ファイル転送が必要になる場面
種類を追う前に、どのような場面で使われるのかを押さえておきましょう。目的が異なれば、適する方式も変わります。
ファイル転送が求められる業務
ファイル転送とは、社内外の相手へデータを届ける仕組み全般を指します。取引先へ設計図面や見積書を送る場面、支店から本社へ日次のデータを集める場面、外部の事業者へ処理を委託する際にデータを渡す場面などで使われます。
扱うファイルの大きさや頻度は業務によって幅があります。数メガバイトの資料を都度送る使い方もあれば、毎晩決まった時刻に大容量のデータを自動でやり取りする使い方もあります。まず自社の用途がどちらに近いかを整理しておくと、方式の選択を進めやすくなります。
メール添付での受け渡しとの違い
少量のファイルであれば、メールに添付する方法でも対応できます。ただし、送受信できる容量には上限が設けられていることが多く、大きなファイルは送れません。相手側の設定によって受け取れない場合もあります。
また、宛先を誤って送信した場合、送った後に取り消すことが難しい点も課題です。誰にいつ何を送ったかを後から確認したい場合も、メールの履歴を追う作業が必要になります。ファイル転送の仕組みでは、容量の制約を緩和しつつ、記録を残す運用を組みやすくなります。
受け渡し方式による種類
誰がどのようにファイルを渡すかによって、大きく三つの方式に分かれます。それぞれの特徴を確認します。
Webブラウザから利用する転送サービス
送りたいファイルをWeb上の画面から登録し、受け取る相手へダウンロード用のリンクを知らせる方式です。相手側に専用のソフトを用意してもらう必要がなく、社外とのやり取りに使いやすい形式です。
多くのサービスでは、ダウンロードできる期限や回数、パスワードの設定に対応しています。上長の承認を経てから送信する運用を組める製品もあります。都度の受け渡しには向く一方、定期的に大量のデータをやり取りする用途には手作業の負担が残ります。
オンラインストレージによる共有
クラウド上の保管場所にファイルを置き、権限を与えた相手が参照する方式です。同じファイルを複数の関係者が継続して扱う場面に向いています。更新した内容がその場で共有される点も特徴です。
プロジェクトの資料を関係者で共有する、取引先と継続的にやり取りするといった使い方が想定されます。一方、誰がどこまで参照できるかの設定を誤ると、意図しない相手に届く可能性があります。権限の見直しを定期的に行う運用とあわせて使うことが望まれます。
システム間を自動でつなぐ転送システム
あらかじめ定めた時刻や条件にもとづき、システム間でデータを自動的にやり取りする方式です。本社と支店の間で日次のデータを集める、取引先と受発注のデータを交換するといった業務で使われます。
人が操作しないため、件数が多くても負担が増えにくい点が特徴です。ただし、転送に失敗した際に気づける仕組みが欠かせません。失敗の通知、再実行の可否、未処理のデータを確認できるかといった点を、導入時に確認しておく必要があります。
提供形態による種類
どのような形で用意するかによって、管理の担い手と費用の考え方が変わります。二つの形態を確認します。
クラウド型
事業者が用意した環境をインターネット経由で利用する形態です。自社に設備を用意する必要がなく、短い期間で使い始められます。利用人数や容量の増減にも対応しやすい構成です。
一方で、ファイルが事業者の環境を経由することになります。取り扱う情報の性質によっては、保管場所や暗号化の方式、第三者による認証の取得状況を確認しておく必要があります。社内のセキュリティ基準を満たすかどうかを、事前に確かめておきましょう。
自社設置型
自社のサーバに導入して運用する形態です。データを社内に置いたまま扱えるため、外部へ出したくない情報を対象とする場合に選ばれます。既存の業務システムとの連携も設計しやすくなります。
一方で、機器の用意と更新作業、障害への対応を自社で担う必要があります。社外の相手とやり取りする場合は、外部からの接続をどう受けるかという設計も求められます。運用を担える体制があるかどうかが、この形態を選べるかの分かれ目です。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でファイル転送の一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
選ぶ際に確認したい機能
方式と形態を決めたうえで、備わる機能も比較の対象になります。二つの観点から整理します。
安全性を保つための機能
通信の暗号化に加えて、保管されている間の暗号化に対応するかを確認します。ダウンロードの期限や回数の制限、パスワードの設定、接続元の制限といった機能も、誤った相手に渡ることを防ぐ手立てになります。
送信前に上長の承認を挟む機能を備えた製品もあります。宛先の誤りに気づく機会を作れるため、機密性の高い情報を扱う部署では検討の対象になります。ただし承認の工程が増えると業務の速さに影響するため、対象を絞って適用する運用も考えられます。
記録と管理のための機能
誰がいつ何を送り、相手がいつ受け取ったかを記録できるかを確認します。記録が残っていれば、確認が必要になった際に経緯をたどれます。監査で提出を求められる場合は、出力の形式もあわせて確かめておきましょう。
管理者が行える操作の範囲も確認点です。利用者ごとの権限設定、送信できるファイル形式の制限、保存期間の設定などが該当します。担当者一人が設定を扱う体制では変更時に対応が滞るため、複数人で管理できる構成にしておくことが望まれます。
ファイル転送サービスの選び方
ここまでの分類を踏まえ、実際に選ぶ際の確認事項を整理します。
用途と利用者の範囲の整理
最初に、誰と誰の間でやり取りするのかを決めます。社内の拠点間なのか、取引先を含むのか、不特定の相手からファイルを受け取る場面があるのかによって、必要な機能が変わります。
あわせて、利用する人数と部署の範囲も整理しましょう。全社で使うのか、特定の部署に限るのかによって、費用の試算も変わります。相手側に負担をかけたくない場合は、専用のソフトを用意せずに使える方式を優先する判断も考えられます。
扱うファイルの容量と頻度
一回あたりのファイルの大きさと、月あたりの送信件数を整理します。容量に上限を設けるサービスが多く、扱いたいファイルが収まるかは事前の確認が欠かせません。
頻度も費用に関わります。都度の送信が中心なのか、定期的な自動転送が中心なのかによって、適する方式が変わります。今後の増加の見込みも含めて伝えておくと、あうプランの提案を受けやすくなります。
費用体系とサポート範囲の確認
料金は、利用人数に応じた月額制、保管する容量によるプラン分け、転送するデータ量に応じた従量制など、製品によって考え方が異なります。想定する使い方にあてはめて試算すると比べやすくなります。
サポートについては、どこまで対応してもらえるのかを具体的に確かめます。操作方法の案内にとどまるのか、初期設定や既存環境からの移行を支援してもらえるのかは製品ごとに差があります。自動転送を組む場合は、設定の相談に応じてもらえるかも判断材料になります。
用途にあわせて選べるファイル転送サービス
安全性の機能や既存システムとの連携にあわせて検討できるサービスを紹介します。
クリプト便
- 脱PPAP等、取引先と安全にファイルのやり取りを行いたい企業
- USB運用を廃止、大容量ファイルの受け渡しをサービス上で実現
- Webブラウザとインターネット環境だけでファイル送受信が可能
NRIセキュアテクノロジーズ株式会社が提供する「クリプト便」は、機密性の高いファイルの受け渡しに対応した転送サービスです。ダウンロードの期限や回数の設定、暗証番号の付与といった機能を備えており、社外へのデータ送信における安全性を高めたい場合に活用できます。承認の工程を挟む運用にも対応しています。
DIRECT! EXTREME
- 大容量ファイルの超高速転送を実現
- 1ファイル2TBまでの大容量ファイル転送が可能
- ファイル送受信の自動化に対応
日本ワムネット株式会社が提供する「DIRECT! EXTREME」は、大容量のファイルを安定して転送できるサービスです。動画や設計データのように容量の大きいファイルを扱う業務での利用が想定されており、通信の状況にあわせた転送の制御機能を備えています。
オフィス宅ふぁいる便
- メール添付の代替手段!豊富な機能で情報漏洩対策が可能
- ブラウザを利用せず、Outlookアドインでのファイル送信ができる
- APIでシステムと連携し、ファイル送信の自動化が実現
株式会社オージス総研が提供する「オフィス宅ふぁいる便」は、企業向けのファイル送受信サービスです。送信の履歴が記録として残り、社内での利用状況を管理できる構成になっています。取引先とのファイルのやり取りを一元的に管理したい場合の選択肢になります。
データ便 (株式会社ファルコ)
- 2004年開始、10年以上続く国産ファイル転送サービス。
- フォルダアップロード、一括DL、パスワード自動生成
- プライバシーマーク・ISO27001取得の安心セキュリティ
ギガファイル便 (株式会社ギガファイル)
- 登録不要で利用できるファイル送受信サービス
- 1ファイル300GBまで転送可能な大容量ファイル共有機能。
- URL共有で受け渡しができ、パスワード設定も可能。
ファイル転送に関するよくある質問
導入を検討する担当者から寄せられることの多い質問と回答をまとめました。
- Q1: オンラインストレージとファイル転送サービスはどちらを選ぶべきですか?
- 同じファイルを継続して共有するならオンラインストレージ、一度きりの受け渡しが中心なら転送サービスが候補になります。用途が混在する場合は、目的ごとに使い分ける企業もあります。まず現在の使い方を分類して判断しましょう。
- Q2: 無料のサービスを業務で使っても問題ありませんか?
- 保管場所や記録の有無、管理者による制御の範囲が業務の要件を満たすかを確認する必要があります。社内規程で外部サービスの利用について定めがある場合もあります。判断に迷う部分は情報システム部門に確認しましょう。
- Q3: 取引先にも導入してもらう必要がありますか?
- Webブラウザから利用できる方式であれば、相手側に準備を求めずに使える場合が多くあります。一方、システム間の自動転送では双方での設定が必要です。相手先の状況を確認したうえで方式を選びましょう。
- Q4: 導入までにどのくらいの期間がかかりますか?
- 方式と既存システムとの連携範囲によって幅があります。クラウド型のサービスを都度の受け渡しに使う場合は短期間で始められる一方、自動転送の設定や自社設置型の構築を伴う場合は検証を含めて時間を要します。具体的な期間はベンダーに確認しましょう。
まとめ
ファイル転送の種類は、受け渡しの方式と提供の形態という二つの軸で整理できます。方式ではWebから使う転送サービス、オンラインストレージによる共有、システム間の自動転送があり、用途によって適する形が変わります。形態ではクラウド型と自社設置型で、データの置き場所と管理の担い手が分かれます。用途と利用者の範囲、扱う容量と頻度を整理したうえで、安全性や記録の機能まで比べて選びましょう。まずは資料請求から検討を進めてみてください。

