勤怠管理をしない会社のリスク
労働時間の把握や休暇の管理、残業代の計算など勤怠管理業務をしていなければ従業員の仕事量を管理できません。一人ひとりの仕事量がわからないので、必然的に従業員の間で負担に差が生じます。一部の従業員だけが大きな負担を強いられる状態では、ブラック企業と見なされ社会的信頼を失うおそれもあるでしょう。新卒採用や中途採用にも影響すると、人材不足によって長時間労働が慢性化する可能性もあります。
また、時間外労働の時間を把握できていないと残業代を正しく算出できず、未払いのおそれもあるでしょう。近年、未払いの残業代を従業員から請求され、遡及支払いのケースが増加傾向にあります。
厚生労働省の発表によると、令和3年度において、残業代未払いに関する労働基準法違反で是正指導を受けた企業は1,069社でした。そして、そのうち115企業が1,000万円以上の未払い残業代の遡及支払をしています。一度に膨大な金額の支払いを命じられれば、企業の経営に深刻なダメージが生じるでしょう。
参照:監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和3年度)|厚生労働省
勤怠管理に関わる法律
勤怠管理は、労働基準法と労働安全衛生法にて義務付けられています。勤怠管理をしていない場合、法律違反によるリスクは免れません。労働基準法と労働安全衛生法を詳しく解説します。
労働基準法
労働基準法の第108条には、「使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。」と記載されています。賃金台帳とは、給与の支払い状況をまとめた書類のことで、労働日数や労働時間数、時間外労働の時間数などを記載しなければなりません。そのため、勤怠管理を実施して従業員における労働時間の正確な把握が必要です。
また、労働基準法の第109条には「使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。」と記載されています。その他労働関係に関する重要な書類は、出勤簿やタイムカードなども該当します。つまり、労働時間を記録するだけでなく5年間保存しなければなりません。
以上の2つに違反すると30万円以下の罰金を科されます。労働基準監督署の調査が入った際、上の事項に違反していないことを示せるようにしておきましょう。
参照:労働基準法
労働安全衛生法
労働安全衛生法第66条8の3では「厚生労働省令で定める方法により、労働者の労働時間の状況を把握しなければならない。」とあり、管理監督者も含めた従業員における労働時間の把握が義務付けられています。労働時間の把握における義務に反した場合の罰則はありませんが、36協定で定められた時間外労働の上限規制に違反した場合は、6か月以内の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。労働時間を把握していないと時間外労働の時間がわからないず、法律に違反する危険性があるでしょう。
なお、労働安全衛生法第66条8の3の厚生労働省令で定める方法とは、労働安全衛生規則の第52条の7の3に記載されており、「タイムカードによる記録」「パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録」「その他の適切な方法」の3つです。厚生労働省令で定める方法で労働時間を把握しなければなりません。
参考:労働安全衛生法
参考:労働安全衛生規則
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手書きで勤怠管理をしている場合
出勤の記録ができるツールやタイムカードがなく、手書きによる自己申告で出勤時間や退勤時間を管理している企業もあるでしょう。タイムカードがなくても、違法ではありません。しかし、自己申告の場合、労働者による労働時間の改ざんが発生するおそれがあります。
さらに、従業員の労働時間を集計する際に残業代の計算などにミスが発生する可能性もあるでしょう。厚生労働省が策定したガイドラインには、「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること」と記載があります。また、「やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合」という項目があるので、自己申告の場合はそのガイドラインに従う必要があるでしょう。原則的にはタイムカードやICカードなどを用いた記録がおすすめです。
勤怠管理の実施で会社が遵守すべきこと
勤怠管理について、厚生労働省がガイドラインを策定しています。適正な勤怠管理には、このガイドラインの遵守が不可欠です。
ガイドラインを要約すると、以下の6つの事項を守るべきとされています。
- 1.労働日ごとに始業・終業時刻を記録すること。
- 2.使用者の現認あるいは適切な手段(タイムカードなど)により記録すること。
- 3.上記の手段について従業員に十分な説明をし、実態調査を実施すること。また、適正な記録を妨げる措置(労働時間数の上限設定など)を行わないこと。
- 4.労働基準法第109条に基づいて記録を保存すること。
- 5.勤怠管理の担当者は、労働時間管理の適正化に関する事項を管理し、管理上の問題の把握・解決を図ること。
- 6.必要に応じての労使協議組織を活用し、労働時間管理の現状把握・問題解決を行うこと。
実際のガイドラインには上記の項目について詳細な説明が記されているため、確認しましょう。
参考:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準|厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署
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勤怠管理システムの導入で適正な対応ができる
法律を遵守した勤怠管理の実施には、勤怠管理システムの導入がおすすめです。勤怠管理システムは、勤怠に関する業務に特化したITツールで、さまざまな機能を備えています。
例えば、従業員の打刻によって記録された労働時間は、勤怠管理システムで一元管理されます。勤怠管理の担当者は本社にいながら、全国の拠点における従業員の勤怠状況をリアルタイムに確認することが可能です。
また、勤怠管理システムにはパソコンのログインや入退室管理システムと連携できる製品もあります。従業員による不正打刻や打刻のし忘れなども生じません。担当者・従業員ともに少ない負担で正確な勤怠管理を実現できます。
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勤怠管理を実施して適切な会社運営をしよう
勤怠管理をしていない会社では、社会的信頼の失墜や残業代未払いなどによる訴訟問題の発生リスクがあります。また、労働基準法違反による罰則などの可能性もあるでしょう。リスクを排除するには、労働基準監督署が策定したガイドラインを遵守した勤怠管理が必要です。
勤怠管理システムを導入すれば、従業員が各自で正確な労働時間を記録し、システムで自動集計をが可能です。他システムとの連携や、初期費用のかからない製品もあるので、自社にあう勤怠管理システムの検討をしてはいかがでしょうか。