Web請求書・クラウド請求書市場の現状
ここでは、Web請求書・クラウド請求書の普及背景を公的データで確認します。電子商取引の広がり、制度対応の進展、現場課題の解消ニーズを軸に、導入の必要性を具体化します。
電子請求書普及率の上昇
日本の企業間電子商取引は拡大基調です。経済産業省の調査では、2024年のBtoB電子商取引(EC)市場規模は514.4兆円、EC化率は43.1%とされています。商取引の電子化が進むにつれ、請求書の発行・受領もデジタル化する流れが強まっています。
さらに、電子請求書の受領・データ化を担う国内市場は高成長です。独立系調査会社ITRは、2023年度の「電子請求書受取サービス」市場売上が前年比82.0%増だったと発表しています。制度対応と業務効率化の両面から、受領業務のデジタル化需要が伸びています。
参考:
令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果|経済産業省
参考:
電子請求書受取サービス市場規模推移および予測を発表|ITRプレスリリース(2024年8月27日)
中小企業での導入加速
中小企業でも、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応が導入の後押しになっています。紙の請求書は、印刷・発送費や手入力、保管の手間が負担になりがちです。クラウドを用いた発行・受領に切り替えると、作業の重複やミスの発生源を減らせる可能性があります。まずは自社の課題を洗い出し、効果の大きい領域から置き換えるのが現実的です。
クラウド型への移行トレンド
制度や標準化の整備も進みました。デジタル庁は電子インボイスの国内標準仕様「JP PINT」を公開し、事業者間でのデータ連携基盤づくりが進展しています。クラウド型を選ぶと、最新の法対応や連携機能を随時取り込めるため、運用負荷の平準化が図りやすくなります。
主要クラウド請求書サービスの市場シェアと導入状況
公的に厳密な「市場シェア比率」を示す無償データは限られます。本章では、企業が公表している導入件数・利用業界・成長傾向などを整理し、導入検討の参考となるポイントを紹介します。
マネーフォワード クラウド請求書の導入状況と特徴
株式会社マネーフォワードが提供する「マネーフォワード クラウド請求書」は、会計・経費・勤怠など自社クラウド群と連携し、経理業務を一元化できるサービスです。バックオフィスSaaS「マネーフォワード クラウド」シリーズ全体の導入法人事業者数は2022年時点で10万社を突破。インボイス制度対応をはじめ、2024年以降も中堅〜大企業まで導入が拡大しています。
参考: 『マネーフォワード クラウド』、導入法人事業者数10万社突破|株式会社マネーフォワード
freee請求書の導入拡大と成長傾向
フリー株式会社の「freee請求書」は、クラウド会計や人事労務と組み合わせて、請求書の発行から入金管理までを自動化できるサービスです。公式IR資料によると、会計ソフト「freee会計」を中心に有料課金ユーザー企業数が継続的に増加しており、中小企業・個人事業主を中心に導入が広がっています。
Bill Oneの大企業での導入拡大
Sansan株式会社の「Bill One」は、大企業や多拠点企業での導入が進む請求書受領クラウドサービスです。請求書のデータ化・承認フローを自動化し、紙・メール・PDFなど多様な形式に対応。医療・福祉・製造など幅広い業界での全社展開事例も相次いでいます。
参考:
生長会・悠人会が約30拠点でBill Oneを導入|Sansan株式会社
参考:Bill Oneが3年連続マーケットシェアNo.1を獲得(分野別)|Sansan株式会社
以下の記事ではWeb請求書・クラウド請求書の価格や機能、サポート体制などを、具体的に比較して紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
今後のWeb請求書・クラウド請求書市場予測
ここでは、技術と運用の観点から今後の注目点を整理します。AI活用、業種別要件、外部連携の拡張が、選定時の比較軸として存在感を増します。
AI・自動化による差別化
請求書処理は定型業務が多く、AIや自動化の効果が表れやすい領域です。OCRによるデータ化、仕訳候補の提示、入金消込の自動処理など、人手に依存していた作業の工数を抑えられます。ミスの低減や処理スピードの平準化が見込めるため、運用設計と合わせて効果検証を行うと判断しやすくなります。
業種別ソリューションの広がり
建設・製造・流通・サービスなど、業種によって請求の頻度や明細構造は異なります。分割請求、検収データとの照合、定期課金など、実務要件に合うテンプレートや連携機能を備えるかが重要です。業種の慣行と社内の統制レベルに合わせ、要件適合性を比較しましょう。
海外展開の広がり
標準仕様やAPIを軸に、国内外の会計・ERP・決済との連携が拡張しています。多拠点や海外子会社を持つ企業では、請求データの共通化と内部統制の両立が課題です。海外では欧州を中心に電子インボイスの義務化が進み、日本でも国際標準(Peppol)への対応を含めた電子インボイス制度の整備が進展しています。こうした動きを背景に、グローバル対応を強化したクラウド請求書サービスの導入が今後さらに進むと考えられます。
参考:
電子インボイス制度に関する情報|デジタル庁
参考:デジタルインボイス(Peppol)とは|デジタルインボイス推進協議会(EIPA)
まとめ
Web請求書やクラウド請求書の導入は、電子化・制度対応・自動化の流れに合致し、現場負担の軽減と統制の強化に役立ちます。導入を成功させるには、実務要件の洗い出し、既存システムとの連携、拠点を含む運用ルール設計が要点です。気になる製品があれば、まず資料請求して比較軸をそろえ、費用・機能・サポートを並べて検討を進めましょう。最後は、自社の課題に最も合う一手を選び、段階的に運用を定着させてください。


