BtoB企業の電子請求書の5つのデメリット
2005年のe-文書法制定によって、請求書の電子化が可能となりました。今まで紙に出力し、切手を貼って郵送していた請求書をWebシステムやPDFで代行する手法です。SI事業者は多くのメリットを訴えていますが、BtoBにおいては、デメリットもあるようです。さっそくデメリットを確認しましょう。
参考:「厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令」の概要|厚生労働省
1.請求先企業の負担
コスト削減やペーパーレスを目的に、電子請求書を活用する事例は多くあります。しかし、請求する側の企業はメリットを期待できるものの、請求先となるお客様はどうでしょうか。従来の業務フローを変更せざるを得なくなり、煙たがられる例も少なくありません。
例えば、化学薬品を製造販売しているA社。納品先は中小企業が多く、大手系列のA社は強い立場にありました。このため、多くの得意先は仕入先であるA社の指示に従いましたが、支払いの現場は混乱しました。
例外的に発生したA社の要求が業務フローを乱し、効率悪化の原因となったのです。営業部門も、お客様の不満があらわになって、商売がしづらくなったとこぼしています。
2.取引先の了承をもらう手間
電子請求書が請求先企業の負担になることは説明したとおりです。A社は大手系列という強い立場で押し切りましたが、押し切れない企業が多くあります。何しろ相手はお客様です。
老舗の商社の例ですが「新社長がペーパーレス化を進める一環でWeb請求書を導入しました。しかし、お客様から了承が得られず2年で断念しました」という話もあります。
3.請求現場の混乱
効率化を目指したはずなのに、請求現場の混乱を招く例もあります。建築資材を提供するB社では、入念に電子請求書の企画を立案し、お客様からの要求に柔軟に対応できる仕組みを構築しました。お客様からのきめ細かい要求に応えて、高い率の電子化を目指したのです。
ところが、要求があまりにもバラバラでした。それぞれのお客様が異なるフローやフォーマットを要求してくるため、かえって煩雑な業務になってしまいました。
4.情報漏えいのリスク
多くの製品でセキュリティ対策がされているとはいえ、電子データが第三者に抜き取られる可能性もゼロではありません。情報漏えいが起きた場合は、企業にとっても大きな損害をもたらす可能性があることは理解しておきましょう。
5.改ざんのリスク
第三者による改ざんの危険性があることも忘れてはいけません。電子データが改ざんされていないことの証明として「タイムスタンプ」を付与するなどの対策も実施しましょう。
BtoB企業の電子請求書の5つのメリット
請求書の電子化は、電子請求書システムの導入などで対応できます。電子請求書システムによりWeb上で請求書を発行し、メール添付または請求書データのURLと閲覧用パスワード送付などが可能です。電子請求書の大きなメリットとして「コスト削減」「業務効率化」「人為的ミスの防止」があげられるでしょう。他にも「検索性の向上や管理の負担軽減」、「テレワーク促進」などの効果が期待できます。以下で詳しく解説します。
1.コスト削減
請求書に限らず、帳票の電子化はコスト削減効果を数字で訴えやすい分野です。実際にコスト削減の効果を試算してみましょう。従来、C社では以下のコストがかかっていました。
- ●印刷 (白黒A4×2枚)8円
- ●封筒 (窓付き 長3 糊付き)10円
- ●切手 (定形25g以下)82円
- ●月間請求数 500件
( 8 + 10 + 82 ) × 500 = 50,000(月間)=年間60万円
Web請求書は、メールで請求書を配信できるため、印刷や郵送にかかるコストをカットできます。プリンタインクや切手代などがかからないため、Web請求書を利用しはじめたときからコスト削減が可能です。
C社の事例であれば、月間請求数が 500件の場合、年間60万円の削減に成功します。保管費もかかっている場合は、さらに経費節減になるでしょう。
2.業務工数の削減
コスト削減ばかりではありません。電子請求書の導入により、人手も削減できます。
例えば請求の業務フローは以下のとおりです。
- 1.請求書の作成
- 2.請求書の印刷
- 3.請求書へ押印・封入
- 4.請求書の送付・取引先受領
- 5.請求書(控)のファイリング保管
Web請求書は、請求書作成に伴う手間や労力を大幅に削減します。Web請求書を導入すると、CSVファイルなどで請求データや支払データを一括で取り込むことで請求書が作成できます。作成後の請求書は、顧客へメール送信できるため、面倒な印刷や封入の手間もなくなるでしょう。
また、従来のように郵送で送付していた場合、到着までに時間がかかっていましたが、電子送付により、すぐに到着・閲覧してもらえるメリットもあります。
会計ソフトと連携しているWeb請求書システムを導入した場合、さらなる業務効率化も期待できるでしょう。請求書を発行すると同時に帳簿へ入力されるほか、指定の口座への入金額と請求額を自動的に照らし合わせ、帳簿の消込や未収金といった詳細な対応が可能です。
3.封入ミス・未達・紛失の防止
請求ミスは情報漏えいやお客様からの信頼性を著しく損なうリスクがあります。請求書を人の手で印刷・封入している場合、人為的ミスを0にすることは難しいですが、Web請求書はミスの発生頻度を大きく減少させられます。データの取り込みをシステム上で行うためです。すべての請求書情報をセキュアな環境下でデータ化・保存します。また、事前に顧客登録を行うことで送信間違いを防ぎ、人為的ミスの可能性をさらに低くします。万が一、請求書の誤配送が起きてしまっても、閲覧できる請求データを随時差し替えが可能な点も、Web請求書のメリットです。
4.検索や管理の簡素化
紙の請求書はファイリングして管理するため、探す際に手間と時間がかかっていました。しかし、電子請求書はシステム上に保管できるため、検索や管理が容易になります。加えて、請求書業務の進捗状況も確認できるため、複数の担当者での情報共有や、顧客からの問い合わせにも素早く回答できるでしょう。
5.インターネット上であればどこでも作業可能
インターネット環境とPCがあれば、どこでも作業できます。在宅勤務者でも対応でき、多様な働き方に柔軟に対応します。
電子請求書システム導入の検討には、以下のランキング情報もお役立てください。気になった製品は資料請求(無料)も可能です。興味のある方はぜひお申し込みください。
電子請求書システム導入前に注意すべき4つのポイント
請求書の電子化によるメリットは大きいものの、デメリットも少なからず存在します。ここからは、請求書電子化のデメリットを補う電子請求書システムの選び方について解説します。取引先と電子請求をスムーズに行うためにチェックしておきたいポイントや、情報漏えい・改ざんに対するセキュリティ対策について確認しましょう。またデメリットのカバーだけでなく、メリットである業務効率化や生産性向上を実現するためのポイントも紹介するので参考にしてください。
サポート体制
ベンダーのサポート体制を確認しましょう。ベンダーによっては、取引先を対象としたシステム説明や電子化移行の案内をしてくれる場合もあります。取引先の事情や不安を汲み取り、負担を軽減させるためにも、重要なポイントです。また、万が一システムにトラブルが起きた際、社外への影響も大きいため、対応日時や問い合わせ窓口の種類(形態)などについても比較したほうがよいでしょう。
カスタマイズの必要性
自社および取引先の状況を考慮して、システムのカスタマイズが必要かどうか、事前に確認しましょう。自社でシステムを構築するオンプレミス型はカスタマイズを自由に行えますが、クラウド型だと提供会社のシステムを利用しているため、機能追加やシステム変更が難しい場合があります。
カスタマイズが必要な場合は、製品の対応可否を確認することが重要です。
セキュリティチェック
電子データは改ざんリスクが0ではありません。選定の際にはセキュリティ項目のチェックが必須です。データを管理するデータセンターやサーバーの監視体制、SSL暗号化などのセキュリティ対策が万全な製品を選びましょう。
システム連携
会計・販売管理システムなどと連携できる電子請求書システムだと、請求額の入力が自動でできるなど、さらに請求書発行を効率化できます。連携可能な製品が多く登場しているため、上記3点とあわせて確認しましょう。
なお、電子請求書システムの選び方についてはこちらの記事でも解説しています。効率化したい業務にマッチする製品も紹介しているので、あわせて参考にしてください。
請求書電子化のメリット・デメリットを理解して製品選定を!
請求書発行には多くの手間と時間がかかりますが、電子請求書を導入することにより、業務効率を向上させられるでしょう。さらに人件費・郵送費・印刷費などさまざまなコストカットも実現可能です。
電子請求書を導入する際には、自社における導入メリット・デメリットを比較したうえで、自社に最適な製品を選定しましょう。