勤怠管理におけるPCログの重要性
厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」によると、「使用者は、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録すること」とあります。記録方法はタイムカードやICカードなどざまざまですが、PCの使用時間の記録、つまりPCログも正確に労働時間を把握する方法として認められます。
参考:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準|厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署
ここからは、勤怠管理におけるPCログの重要性について詳しく紹介します。
PCログはパソコン稼働時間の記録になる
PCログとは、PCの電源を入れてから電源を切るまでの稼働時間中の操作履歴を記録として残したものです。従来、PCログは内部不正や情報漏えい対策を目的として活用されていましたが、近年では正確な勤怠管理にも役立てられています。
PCの電源を入れたときのログと電源を切ったときのログを確認し、自己申告の勤怠情報と照らし合わせれば、従業員の正確な勤怠管理が可能です。
ただし、PCログを活用して勤怠管理をする場合は、社内ルールで「終業時にはPCの電源を切る」ことを徹底する必要があります。スリープモードや休止モードでは電源を切ったことにはならないため、勤務扱いになってしまい正確な労働時間を記録できません。
PCログが労働時間として認められた判例もある
実際に、PCログが労働時間として認められた判例があります。2006年に起きた「PE&HR事件」は、過重労働で体調を崩した従業員が会社を訴えた事例であり、労働時間の記録としてPCログが認められています。
この会社では、タイムカードなどで打刻を行わずに責任者が直接労働時間を入力する方法で勤怠管理を行っていたため、実際の労働時間は記録としてまとめられていませんでした。しかし、PCの稼働時間を記録したログデータが証拠になり、業務を遂行していたと認められました。この事例から、PCのログは労働時間を判断する材料として有効であるといえます。
PCログを確認・管理する方法
勤怠管理におけるログ管理にはいくつかの方法があるため、自社にあったやり方を選択しましょう。ここでは以下3つの方法を紹介します。
- ●各従業員のPCで確認
- ●ログ管理システムを利用
- ●勤怠管理システムを利用
各従業員のPCで確認
PCログは、従業員が使っているPCから確認できます。
- Windows10・11の場合
- 1.「スタート」を右クリック
- 2.「イベントビューアー」を選択
- 3.「Windowsログ」をダブルクリック
- 4.確認したいログを選択
- 5.右クリックで「すべてのイベントを名前をつけて保存」を選択
Windows7・8の場合
- 1.「スタート」を選択
- 2.「コンピューター」を右クリック
- 3.「管理」を選択
- 4.「コンピューターの管理」のなかの「イベントビューアー」を選択
- 5.「Windowsログ」のなかの「システム」を選択
- 6.右クリックで「すべてのイベントを名前をつけて保存」を選択
この方法は、PC上にログの保存も可能です。しかし、展開する形式がイベントビューアーのため、複数のログは一元管理できません。また、エクセルなどに転記する場合は簡単に改ざんできるため、信憑性が低い情報になる恐れもあるでしょう。
勤怠管理が目的の場合は、すべてのログを保存する必要はありません。しかし、従業員全員分の業務を開始した時間と終了した時間を控える必要があります。従業員の人数に比例して、管理負担が大きくなるため注意しましょう。
ログ管理システムを利用
ログ管理システムとは、PCやシステムのデータ履歴であるログを取得・保存・監視・分析するシステムのことです。記録するログの範囲はシステムごとに異なりますが、ファイルやフォルダなどの操作ログ、インターネットの閲覧ログなど、さまざまな種類のログを対象としています。
各従業員のPCログを手動で取得するのは手間がかかり、簡単に改ざんできてしまいます。しかしログ管理システムなら、PCログの収集や保存が自動で行われるため、信憑性が高いでしょう。また、リアルタイムで各従業員のPCログを監視・記録し、不審な動きがあれば管理者へアラート通知も可能なので、不正の防止にも役立ちます。例えば、仕事を持ち帰り自宅で仕事を行おうとしていた場合にも、データを移行したログが残るので「ステルス残業」を防げます。
ログ管理システムについてさらに知りたい方は、以下の記事もご覧ください。おすすめのログ管理システムを紹介し、各製品の特徴や取得できるログの種類を一覧にまとめています。
勤怠管理システムを利用
勤怠管理システムとは、従業員の始業・終業時間を管理するシステムのことです。PCやスマートフォンを使ったWeb打刻や指紋などの生体認証による打刻、交通系ICカード、GPS打刻、PCのログオン・ログオフでの労働時間管理に対応した製品があります。
打刻漏れがあればアラートで通知されたり、打刻時間を修正する場合は権限が必要であったりと、申告ミスや不正が起こりにくい仕様になっています。また勤怠管理システムは、労働時間の管理だけでなく有給休暇やシフトの管理、給与計算の機能も搭載している場合が多く、従業員数が多い企業ほど勤怠管理の効率化につながるでしょう。
ただし、勤怠管理システムの種類は非常に多く、選びにくいのが実情です。以下の記事では、おすすめのシステムを厳選し、各製品の機能・打刻方法・価格・口コミなどを一覧にまとめています。導入を検討している方はぜひご覧ください。
PCログで勤怠管理するメリット
ここでは、PCログを利用して勤怠管理を行うメリットについて紹介します。
正確な勤怠管理でステルス残業を防止
PCログと従業員の勤怠報告を照らし合わせれば、正確な勤務時間を割り出せます。例えば、タイムカードでは9時から18時の労働時間であっても、PCログが9時から22時までだった場合、会社に隠れて仕事をする「ステルス残業」が発見できます。また、PCログで正しく勤怠管理をしていると従業員にアピールすれば、ステルス残業や労働時間の虚偽申告を未然に防げるでしょう。
加えて、実際にどれだけ残業していたのかがわかるため、一人あたりの業務量・担当・人員配置などを見直し、無理な業務負担を減らすことで社員のモチベーション向上にもつながるでしょう。
勤務状況の可視化
PCログには、従業員がPCを使用した時間だけでなくアクティビティや作業内容なども記録されています。具体的には、日ごとの作業時間や週ごとの作業時間、アプリケーションの利用状況やウェブサイトへのアクセス履歴などを確認できます。
これらのログを確認することで、業務に関係のないことを行っていないか、一つの業務にどれだけ時間をかけているかなどを可視化できるため、従業員の勤務状況が見えにくいテレワーク環境での業務管理にも役立つでしょう。
PCログを勤怠管理に活用する際の注意点
PCログを活用して勤怠管理を行う際に注意したいポイントを紹介します。
勤怠管理システムやタイムカードと併用する必要がある
PCログはPC利用の履歴や作業時間を記録するものであり、従業員の出勤時間や退勤時間、休憩時間などを正確に反映するわけではないため、PCログだけでの勤怠管理は難しいでしょう。
また、対面でのミーティングや会議、電話や来客対応などPCを使用しない業務もあるため、必ずしも「PCログ=稼働時間」になるわけではありません。従業員の勤怠情報を正確に把握し、適切な勤怠管理を行うためには、PCログと勤怠管理システムやタイムカードを併用することが重要です。
PCログを管理する目的や理由を従業員に説明する必要がある
従業員のなかには、PCログをチェックされると「監視されている」と感じてしまい、抵抗感や不安を抱いてしまう人もいます。抵抗感や不安を軽減するには、PCログをなぜ管理しているのか、どのような情報が記録され、どう活用されるのかを明確に説明する必要があります。透明性を持つことで、従業員の理解を得られるでしょう。
勤怠管理を正しく行わなかった場合のリスク
PCログを取得するなどの客観的な記録をせず、勤怠管理を正しく行えていなかった場合にはどのようなリスクが発生するのでしょうか。
時間外労働の横行や法律違反の可能性
時間外労働、長時間労働、サービス残業などが横行する職場では、正しい労働時間を管理できていないことがほとんどでしょう。正しい労働時間を把握できていない場合には、労働基準法に違反している可能性が高く、30万円以下の罰金を科されます。また、36協定の時間外労働の上限規制に違反していれば、6か月以内の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。
さらに過重労働は、従業員の満足度やモチベーションの低下だけでなく、脳や心臓の疾患、精神障害などを引き起こします。最悪の場合、従業員が過労死してしまうかもしれません。最悪の事態を避けるためにも正しい勤怠管理は必須です。
参考:労働基準法
勤怠情報の改ざんによるコンプライアンス意識の低下
PCログのように客観的かつ改ざんができない記録であれば、正しく労働時間を把握しているといえます。しかし、手書きの日報や使用者の現認だと、書き換えが簡単にできてしまいます。これでは、サービス残業やステルス残業が発生しやすくなり、正しい勤務時間の把握が困難になるでしょう。
また、部下がタイムカードをきってから上司が残業を命じたり、残業代を増やそうと労働時間をかさ増しして報告したりなど、不正行為が行われる可能性もあります。
以下の記事では、会社が勤怠管理を怠ることのリスクをより詳しく解説しています。自社の勤怠管理業務を改善する際の参考にしてください。
PCログを利用して正しい勤怠管理を行いましょう
PCログによる勤怠管理は、労働時間を適正に管理する手段の一つとして認められています。手動でもPCログを取得できますが、ログの収集・保存・監視・分析の効率を考えれば、ログ管理システムの利用をおすすめします。正しい勤怠管理は、より快適な職場環境を整えることが目的です。社内ルールの整備とあわせて、導入検討を進めていきましょう。
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