リモートアクセスとはどのような仕組みか
方式の違いを理解する前に、共通する基本の流れを押さえておきましょう。どの方式でも、確認と経路の確保という二つの工程を経る点は変わりません。
リモートアクセスの基本的な考え方
リモートアクセスとは、自宅や外出先など社外の場所から、社内のネットワークやサーバ、業務システムへ接続して業務を行う仕組みを指します。在宅勤務や出張先での作業、保守を担う事業者による遠隔での対応などで使われます。
社内のネットワークは通常、外部から直接つながらないように区切られています。そのまま外部へ開放すれば、意図しない相手からの接続を受ける恐れがあります。リモートアクセスは、許可された利用者だけが通れる経路を用意し、その経路を通して社内へつなぐという考え方で成り立っています。
社外から社内へつながるまでの流れ
接続の流れは、利用者が専用のソフトや画面から接続を要求するところから始まります。次に、利用者が誰であるかを確認する工程が入ります。IDとパスワードに加えて、追加の確認手段を組み合わせる構成が一般的です。
確認が済むと、社外の端末と社内の設備の間に通信の経路が作られます。この経路を通るデータは、途中で内容を読み取られないように暗号化されます。接続後は、あらかじめ許可された範囲の資源にだけアクセスできる状態になり、その記録が残されます。
接続方式ごとの仕組み
経路の作り方によっていくつかの方式に分かれます。扱うデータの置き場所や、端末に求められる条件が異なるため、目的にあわせて選びます。
| 方式 | データの置き場所と主な確認点 |
|---|---|
| VPN | 手元の端末でも扱う。接続の出入口への負荷と、アクセス範囲の絞り込みが確認点 |
| リモートデスクトップ | 社内に置いたまま操作する。通信状態による操作性と、接続先の台数の確保が確認点 |
| ゼロトラストにもとづく接続 | システムごとに可否を判断する。認証基盤や端末管理を含めた設計が確認点 |
VPNによる接続
VPNとは、公衆のインターネット回線上に、あたかも専用の回線があるかのような経路を作る技術です。接続すると、社外の端末が社内ネットワークの一員のように扱われ、社内のサーバや共有フォルダへアクセスできるようになります。
広く使われている方式ですが、利用者が増えると接続の出入口に負荷が集中し、通信が遅くなる場合があります。また、いったん接続されると社内ネットワークの広い範囲に届く構成になりやすいため、アクセスできる範囲を絞る設定が必要です。機器の脆弱性への対応も、継続して行う前提になります。
リモートデスクトップによる接続
社内に置かれたパソコンや仮想の端末の画面を、手元の端末に転送して操作する方式です。データそのものは社内に置かれたままで、やり取りされるのは画面の情報と操作の内容が中心になります。
手元の端末にファイルが残りにくいため、端末の紛失時の影響を抑えやすい点が特徴です。一方、画面を転送する仕組み上、通信の状態によっては操作の反応が遅く感じられることがあります。社内側に接続先となる端末やサーバを用意する必要があるため、台数分の準備も考慮が必要です。
ゼロトラストの考え方にもとづく接続
社内ネットワークの内側であれば安全とみなす前提を置かず、接続のたびに利用者と端末の状態を確認する考え方です。業務システムごとにアクセスの可否を判断するため、一度の認証で広い範囲へ届く構成にはなりません。
クラウド上のサービスを多く使う環境や、社外からの利用が中心となる働き方に適するとされています。ただし、導入には認証基盤や端末管理の仕組みを含めた設計が必要です。既存の環境からの移行は段階的に進める前提で、情報システム部門やベンダーと相談しながら検討しましょう。
安全性を支える仕組み
どの方式を選ぶ場合でも、経路を作るだけでは十分といえません。あわせて備えておきたい要素を二つ挙げます。
本人確認と権限の制御
IDとパスワードだけでは、情報が漏れた場合に第三者が接続できてしまう可能性があります。スマートフォンへ送られる確認コードや、生体認証、証明書といった手段を組み合わせる構成が採られます。
接続後にアクセスできる範囲を絞ることも重要です。全員が同じ範囲に届く設定では、必要のない資源にも手が届く状態になります。部署や役割に応じて権限を分け、退職や異動の際に速やかに見直す運用を整えておきましょう。
通信の暗号化と記録の保持
社外の回線を経由する以上、通信の内容が読み取られないようにする措置が欠かせません。暗号化の方式や設定は製品や構成によって異なるため、推奨される設定を確認したうえで適用しましょう。
誰がいつどこへ接続したかという記録も残しておく必要があります。不審な接続に気づく手がかりになり、確認が必要になった際の調査にも使えます。記録の保存期間や、異常があった際に通知を受けられるかどうかもあわせて確認しておきましょう。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料を取り寄せて機能や特徴をさまざまな製品で比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でリモートアクセスツールの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
運用で起こりやすい課題
仕組みを整えても、日々の利用のなかで課題が表面化します。導入前に想定しておきたい点を二つ挙げます。
接続が不安定になる要因
つながらない、遅いといった状況は、単一の原因では説明できないことが多くあります。利用者側の回線の状態、接続の出入口となる機器の負荷、社内側の設備の性能、利用が集中する時間帯といった複数の要素が関わります。
対策としては、同時に接続する人数の見込みを踏まえて設備を用意する、時間帯による偏りを把握して調整するといった方法があります。利用者から相談があった際に切り分けを進められるよう、確認する手順を用意しておくと対応しやすくなります。判断が難しい部分はベンダーへ相談しましょう。
端末の管理と持ち出しの扱い
社外で使う端末が適切に管理されていなければ、経路を安全にしても懸念は残ります。更新プログラムが適用されていない、対策ソフトが動作していないといった状態の端末から接続されるおそれがあります。
接続を許可する条件をあらかじめ定め、条件を満たさない端末は接続できない仕組みを検討しましょう。私物の端末を使う場合は、扱える範囲や保存の可否を社内規程で定めておく必要があります。紛失時の連絡先と対応手順も、利用者へ周知しておきたい事項です。
リモートアクセスツールの選び方
方式によって必要な設備も費用も変わります。比較の段階で確認しておきたい基準を三つ挙げます。
利用目的と対象人数の整理
最初に、何のために使うのかを具体化します。全社員の在宅勤務を想定するのか、出張時の一時的な利用が中心なのか、保守事業者による遠隔対応に使うのかによって、適する方式が変わります。
あわせて、同時に接続する人数の見込みを整理しましょう。人数に応じた料金体系や、同時接続数に上限を設ける製品があるため、規模の想定は費用と品質の両方に関わります。今後の増減の見込みも伝えておくと提案を受けやすくなります。
対応環境と既存設備との関係
利用する端末のOSやブラウザ、業務システムの構成に対応するかを確認します。社内にある機器を活用できれば費用を抑えられますが、機種や版によっては対応しない場合があります。
現在使っている認証の仕組みと連携できるかも確認点です。すでに導入している認証基盤があれば、それを利用できる構成のほうが運用の手間を抑えられます。既存の構成を伝えたうえで、必要な作業と期間を確かめておきましょう。
サポート範囲と費用体系の確認
料金は、利用者数に応じた月額制、機器の購入と保守契約、同時接続数によるプラン分けなど、製品によって考え方が異なります。数年単位の総額で比べると、方式ごとの差が見えやすくなります。
サポートについては、どこまで対応してもらえるのかを具体的に確かめます。管理者向けの窓口だけか、利用者からの問い合わせにも応じるのかは製品ごとに差があります。接続できない状況は業務に直結するため、障害時の連絡手段と対応時間帯も確認しておきましょう。
社外から安全に接続できるリモートアクセスツール
VPNやゼロトラストの考え方にもとづく製品を、あわせて紹介します。
IIJフレックスモビリティサービス/ZTNA
- 独自のエラー補正技術で、快適なリモートアクセス!
- 強制VPN接続で、インターネットへの直接接続をストップ!
- ウイルス感染したリモートアクセス端末の通信を自動ストップ!
株式会社インターネットイニシアティブが提供する「IIJフレックスモビリティサービス/ZTNA」は、接続のたびに利用者と端末の状態を確認するゼロトラストの考え方にもとづくサービスです。従来のVPNのように広い範囲へ一括してつながる構成ではなく、必要な業務システムごとに接続の可否を判断します。
AQStage仮想デスクトップ
- インフラ~OSを一括管理し日常運用を削減
- 顧客専用サーバーと閉域網接続で高セキュリティ
- 場所・端末を選ばず二要素認証で安全にリモート接続
NTT西日本株式会社が提供する「AQStage仮想デスクトップ」は、社外の端末から業務環境へ接続できる仮想デスクトップのサービスです。データを端末に残さず操作できる構成のため、情報の持ち出しを抑えたリモートアクセスの手段として活用できます。クラウド上で環境を用意する形態のため、導入の準備期間を抑えられます。
RemoteView
- 即日導入!インストール不要でブラウザからすぐにリモート接続
- 安心&使いやすい!強固なセキュリティと管理者による一元管理
- 1台から契約可能、スモールスタートに最適なお手軽な価格設定
RSUPPORT株式会社が提供する「RemoteView」は、ブラウザからインストール不要で接続できるリモートアクセスツールです。二段階認証や接続元IPの制限などのセキュリティ機能を備え、ヘルプデスクや保守作業などの用途で利用されています。
RemoteOperator Helpdesk
- 従業員やお客様のPCトラブルをリモートサポート
- 自宅や外出先から社内システムやサーバーをメンテナンス
- システム導入先の緊急トラブルをリモートコントロールで迅速対応
株式会社インターコムが提供する「RemoteOperator Helpdesk」は、在宅勤務者のPCサポートや拠点システムの保守に使えるリモート操作ツールです。有人・無人どちらの接続にも対応しており、画面上でのポインター表示による操作案内機能を備えています。
リモートアクセスに関するよくある質問
導入を検討する担当者から寄せられることの多い質問と回答をまとめました。
- Q1: VPNとリモートデスクトップはどちらを選ぶべきですか?
- 手元の端末でファイルを扱いたい場合はVPN、社内にデータを置いたまま操作したい場合はリモートデスクトップが候補になります。扱う情報の性質と、端末の管理体制を踏まえて判断しましょう。両方を用途に応じて使い分ける企業もあります。
- Q2: 私物の端末から接続させても問題ありませんか?
- 社内規程で扱いを定め、接続を許可する条件を明確にしたうえで運用する必要があります。データが端末に残りにくい方式を選ぶ、保存を制限するといった対応も検討されます。判断に迷う部分は情報システム部門や法務部門に確認しましょう。
- Q3: 導入までにどのくらいの期間がかかりますか?
- 方式や対象人数、既存設備との連携範囲によって幅があります。クラウド型のサービスを少人数で使う場合は短期間で始められる一方、機器の設置やネットワーク構成の変更を伴う場合は検証を含めて時間を要します。具体的な期間はベンダーに確認しましょう。
- Q4: 接続の記録はどのくらい残すべきですか?
- 一律の目安はありませんが、確認が必要になった際にさかのぼれる期間を想定して決めることが望まれます。社内規程や取引先との契約で保存期間が定められている場合もあります。関係する要件を確認したうえで設定しましょう。
まとめ
リモートアクセスは、社外の端末から社内の資源へ安全な経路を作ってつなぐ仕組みです。VPN、リモートデスクトップ、ゼロトラストの考え方にもとづく接続といった方式があり、データの置き場所や必要な設備が異なります。経路を作るだけでなく、本人確認と権限の制御、通信の暗号化と記録の保持まで含めて設計することが欠かせません。利用目的と人数を整理し、対応環境やサポートまで比べて選びましょう。まずは資料請求から検討を進めてみてください。

