業種別に見るSCMの懸念点とその背景
パッケージ型のSCMは、幅広い企業で使えるよう、標準的な業務の流れを前提に設計されている場合があります。そのため、業種特有のルールが多い企業ほど、標準機能との差が生じる可能性があります。業種別のケースを見る前に、差が生じる場面と事例の読み方を確認しましょう。
標準機能と業務のずれが生じる場面
標準機能と自社の業務のずれは、計画の立て方、在庫の引き当て方、取引先とのやり取りの方法など、業種によって慣行が異なる部分で生じやすくなります。ずれを残したまま導入すると、システムの外で手作業による調整が必要になる場合があります。
ずれの解消方法には、製品の設定で対応する、業務の流れを見直す、カスタマイズで機能を追加するといった選択肢があります。どの方法を選ぶかによって費用や導入期間が変わるため、要件を整理する段階でずれを洗い出しておくことが大切です。
失敗事例を読む際の注意点
他社の失敗事例は、自社のリスクを考えるうえで参考になる情報です。ただし、失敗の原因は製品だけにあるとは限らず、要件の整理不足やデータの準備状況、社内の体制など複数の要因が重なっている場合があります。
事例を読む際は、どの業務で何が起きたのか、原因として何が挙げられているのかを分けて確認しましょう。製品名だけを見て候補から外すのではなく、同じ状況が自社でも起こり得るかを考えることが重要です。気になる点はベンダーに直接確認するとよいでしょう。
製造業で生産方式とSCMがかみ合わないケース
製造業では、生産方式によって計画の立て方が大きく異なります。製品が自社の生産方式を前提にしていない場合、計画がうまく機能しない可能性があります。生産方式ごとの違いと、適合を確かめる方法を整理します。
個別受注生産と見込生産で異なる計画の立て方
見込生産は、需要を予測して先に製品を作り、在庫から出荷する方式です。一方、個別受注生産は、受注を受けてから仕様を決めて設計や生産を始める方式で、製品ごとに部品や工程が異なる場合があります。
需要予測と在庫補充を中心に設計されたSCMを個別受注生産の企業が使うと、受注ごとの仕様や工程の違いを計画に反映しにくい場合があります。その結果、計画と実際の生産がかみ合わず、担当者が手作業で調整する状況が生じる可能性があります。
生産方式の適合を導入前に確かめる方法
生産方式との適合を確かめるには、自社の代表的な受注や製品を例にして、デモで計画を作成してもらう方法が有効です。受注から出荷までの流れの中で、どの工程をSCMで扱い、どの工程を生産管理システムで扱うかも整理しておきましょう。
見込生産と受注生産が混在している企業では、品目ごとに計画の方式を切り替えられるかも確認が必要です。同じ生産方式の企業での導入例があるかをベンダーに尋ね、運用上の注意点を聞いておくと、導入後のずれを減らせます。
部品表や工程の情報が整っていない場合の影響
製造業のSCMでは、部品表(製品を構成する部品の一覧)や工程の情報をもとに、部品の必要量や生産の日程を計算します。これらの情報が古かったり、一部の品目で登録されていなかったりすると、計算結果が実際とずれる原因となります。
部品表の整備は設計部門や生産管理部門にまたがる作業になるため、導入前に担当と期限を決めておきましょう。整備に時間がかかる場合は、情報が整った品目から段階的にSCMの対象を広げる方法もあります。
卸売業でSCMの導入がうまく進まないケース
卸売業では、仕入先と販売先の双方と取引があり、取引先ごとに条件が異なることがあります。こうした条件がSCMで扱えない場合や、取引先との情報連携が定着しない場合に、導入がうまく進まない可能性があります。
取引先ごとの条件がマスタに収まらない
卸売業では、取引先ごとに発注単位や納品のリードタイム、価格の条件が異なる場合があります。SCMのマスタにこうした条件を登録する項目がないと、発注案の作成や在庫の引き当てで自社のルールを反映できません。
その結果、システムが作成した発注案を担当者が毎回修正する状況が生じ、導入の効果が見えにくくなる場合があります。導入前に、取引先ごとの条件を一覧にし、標準の項目で登録できるか、追加の設定や開発が必要かをベンダーに確認しましょう。
仕入先との情報連携が定着しない
SCMで仕入先と発注や納期の情報を共有する仕組みを用意しても、仕入先が利用しなければ効果は得られません。仕入先の中には、システムの操作に慣れていない企業や、自社のシステムとの二重入力を負担に感じる企業もあります。
仕入先との連携を進める際は、操作の説明や問い合わせの窓口を用意し、利用の負担をできるだけ抑えることが大切です。全取引先で一斉に切り替えるのではなく、取引量の多い仕入先から段階的に進めると、定着の状況を確認しながら対応できます。
ITトレンドでは、最新の製品・サービスを多数比較・掲載しています。まず資料請求して、さまざまな製品の機能や特徴を比較してみてください。忙しい業務時間内でも、各社に問い合わせる手間なく、たった1回の入力(約60秒)でSCMの一括資料請求が可能です。浮いた時間で、じっくりと製品を比較検討し進めましょう。
小売チェーンで起こり得るSCMの運用トラブル
小売チェーンでは、店舗ごとの売れ方の違いや、販促や季節による需要の変動に対応する必要があります。SCMの設定や運用がこうした変動に追いつかない場合、欠品や過剰在庫が店舗で生じる可能性があります。
店舗ごとの需要差と自動補充のずれ
店舗の立地や客層によって、同じ商品でも売れ方は異なります。全店舗に同じ補充の基準を適用すると、売れ行きの良い店舗では欠品が、売れ行きの鈍い店舗では在庫の滞留が生じる場合があります。
自動補充を店舗ごとの実績にもとづいて設定できるか、新店舗のように実績が少ない場合にどの店舗のデータを参考にするかを確認しましょう。補充の結果を定期的に確認し、基準を見直す担当と頻度を決めておくことも大切です。
販促や季節要因の反映漏れ
チラシやセールなどの販促、季節の行事による需要の増加がSCMの計画に反映されていないと、販促期間中に欠品が生じる可能性があります。反対に、販促の終了後も高い需要を前提に補充が続くと、在庫が余る原因となります。
販促の予定をSCMに登録する方法と、販促の担当部門と計画の担当部門の情報共有の流れを確認しましょう。販促の効果を過去の実績から見積もれる機能があるかも、比較の材料として役立ちます。
店舗と本部の役割分担の不明確さ
小売チェーンでは、本部が補充の計画を立て、店舗が発注量を調整する運用が見られます。役割分担が明確でないと、本部の計画と店舗の判断が食い違い、同じ商品が重複して発注されるといった問題が生じる場合があります。
SCMで店舗が修正できる範囲を権限で設定できるか、修正の履歴を本部が確認できるかを確かめましょう。役割分担のルールは文書にまとめ、店舗の担当者が替わっても引き継げるようにしておくことが大切です。
食品メーカーの賞味期限管理で懸念される不具合
食品メーカーでは、賞味期限を考慮した在庫の引き当てが欠かせません。引き当てのルールやデータに不備があると、期限の条件を満たさない在庫が出荷候補に挙がる可能性があります。起こり得る不具合と原因を整理します。
引き当てルールと出荷基準の食い違い
食品の出荷では、賞味期限の残り期間が一定以上の商品しか受け付けない取引先があります。SCMの引き当てルールに取引先ごとの基準が設定されていないと、条件を満たさない在庫が引き当てられ、出荷の段階で差し替えが必要になる場合があります。
導入前に、取引先ごとの納品期限の基準を整理し、SCMで設定できるかを確認しましょう。基準を変更した際に引き当ての結果へ正しく反映されるかも、テストで確かめておくことが大切です。
ロットや日付データの入力・連携の不備
賞味期限を考慮した引き当てが正しく動くには、ロットごとの製造日や賞味期限のデータが正確である必要があります。入荷時の入力ミスや、WMSなどの連携先システムとのデータの受け渡しの不備があると、SCM上の期限情報が実際と食い違う場合があります。
不具合の原因は、SCMの設定、入力の運用、連携先システムのいずれにもあり得ます。期限情報の入力方法を統一し、連携エラーを検知して通知できるかを確認しましょう。定期的に実在庫とシステムの期限情報を照合する運用も有効です。
業種特有の業務に照らして比べたいSCM製品
生産計画や在庫管理、流通の追跡など、業種ごとのつまずきやすい場面に関わる製品を紹介します。自社の生産方式や商習慣に対応できるかを、資料やデモで確かめてください。
PlanNEL
- 創業26年、グローバル400社超の導入実績とノウハウ
- 導入前コンサルティングから運用支援までのワンストップ対応
- 段階的に利用範囲を広げるスモールスタート
ザイオネックス株式会社が提供する「PlanNEL」は、需要予測から在庫・補充・供給・生産計画までをワンストップで提供するSCM計画ソリューションです。需要予測、生産計画、在庫管理の機能を備えており、製造業で需要計画と生産計画を連動させたい場合の比較候補です。自社の生産方式とかみ合うかは、導入前のコンサルティングの段階で具体的な業務条件を伝えて確認するとよいでしょう。特定の業務に絞ったスモールスタートから始められるため、影響の小さい範囲で試してから広げる進め方も可能です。
Freely (株式会社日本コンピュータ開発)
- 経済産業省認定のITツール
- マグネット感覚で作業指示カードを割り当て
- 30日間無料トライアルあり
SAP SCMソリューション (SAPジャパン株式会社)
- 低コストでSCMの導入が可能!
- 生産性や持続性の維持が可能!
- 成功を収めている企業の実例あり!
DigitalTraceabilityService (PwCコンサルティング合同会社)
- ステルスインクで識別コードを印刷し、スマホで流通経路を特定。
- タグと位置情報で偽物特定、ブランド毀損リスク低減
- 肉眼不可の超微細タグ技術、設備変更ほぼ不要。
Connecting One® Cloud (大日本印刷株式会社)
- 販促物の発注・配送・在庫管理を一元管理可能。
- 在庫状況をリアルタイムで確認でき欠品防止を支援。
- 蓄積データの分析により発注計画や制作数検討を支援。
まとめ
SCMが業種によってうまく機能しないケースでは、生産方式や取引条件、店舗運営、賞味期限管理といった業種特有の業務が関わります。こうした業務と、製品の標準機能や設定とのずれが原因となる場合があります。導入前に自社の業務ルールを整理し、デモやテストで適合を確かめることが大切です。自社の業種にあう製品を見つけるために、複数のSCMを資料請求し、業務への適合度を比較してみてください。

