ミルクランとは
ミルクランとは、発注者(購入者)が1台のトラックで複数のサプライヤー(納入業者)の拠点を巡回し、商品や部品を集荷する輸送方式のことです。「巡回集荷」とも呼ばれます。
従来はサプライヤーが個別に発注者の拠点へ納品していましたが、ミルクランでは発注者側が主体となって輸送計画を立て、集荷に回るのが大きな特徴です。
ミルクランの仕組みと名前の由来
ミルクランという名前は、かつて牛乳メーカーが複数の酪農家を巡回して牛乳を集荷していた方法に由来します。この効率的な集荷方式を、製造業などの調達物流に応用したのが現在のミルクランです。
発注者は各サプライヤーからの出荷情報を集約し、最適な巡回ルートとスケジュールを計画します。そして、その計画にもとづき、1台のトラックがA社、B社、C社と順番に立ち寄り、荷物を集めながら自社の工場や倉庫へ戻ります。これにより、トラックの積載率を高め、効率的な輸送が実現します。
従来の輸送方式(個別配送)との違い
従来の輸送方式では、各サプライヤーがそれぞれトラックを手配し、発注者の拠点へ個別に商品を納品していました。この場合、サプライヤーごとに輸送コストが発生し、納品時間もバラバラになりがちです。
一方、ミルクランでは発注者が1台のトラックでまとめて集荷するため、全体の車両台数を削減できます。また、荷受け側の業務も効率化され、複数のサプライヤーからの荷物を一度に受け取れるため、検品や格納作業の負担が軽減されます。
ミルクランは、自社の調達条件(距離・物量・納品頻度・サプライヤーの立地)によって、向き不向きがはっきり分かれる方式です。まずは仕組みを押さえたうえで、「どんな条件なら効果が出るのか」「運用でつまずきやすい点はどこか」まで整理すると、導入判断がしやすくなります。
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▶デメリット
▶ミルクランを行う際のポイント
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ミルクランのメリット
従来の仕入れ方法では各サプライヤーから納品があるたびに検品が必要でした。また、排気ガスやトラックの混雑および事故などの問題も顕在化していました。
ミルクランは、問題解消に有効な配送システムとして注目されています。以下で、詳しい内容を見ていきましょう。
1.コスト把握が容易になる
本来、購入部品は「一物一価の原則」で管理します。しかし、部品調達先が2か所あると、製造費が同じでも配送費が異なるため、原則を守れません。
また、サプライヤーが資材を納品する場合は、資材の価格に製造費と配送費が含まれるため、どのような内訳なのか把握しにくいでしょう。
ミルクランの場合、発注者が集荷を行うことで、配送コストと商品コストが明確に分離され、コストの把握が容易です。
コストが透明化されると、資金計画の練り直しもしやすくなります。
2.調達コストが削減できる
発注者が集荷を行うことで、サプライヤー側は製品を配送する必要がなくなります。つまり、サプライヤー側に支払う配送費は発生しません。
さらに、サプライヤーから荷物が届くたびに検品が必要でしたが、ミルクランなら1台のトラックでまとめて集荷するため、検品が一度ですみます。また、必要な時に必要な分だけ仕入れられるため、過剰在庫もなくなるでしょう。
その結果、配送や検品にかかる調達コストを最小限に抑えられます。
それぞれをうまく組み合わせることで、全体のコストを減らせるでしょう。
3.環境保全につながる
従来の配送スタイルだと、トラックが何台も必要です。トラックの混雑が、ポート渋滞・構内での接触事故・排ガス問題などを引き起こす一因として問題化しました。
しかしミルクランを導入すると必要なトラック数が少なくなるため、構内の安全性が向上します。ほかにも、配送トラックから発生するCO2の排出量が減ったという実例もあります。
なお、ミルクランの効率的な運用には配送管理システムがおすすめです。配送計画から配送する貨物の管理までを一元管理できます。
ミルクランのデメリット
ミルクランにもデメリットはあります。以下のようなケースの場合、状況にあわせて、柔軟に対応する必要があります。
- ■条件によっては配送費が高くつく
- サプライヤーとの物理的な距離が離れている場合は、配送費が高くなります。商品量が多い場合も、集荷に行く回数が増えるため同様です。
- ■集荷時間の調整が難しい
- 複数のサプライヤーで巡回集荷する場合、限られた時間で集荷を行うため、スケジューリングは容易ではありません。
- ■大型トラックに対応できないケースもある
- サプライヤーの敷地面積が狭すぎて、大型トラックでは集荷できないこともあります。トラックの種類を増やすことになるため、配送費が増大します。
ミルクランは配車計画やルート設計、積載・到着時刻の管理が成果を左右します。運用まで含めて効率化したい方は、配送管理システムの導入もおすすめです。認知度・利用経験率No.1を誇る当サイトが、配送管理システムを厳選し徹底比較しました。配送業務の効率化にお役立てください。
ミルクランを行う際のポイント
ミルクランを効率的に行うための方法について詳しく見ていきましょう。
サプライヤーとの綿密な打ち合わせ
事前にサプライヤーとの間で、集荷の時間や場所・緊急時の対応などを決めておきます。
どのくらいの量を引き取るのか、どこの倉庫を利用するのかなど、ミルクランを行ううえで必要な情報を共有しましょう。サプライヤーが今まで使っていた配送業者の情報も重要です。実態を知るのに役立つため、今後の集荷体制の構築に利用できます。
以下の点を参考にして、双方にメリットのある仕入れ体制を構築しましょう。
- ■配送トラックの種類やドライバーの情報を共有する
- ■運行時の定時連絡やトラブル発生時の報告体制を構築する
- ■納期に間に合わない時の、バックアップルートを確保する
サプライヤー側の出荷作業改善
ミルクランの効果を最大化するためには、集荷のトラックがサプライヤー倉庫に到着した際、すぐに商品を納入できる状態であることが不可欠です。
つまり、サプライヤー側の出荷作業の効率化も重要です。出荷作業が遅延すると、サプライヤー倉庫での積荷待ちが発生し、ドライバーの負担が増えます。
配送管理システムの導入
配送管理システムの導入で、配送が効率化されます。例えば位置情報を取得できるGPSの活用で、最適なルートの算出や集荷予定時刻の推算などが可能です。
また、管理者はドライバーに確認を取ることなく、システム画面上で運行状況を確認できます。渋滞や事故で配送がうまく回らなくなった場合でも、配車の手配をスムーズに行えるでしょう。
経験やノウハウの蓄積をシステムに任せることで、誰でも配車できる仕入れ体制を目指します。
なお、以下のボタンから過去30日間でユーザーから問い合わせの多かった配送管理システムをチェックできます。人気の傾向などもつかめるのでぜひ参考にしてください。
まとめ
ミルクランは発注者側が集荷するため、配送コストの把握が容易になります。必要なトラックの台数が減り、調達コストやCO2の削減にも効果的です。
ただし配送距離が長すぎたり、商品量が多すぎたりする場合は、かえって配送コストが増大します。納入を迅速に行うには、サプライヤー側との事前協議も必要になるでしょう。
ミルクランをうまく活用して、自社に合った物流を構築しましょう。


