リモートアクセスツールの選定ポイント
リモートアクセスツールを実際に紹介する前に、まずはツールを選ぶポイントについて簡単に紹介します。
1.リモートアクセスツールの「接続先」
リモートアクセスツールの接続先は大きく分けて「サーバアクセス型」と「クライアントアクセス型」の2種類があります。
サーバアクセス型は、外出先や自宅にあるPCなどの端末から、社内に設置しているサーバに直接アクセスする方法です。この方法は特に、社内で使っているPCを外に持ち出すときに有効です。ただし、端末に社内のデータが保存される可能性もあるため、ダウンロードの制限をかけるなど、情報漏えいの対策を行う必要があります。
一方、クライアントアクセス型は、社内に設置しているデスクトップPCに、遠隔地にある端末から直接アクセスする方法です。基本的に、社内にある固定化したデスクトップPCの電源が入っていれば、社外にいても社内にいるときと全く同じ操作を行うことが可能です。
2.リモートアクセスツールの「接続タイプ」
リモートアクセスツールは大きく分けて「社内LAN延長接続タイプ」「Webアプリ限定接続タイプ」「PC遠隔操作タイプ」の3つの接続タイプがあります。それぞれ特徴が異なるので利用環境や業務内容に応じて選択しましょう。
社内LAN延長接続タイプ
社内のLAN環境に社外からでも接続できるように仕組みを構築する方法です。外部から、VPNという仮想的な専用線を介して社内LAN環境に接続し、リモート操作を可能にします。
このタイプのメリットは、社内で利用している環境をリモートでも再現しやすいことです。社内にあるファイルをダウンロードしたり、基幹システムあるいはメールサーバなどを利用できたりします。
Webアプリ限定接続タイプ
Webアプリを利用してリモートアクセス環境を構築する方法です。PCやスマートフォンのアプリを利用し、画面共有を行って操作権を譲渡することで、遠隔地からでも操作を可能にします。
このタイプは、手軽にシステムにアクセスできる点がメリットです。メールチェックやグループウェアの確認をスマートフォンやタブレット端末からできるため、PCを立ち上げる必要がありません。
PC遠隔操作タイプ
社外のPCから社内のPCに接続する方法です。社内PCのデスクトップ画面を社外の端末に転送することで、遠隔操作を可能にします。この方法では社外からでも社内のPCと同じ操作を行えるため、ノートPCなど携帯性が優れている端末を使うと業務効率が向上するでしょう。
このタイプのメリットは、クライアントPCにデータが残らない点です。データは送信せずデスクトップ画面のみを転送しているため、万が⼀クライアントPCがウイルスに感染したり、PCの紛失や盗難があった場合でも情報漏洩のリスクが少ないです。
この方法は別名、リモートデスクトップとも呼ばれます。リモートデスクトップとリモートアクセスとの違いがわかりにくく混同されがちですが、リモートデスクトップはリモートアクセスの一種です。なお、PC遠隔操作タイプでは、VPN環境を構築する必要がありません。
3.リモートアクセスツールの「セキュリティ対策」
リモートアクセスツールを選ぶ際に、必ず確認したいのがセキュリティ対策です。ここではセキュリティ機能と対応プロトコルについて解説します。
リモートアクセスツールのセキュリティ機能
リモートアクセスは、社外などの遠隔地からのアクセスとなるため、不正アクセスやデータの持ち出しなどが起きないよう、十分な対策が行われているツールを選ぶとよいでしょう。
製品によっては、ID・パスワードに加えてワンタイムパスワードなどの多要素認証ができることでなりすましを防いだり、ログや接続履歴の監視機能により不審な動きを検知したり、さらに画面キャプチャの制御により情報の持ち出しを防げるものなど、さまざまなセキュリティ対策を施しています。
リモートアクセスツールの対応プロトコル
リモートアクセスツールでは、いくつかの対応プロトコルがあります。ここでは3種類のプロトコルについて紹介します。
- ■PPTP(Point to Point Tunneling Protocol)
- 自宅のパソコンなどからリモートアクセスをするときに使われる暗号用通信プロトコル(通信規約)のことです。インターネットなど信頼度の低い経路を通る際に、安全に通信できるよう、VPNという仮想専用ネットワークを構築する際に用いられます。PPTPはMicrosoft社によって提唱されたため、Windowsとの親和性が高いことが特徴です。
- ■IPsec(IP Security Architecture)
- 暗号技術を用いて、IPパケット単位の完全性や機密性を提供するプロトコルです。インターネットVPNを安全に実現するために使用されます。PPTPは送受信を一つのVPNトンネルで行いますが、IPsecは別々のVPNトンネルを作って送受信のトンネルを使い分けます。IPsecはPPTPよりも、さらに安全性を高められるため、秘匿性の高い情報を取り扱う場合に向いています。
- ■SSL(Secure Sockets Layer)
- 送受信するデータ通信を暗号化するプロトコルのことです。主にWebサイトとそのサイトを閲覧するユーザーの通信を暗号化する、SSLを暗号化に使用しています。IPsecに比べると、速度が劣ります。しかしSSL-VPNを利用する際は、SSLに対応しているアプリケーションを使用すれば、新規にSSL-VPNのためのソフトウェアをインストールする必要がないため、導入の負担を抑えられます。
リモートアクセスツールによって対応しているプロトコルは異なるので、求めるセキュリティレベルに応じて選択しましょう。
おすすめのリモートアクセスツールを比較
ITトレンド編集部が厳選した法人向けのリモートアクセスツールを徹底比較していきます。接続タイプごとに紹介していきます。
社内LAN延長接続タイプ
まずは社内LAN延長接続タイプを比較していきます。
SWANStor(スワンストア) の比較ポイント
- 簡単導入・安全運用
- 選べる豊富なセキュリティ機能
- 様々なアプリや端末、通信キャリアに対応出来る汎用性
提供形態 |
参考価格 |
対応機能 |
オンプレミス / クラウド / パッケージソフト / SaaS |
別途お問い合わせ |
SSL |
「SWANStor」は、エリアビイジャパン株式会社が提供しているマルチデバイス対応のセキュアリモートアクセスプラットフォームです。700社以上の導入実績があり、販売を開始して15年で出荷本数は28,000本を超えています。ファイアウォールやネットワークの設定変更はなく、社内LANにSWANStor Serverをインストールするだけで簡単に接続できます。
ビジネスセキュリティ(VSR) の比較ポイント
- 【多機能】多彩なセキュリティ機能の中から自由に選択可能!
- 【簡単】1台の専用機器をレンタルにて提供!
- 【安心】ワンストップのサポート体制を実現
提供形態 |
参考価格 |
対応機能 |
オンプレミス |
別途お問い合わせ |
PPTP、IPsec、SSL |
株式会社 USEN ICT Solutionsが提供している「ビジネスセキュリティ(VSR)」は、豊富なセキュリティ機能の中から必要な機能のみを選択して利用できるUTM機器です。オプションでVPN接続ができたり、ファイアウォールなどの機能を付加したり、利用環境に合わせて組み合わせられます。なお、24時間365日の運用監視・保守サポートは標準装備です。
提供形態 |
参考価格 |
対応機能 |
クラウド / パッケージソフト / SaaS |
月5,090円~/1ユーザー |
ー |
株式会社ISID-AOが提供している「AOSMS for テレワークはテレワーク環境の構築に適したテレワーク管理ソリューションです。Amazon WorkSpacesというデスクトップソリューション(DaaS)を基盤に、労務管理や業務分析、IT資産管理、RPA自動化などを可能にするソリューションを提供しています。
Akamai EAA の比較ポイント
- 標準ブラウザから社内アプリへ接続可能(導入が容易、高利便性)
- 許可されたアプリだけがブラウザ上に表示。ワンクリックで接続
- アクセスできるのは許可アプリのみ(高セキュリティ)
提供形態 |
参考価格 |
対応機能 |
サービス |
310,000円~ |
ー |
富士通Japan 株式会社の「AkamaiEAA(Enterprise Application Access)サービス」は、標準ブラウザから社内アプリにアクセスできるようにするサービスです。アプリは許可されたもののみ表示可能で、ワンクリックで接続できます。なお、アクセスには多要素認証が利用できます。
提供形態 |
参考価格 |
対応機能 |
オンプレミス |
別途お問い合わせ |
ー |
e-Janネットワークス株式会社の「NinjaConnect Telework」は、比較的低コストで小規模でも導入しやすいリモートデスクトップです。Ninjaコネクターを社内に設置すればファイアウォールの設定変更は不要です。また、特別な社員教育をせず、簡単に利用を開始できるのも特徴です。
提供形態 |
参考価格 |
対応機能 |
SaaS / サービス / クラウド / アプライアンス |
6,500円~ |
IPsec、SSL |
株式会社シーイーシーが提供する「テレワークスモールパック」は、テレワークに必要な最低限の機能が揃っています。内容はUSBモバイルルーター、LINE WORKS ライトプラン、モバイル勤怠管理、コンビニ印刷(オプション)で構成され、申し込みから最短1ヵ月で在宅勤務を始めることができます。
Webアプリ限定接続タイプ
次にWebアプリ限定接続タイプを比較していきます。
moconavi の比較ポイント
- 「端末にデータを残さない」セキュアなリモートアクセス!
- アプリベースならではの高い操作性!
- 700社26万ID 以上の導入実績!
提供形態 |
参考価格 |
対応機能 |
オンプレミス / クラウド |
別途お問い合わせ |
ー |
株式会社レコモットが提供する「moconavi」は700社26万ID以上の導入実績があり、連携サービスが豊富なアプリベースのテレワークプラットフォームです。セキュリティ設定はもちろん、労務規定の変更にフレキシブルに対応できるポリシー設定機能が搭載されている点が魅力です。オンプレミス型の場合は社内LAN延長接続タイプとなります。
CACHATTO の比較ポイント
- 国内1,400社 70万ユーザーの豊富な導入実績
- 利用端末にデータを残さない万全の情報漏洩対策
- LANケーブルを「カチャッと」挿すだけで簡単導入
提供形態 |
参考価格 |
対応機能 |
クラウド / オンプレミス |
別途お問い合わせ |
SSL |
e-Janネットワークス株式会社の「CACHATTO(カチャット)」は、クラウドや社内LANに「カチャッと」LANケーブルを設置するだけで利用できるサービスです。利用端末へのデータ保存を禁止するのに加え、スクリーンショットでの保存も制御するので、データの持ち出しにも対応できます。
PC遠隔操作タイプ
最後にPC遠隔操作タイプを比較していきます。
Platform V System の比較ポイント
- USBキーを挿すだけで簡単に利⽤可能
- 手軽にシンクライアント環境を実現
- いつでも、どこからでも、社内のシステムに接続可能
提供形態 |
参考価格 |
対応機能 |
サービス / オンプレミス / アプライアンス |
別途お問い合わせ |
SSL |
「Platform V System」は、株式会社三技協が提供するWindowsPC対応のリモートアクセスツールです。ソフトやアプリのインストールは不要で、USBキーをPCに挿し込むだけで使えます。画像転送方式なので、クライアントPCにデータが残りません。
提供形態 |
参考価格 |
対応機能 |
クラウド / オンプレミス |
別途お問い合わせ |
IPsec、SSL |
株式会社アズムが提供している「Oracle Secure Global Desktop + Oracle Cloud」は、端末のブラウザのみを使い、画面転送のみを行うリモートアクセスサービスです。管理者権限でUSBデバイスの接続制限やコピー&ペーストの実行制限を行えます。
【比較表】リモートアクセスツール一覧
リモートアクセスツールを一覧にまとめた比較表です。ぜひ検討する際の参考にしてください。
ここまでITトレンド編集部が厳選したリモートアクセスツールを紹介しました。「各製品の特徴をじっくりと比較したい」という方は、下のボタンから一括で資料を請求し、検討してみましょう。
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まだまだある!リモートアクセスツール
ここまでにおすすめのリモートアクセスツールを紹介しましたが、ほかにもさまざまな製品があるのでいくつか紹介していきます。
RemoteView
「RemoteView」は、RSUPPORT株式会社が提供しているリモートアクセスツールです。遠隔地のPCにAgentプログラムをインストールするだけで、簡単に遠隔操作を行うことができます。
マジックコネクト
「マジックコネクト」は、NTTテクノクロス株式会社が提供しているリモートアクセスサービスです。手元にあるデバイスに社内デスクトップPCの画面を呼び出して操作することができます。「USB型」「端末認証型」「モバイル」の3種類の導入方法があります。
TeamViewer
「TeamViewer」は、TeamViewerが提供しているリモートアクセス、リモートコントロール、リモートサポートのための包括的なソリューションです。インストールしてID・パスワードを入力するだけでリモートアクセスができ、VPNを使用しません。
Splashtop Business
スプラッシュトップ株式会社の「Splashtop Business」は、アプリのインストールのみで安定したリモート接続ができます。通信には1秒あたり30フレームでリアルタイムに高速描写する最新技術を採用しており、操作画面が遅延する問題も解消するでしょう。
どこでもコネクト
「どこでもコネクト」は、株式会社大塚商会が提供するリモートアクセスツールで、物理的な閉域網もしくは仮想専用線でプライベートクラウド環境を実現します。データの保管を行うサーバはセキュリティが万全なデータセンターに置かれ、24時間365日監視が行われます。
リモートアクセスツール導入時の注意点
ここからはリモートアクセスツールを導入するときの注意点を2つ紹介していきます。
注意点1.機密データの情報漏えいに注意する
リモートアクセス製品を活用すると、社内の重要なデータを社外でも閲覧できます。情報漏えいの主な原因は人為的なミス(ヒューマンエラー)であり、社内のデータを保存したPCなどを紛失して情報が流出することがほとんどです。
そのため、PCを紛失してしまったとしても情報が流出しないような対策が必要です。社外で操作する端末を最低限の機能しか搭載しない「シンクライアント」を活用すれば、情報漏えい対策を行えます。シンクライアント端末には社内にアクセスできても、データを端末に保存できないため、機密データが漏れません。
以下の記事ではおすすめのシンクライアント製品を紹介しています。万が一の場合に備えてしっかりとした情報漏洩対策を行いたい、という方はぜひご覧ください。
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注意点2.勤務時間の管理不足に注意する
リモートアクセスの活用によって、出社しなくても仕事を行えるため、近年加速しているワークスタイルの多様化に対応することが可能です。起業する場合でも事務所を大きくする必要がなく、コスト削減・業務効率の向上に貢献します。
その反面、社外での仕事が増えれば、規定の就業時間外に仕事を行うことも可能であり、実際の勤務時間が分かりにくくなります。勤務時間を把握する体制を整え、適切な勤怠管理を行いましょう。
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リモートアクセスツールを比較して、自社にあった製品を!
リモートアクセスを活用することで社内・社外の垣根をなくし、働き方を効率化できます。ただし、リモートアクセスツールに接続する方法や機能が異なるため、自社がどのような機能を必要としているのか明らかにした上で製品についてよく知る必要があります。
気になる製品があれば資料を請求し、接続形式や接続先などをしっかり確認して比較検討してみましょう。