IVRとは
IVRは、Interactive Voice Responseの頭文字をとった略称で、コンピュータによる自動音声応答システムのことです。あらかじめ登録された情報をもとに、音声ガイダンスで対応します。病院や飲食店の予約受付やECサイトの問い合わせ窓口、宅配便の再配達受付など、さまざまなシーンで利用されています。また最近ではリモートワークの普及によりオフィスの電話受付に採用している企業も多いようです。
自動応答だけでなく、問い合わせ内容に応じて最適なオペレーターや部署へ電話の転送が可能な点も特徴のひとつです。
IVRの仕組み
着信があると、まず音声ガイダンスに続いてプッシュ番号操作を促します。次に、音声メッセージによる回答または、オペレーターへつなぎ対応します。導入時には、想定される問い合わせに対する音声メッセージと、それにともなう複数の選択肢をあらかじめ設定しておくことが必要です。
音声メッセージだけで顧客を適切に誘導するために、選択肢はわかりやすさと細分化が重要です。音声メッセージでは回答できない問い合わせには、オペレーターにつなげる設計にします。
IVRの種類
IVRはその設置や運用の形態によって、いくつかの種類に分類できます。ここからは主なIVRの種類を紹介します。
オンプレミス型IVR
オンプレミス型IVRは、特定の場所やオフィス内に専用の機器を設置して運用する形式です。これにより、自社のデータとの連携がスムーズに行える利点があります。しかし、初期導入コストが高く、保守や運用に手間がかかることもあるため、大規模な企業や長期的な運用を考慮している企業を中心に導入されています。
クラウド型IVR
クラウド型IVRは、外部のクラウドサービスを利用してIVRを運用する形式です。専用の機器を設置する必要がなく、初期投資を抑えられます。さらに、場所を問わずにアクセスできるため、運用の柔軟性が高まります。ただし、月額の使用料が発生することが多いので、運用コスト面での検討が必要です。
ビジュアルIVR
ビジュアルIVRは、従来の音声ガイダンスの代わりに、スマートフォンやタブレットの画面上で選択を行う形式です。画像やテキストを活用して直感的な操作が可能となり、ユーザーエクスペリエンスの向上が期待されます。しかし、専用アプリケーションの導入を必要とする場合があり、ユーザーにとってハードルが高いと感じられることもあります。
IVRでできること
IVRは単に自動で電話を受けるシステムというだけではありません。システムに備わっているさまざまな機能を活用して、より効率的な対応やカスタマーエクスペリエンスの向上を実現できます。以下に、主にIVRでできることを紹介します。
音声ガイダンスによる情報提供
IVRの基本的な機能として、電話をかけた人に対してあらかじめ録音された音声ガイダンスを流せます。営業時間外の問い合わせにも対応可能で、よくある質問への回答や操作手順などを効率的に伝えることが可能です。
電話の自動振り分け
発信者の選択や入力情報にもとづいて、適切な担当部署やオペレーターへと電話を自動で転送できます。これにより、顧客の問い合わせ内容に応じた迅速な対応を実現します。
SMSによる応答
電話応答だけでなく、IVRを活用してSMSの送信も可能です。特定の情報を文字情報として提供したい場合や、後から確認するためのリンクを送付する際などに効果的です。
留守電機能
IVRには、発信者からのメッセージを録音する機能も搭載されています。これにより、営業時間外や応答が難しい場面での問い合わせも逃さずキャッチできます。
多言語対応
国際的な業務を行う企業や、多国籍の顧客をもつ企業のために、複数の言語に対応した音声ガイダンスを設定できます。これにより、幅広い顧客層へ適切にサービスを届けられるでしょう。
IVRの導入メリット
IVR導入により、オペレーターの負担軽減や業務効率化に貢献します。また、顧客側も音声ガイダンスによるボタン操作で問い合わせを進められるため、問題解決までがスムーズです。ここでは、主に企業側のIVR導入メリットや活用シーンを紹介します。
オペレーター業務の効率化
IVRはオペレーターに代わって自動応答するため、受付対応や簡単な問い合わせはIVRだけで対応できるケースも多くあります。重要度の高い問い合わせのみ有人対応にすることで、人件費や教育コストを減らせるでしょう。
また転送先の自動振り分け機能により、各オペレーターが自身の専門分野の対応に集中できるほか、スキルを考慮した受電対応の割り振りが可能です。
顧客満足度の向上
担当窓口までの案内を自動化すると、顧客は複数の担当者へ何度も同じ用件を説明せずに済みます。スムーズな対応につながり顧客満足度の向上が期待できるでしょう。
また、IVRは電話番号やパスワードなどの個人情報をオペレーターに直接伝えず入力できます。そのため顧客はセキュリティの面からも安心して利用できるといえます。
年中無休で対応できる
自動応答なら営業時間外の問い合わせにも対応できるため、営業の機会損失を防げます。IVRで予約を受け付けられるようになれば、自動化による業務効率化に加え、夜間や土日にも予約を受けられます。
マーケティングやセールスに活用できる
アウトバウンド業務にIVRを活用すると、自動で架電でき大量発信にも対応します。例えばアンケート調査やDM送付後のフォローコール、入金や予約のリマインドコールなどが可能です。DMやメールに代わる販促ツールとしての効果も期待できるでしょう。
また、切断箇所や発着信傾向をレポート出力し、マーケティング施策検討時の参考資料としても役立ちます。
具体的なIVR製品や製品ごとの導入効果、事例を見てみたい方は、おすすめ製品の特徴や価格、口コミなどを比較した以下の記事も参考にしてください。
IVRの導入デメリットや注意点
IVR導入により、新たに生じる問題点もあります。ここでは、IVRを導入することによるデメリットや注意点を紹介します。
顧客がストレスを感じる可能性がある
IVRは音声による自動案内とボタン操作で担当者へ回線を振り分けますが、問い合わせ内容を聞き出すための多くのシナリオ設計や複雑な質問の設定が必要です。これにより、顧客が操作に迷いやすくなり、ストレスを感じる可能性があります。
ボタン操作による待機時間の増加
担当者へつながるまでのボタン操作が多いと、顧客の待機時間が増加します。場合により、顧客の満足度を低下させる原因となる可能性があります。
適切な案内ができないことがある
IVRの設定によっては、「該当する番号がわからない」という問題が発生し、多くの顧客が「その他の問い合わせ」に集中してしまうケースが考えられます。これにより、企業の業務効率が下がる恐れもあります。
IVR(自動音声応答システム)の活用を検討してみよう
IVRは、効果的に導入すれば電話対応業務の効率化や顧客満足度の向上、人手不足の解消などが期待できます。自動音声案内により、コールセンターや事業所の電話対応のほか、アウトバウンドにも対応します。メリット・デメリットを踏まえ、IVRの導入を検討してみてください。