リモートアクセスツール導入の3つの失敗例
リモートアクセスツールを導入して安心していませんか? 実は導入したことにより新たな問題を引き起こすこともあるのです。まずは3つの事例を見ていきましょう。
失敗例1.機密データの情報漏えい
衣類製造と販売を営むA社は、多くの営業パーソンやデザイナーを抱えており、全社員で業務効率とワークライフバランスを向上することを目的に、リモートアクセスツールを導入しました。当初は多少の運用フローの問題があったものの、ある程度の自由裁量で場所を選ばない業務形態が実現し、多くの部署で生産性が上がっていました。
しかし、ある日、A社が独自にデザインして製造ラインに入っていた洋服と全く同じものが発表されたことが判明します。A社がただちに調査した結果、デザイナーの一人が不注意にも外出先で作業し、そのデザインを競合会社に盗み見られていた公算が高いことが分かったのです。ただ、そのような危険性を考慮していなかったA社は特別な対策をしておらず、確固とした証拠もないことから、A社はどこに訴えることもできず、製造ラインを一時止めて新たなデザインを作り出すことから始めるしかありませんでした。
失敗例2.勤務時間の管理不足
ソフトウェアの開発を請け負っているB社は、業務効率化のためリモートアクセスを導入していましたが、あまり活用できておらず、その方法を模索していました。
そんなとき、B社の所在県を大型台風が襲い、洪水が発生して従業員が出社できない状況に陥ってしまいます。もっとも大きなプロジェクトが開発の佳境に入っており、業務を止めることができなかったB社は、リモート環境での開発を従業員に通達しました。
数日で洪水の被害は復旧しましたが、復旧後も多くの従業員がリモートアクセスでの作業を継続して、在宅での作業で効率を上げ、プロジェクトは大きな遅れもなく完了したため、B社は顧客から大きな信頼を勝ち得ることができました。
しかし、その翌月、問題が発生。B社の勤怠管理上では、リモートアクセスで作業を実施した日については定時時間として計算していることが発覚し、それに一部の従業員が不満を発したのである。
B社は、各自のリモート接続時間を確認して稼働時間を算出しようとしましたが、中には24時間接続していたり、逆に数時間しかアクセスしていなかった従業員もおり、正確性が疑われるため、定時時間で処理を進めたのです。B社は正確な時間が分かるまでの暫定措置と主張しましたが、従業員たちは納得せず、提訴する者も現れたのです。
失敗例3.在宅での公私混同
機械や部品の設計を請け負う業務を行っているC社は、営業活動の業務効率を上げるために、リモートアクセスを導入し、成約率を大幅にアップさせることに成功しました。
そのためC社は、リモートアクセスツールの活用をより促進し、売上および利益率の向上を狙って、設計業務を行っている技術者にもリモートアクセスでの業務を推奨することにしました。出社する必要がなく、自由に時間を調整できるリモートアクセスでの在宅業務は技術者にも好評でした。
しかしC社は、そこで問題に直面します。なぜか生産性が大幅に落ちてしまい、納期に間に合わないプロジェクトが多発し始めていたのです。原因は、技術者の自己管理にありました。リモートアクセスを使って、在宅業務をしていた技術者の多くが、プライベートの時間との調整をできず、時間管理をうまくできなかったのです。C社はすぐに技術者のリモートアクセスでの在宅業務を禁止することになりました。
どんな対策が必要だったのか?
いかがでしょうか。想定外の問題が起こっていたかと思います。では、リモートアクセスツールを導入するだけではなく、どんな対策が必要だったのでしょうか。
対策1.社員のセキュリティ意識の向上
失敗例1のA社の問題は、社員のセキュリティリスクに対する理解不足です。リモートアクセスツールを利用するからには、それ相応のセキュリティ対策を行うのは当然ですが、往々にしてシステム側で対策をして満足してしまうことが多く、今回の例のように、作業場所や人などネットワークから離れた部分は見落とされがちです。
リモートアクセスツール導入においては、企業が管理できない動きに注意し、利用する社員への注意や啓蒙、教育をしっかりと行わなければなりません。
対策2.打刻や作業ログなどでの管理
失敗例2のB社は、リモートアクセスでの作業について、その稼働時間や残業時間の計測方法などを、利用者とコンセンサスを取っていなかったのが問題です。この稼働時間の計測漏れは、リモートアクセスでの在宅業務での大きな課題であり、明確な解決法がありません。こういった時間計測も機能として盛り込まれたサービスや、打刻や作業ログから算出するようなツールもありますので、検討しておく必要があるでしょう。
対策3.自己管理能力のある社員の選定
失敗例3では、個人の管理能力の問題とはいえ、安易にリモートアクセスでの在宅勤務を導入したことが問題です。在宅勤務というのは、強い自己管理能力がなければ継続が難しいです。その分、自己管理に優れた社員のみを対象にしたり、常にチャットツールなどでコミュニケーションを取ったりと、さらなる工夫が必要になってきます。
リモートアクセスツール導入後に対応する5つのステップ
ここまで実際の失敗例をもとに必要な対策を見てきました。その他にも気をつけたいポイントを以下の記事でまとめているので、導入検討中の方もぜひご一読ください。
【導入後】リモートアクセスツールの運用で対応したい5つのステップ
まとめ 起こりうるリスクを想定して導入しましょう
いかがでしたでしょうか。リモートアクセスツールを利用する上で問題となるのは、セキュリティリスクや業務管理などの運用です。しかし多くの場合、それらを社員の善意や常識に頼る部分が多くなってしまいます。そのため、導入する場合は、今回の失敗例を参考に、運用に当たってのルールの策定などをしっかりと検討しておくことをおすすめします。そうすることで、リモートアクセスツールは、従業員の業務効率を飛躍的に向上させ、売上増に大きな貢献をしてくれることでしょう。