年末調整手続きを電子化する方法
システムを用いて年末調整を電子化するための具体的な手順を解説します。
ソフトウェアや承認申請書を用意する
年末調整システムを利用するには、年末調整の担当者が税務署へ承認申請書を提出し、申請書類をデータ化するための許可をもらう必要があります。運用マニュアルを作成して、従業員に操作方法を知ってもらうことも大切です。
一方従業員は、希望する控除に応じて控除証明書データを取得したり、年末調整システムの使い方を覚えたりする必要があります。
電子データを作成し国税庁に送付する
従業員が年末調整申請の電子データを作成し、会社がそのデータを国税庁に送付するまでの流れを、以下で紹介します。
- 1.従業員が個別に控除証明書データを取得する
- 2.従業員が年末調整システムを利用して申請書類や添付書類を電子化する
- 3.従業員がそれぞれ年末調整申請のデータを会社に提出する
- 4.会社が受け取ったデータを給与システムにインポートして所得税額を計算する
- 5.会社が所得税の過不足分を記載したデータを国税庁に提出する
年末調整システムの種類
年末調整システムは主に、年末調整に特化したシステムと、労務管理や給与計算機能も備えたシステムの2つに大別されます。詳しく見ていきましょう。
年末調整に特化したシステム
年末調整に特化したタイプは、スマートフォンやパソコンから年末調整の申請や書類作成ができ、各自の提出状況も確認可能です。前年度のフォームを参照しながら入力できたり、簡単な質問に回答するだけで申請作業が行えたりと、年末調整業務を効率化するさまざまな機能が搭載されています。既存の給与計算システムと連携させ、年末調整業務にフォーカスして効率化させたい企業にもおすすめです。
労務管理・給与計算機能を備えた年末調整システム
労務管理システムや給与計算システムに、年末調整機能が搭載されているタイプです。年末調整以外にも、毎月の給与計算や入社手続き、マイナンバーの管理など、さまざまな労務や給与関連の業務を支援します。シリーズ連携が可能な製品もあり、各システムへの二重入力の手間も省けます。年末調整業務だけでなく、労務管理や給与計算などもまとめて効率化したい企業におすすめです。
年末調整システムの選び方
年末調整システムを比較する際のポイントを解説します。
どのような帳票に対応しているか
昨今注目を集めているデジタル化の影響を受け、今後は年末調整関連の業務も電子化が進んでいくと考えられます。しかし製品によっては、電子化できる帳票に限りがあるのが現状です。そのため年末調整システムを選ぶ際は、どのような帳票に対応しているか確認しましょう。年末調整関連帳票の種類は、以下のとおりです。
- ●源泉徴収票
- ●源泉徴収票一覧表
- ●源泉徴収簿
- ●年末調整計算書
- ●源泉徴収簿兼賃金台帳
- ●年末調整一覧表
- ●過不足税額一覧表
- ●還付金明細書
- ●還付金振込一覧表
- ●法定調書合計表資料
- ●法定調書合計表資料内訳一覧表
- ●給与支払報告書(総括表)
- ●給与支払報告書(総括表)資料
入力方法が簡潔でわかりやすいか
年末調整システムは、ITリテラシーが低い人でも利用できるように、入力方法が簡潔でわかりやすいものを選びましょう。複雑でわかりにくいシステムだと、従業員からの問い合わせや差し戻し件数が多くなり、年末調整業務がスムーズに進まなくなります。
アンケートの質問に答えるだけで申告書類を自動生成できるシステムなどは、入力項目が決まっているため人的ミスがほとんど発生しません。電子的な操作が必要ないため、ITリテラシーの低い人でも利用できます。
また、FAQやヘルプページが充実していると、従業員が申告書の作成中に疑問をもってもすぐに解決できます。そうなると労務担当者への問い合わせや差し戻しの件数が減るため、負担が軽くなるでしょう。
提出状況を管理できるか
書類の提出状況を従業員ごとに一括管理できるかも重要です。年末調整では書類の処理業務が多くなるため、申請書類の提出状況を厳格に管理する必要があります。
従業員をリストアップし、催促メールを一括送信できる年末調整システムなどは、従業員が必要書類を提出した段階で、提出状況を自動更新できます。過去の申告書類との差異を検出できるなど、入力不備や間違いを検出する機能も豊富です。内容に間違いがある場合は、担当者が直接修正したり、申請者に修正箇所をアドバイスしたりできます。
既存システムとの連携が可能か
自社がすでに導入しているシステムや、今後利用しようとしているシステムと連携できるかを確認しましょう。既存の給与管理システムや労務システムなどと連携することで、システム間で重複している情報の入力を省けるようになり、従業員の負担が減ります。
連携タイプとしては、必要なデータをCSVファイルに抽出して相互利用するものが一般的です。しかしCSVファイル経由だとデータの連携に一手間かかるため、より簡潔に連携したい場合はデータを自動反映できるAPI連携タイプを利用しましょう。同一系列でさまざまな業務効率化ツールを販売しているメーカーの商品を利用するのもおすすめです。
自社が利用しているシステムによっては、年末調整システムとの連携方法が異なる場合もあります。そのため導入の際は、データの連携にどのくらいの労力がかかるのか、データ連携するために何をすればよいのかといったことまで把握しておきましょう。
料金プランが自社の規模に適しているか
年末調整システムの料金プランが、自社の従業員数の規模に合っているか確認しましょう。従業員数が多い大企業の場合は、利用料金を年間もしくは月間で一括支払いできる製品がおすすめです。比較的に従業員数が少ない中小企業の場合は、従業員の数によって料金が変動する従量課金制のほうがよいでしょう。製品にとっては固定プランと従量課金プランを併用できるものもあるので、自社の従業員規模にあわせて最適なものを選んでください。
年末調整に特化したシステム比較
既存の給与計算システムと連携し、年末調整業務を主に効率化したい企業におすすめのシステムを紹介します。気になる製品は緑色の「+資料請求リストに追加」ボタンでカート追加をしておき、あとでまとめて資料請求が便利です。
《年末調整Web申告》のPOINT
- デザイン性に優れた画面の質問に応えるだけで手軽に申告
- 従業員、人事ご担当者の業務が削減する便利機能が充実
- 人事給与分野での約50年の実績を踏まえた安心サポート
- ●対象従業員規模:500人~
- ●対象売上規模:すべての規模に対応
- ●提供形態:クラウド / SaaS / ASP
- ●参考価格:250,000円~
- ●参考価格補足:初期費用は基本パック200,000円、年間利用料は500円×利用人数
入力項目がシンプルで使いやすい操作性が魅力の年末調整システムです。提示される質問に回答していけば、自然と年末調整業務ができるように設計されています。年末調整に関する知識が不足している人にもおすすめです。
また、管理画面にて従業員それぞれの提出状況を確認できます。必要な書類を提出していない従業員には催促メールを一斉送信することも可能です。保険料控除証明書などの原本は、QRコードを利用して提出状況を確認できます。さくら情報システム株式会社が提供。
製品・サービスのPOINT
- 年末調整の「困るポイント」を全て解消!
- 作業は3ステップで全て完了
- ミスを抑制すると同時に、作業の正確性を向上!
- ●対象従業員規模:すべての規模に対応
- ●対象売上規模:すべての規模に対応
- ●提供形態:クラウド
- ●参考価格:300円~/人
- ●参考価格補足:初期費用50,000円
扶養親族や保険控除などの申請業務をまとめて行える年末調整システムです。システムの質問に回答するだけで、簡単に申請書類を作成できます。スマートフォンから入力することも可能です。各種控除証明書を紙に添付するのではなく、写真としてもアップロードできます。
また、従業員1名あたりの料金が300円からと低価格です。大企業はもちろんのこと、従業員数の幅が広い中小企業も利用しやすいでしょう。株式会社クリックスが提供。
製品・サービスのPOINT
- 2ステップで年末調整が可能に
- 人事担当者の業務を自動化
- 導入はたった5分!即日利用可能
- ●対象従業員規模:すべての規模に対応
- ●対象売上規模:すべての規模に対応
- ●提供形態:クラウド
- ●参考価格:ー
- ●参考価格補足:ー
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
申請書類の入力が簡単な年末調整システムです。申請画面上で前年の申請データを確認できるため、記憶違いによる入力ミスなどが発生しません。モバイルにも対応しており、外出先からでも申請書類や添付書類をアップロードできます。
収集した年末調整データは、給与システムなどの他ツールと連携できます。そのため重複するデータをわざわざ手動で入力する必要がありません。株式会社エフアンドエムが提供。
《Edge Tracker 年末調整申告》のPOINT
- 「ペーパーレス化」でコストを削減
- 「モバイル化」で働き方改革を推進
- 「見える化」で申告書の状況を一元管理
- ●対象従業員規模:~15,000人
- ●対象売上規模:すべての規模に対応
- ●提供形態:クラウド
- ●参考価格:ー
- ●参考価格補足:ー
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
スマートフォンやパソコンだけで申請書類を提出できる年末調整システムです。生命保険協会から提供される年末調整用のデータを、各種控除申請書にまとめて反映できます。従業員が自分の提出状況をいつでも確認できるため、申告漏れもほとんど発生しません。アンケートに答えるだけで簡単に提出資料を作成できます。
CSVファイルを利用した給与システムとの連携も可能です。マイナンバーの収集や毎年の税制改正にも柔軟に対応できます。株式会社ミロク情報サービスが提供。
製品・サービスのPOINT
- 2023年度の法改正(扶養控除申告)対応!
- マイナポータルからの保険料控除ダウンロードデータ取込対応
- 従業員様の操作性向上と人事担当者様のチェック機能強化
- ●対象従業員規模:すべての規模に対応
- ●対象売上規模:すべての規模に対応
- ●提供形態:クラウド / SaaS / ASP
- ●参考価格:300円/人
- ●参考価格補足:初期構築費用50,000円、基本料金10,000円/年
面倒な年末調整申告をスマートフォンやタブレット、パソコンから誰でも簡単に行える年末調整システムです。最小限の入力だけで各申請書類を作成できるため、紙での申請に比べて大幅に業務を効率化できます。 従業員の負担を軽減させたい企業におすすめです。鈴与シンワート株式会社が提供。
労務管理・給与計算機能を備えた年末調整システム比較
年末調整業務以外にも、毎月の給与計算や労務関連の業務をまとめて効率化できるシステムを紹介します。
《ジョブカン労務HR》のPOINT
- 「はい」「いいえ」のアンケート形式で従業員もかんたん対応!
- らくらく控除申告書自動作成!
- 過不足税額の集計・反映から役所提出用書類までワンクリック!
- ●対象従業員規模:すべての規模に対応
- ●対象売上規模:すべての規模に対応
- ●提供形態:クラウド / SaaS
- ●参考価格:400円 ~
- ●参考価格補足:初期費用無料、無料プランあり、価格は1人あたり
UIがシンプルで使いやすい年末調整システムです。7つの年末調整関連帳票に対応しており、所属税額や控除額などの情報をまとめて管理できます。年末調整業務に関する無駄なやり取りをなくしたいという企業におすすめです。
同系列の業務効率化ツールである「ジョブカン給与計算」と連携させることで、さらなる業務効率化が期待できます。年末調整で更新されたデータは、ジョブカン給与計算にも自動で反映可能です。他のジョブカンシリーズを利用している場合は、本製品を特別料金で利用できる可能性もあります。株式会社DONUTSが提供。
《SmartHR》のPOINT
- 従業員はSmartHRの質問に従ってスマホ・PCで簡単に入力!
- 集まった情報はCSVで一括出力!給与計算ソフトに取り込むだけ!
- 源泉徴収票もWebで完結!給与明細と一緒にSmartHRで配布完了!
- ●対象従業員規模:すべての規模に対応
- ●対象売上規模:すべての規模に対応
- ●提供形態:クラウド / SaaS
- ●参考価格:ー
- ●参考価格補足:15日間の無料トライアルあり
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
申請書の作成や差し戻しが簡単な年末調整システムです。質問に回答するだけで年末調整が完了するため、従業者向けにマニュアル動画などを作成する必要がほとんどありません。15日間の無料トライアルが設定されているので、事前に申告方法や操作感などを確認したい企業にもおすすめです。4種類の年末調整関連帳票に対応しています。株式会社SmartHRが提供。
《ジンジャー給与》のPOINT
- 給与計算の手間を大幅に削減!
- ウェブ明細発行までをスムーズに!
- 人事や勤怠とカンタン情報連携!
- ●対象従業員規模:すべての規模に対応
- ●対象売上規模:すべての規模に対応
- ●提供形態:クラウド
- ●参考価格:ー
- ●参考価格補足:ー
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
導入と運用が簡単な年末調整システムです。サポート機能が充実しているため、導入時に必要なことを的確にアドバイスしてくれます。最小のステップで誰でも簡単に申告書類を作成できるなど、機能面も優秀です。申請書類や添付書類のデータをまとめて無料で一括管理できるため、保険料や控除額を計算する手間もかかりません。年末調整後に算出した所得税額の計算過程も自由に確認できます。jinjer株式会社が提供。
《freee人事労務》のPOINT
- ITに対して苦手意識のある方でも簡単に操作できるシンプルな設計
- 年末調整の電子申告義務化にも対応しているサービス
- 勤怠管理、給与計算とも連係!法定調書の作成漏れなく対応
- ●対象従業員規模:すべての規模に対応
- ●対象売上規模:すべての規模に対応
- ●提供形態:クラウド / SaaS
- ●参考価格:ー
- ●参考価格補足:ー
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
業務効率化に最適な年末調整システムです。各種申告書や添付書類などを、ペーパーレスで簡単に収集できます。管理者が送ったメールから簡単な質問に答えるだけで申告書が完成するため、従業員にかかる負担もほとんどありません。内容の不備がある場合は、担当者がWeb上で直接修正したり、従業員にリマインドメールを送信したりできます。freee株式会社が提供。
製品・サービスのPOINT
- 他社給与計算ソフトを使っていてもご利用可能
- ペーパーレスで書類の準備がかんたん
- 回収状況が確認できる管理画面
- ●対象従業員規模:すべての規模に対応
- ●対象売上規模:すべての規模に対応
- ●提供形態:クラウド
- ●参考価格:ー
- ●参考価格補足:ー
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
簡単な操作性が魅力の年末調整システムです。前年度のフォームを確認しながら入力できるため、スムーズに申告書を作成できます。年末調整業務における管理側と従業員側双方の負担を軽減したい企業におすすめです。
また、連携機能があるため既存の給与計算システムを変更する必要がありません。100枚以上の申請書を処理する企業に課される「e‐Tax電子報告義務化」にも対応しています。株式会社マネーフォワードが提供。
- ●対象従業員規模:100人~
- ●対象売上規模:すべての規模に対応
- ●提供形態:クラウド
- ●参考価格:ー
- ●参考価格補足:ー
※"ー"の情報はITトレンド編集部で確認できなかった項目です。詳細は各企業にお問い合わせください。
サポート体制が充実している年末調整システムです。専任のスタッフが企業の業務内容・目的に応じて最適な初期設定や運用後のサポートをしてくれます。年末調整業務に集中したいという企業におすすめです。
また、簡単な質問に「はい」と「いいえ」で答えるだけで申告が完了するなど、年末調整システムとしても優れた機能を備えています。従業員の回答データをもとに自動で控除額や税金額を算出できるため計算ミスも発生しません。株式会社Techouseが提供。
自社に適した年末調整システムを導入しよう
年末調整システムは、以下の5つのポイントを意識して選びましょう。
- ・どのような帳票に対応しているか
- ・入力方法が簡潔でわかりやすいか
- ・提出状況を管理できるか
- ・既存システムとの連携が可能か
- ・料金プランが自社の規模に適しているか
年末調整システムを導入する際は、承認申請書を税務署に提出しなければなりません。運用マニュアルを作成して従業員にシステムの使い方を解説したり、必要な控除証明書を取得するようお願いしたりすることも重要です。
自社に適した年末調整システムを導入して、業務を効率化させてください。