ERPは総合業務を1つのシステムで管理できる
ERPは「Enterprise Resource Planning」の略であり、「基幹系情報システム」を意味します。企業の「ヒト・モノ・カネ」といった経営資源の適切な分配・管理をサポートするシステム全般をERPと呼んでいます。
ERPでは財務会計や販売管理、人事などの全ての業務を1つのシステムで一元管理することが可能です。企業内の全てのデータがシームレスに連携することで、業務効率化・可視化が実現し、迅速な経営の意思決定をサポートします。
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中小企業が抱える問題
ERPを導入していない中小企業が抱える問題を3つの視点から解説していきます。
労働生産性が低い
多くの中小企業は各部署の業務効率化を図るために会計システムや購買管理システムなど、さまざまなシステムを導入しているでしょう。そして、それぞれのシステムは分断化された状態だと思います。
各部署にシステムを導入していることで業務プロセスが複雑化してしまい、各システムごとにデータを入力しなければいけません。この状況では手間がかかる上、データの入力ミスを招く可能性があり、労働生産性の低下につながってしまいます。
収益に直結するシステム導入が遅い
中小企業のさらなる収益アップのためには、組織全体の業務最適化を図る必要があるでしょう。各部署をシームレスに連携できるシステムの導入が遅れているため、組織全体の業務最適化が実現できずにいるのです。
また、各部署のシステムが分断されていることで組織全体のデータの一元管理ができていないため、データの活用によるリアルタイムな経営判断を下すことが難しくなっています。
独立したシステムでは、経営判断を下すデータが1ヶ月前のものであることも珍しくはないでしょう。これでは、収益を見込んだ最適な判断を下すことさえ難しいといえます。
システムが不足・老朽化している
会計システムや購買管理システムなど、さまざまなITソリューションを導入している企業は多いでしょう。既存システムのバージョンアップや、新システムの構築には手間やコストが大幅にかかってしまうため、容易に導入できるものではありません。
予算の関係上、システムの機能不足や老朽化を感じながらも中々、導入に踏み切れない企業も多いでしょう。また内部統制強化を急務とする企業が増えていますが、既存のシステムでは内部統制に対応していない製品も多いのが現状です。
内部統制強化の観点からも、システムの機能不足や老朽化は企業にとって切実な問題だといえるでしょう。
中小企業がERPを導入する必要性
中小企業が抱える問題を解説しましたが、これらの理由からERPを導入する必要性を3つのポイントに沿って解説していきます。
データを利用する機会が増えている
近年、ビッグデータを活用し、経営判断に活かす企業が増えつつあります。ビッグデータは、コンピュータの処理速度向上によって生じる大量のデジタルデータです。この大量のデータの中には、経営のヒントとなる貴重な情報が多く含まれており、そのデータをどう活かすかは、企業の経営手腕にかかっています。
組織内の膨大なデータを効率よく収集し、そのデータをBIなどの分析ツールに取り込み分析する。その過程をスムーズに行えるかどうかが大切なポイントだといえます。
社内の規制が厳しくなっている
米SOX法に習って日本でも2006年にJ-SOX法が制定され、企業も内部統制によるコンプライアンスへの対応を早急に行う必要があります。企業の業務プロセスをルール化し、不正行為を防ぐ体制づくりが企業に求められているのです。
ERPでは、各システムのポリシーの設定やログの取得、また、アクセス権限や承認の管理など、さまざまな機能をもつ製品が数多くあります。これにより企業は、内部統制の強化をERPを活用することで実現できるようになります。
社内のサポート体制を強化できる
ERPは企業の各部署の業務をシームレスに統合できるシステムです。それぞれの業務がシステム連携することで、社内のサポート体制の強化を期待できるでしょう。まず、データの一元化により経営の意思決定の迅速化をサポートします。
また、販売情報が在庫情報へ反映されるシステムであれば、顧客からの問い合わせに対してもスムーズな対応ができるため、ユーザサポートへの貢献が可能となります。さらに、顧客情報を活用しクレーム対応を最適化することで、より適切な対応を図れます。それによって、顧客満足度向上を目指すことができるでしょう。
中小企業がERPを導入する3つのメリット
中小企業がERPを導入することでどのような効果が期待できるのでしょうか。3つの導入メリットを解説していきます。
メリット1:経営の方針を素早く判断できる
ERPを導入することで、整合性の高いタイムリーなデータを把握できるため、経営方針の決定のスピード化が実現できます。組織内全てのシステムが連携しているため、各部署で二重入力によるデータの入力ミスはほとんどないでしょう。そのため、正確なデータに基づいた分析を可能にし、戦略的な経営が実現可能です。
また、多くのERPでは「経営ダッシュボード」と呼ばれる機能を搭載し、速度メーターの様にあらゆるデータを可視化できます。そして、欲しいデータを選択し表示できるため、いつでもデータを把握して迅速な経営判断が下せるようになるでしょう。
メリット2:効率的な経営ができる
ERPは、各部署のシステムの連携が可能になるため、効率的な経営を実現できます。また、連携により業務プロセスが視覚的に把握でき、一連の業務フローの問題点が見つけやすいです。そして、この問題点を解決するために新たな業務プロセスを再設計すれば、業務最適化を実現できるでしょう。
また、システムの連携は業務最適化を実現するだけではなく、業務効率化ももたらします。各システムが連携することで、同一のデータを2重3重に入力する必要はありません。システムにデータを入力するだけで、他の部署へも同一データが反映されます。
これにより、各部署で業務効率化が図れるだけでなく、同一データの2重計上といったミスの軽減につながります。
メリット3:運用費および保守費が軽減できる
ERPをパッケージで導入すると、自社でERPシステムを構築した場合と比較して、導入費や運用費を軽減可能です。自社でERPシステムを構築した場合、導入費や導入までに時間がかかる可能性が高いでしょう。また、構築後も運用費や保守費、また、ITリテラシーの高い人材を確保することを視野に入れなければいけません。
一方、パッケージで導入した場合、組織編成の場合でも柔軟に機能の追加や拡張が可能です。カスタマイズも低コストででき、既存システムとの連携も柔軟に対応できるでしょう。クラウドに対応したERPを選定すれば、ベンダーが運用や保守などを全て行います。さらなる運用費や保守費の軽減が期待できるでしょう。
中小企業がERPを導入するデメリットは?
メリットだけではなく、同時にデメリットも生じます。ERP導入にあたりどのようなデメリットがあるのでしょうか。
業務プロセスに合わない場合がある
ERPは、良くも悪くも業務を定型化させます。独自の業務プロセスを持っている中小企業だと、ERPに合わせる必要があり、逆に業務が非効率になってしまう可能性があります。そのためERPで定型化する部分とそうではない部分を分け、より効率的に使用できるように調整する必要があります。
社員に周知する必要がある
ERPを始めとしたツールは、経営層の判断で導入されますが、実際運用を行うのは社員になります。導入、運用のフェーズで摩擦を生まないように導入段階から、運用の主要メンバーには周知を徹底し、進めていく必要があります。ERPを導入することで業務の効率化が図られ、生産性が高まることを理解してもらいましょう。
中小企業におけるERP選びのポイント
実際にERPを選定する際の2つのポイントを解説していきます。
社内環境や業態に合った機能・適用形態なのか
企業規模や業種によってERPに求める機能は異なってくるものです。導入の際は、自社の規模や業種に適した機能を搭載しているのか、慎重に製品選定を行う必要があります。また、ERPの提供形態もクラウド型やオンプレミス型の2種類あります。
クラウド型はインターネットを利用して提供されるサービスです。一方、オンプレミス型は自社にサーバを構築して運用や保守を行っていく形態です。それぞれにメリットやデメリットがあるため、自社に適した導入形態はどちらかを十分に検討する必要があるでしょう。
そしてERPの選定を行う際は、現在の経営状況だけで判断せず、長期的な視点から導入の検討を行うことも大切です。将来的に事業形態の変化が予想されるのであれば、機能の追加やカスタマイズしやすい柔軟性の高い製品を選定する必要があるでしょう。
ベンダーのサポートやセキュリティは整備されているのか
ERPを導入する際、ベンダーのサポートや、製品のセキュリティ対策は十分なのか、あらかじめ確認しておくことが大切です。
ERPを導入後、安定した稼動に至るにはベンダーからのサポートが必要不可欠です。導入前に操作についての教育をしてくれるのか、トラブルがあった際はすぐに対応できるのか、どこまでのサポートがあるのかを事前に確認するようにしてください。
また、セキュリティ対策として、クラウド型の場合、どこにデータセンターがあるのか、どのようなセキュリティ対策をとっているのかを確認しておきましょう。オンプレミス型の場合は、自社のセキュリティとの親和性はとれているのかをあらかじめ確認しておくことが大切です。
ERPを導入する注意点
ERPを導入する際の気をつけるべきポイントを4つ解説していきます。
ERPを導入する目的を明確にするべき
ERPを導入する際には、必ず目的や改善したい課題を明確にすることが大切です。自社業務の洗い直しを行って改善すべき課題を把握し、ERPの導入によりどのような効果が得られるのか、あらかじめ検討しておきましょう。
また、一気に全ての業務最適化を図るのではなく、部分的に導入を行うスモールスタートも選択肢の1つに入れておくべきです。ERPの機能性を重視するあまり、導入すること自体が目的となってしまわないよう注意しましょう。
ERPの適用範囲を明確にすべき
ERPはシステム統一による業務最適化を図るシステムのため、業務の適用範囲を明確にすることが大切です。
ERPに搭載されている機能全般が自社の商習慣にフィットするとは限りません。自社のニーズに合致する機能を搭載したERPの選定を行い、製品の導入による適用範囲をあらかじめ明確にしておく必要があるでしょう。
多機能に惹かれて製品選定を行ってしまうと、使わない機能ばかりでコストばかりがかさんでしまうといった状況になりかねません。
ERPを運用できる体制を整えるべき
ERPを導入後、実際にシステムを操作していくのは現場スタッフです。
現場スタッフが使いにくさを感じたり、直感的な操作ができないシステムの場合、ERPは次第に使用されなくなる可能性があります。そのような事態を避けるためにも、現場責任者やIT管理者、そして経営者を巻き込んだプロジェクトチームを作ることが大切です。
ERPに求める機能や操作性は何か、導入後の安定した稼動を見据えた運用体制を整えることが導入成功のポイントになるでしょう。
ERPの費用対効果を考えるべき
ERPはさまざまな機能を搭載しています。そこで、導入の際にERPの機能が自社のニーズにフィットし、どの程度のギャップがあるのかをあらかじめベンダーと確認しておくことが大切です。
全てのERPの機能が自社のニーズに合うわけではありません。製品の検討段階でどの程度ギャップの少ないERPを選定できるかがポイントです。導入費用に対してどの程度の効果が期待でき、業務改善が見込めるのか、費用対効果を十分に考えることが必要です。
ERPを導入して抱える問題を解決!まずは自社環境を見直す
ERPは企業の全ての業務を一元化することで、最適化や迅速な経営意思決定をサポートできるシステムです。中小企業が抱えるさまざまな課題をERPで解決することができるでしょう。
ERPの導入を検討している場合、自社の課題を明確にすることが重要です。また、自社の業務にフィットする製品の選定を行うためにも、全社一丸となった運用体制作りを行いましょう。