ERPの導入に失敗する原因
ERPの導入に失敗する原因は主に4つあります。
プロジェクトへの求心力がない
ERPの導入はどのような企業にとっても非常に大掛かりなプロジェクトです。そして、大規模な改革には必ず反発が生まれます。この反発をうまくまとめ、関係者をプロジェクトの推進に巻き込んで初めて成功に至るのです。
したがって、ERPの導入に失敗しないためには求心力のあるリーダーの存在が不可欠です。ERPの導入メリットを明確に示し、関係者にビジョンを抱かせられる、知識と熱意に溢れた人をリーダに採用しましょう。
ベンダーへ任せきりにしている
ERPのベンダーは確かにERPに精通しています。しかし、だからといってERPの導入をベンダーに任せきりにして良いわけではありません。導入されたERPを実際に使うのは自社だからです。
ベンダーに任せきりにしていると、ERPと自社の業務プロセスが合わないといった問題が生じます。こうした失敗は、自社の業務プロセスについてベンダーと事前に共有できていれば避けられたはずです。しかし、その努力を怠ると導入後になって初めて問題に気づく羽目になります。
業務の改善へとつなげていない
ERPを使えば社内の情報を一元管理できます。しかし、それは手段に過ぎません。一元化された情報は業務に活かされてこそ意味を持ちます。
ところが、「どう業務に活かすか」というところまでを考えずに導入を決断する失敗事例が少なくありません。導入しても誰も使わずじまいになるのです。
また、導入後になって初めてERPを業務に合わせようとしても、困難なケースが多いです。ERPを業務に合わせるには必然的にカスタマイズが必要になりますが、カスタマイズを繰り返すと機能が複雑化して社内に定着しません。
部署間でコミュニケーションをとれていない
ERPの特徴の1つは、部署横断的な情報連携が実現することです。すべての部署の情報を1つのシステム上で管理できるため、部署間で透明性を確保できます。
しかし、ERPを導入しただけで部署間での連携が活発になるとは限りません。どれほど情報共有が簡単になっても、積極的に関わろうとしない限りコミュニケーションは生まれないのです。当然、コミュニケーションをとらないのであればERPによって情報共有のハードルを下げた意味がなく、失敗と言わざるを得ません。
せっかくERPを導入するのですから、それを活用したコミュニケーションの在り方も考えてみましょう。
ERPの導入に失敗した事例
次は、ERPの導入に失敗した事例を2つ紹介します。
あるスーパーマーケットは品切れや過剰在庫を防ぐために、在庫を全社的に見える化するERPを導入しました。そして、実際に各店舗の発注担当者は在庫情報にすぐにアクセスできるようになったと言います。
ところが、発注の際にその情報を活かすことなく、従来と同じように勘に頼った発注を続けてしまいました。結局、品切れや過剰在庫は防げなかったそうです。
ある企業は、全社的なパッケージERP導入に向けてベンダーの選定を進めていました。そして、最終的に絞った3社から自社にもっとも合うベンダーに目星をつけました。
ところが、その後社内で意見が分かれます。3社のうち、別のベンダーが良いと主張する声が他部門から上がったのです。確かに、実績豊富、カスタマイズ可能など特徴が三者三様で、一概に最適なベンダーを決められない状態でした。もう一度社内で意見を整理する必要があるでしょう。
ERPの導入で失敗しないためのポイント
ERPの導入に失敗しないためには、どのようなポイントに留意しなければならないのでしょうか。
自社が抱えている課題を明らかにする
ERPの導入を検討する場合、何らかの課題があるはずです。特に課題がないのであれば導入する必要はありませんし、課題があるのならそれを明確にする必要があります。
ここで注意しておきたいのが、ERPの導入によって解決する課題はシステム上の課題ということです。システム上の課題とは、情報の共有やシステムの操作性など、ITシステムに起因する課題を言います。
一方、業務フローが効率的ではないといった業務課題は、ERP導入では解決しません。ERPは、あくまでシステム面を整えることにより業務を支援する存在に過ぎないからです。このように、ERPで対処できる範囲を明確にしておかなければ、ないものねだりをすることになります。
投資対効果を算出する
ERPの導入コストをできるだけ抑えたいと考えている企業は多いでしょう。しかし、目先の負担にばかり注意していると、より重要な投資対効果を見落とすことになります。
もっとも大切なのは、ERPの導入によって得られる利益が導入費用を上回っていることです。投資対効果を見極めるには、ROI評価が有効です。ROIとは「利益/投資額×100%」で算出される数値で、この値が大きいほど投資対効果が高いことを意味します。
そして、ERP導入によって得られる利益は、ERPそのものの質だけでなく、それを運用する体制によっても左右されます。導入後に何もしない企業と、少しでもERPを有効活用しようと業務フローを見直す企業では、後者の方が利益を上げやすいのは明らかです。
現場担当者が積極的に参加する
現場担当者にとって、経営層が勝手に選んだERPを使うのは苦痛になり得ます。それを活用すれば業務が効率化することが分かっていても、「やらされている感」を拭えません。特にそれが業務に合わないシステムなら使うのを拒むでしょう。
そこで必要になるのが、現場担当者がERP導入に積極的に関わることです。経営層がリーダーシップを発揮することは大事ですが、あくまで現場の従業員が自分たちのために導入するという意識を持つ必要があります。これなら現場の声を製品選定に反映できるうえ、仮に不満があっても現場の従業員が自ら選んだ以上、納得がいくでしょう。
導入後に業務プロセスの改善をする
導入前に現場の声を取り入れ、業務に適したERPを導入しても、すべてがうまくいくことはほぼありません。導入後にさまざまな問題点が浮き彫りになるのが普通です。
特に、データの管理体制はERP導入によって根本的に変化するはずです。その変化に伴う問題が発覚し次第、再度ビジネスプロセスを見直す必要があります。
また、導入後の時点ではうまくいっていても、ビジネス環境の変化により新たな問題が生じることもあります。変化が生じるたびにERPの活用体制を見直さなければ、ERPが時代に取り残されることになるでしょう。ERPをうまく活用できているのか定期的に確認し、メンテナンスを続けることが大切です。
失敗例から学び、最適なERPを導入しよう
ERP導入は失敗事例が多いとされています。主な失敗理由は以下のとおりです。
- ■プロジェクトへの求心力が弱い
- ■ベンダーに任せきりにしている
- ■業務の改善へつなげていない
- ■部署間でコミュニケーションをとれていない
失敗しないためには以下のポイントに留意しましょう。
- ■課題の明確化
- ■投資対効果の算出
- ■現場担当者の参加
- ■業務プロセスの改善
他社の失敗事例から学び、安定したERP導入を目指しましょう。
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