年末調整に必要な申告書の種類
年末調整に必要な申告書の種類は、以下の4つです。
- 【給与所得者の扶養控除等(異動)申告書】
- 控除を受けたい従業員全員が提出する書類です。令和3年4月1日以降は、押印を省略できます。
- 【給与所得者の保険料控除申告書】
- 生命保険料控除や地震保険料控除、社会保険料控除などの保険料控除を受けるための書類です。
- 【住宅借入金等特別控除申告書】
- 住宅ローンで支払った割賦代金の控除を受けたい時に申請する書類です。正式には「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」と呼ばれています。
- 【給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書】
- 基礎控除や配偶者(特別)控除、所得金額調整控除を受けるために必要な書類です。令和1年までは「給与所得者の配偶者控除等申告書」という名称でした。
参考:年末調整とは|国税庁
年末調整書類の書き方と記入例
年末調整書類は、具体的にどのように作成すればよいのでしょうか。書き方と記入例をわかりやすく解説します。
扶養控除等(異動)申告書
扶養控除等(異動)申告書に入力する項目は、以下の6つです。わかりやすい項目を中心に解説します。
- 1.基本情報
- 2.源泉控除対象配偶者
- 3.控除対象扶養親族(16歳以上)
- 4.障がい者、寡婦、寡夫または勤労学生
- 5.他の所得者が控除を受ける扶養親族等
- 6.16歳未満の扶養親族
「1」欄には、申請者の氏名や生年月日、マイナンバーなどの基本情報を記載します。配偶者や扶養親族がいない場合は、この欄を記入して終了です。残りの「2」~「6」欄は、該当する申請者や配偶者、扶養親族がいる場合に記入してもらいます。
所得見積額については、対象によって年収から控除できる金額が異なります。たとえば配偶者がアルバイトなどをしている場合は、年収から65万円差し引いた金額が所得の見積額です。一般的な扶養親族は、年収から38万円を差し引いた金額が所得の見積額になります。申請者と扶養親族が同居している場合の控除額は、58万円です。
保険料控除申告書
保険料控除申告書で記入する内容は、以下の4つです。
- 1.生命保険料控除
- 2.地震保険料控除
- 3.社会保険料控除
- 4.小規模企業共済等掛金控除
それぞれの書き方について詳しく解説します。
生命保険料控除
生命保険料控除欄に記入する項目は、以下の3つです。
- 1.一般の生命保険料控除
- 2.介護医療保険料控除
- 3.個人年金保険料控除
該当する項目がある場合は、保険会社の名称や保険の種類、契約者の氏名などをそれぞれ記入する必要があります。わからない場合は、控除証明書や保険証券などを参考にしてもらいましょう。
生命保険料控除では、「新・旧の区分」が設定されています。2012年(平成24年)1月1日以前に契約締結されたものは「旧区分」、2012年(平成24年)1月1日以後の契約締結されたものは「新区分」です。「新保険料」と「旧保険料」では、控除額の計算方法や限度額が異なります。
参考:No.1140 生命保険料控除|国税庁
地震保険料控除
保険会社から発行される「地震保険料控除証明書」を参考に、必要事項を入力してもらいましょう。地震保険料控除は、自分や自分と生計をともにする配偶者・扶養親族が日常的に利用している建物に対して適用されます。そのため他人に賃貸している建物の保険料は対象になりません。申請の際は、自分の加入保険が地震保険料控除の対象になっているのかしっかりと確認してもらいましょう。
2006年(平成18年)12月31日以前の長期損害保険契約などの保険料は、地震保険料控除の対象です。ただし地震保険と長期損害保険の併用はできませんので、該当する場合は「地震保険料と旧長期損害保険料」の区分にて、いずれか好きな方を選んでもらいましょう。
参考:No.1145 地震保険料控除|国税庁
社会保険料控除
社会保険料控除欄には、保険料の領収証書や保険料納付証明書、保険会社から発行される社会保険料控除証明書などを参考にして、保険会社の名称や保険の種類、契約者の氏名などの必要事項を入力してもらいます。
社会保険ごとに必要な証明書類は、以下のとおりです。
- ・国民年金:国民年金控除証明書
- ・国民年金基金:社会保険料控除証明書
- ・国民健康保険:必要なし
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済等掛金控除欄には、それぞれ該当する掛金の支払い額を記入してもらいます。控除できる掛金の種類は、以下のとおりです。
- ・独立行政法人中小企業基盤整備機構の共済契約の掛金
- ・確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金もしくは個人型年金加入者掛金
- ・心身障害者扶養共済制度に関する契約の掛金
支払い金額については各発行組織からの控除証明書が参考になります。
基礎・配偶者・所得金額調整控除申告書
基礎控除申告書には、収入金額や合計所得金額を記入してもらいます。確定申告の前なのでそれぞれ見積額で問題ありません。合計所得金額欄には、給与収入から所定の控除額を引いた金額を記入してもらいます。
配偶者控除申告書には、控除対象となる配偶者の氏名や住所、マイナンバーなどの基本情報を記入してもらいます。配偶者の合計所得金額は、基礎控除申告書と同様に、給与収入から所定の控除額を引いた金額です。基礎控除申告書と配偶者控除申告書を記入したら、「控除額の計算」表を参考に控除額を確認してもらいます。ここで確認した金額が、基礎・配偶者・所得金額調整控除申告書に記載する控除額です。
所得金額調整控除申告書は、「850万円以上の給与収入を得ており、23歳未満(平成10年1月2日以降生まれ)の子供を扶養している人」・「自分や扶養親族に障がい者がいる人」に記入してもらいます。
参考:No.1411 所得金額調整控除|国税庁
住宅借入金等特別控除申告書
以下の項目を記入してもらいます。
- 1.勤務先情報、申請者情報
- 2.新築又は購入に係る借入金等の年末残高(年末時点での住宅ローン残高)
- 3.家屋又は土地等の取得対価の額(同書最下部に記載)
- 4.家屋の総床面積又は土地等の総面積のうち居住用部分の床面積又は面積の占める部分(同書最下部に記載)
- 5.取得対価の額に係る借入金等の年末残高(「2」と「3の住宅及び土地等」のうち少ない方)
- 6.居住用部分の家屋又は土地等に係る借入金等の年末残高(「5」に「4」をかける)
- 7.(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算の基礎となる借入金等の年末残高(「6」を転記)
- 8.(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額(「7」に1%を掛けた金額を記入/100円未満切り捨て)
同申告書は、控除を受ける年度ごとに書類が異なります。記載されている年度が合っているか確認しましょう。入力項目については「住宅ローン残高証明書」が参考になります。
年末調整業務のポイント
年末調整申告書類の書き方について押さえておきたいポイントを解説します。
書類提出に必要なものをリストアップする
書類提出に必要なものをリストアップしましょう。年末調整の控除を受けるには、以下のような証明書類が必要です。
- ・各保険会社からのハガキや電子発行データ
- ・個人型の確定拠出年金の掛け金を証明する書類
- ・国民年金、国民健康保険などの支払いを証明する書類
- ・配偶者特別控除に必要な源泉徴収票
- ・住宅ローン控除に必要な住宅借入金等特別控除申告書
- ・借入金の年末残高等証明書
年末調整システムで効率化を図る
年末調整システムは、データの入力や申請書の提出、控除額の計算などを効率化できるツールです。申請書の内容に不備があった場合は、該当の対象者に対して一斉に催促メールを送信できます。毎年のように発生する税制改正にも柔軟に対応できるため、効率化をお考えなら導入することをおすすめします。
記入例を参考にしながら年末調整業務に取り組もう!
年末調整では、以下4種類の申告書類を扱います。
- ・扶養控除等(異動)申告書
- ・保険料控除申告書
- ・住宅借入金等特別控除申告書
- ・基礎・配偶者・所得金額調整控除申告書
上記の申告書類をチェックする際には、本記事で紹介した記入例を参考にしてください。書類提出に必要なものを事前に確認しておくとスムーズに対応できます。また、担当者の負担が大きくなる場合は年末調整システムの導入も検討しましょう。