるからです。
拠点を展開する国にもよりますが、海外の情勢は、変化の予測が難しく日本と比べて不安定なことも少なくありません。ましてや、地理的に離れているために日本から状況を把握するのが難しい以上、拠点を展開してはじめて気づくリスクも多くあると考えられます。このような状態で多額の資金を投じ、大規模なERPを導入するのはハイリスクと言わざるを得ません。
一方、2層ERPならば各拠点に導入するのは小規模なクラウド型ERPで事足ります。初期費用が安く、解約も簡単なため、前述したようなリスクを背負わずに済みます。
2層ERPを採用するメリット
ここまでで解説してきたことを踏まえて、2層ERPのメリットをまとめて見ていきましょう。
- ■リアルタイム性
- 各拠点で独立したERPを使うのではなく、コアERPとサブERPを組み合わせるという特性上、データの一元化が可能です。結果として、本社側で全拠点の状況をリアルタイムに把握・管理ができます。
- ■各拠点への最適化
- ビジネスをグローバル展開する場合、言語や通貨、会計基準などが拠点ごとに異なります。国内のビジネスでも、多種多様な企業と合同で事業をしていたり、複雑化しているケースが多くあるでしょう。2層ERPならばサブERPを各拠点に適したものにすることで、全社的なERPの変更することなく最適化を図れます。
- ■ローコスト
- 大規模なERP導入の場合、会社やグループ全体のインフラ整備も含めコストがかかります。しかし、2層ERPならば拠点増設時に小規模なクラウド型ERPからはじめるため、ローコストで済みます。
- ■M&Aへの対応
- 世界はもちろん、日本国内でもM&A市場が拡大しています。M&Aではシステムの統合が障壁となりがちです。しかし、2層ERPならば拠点ごとで異なるERPを使いつつスムーズな統合を図れます。
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2層ERPを採用すべき企業
2層ERPを採用すべき企業の特徴を2つ紹介します。
1.性質の異なった関連企業を多く抱える大企業
各拠点、あるいはグループ企業内における各企業がどれも同じ性質をもつのであれば、全社で単一のERPを採用すれば事足りるでしょう。
しかし、拠点・関連企業ごとにビジネスの性質が大きく異なる場合、そうはいきません。このようなケースにこそ2層ERPが適しています。1つ具体的な事例を見ていきましょう。
あるグローバル企業は、M&Aにより海外企業を買収することになりました。結果として、中国やフィンランドなど、複数の国の拠点を管理しなければならなくなりました。
さらに、拠点ごとに「営業・サービス」「製造」など担う業務が異なります。こうしたまったく性質の異なる拠点を統合管理するために、同社は2層ERPの導入を決意。各拠点とWeb上で会議を行いながら導入を進めました。各拠点の要望すべてに最初から応じるのは難しかったものの、順次対応することで納得を得られたと言います。
2.複数拠点で展開している中規模企業
「2層ERPはグローバル企業のもの」という印象を受ける人もいるかもしれません。しかし、「日本の本社─海外拠点」という構図を「本社─地方の拠点」に置き換えると、国内のみでビジネスを展開する企業にも適していることがわかります。
同じ国内で業務を営んでいても、各拠点の業務が同じとは限りません。本社とは事業展開が異なっているケースや、地元の企業と合同でビジネスを展開するなど、業務形態が各地域に最適化されているケースが多々あります。特に、全社統一的な管理にまでリソースを割けない中規模企業では、拠点ごとに独自の業務形態が生じがちです。
こうしたケースで2層ERPを導入すると、各拠点の業務形態を維持しつつ、本社で全拠点を管理できるようになります。
2層ERPを導入し、複数拠点のデータを統合管理しよう
2層ERPとは、コアERPとサブERPを組み合わせるERPの形態です。各拠点の独自性を保ちつつ、情報の全社統一的な管理を実現する方法として注目されています。
一昔前までは、ERPの導入コストが障壁となっていました。しかし、今ではクラウド型ERPの登場により、少ないコストとリスクで実現できるようになっています。
情勢の変化が激しい昨今では、次の経営戦略や意思決定の迅速性は、企業成長に大きく影響を及ぼすでしょう。
2層ERPを導入する事で、企業全体の状況をリアルタイムで把握しさらなる生産性の向上を目指せます。
この機会に2層ERPの導入を検討し、自社の管理体制をあらためてみてはいかがでしょうか。