年末調整における還付金とは
年末調整における還付金とは、具体的にどのようなものを指すのでしょうか。
所得税の調整で還付するお金のこと
年末調整における還付金とは、1年間で支払った所得税のうち、余分に支払った税金のことです。給与収入を得ている人は、月々支払われる給料の中から住民税や社会保険料、所得税などの各種税金が差し引かれています。
このうち所得税は、住民税や社会保険料のように決まった値ではなく、月々の収入やボーナスをもとに計算した概算値でしかありません。そのため生命保険料などの各種控除額によっては、本来納める金額より余分に支払っている可能性があります。この余分に支払っている分を、年末調整の時期に確定し納税者に返還するのが「年末調整における還付金」です。
家族が増えたり住宅ローンを組んだりすると対象になる
年末調整の還付金を受け取れるのは、以下のような人たちです。
- 1.住宅ローンを支払っている人
- 2.生命保険や地震保険の加入者
- 3.会社とは別に社会保険料の支払いがある人
- 4.個人型確定拠出年金(iDeCo)や小規模企業共済の加入者
- 5.年度の途中で扶養家族が増えた人
- 6.配偶者と離婚または死別した人
- 7.本人または扶養親族が障がい者の人
住宅ローンを利用している人のうち一定の要件を満たす人は、「住宅借入金等特別控除」が適用され、還付金の対象となります。所得税から直接控除できるため、ほかの対象者よりも高額の還付金を受け取れる可能性が高いです。
ただし1年目は確定申告する必要があります。年末調整で住宅借入金等特別控除を適用するのは、2年目以降となります。また、扶養家族が増える人とは、年度途中で結婚して配偶者ができたり、自分の親に毎月一定の仕送りをしたりしている人のことです。
12月か1月に支払う
年末調整における還付金は、年内最後の給料日となる12月に支払われることが多いです。しかし中小企業の中には1月に年末調整の申告分が修正されることを見越して、還付金の支払いを1月に設定しているところもあります。
従業員の目線で考えるなら、還付金の支払いは早い方がよいでしょう。しかし最近は夫婦で働いている世帯も多くなっているため、1月にならないと配偶者の正確な控除額が計算できないことも多いです。したがって年末調整における還付金は、特別な事情がなければ、1月に支払うことをおすすめします。

年末調整における還付金の計算方法
年末調整の還付金は、以下の公式で計算できます。
還付金=その年に給与から差し引かれた所得税の総額-年調年税額(年末調整で算出した実際の所得税額)
以下の例をもとに、還付金の計算をシミュレーションしてみましょう。
- 【Aさん】
- ・年間給与総額
- ・年間給与に対する源泉徴収税額
- ・給与から控除した社会保険料等
- ・生命保険料控除
- ・配偶者特別控除
- ・基礎控除
まずは、年間給与総額から給与所得控除後の所得額を求めます。給与所得控除後の所得額から社会保険料や生命保険料などの控除額を差し引き、1,000円未満を切り捨てたのが課税所得です。
次に、計算した課税所得から支払った所得税額を求め、復興特別所得税を考慮し102.1%を掛けあわせて「年調年税額」を計算します。この年調年税額と「年間給与に対する源泉徴収税額」の差額が、年末調整における還付金です。
年末調整における還付金の注意点
年末調整における還付金について注意すべき点を解説します。
場合によっては追徴の可能性がある
年末調整によって算出された実際の所得税より源泉徴収された所得税の方が小さい場合は、差額を追徴する必要があります。扶養親族となっていた子どもが働き出して扶養控除から外れたり、配偶者の年間収入が38万円を超えたりした従業員などが対象です。
ちなみに、前年同月に支払われた給料の10倍以上のボーナスを支払う場合は、特例として多額の源泉徴収を行う必要があります。それに伴い還付される金額も膨大になるので、業績連動型賞与などを採用している企業は注意が必要です。
還付しきれない場合は源泉徴収額と相殺する
税務署に納付していない源泉徴収分だけで還付しきれない場合は、年末調整後の源泉徴収分を還付金として相殺します。
還付する金額が大きすぎて2月末までに還付しきれない場合は、税務署に支払った源泉所得税を利用するための手続きが必要です。該当する場合は、税務署に「源泉所得税及び復興特別所得税の年末調整過納額還付請求書兼残存過納額明細書」を提出しましょう。手続きが複雑なため、税務署の職員や税理士と相談しながら進めることをおすすめします。
申告の失念や記入ミスに気をつける
年末調整の時期は、申告書の提出忘れや記入ミスが発生しないように、手続きの方法・注意点などを従業員に徹底周知しましょう。特に記入ミスは脱税につながるため、チェックを何重にも行って防止することが大切です。
年末調整における還付金処理は、できるだけ期限内に修正も含めて終わらせるようにしましょう。期限後でも「更正の請求」や「修正申告」によって申告内容を修正できますが、手続きを完了させるのに手間がかかります。
年末調整の還付金手続きはミスをチェックしつつ進めよう!
年末調整における還付金は、所得税の調整で還付するお金を指します。家族が増えた人や住宅ローンを組んだ人へ、12月か1月に支払います。関連業務を行う際は下記に注意してください。
- ・場合によっては追徴が必要となる
- ・還付しきれない部分は源泉徴収額で相殺する
- ・申告の失念・業務上のミスは徹底して予防する
煩雑な業務ですが、一歩間違うと脱税につながりかねません。還付金手続きは慎重に行いましょう。
