Web請求書・クラウド請求書が注目される背景
この章では、なぜ今「Web請求書・クラウド請求書」が企業の間で関心を集めているのか、背景を整理します。
インボイス制度導入による電子化の加速
2023年10月から開始された「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」により、請求書の保存要件が見直されました。紙ベースでは記載や保存対応に手間がかかるため、電子化・クラウド化の重要性が一段と高まっています。電子帳簿保存法の改正も重なり、帳簿や請求書データのデジタル保存が広く求められる流れです。こうした制度的な後押しが、Web請求書・クラウド請求書の普及を加速させています。
参考:No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)|国税庁
DX推進とバックオフィス業務の効率化
企業全体でデジタル変革が進み、請求書発行・管理といったバックオフィスも対象になっています。紙と手作業の運用はヒューマンエラーや負荷の要因です。クラウド請求書システムは、発行・送付・集計・保存までを統合して自動化でき、業務効率化とコスト低減に結びつきやすい特長があります。継続的な人手不足への対策としても関心が高まっています。
リモートワーク定着によるペーパーレス化の流れ
リモートワークやハイブリッドワークが定着し、出社せずに請求書を発行・承認・送付できる環境整備が不可欠になりました。紙の郵送や押印に依存したフローでは柔軟に対応できません。クラウド請求書であれば、場所を問わず承認が進み、処理の停滞を防ぎやすくなります。結果として、キャッシュフロー管理の観点でも効果が期待されます。
2025年注目のWeb請求書・クラウド請求書トレンド
ここでは、2025年時点で特に注目すべきトレンドを三つ取り上げ、背景とともに解説します。
AIによる自動入力・自動送付の高度化
請求データの自動入力(OCRやAI解析)、送付タイミングの自動化、未入金の自動リマインドなどが高度化しています。取引先・金額・期日などをAIが予測補完し、メール送付や閲覧確認まで一気通貫で処理できる仕組みが拡大しています。背景には、経理部門の人手不足や、処理遅延・記載ミスの低減ニーズがあります。電子請求書受取サービス市場の拡大も、この動きを後押ししています。
参考:ITRが電子請求書受取サービス市場規模推移および予測を発表|株式会社アイ・ティ・アール
経費精算・会計ソフトとのAPI連携強化
クラウド請求書単体の導入から、経費精算・会計ソフト・基幹業務との連携へと主眼が移っています。請求→仕訳→承認→支払という一連の流れをAPIでつなぐことで、二重入力を減らし、処理のスピードと正確性を向上できます。データが業務間で孤立しない構成が求められ、連携前提の選定が主流になりつつあります。将来は、連携データを活用した予測や自動仕訳の高度化も期待されます。
電子契約・請求・支払の一元管理化
契約締結(電子契約)から請求・支払までを一元管理する発想が広がっています。契約が紙、支払が個別振込のままだとプロセスが分断され、可視化が難しくなります。一方、クラウド請求書を中心に電子契約・決済を組み合わせれば、ステータスの見える化や遅延抑制につながります。コンプライアンスや内部統制の観点でも、統合管理の重要度は高まるでしょう。
Web請求書・クラウド請求書サービスの進化ポイント
本章では、クラウド請求書サービスを選ぶ際に確認したい進化ポイントを整理します。導入効果の最大化に役立つ視点です。
モバイルアプリでの承認フロー操作
場所を問わず請求書を確認・承認できるモバイルアプリが普及しています。出張先や在宅勤務でも承認・差戻しが可能になり、ボトルネックの解消に寄与します。押印や出社に依存しないため、承認リードタイムの短縮が見込めます。業務の平準化や支払計画の精度向上にもつながります。
データ可視化・分析機能の搭載
発行数、支払予定、未払状況、取引先別の推移などをダッシュボードで可視化し、レポート化する機能が充実しています。人手による集計を減らし、遅延や偏りを早期に把握できます。将来的には、傾向分析や遅延予測、回収確度のスコアリングなど、意思決定に役立つ機能の高度化が期待されます。
国際取引・多通貨対応への対応拡大
海外拠点や越境ECの増加に伴い、多通貨・多言語での発行や税制対応が重要になっています。為替変動や各国の税務要件に配慮しつつ、統一した運用を可能にする仕組みへのニーズは強い状況です。海外取引先とのやり取りを円滑にするためにも、対応範囲と運用負荷のバランスを確認することが大切です。
トレンドを踏まえたシステム導入のコツ
導入や比較検討の際に押さえておきたい実務的なポイントをまとめます。事前確認を丁寧に行えば、導入後のギャップを抑えられます。
将来の法改正に対応できる拡張性を重視する
適格請求書等保存方式や電子帳簿保存法など、制度や税務ルールは見直しが続く可能性があります。フォーマット変更や要件追加に柔軟に追従できるアップデート方針か、運用面を含めて確認しましょう。中長期で安心して使い続けられる拡張性は重要な選定基準です。
取引先との連携方法を事前に確認する
発行側だけでなく受領側の運用も成果を左右します。取引先がPDF、ポータル経由、データ連携のいずれに対応できるか、実際の処理フローに合うかを確かめてください。相手先の電子化状況に応じ、移行期間中の併用ルールも整えておくと移行が滑らかになります。
サポート体制やアップデート頻度を確認する
導入後の定着を左右するのは、ベンダーのサポート品質とスピードです。問い合わせ対応、教育コンテンツ、法改正対応の迅速さ、セキュリティ対応の方針を確認しましょう。障害時の連絡体制、SLAの有無もチェックポイントです。
以下の記事ではWeb請求書・クラウド請求書の価格や機能、サポート体制などを、具体的に比較して紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
2025年時点で、Web請求書・クラウド請求書は、制度対応・働き方の変化・業務効率化という三つの潮流を背景に、バックオフィス改革の要所になっています。AI活用による自動化、会計・経費とのAPI連携、契約から請求・支払までの一元管理が進み、単なる電子化を超えた効果が期待されます。導入時は、法改正への追随力、取引先連携、サポート品質の三点を重視しましょう。まずは自社の要件を整理し、複数製品の資料請求で比較検討を進めてみてください。


