年末調整の基礎控除とは
年末調整の基礎控除とは、一定の所得内であればすべての納税者を対象に総所得金額から差し引かれる控除のことです。課税の対象となる所得金額が減るため、収めるべき税金の額も抑えられます。ここでは、対象になる人や申請に必要な書類について詳しく解説します。
合計所得金額が2,500万円以下の人が対象となる
基礎控除の対象となるのは、その年の「所得金額」や「給与以外の所得金額」の合計額が2,500万円以下の人です。2019年以前は申請者の合計所得金額に関係なく、一律38万円が基礎控除として差し引かれていましたが、2020年の税制改正により、現在は申請者の合計所得金額に応じて以下のように異なります。
- ●~2,400万円:48万円
- ●2,400万円超~2,450万円:32万円
- ●2,450万円超~2,500万円:16万円
- ●2,500万円超~:0円
年収2,500万円の人は全体の割合としては少ないため、基礎控除はほとんどすべての世帯が利用できると考えてよいでしょう。
指定された書類の提出が求められる
基礎控除を受けるには、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得⾦額調整控除申告書」をその年の最後に支払われる給与日の前日までに、給与の支払者に提出する必要があります。配偶者控除等申告書や所得金額調整控除申告書も一つの用紙にまとめられていますが、配偶者控除や所得金額調整控除を希望しない場合は、基礎控除の項目だけ記入して提出します。
参考:基礎控除|国税庁
基礎控除申告書の書き方
基礎控除申告書には、「あなたの本年中の合計所得金額の見積額の計算」の欄と「控除額の計算」の欄が設けられており、それぞれ計算して記載する必要があります。ここでは、記載する部分ごとの書き方と計算方法を詳しく解説します。
「あなたの本年中の合計所得金額の見積額の計算」の欄
以下のそれぞれの項目を計算して記載します。
給与所得の収入金額
基礎控除申請年の1月から12月までに受け取った給与収入の合計金額を記入します。年末調整の申請時点では最後の給料が支払われていないため、今後支払われるであろう給与やボーナス額を加算した見積額を記入します。
複数の収入源がある場合はすべての給与額を合算しましょう。なお、収入は手取り額ではなく総支払額で計算する必要があるため、間違えないよう注意が必要です。
給与所得の所得額
年間の給与収入額から所得控除を差し引いた金額を記入します。申告書の裏面にある計算式を使えば簡単に算出可能です。また、控除額は給与の収入額によって異なりますが、年間の所得金額が2,400万円以下であればすべて同一の控除額のため、そこまで正確な数値は必要ありません。
給与所得以外の所得の合計
給与以外の所得がある場合には、その所得の合計額を記入します。給与所得以外の所得とは、主に以下の9つの所得を指します。
- ●利⼦所得
- ●配当所得
- ●⼭林所得
- ●譲渡所得
- ●⼀時所得
- ●雑所得
- ●不動産所得
- ●事業所得
- ●退職所得
参考:給与所得以外の所得の種類等|国税庁
本年中の合計所得額の見積額
「給与所得」と「給与所得以外の所得」の合計額を加算したものが、「本年中の合計所得金額の見積額」となります。
「控除額の計算」の欄
控除額は、本年中の合計所得金額の見積額を表に当てはめれば簡単に算出できます。算出した控除額を「基礎控除の額」欄に記入すれば完了です。配偶者控除や配偶者特別控除を希望する場合は、判定表に記載されているアルファベットを「区分Ⅰ」の欄に記入します。
参考:給与所得者(従業員)の方へ(令和5年分)|国税庁
年末調整で受けられる控除の種類
年末調整で受けられる控除は以下のとおりです。
- ●基礎控除:年収2,500万円以下の場合
- ●配偶者控除:所得税法上の控除対象配偶者がいる場合
- ●配偶者特別控除:所得金額が1,000万円以下で、配偶者の所得金額が48万円〜133万円未満の場合
- ●扶養控除:所得税法上の控除対象扶養親族がいる場合
- ●生命保険料控除:個人年金保険料などを支払った場合
- ●地震保険料控除:地震保険料などを支払った場合
- ●小規模企業共済等掛金控除:個人型・企業型拠出年金などに加入している場合
- ●社会保険料控除:国民健康保険の保険料や年金保険料などを支払った場合
- ●障害者控除:本人もしくは家族が所得税法上の障害者認定を受けている場合
- ●ひとり親控除:ひとり親の場合
- ●寡婦(寡夫)控除:配偶者と離婚または死別した場合(要件あり)
- ●勤労学生控除:勤労学生の場合(所得金額75万円以下で給与所得
以外の所得が10万円以下)
参考:各種控除について(給与所得者用)|国税庁
年末調整業務の負担を軽減する方法
年末調整の時期は、申告書の回収や内容のチェック、従業員からの問い合わせ対応などさまざまな業務をこなす必要があり、担当者の負担が大きくなります。年末調整業務の負担を軽減するには、年末調整システムを導入して業務効率化を図るのもひとつの手です。
年末調整システムには、担当者の負担を軽減する機能が豊富に搭載されています。たとえば、申告書の配布・回収業務を電子化する機能や、制度改正にあわせてプログラムを自動変更する機能などです。給与システムなどの他ツールとの連携もできるため、データの入力ミスや二重入力なども発生しません。
国税庁からも無償の「年調ソフト」がリリースされたように、年末調整業務の電子化が進んでいます。申請書の処理を円滑に進めるためにも、業務の自動化が可能な年末調整システムの導入を検討してみましょう
以下の記事では、おすすめの年末調整システムを比較しています。機能や選び方も解説しているため、ぜひ参考にしてください。
基礎控除を理解し年末調整業務を迅速に行おう
年末調整の基礎控除とは、合計所得金額が2,500万円以下であれば、すべての納税者を対象に総所得金額から差し引かれる控除のことです。ただし、基礎控除申告書をその年の最後に支払われる給与日の前日までに提出する必要があります。
年末調整の担当者は、従業員が提出した基礎控除申告書を確認し、正しく記載されているかどうかをチェックする必要があるため、申告書の書き方や計算方法を把握しておきましょう。また、年末調整業務の効率化を目指すなら、年末調整システムの導入がおすすめです。以下のボタンから各社製品の一括資料請求が可能なため、年末調整システム選びの参考にしてください。