企業規模とSCMがかみ合わないときの懸念点
SCMの選定で規模を考える際は、従業員数だけでなく、扱う品目数や拠点数、取引先の数を見ることが大切です。規模と製品がかみ合わない場合の問題は、機能が過剰な方向と不足する方向の2つに分かれます。
規模を判断するための指標
SCMにとっての企業規模は、従業員数よりも、管理する品目数や拠点数、取引先の数、計画を更新する頻度で判断するほうが実務に即しています。従業員が50名でも数万品目を扱う企業もあれば、数百名でも品目数が限られる企業もあります。
これらの指標によって、必要な機能の範囲や処理の負荷が変わります。製品を比較する前に、現在の品目数や拠点数、計画の更新頻度を数値で整理しておきましょう。ベンダーに伝える際の前提条件としても役立ちます。
ミスマッチが生む2つの方向の失敗
規模とかみ合わないSCMを選んだ場合の失敗は、大きく2つに分けられます。一つは、自社の規模に対して機能や処理能力が過剰で、費用に見合う効果が得られないケースです。
もう一つは、機能や処理能力が不足し、手作業での補完や追加の開発が必要になるケースです。どちらも導入前の要件整理が不十分な場合に起こる可能性があります。ただし、原因は規模だけでなく、運用体制やデータの整備状況など複数の要因が関係する点にも注意が必要です。
小規模企業が高機能なSCMを選んだ場合の失敗
50名規模など、品目数や拠点数が限られる企業が高機能なSCMを導入すると、使わない機能の費用や運用の負担が重くなる場合があります。機能の多さが自社にとって必要かを、具体的なケースで考えてみましょう。
使わない機能の費用を払い続ける
高機能なSCMには、複数工場にまたがる生産計画の自動調整や、グローバルな需給調整などの機能が含まれている場合があります。品目数や拠点数が少ない企業では、こうした機能を使う場面が限られます。
機能をまとめたパッケージで契約すると、使わない機能の分まで利用料を払い続ける場合があります。導入を検討する際は、機能ごとに契約を分けられるか、必要な機能だけのプランがあるかを確認しましょう。将来使う予定がある機能は、追加の時期と費用も見込んでおくことが大切です。
設定と運用の負担が重くなる
機能の多い製品では、計画の条件やマスタの設定項目が多くなる場合があります。担当者が少ない企業では、設定作業や定期的な見直しに時間を取られ、日常業務を圧迫する可能性があります。
設定が複雑だと、担当者が異動した際の引き継ぎも難しくなります。デモの段階で、自社に必要な設定項目の数や、日々の操作に必要な時間を確認しましょう。導入支援の範囲と、運用開始後に設定変更を依頼する際の費用もあわせて確認しておくと安心です。
効果を測れず投資判断が難しくなる
小規模な企業では、在庫金額や欠品件数がもともと大きくない場合、SCMの導入による改善幅も小さくなる可能性があります。費用に対して効果が見えにくいと、継続利用の判断が難しくなります。
導入前に、在庫の削減や作業時間の短縮によって見込める効果を金額に換算し、年間の費用と比べておきましょう。効果が費用を下回る見込みであれば、導入範囲を絞る、在庫管理システムや表計算ソフトの運用を見直すといった別の方法を検討することも選択肢です。
100名規模で安価なSCMを選んだ場合の機能不足
100名規模の企業が費用を抑えるために安価なSCMを選ぶと、既存システムとの連携や処理できるデータ量が足りず、手作業が残るケースがあります。費用の安さと機能の範囲のバランスをどう判断するかを整理します。
基幹システムと連携できず手作業が残る
安価なSCMの中には、既存の基幹システムとの連携方法が限られている製品があります。APIが公開されていない、取り込めるファイルの形式が固定されているといった場合、受注や在庫のデータを手作業で転記する必要が生じます。
転記の作業は時間がかかるだけでなく、入力の誤りによって計画の前提がずれる原因にもなります。導入前に、連携したいデータの種類と頻度を整理し、製品の連携方法で実現できるかをベンダーに確認しましょう。連携開発が必要な場合は、その費用も含めて比較することが大切です。
品目や拠点の増加に対応できない
安価なプランでは、登録できる品目数や拠点数、ユーザー数に上限が設けられている場合があります。導入時には問題がなくても、事業の拡大に伴って上限に達し、上位プランへの移行や別製品への乗り換えが必要になる可能性があります。
乗り換えには、データの移行や操作の再教育といった負担が伴います。導入時に、数年後の品目数や拠点数の見込みを伝え、上位プランへの移行の可否と費用を確認しておきましょう。拡張の余地を含めて比べると、長期的な費用を判断しやすくなります。
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大企業で繁忙期にSCMの処理が追いつかない問題
品目数や拠点数が多い大企業では、繁忙期に計画の再作成が集中し、処理に時間がかかる場合があります。処理の遅れは計画の確定を遅らせ、発注や生産の判断にも影響します。要因と備え方を整理します。
計画の再作成が集中する要因
繁忙期には、受注の変動や納期の変更が増え、需給計画を何度も作り直す場面が生じます。複数の拠点や部門が同じ時間帯に計画の再計算を実行すると、システムの処理が集中する可能性があります。
処理の遅れには、扱うデータ量の多さだけでなく、計画の条件の複雑さや、連携先システムからのデータ取り込みのタイミングなど、複数の要因が関係します。製品の性能だけでなく、自社の運用方法も含めて原因を確認することが大切です。
処理性能の確認方法
導入前に、自社の品目数や拠点数に近いデータ量で計画の再計算にかかる時間を確認しましょう。ベンダーに検証を依頼する際は、通常時だけでなく、繁忙期を想定したデータ量や同時に操作する人数も伝えることが大切です。
クラウド型の場合は、処理能力を一時的に増やせるか、その場合の費用がどうなるかも確認項目です。オンプレミス型の場合は、サーバの性能をどう見積もるかを、情報システム部門やベンダーと相談しておきましょう。
運用ルールによる負荷の分散
処理の集中は、運用ルールの工夫で和らげられる場合があります。例えば、拠点ごとに再計算の時間帯をずらす、夜間に全体の再計算を実行し、日中は変更のあった品目だけを再計算するといった方法です。
計画を再作成する条件を決めておくことも有効です。小さな変動のたびに全体を作り直すのではなく、一定の基準を超えた場合に再計算するルールにすれば、処理の回数を抑えられます。ルールは関係部門で共有し、繁忙期の前に見直しておきましょう。
企業規模にあうSCMを選ぶための確認手順
規模とのミスマッチを防ぐには、現在の状況だけでなく、数年後の事業の見通しも踏まえて製品を選ぶことが大切です。規模の見積もりと費用対効果の試算という2つの手順で、導入前の判断を具体的にしましょう。
現在と数年後の規模を見積もる
製品を選ぶ前に、現在の品目数や拠点数、利用者数に加えて、3年後や5年後の見込みを整理しましょう。新しい拠点の開設や取扱品目の拡大、海外展開の予定があれば、その時期と規模も書き出しておきます。
見込みをもとに、導入時のプランと将来移行するプランの両方で見積もりを取ると、規模の変化に応じた費用の推移を把握できます。事業計画の担当部門とも見込みをすり合わせておくと、見積もりの前提がずれにくくなります。
導入前に費用対効果を試算する
規模にあう製品かどうかは、費用と効果の釣り合いで判断できます。在庫金額の削減、欠品による機会損失の減少、計画作業の時間短縮などの効果を金額で見積もり、年間の費用と比べましょう。
効果の見積もりは、楽観的な数字だけでなく、控えめな数字でも試算しておくことが大切です。控えめな見積もりでも費用を上回る見込みがあれば、規模にあった投資と判断しやすくなります。試算の前提は導入後の効果測定にも使えるよう記録しておきましょう。
自社の規模にあうか確かめたいSCM製品
対象とする企業規模や導入範囲の考え方が異なるSCM関連の製品を紹介します。従業員数や拠点数、取扱品目数を伝えたうえで、規模にあうかを資料やデモで確認してください。
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まとめ
SCMは企業規模とかみ合わないと、機能過剰による費用対効果の低下や、機能不足による手作業の残存、繁忙期の処理遅延といった問題が起こる可能性があります。規模は従業員数だけでなく品目数や拠点数で判断し、数年後の見込みも踏まえて製品を選ぶことが大切です。自社の規模にあう製品を見つけるために、複数のSCMを資料請求し、費用と機能、処理性能を比較してみてください。

