Web請求書・クラウド請求書市場の現状
ここでは、Web請求書・クラウド請求書の普及背景を公的データで確認します。電子商取引の広がり、制度対応の進展、現場課題の解消ニーズを軸に、導入の必要性を具体化します。
| ポイント | 概要 |
|---|---|
| 電子請求書普及率の上昇 | 企業間取引の電子化が進み、請求書の発行・受領もデジタル化が加速しています。 |
| 中小企業での導入加速 | 法制度への対応や業務効率化を背景に、中小企業でも導入が広がっています。 |
| クラウド型への移行トレンド | 法改正への対応やシステム連携のしやすさから、クラウド型への移行が進んでいます。 |
電子請求書普及率の上昇
経済産業省の「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」によると、2024年の国内BtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は514.4兆円でした。前年の465.2兆円から10.6%増えています。商取引全体に占める電子商取引の割合(EC化率)は43.1%で、前年から3.1ポイント上昇しました。ただし、この数字は受発注などを含む電子商取引全体のもので、請求書の電子化の進み具合を直接示すものではありません。
請求書の受け取り側のサービスに限ると、市場の拡大ははっきりしています。調査会社のITRによると、国内の電子請求書受取サービス市場の2025年度の売上金額は370億円で、前年度比27.6%増でした。背景として、ITRは電子帳簿保存法による電子取引データの保存義務化と、インボイス制度の施行を挙げています。
ITRは、2026年度も高い成長率を維持するとみています。一方で、2025〜2030年度の年平均成長率は10.3%の予測で、2025年度の伸びよりは緩やかになる見通しです。
参考:
令和6年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました|経済産業省
参考:
ITRプレスリリース(2026年10月1日)
中小企業での導入加速
中小企業でも、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応が導入の後押しになっています。紙の請求書は、印刷・発送費や手入力、保管の手間が負担になりがちです。クラウドを用いた発行・受領に切り替えると、作業の重複やミスの発生源を減らせる可能性があります。まずは自社の課題を洗い出し、効果の大きい領域から置き換えるのが現実的です。
クラウド型への移行トレンド
制度や標準化の整備も進みました。デジタル庁は電子インボイスの国内標準仕様「JP PINT」を公開し、事業者間でのデータ連携基盤づくりが進展しています。クラウド型を選ぶと、最新の法対応や連携機能を随時取り込めるため、運用負荷の平準化が図りやすくなります。
「シェア」の数字が調査ごとに違う理由
「市場シェア」という言葉でも、数字の出どころによって意味が変わります。ベンダー別のシェアを示す公的な統計がないため、次の3種類の情報を分けて見ることが大切です。
| 種類 | 主な出どころ | 示していること | 読むときの注意 |
|---|---|---|---|
| 各社の公表値 | 各社の決算資料・公式サイト | 導入社数や売上など、各社が公表する実績 | 集計の範囲や時点が各社で異なり、横並びでは比べられない |
| 調査会社の市場データ | ITRなどの調査会社 | サービス市場全体の売上規模と成長率 | ベンダー別の数字は有料レポートに掲載されることが多い。発行と受領は別の市場として調査される |
| ITトレンドの資料請求ランキング | ITトレンド | 資料請求数に基づく人気の傾向 | 導入社数や売上とは別の指標で、市場シェアではない |
特に注意したいのは、請求書の「発行」と「受領」が、別のサービス、別の市場として調査されている点です。「シェア1位」という表現も、どちらの市場が対象か、いつの、どのような調査かを確認する必要があります。
主要クラウド請求書サービスの導入状況
以下は、各社が公表している実績です。調査の対象や時点がそろっていないため、数字を並べて優劣を判断することはできません。
マネーフォワード クラウド請求書の導入状況と特徴
「マネーフォワード クラウド請求書」は、請求書の作成から送付、保管までをまとめて管理できる、個人・中小企業向けの請求書作成ソフトです。同社の公式サイトでは、「請求書作成ソフトシェア 30名以下の事業者 No.1」と表示しています。この表記の根拠は、2025年9月に株式会社ジャストシステムが実施したFastask調査で、個人事業主を含む30名以下の事業者を対象にしたものです。
請求書の作成時に売掛金の仕訳を自動で作成し、入金消込の処理に連動してステータスを更新できる点も特徴です。会計ソフトと連携することで、請求業務から経理処理までの流れをまとめて管理できます。なお、中堅・大企業向けには、別の製品として「マネーフォワード クラウド請求書発行」が提供されています。
参考: マネーフォワード クラウド請求書|株式会社マネーフォワード
freee請求書の導入拡大と成長傾向
フリー株式会社が提供する「freee請求書」は、基幹システムから出力したCSVやPDFを取り込み、請求書を一括で送付できるサービスです。取引先に合わせて、メール送信と郵送代行を選べます。アドバンスプランでは、債権管理と入金消込の自動化にも対応します。
同社の2026年6月期の決算説明資料によると、2026年6月末時点の有料課金ユーザー企業数は約69万社で、前年から14.0%増えました。このうち法人は約27万社で、16.8%の増加です。ただし、この数字は個人事業主を含む、freeeのサービス全体の契約数です。freee請求書だけの導入社数ではない点に注意しましょう。
参考:
freee請求書|フリー株式会社
参考:
2026年6月期 決算説明資料|フリー株式会社(2026年8月13日)
楽楽明細の導入状況
楽楽明細は、株式会社ラクスが提供する電子請求書発行システムです。請求書や納品書などの帳票データを取り込み、取引先の希望に応じて、Web、メール添付、郵送代行、FAXで発行できます。
同社の公式サイトでは、累計導入社数が16,000社を突破したとしています(2026年3月末時点)。あわせて、売上シェアと導入社数シェアが第1位だと表示しています。根拠は、デロイト トーマツ ミック経済研究所の「クラウド帳票発行サービスの市場の実態と展望」(ミックITリポート2026年8月号)です。これは同社が公表する数字で、調査の対象はクラウド帳票発行サービスです。
ラクスの決算説明資料によると、2026年3月期の楽楽明細の売上高は130億6,100万円で、前期比31.1%の増加でした。
参考:
楽楽明細|株式会社ラクス
参考:
2027年3月期 第1四半期 決算説明資料|株式会社ラクス(2026年8月14日)
Bill Oneの大企業での導入拡大
Sansan株式会社の「Bill One」は、請求書の受領に特化したクラウドサービスで、ここまでの発行サービスとは別の市場に属します。Sansanは2025年12月22日に、Bill Oneが4年連続でマーケットシェア1位になったと発表しました。デロイト トーマツ ミック経済研究所による、請求書受領サービスの市場動向調査の結果です。同社は、売上シェア率を49.0%と公表しています。
受領サービスのシェアは、調査の主体や指標によって結果が異なります。ITトレンドに寄せられたレビューの件数による集計など、ほかの見方は請求書受領サービスのシェア動向2025|レビューから見る選ばれる理由で紹介しています。
参考: Bill Oneが4年連続マーケットシェアNo.1を獲得|Sansan株式会社
以下の記事ではWeb請求書・クラウド請求書の価格や機能、サポート体制などを、具体的に比較して紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
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ITトレンドで資料請求が多いサービスの傾向
一方、ITトレンドで資料請求が多かったサービスを見ると、また違った傾向が見えてきます。「ITトレンド上半期ランキング2026」のWeb請求書・クラウド請求書ソフト部門は、2026年1月1日〜5月31日の資料請求数をもとに集計しています。
1位は「ジョブカン見積/請求書」、2位は「freee請求書」、3位は「invox発行請求書」でした。8位までの順位は、次のとおりです。
| 順位 | 製品名 | 提供会社 |
|---|---|---|
| 1位 | ジョブカン見積/請求書 | 株式会社DONUTS |
| 2位 | freee請求書 | フリー株式会社 |
| 3位 | invox発行請求書 | 株式会社invox |
| 4位 | バクラク請求書発行 | 株式会社LayerX |
| 5位 | 楽楽明細 | 株式会社ラクス |
| 6位 | BtoBプラットフォーム 請求書 | 株式会社インフォマート |
| 7位 | マネーフォワード クラウド請求書 | 株式会社マネーフォワード |
| 8位 | @Tovas | コクヨ株式会社 |
ランキングは、新たに請求書の発行サービスを探している企業の関心を示すもので、市場シェアとは異なります。資料請求数は導入社数や売上とは別の指標のため、順位だけで市場での導入規模を判断することはできません。
参考: Web請求書・クラウド請求書ソフトの上半期ランキング2026|ITトレンド
今後のWeb請求書・クラウド請求書市場予測
ここでは、技術と運用の観点から今後の注目点を整理します。AI活用、業種別要件、外部連携の拡張が、選定時の比較軸として存在感を増します。
AI・自動化による差別化
請求書処理は定型業務が多く、AIや自動化の効果が表れやすい領域です。OCRによるデータ化、仕訳候補の提示、入金消込の自動処理など、人手に依存していた作業の工数を抑えられます。ミスの低減や処理スピードの平準化が見込めるため、運用設計と合わせて効果検証を行うと判断しやすくなります。
業種別ソリューションの広がり
建設・製造・流通・サービスなど、業種によって請求の頻度や明細構造は異なります。分割請求、検収データとの照合、定期課金など、実務要件に合うテンプレートや連携機能を備えるかが重要です。業種の慣行と社内の統制レベルに合わせ、要件適合性を比較しましょう。
海外展開の広がり
電子インボイスの国際標準規格として、「Peppol(ペポル)」があります。デジタル庁は、日本のPeppol Authorityとして、Peppolをベースにした日本のデジタルインボイスの標準仕様「JP PINT」を管理しています。仕様は更新が続いており、2026年6月8日にVer. 1.1.3が公表されました。
デジタル庁は、日本のPeppol Certified Service Provider(認定を受けたサービスプロバイダー)の一覧も公開しています。2026年10月2日の更新時点で、日本の事業者として、株式会社マネーフォワード、株式会社TKC、弥生株式会社などが掲載されています。取引先や海外拠点との請求書のやりとりを考える場合は、使うサービスがこうした標準仕様に対応しているかも、選ぶときの確認点になります。
参考:
JP PINT|デジタル庁
参考:
日本のPeppol Certified Service Provider一覧|デジタル庁
まとめ
Web請求書・クラウド請求書サービスの市場シェアは、各社の公表値、調査会社の市場データ、ITトレンドの資料請求ランキングで、見える景色が異なります。請求書の発行と受領も別の市場として調査されるため、数字を見るときは、対象と時点を確認することが欠かせません。
ITRによると、請求書の受け取り側のサービス市場は、2025年度に370億円となり、今後も成長が続く見通しです。導入を検討するときは、気になる製品をまとめて資料請求し、費用・機能・サポートをそろえて比べましょう。最後は、自社の課題に最も合う一手を選び、段階的に運用を定着させてください。


